認知症グループホームの運営推進会議は、おおむね2月に1回以上の開催が義務です
認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム、以下GH)の運営推進会議は、「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第34号)第107条に根拠があります。「おおむね二月に一回以上」の開催が義務づけられています。年間に換算すると6回以上です。
同じ「グループホーム」という名称でも、障害者グループホーム(共同生活援助)は地域連携推進会議がおおむね年1回以上の開催です。認知症GHの運営推進会議は年6回以上と、開催頻度が6倍異なります。
この記事では、開催義務の根拠条文・構成員の種類と出席が難しい場合の対応・議事録の必須項目・公表の実務を解説します。
「おおむね2月に1回以上」の根拠条文
第107条第1項の条文を示します。
第百七条 指定認知症対応型共同生活介護事業者は、指定認知症対応型共同生活介護事業所ごとに、おおむね二月に一回以上、利用者、利用者の家族、地域住民の代表者、指定認知症対応型共同生活介護事業者が提供するサービスに係る介護保険法第九十七条第一項の指定をした市町村長又はその指定を受けた者及び地域包括支援センターの職員その他の関係者により構成される会議(以下この条において「運営推進会議」という。)を開催し、活動状況を報告し、運営推進会議による評価を受けるとともに、必要な要望、助言等を聴く機会を設けなければならない。
出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第34号)第107条第1項
「おおむね」という文言があるため、多少の前後(年6回の予定が一度の変更で5回になる程度)は許容されると解釈されることがあります。ただし「おおむね」を根拠に常態的に間隔を空けることは運営指導で指摘される可能性があるため、年6回以上を基準として計画することが安全です。
第107条には記録の作成と公表の義務もあります
第107条には開催義務(第1項)に加えて、記録の作成と公表の義務が定められています。条文の文言は「報告、要望、助言等についての記録を作成するとともに、当該記録を公表しなければならない」というものです。
出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第34号)第107条
「しなければならない」という語は法令上の義務規定です。記録の作成と公表の両方が義務です。
公表の方法(事業所内への掲示・ウェブサイトへの掲載など)は指定権者(市区町村)の指導に従ってください。掲示板への貼り出しで対応している事業所が多く見られます。
構成員の5つのグループ
第107条第1項が定める構成員は、次の5グループです。
| グループ | 具体的な対象 | 参加の形 |
|---|---|---|
| 利用者 | 入居中の方(本人の同意を得た上で参加) | 出席または代弁 |
| 利用者の家族 | ご家族・後見人など | 出席または書面参加 |
| 地域住民の代表者 | 町内会・自治会の代表・民生委員など | 出席 |
| 市町村長またはその指定を受けた者 | 介護保険の指定をした市区町村の担当者またはその指定を受けた機関 | 出席 |
| 地域包括支援センターの職員その他の関係者 | 地域包括支援センターの職員・担当ケアマネジャー・かかりつけ医など | 出席 |
「その他の関係者」は幅広く解釈できます。担当のケアマネジャー・かかりつけ医・薬剤師などが出席することもあります。構成員の顔ぶれが広がると、地域からの意見を多角的に集められるという利点があります。
全員が毎回出席できなくても開催できます
5グループすべてが毎回そろうことは現実的には難しい場合があります。認知症GHの利用者本人は体調・認知症の進行によって出席が難しいことも多く、家族も仕事などで毎回参加できるとは限りません。
何グループ以上いれば開催できるかについて法令に明確な規定はありません。実務上は「参加できる構成員が複数グループ集まれば開催する」という方針が多く見られます。指定権者の指導方針を確認してください。
欠席者への対応には次のような方法が使われています。
- 家族が欠席の場合:事前にアンケートや電話で意見を聴いて「書面参加」として記録に残す
- 行政担当者が欠席の場合:開催後に議事録を送付して照会・確認を取る
- 利用者本人が出席できない場合:担当のケアマネジャーや職員が代弁する
- 遠方の家族:Web会議(Zoom・Teamsなど)での参加オプションを用意する
欠席者の扱いは議事録に明記しておくことが重要です。「○○様は欠席・事前にアンケートを提出」「○○担当者は欠席・開催後に議事録を送付」などと書いておくと、運営指導の際に「参加の機会を確保しようとしていた」という証拠になります。
議事録に残す8つの項目
第107条は「記録を作成しなければならない」と定めています。議事録に残す項目の目安を示します。
| 項目 | 記載の内容 |
|---|---|
| 開催日時・方法 | 会議の日時と対面・オンラインの別 |
| 出席した構成員 | 氏名・所属・役割(欠席者は欠席の理由・対応を明記) |
| 活動状況の報告 | 研修・訓練の実施状況・委員会の開催状況・利用者の状況など |
| 構成員からの要望・助言 | 発言者の所属・発言内容を要約(発言そのままを書く必要はない) |
| 事業所の対応方針 | 要望・助言に対してどう対応するか |
| 各居室への見学の予定・実施日 | 見学の日程・対象居室(利用者の了承を得てから) |
| 公表の方法と日 | 掲示・ウェブサイト掲載などの方法と実施した日 |
| 記録者 | 記録を作成した職員名 |
「活動状況の報告」の中身が薄くなりやすいため、研修の実施テーマと受講者数・感染症訓練の実施日と参加人数・委員会の開催回数と主な検討事項など、具体的な数字と内容を書くことを意識してください。外部の構成員にとって「この事業所がどんな取り組みをしているか」が伝わる内容になります。
「活動状況の報告」には何を入れるか
運営推進会議で報告する「活動状況」の内容は法令に具体的な定めがありません。運営指導で確認されやすい項目として次のものが挙げられます。
- 研修の実施状況(テーマ・実施日・参加人数)
- 訓練の実施状況(テーマ・実施日・訓練の内容)
- 委員会の開催状況(委員会の種類・開催日・主な議題と決定事項)
- 利用者の状況(定員充足率・新規入居・退居の件数・平均要介護度など。個人が特定できる情報は慎重に判断する)
- ヒヤリハット・事故の件数(個人情報に注意しながら傾向を共有する)
- 苦情・要望の件数と主な内容
- 職員の状況(採用・離職の状況)
毎回同じフォーマットで報告すると、変化・改善・悪化が構成員にも伝わりやすくなります。前回会議での要望に対する対応状況を冒頭に置く構成も有効です。
障害者グループホームとの違い
認知症GHの運営推進会議と、障害者グループホーム(共同生活援助)の地域連携推進会議は別の制度です。
| 比較項目 | 認知症GHの運営推進会議 | 障害者GHの地域連携推進会議 |
|---|---|---|
| 根拠 | 地域密着型サービス基準省令 第107条 | 障害福祉サービス等の事業の基準 第213条の5 |
| 開催頻度 | おおむね2月に1回以上(年6回以上) | おおむね年1回以上 |
| 記録の公表 | 義務(「公表しなければならない」) | 記録の作成は必要(公表義務の有無は要確認) |
| 利用者の参加 | 構成員として位置づけられている | 事業所による |
認知症GHは「地域の一員として閉鎖的にならない」ことを制度的に担保するために開催頻度が高く設定されています。認知症の方が地域から孤立した環境で生活する状況を防ぐという趣旨が背景にあります。
年6回のスケジュールを年度初めに決める
年6回の開催スケジュールを年度の初めに決めておくことで、構成員への案内が計画的にできます。
スケジュールを組む際の実務上の考え方をまとめます。
- 2か月ごとに固定曜日・時間帯を決めると構成員の予定調整がしやすくなる(例:偶数月の第3木曜日15時)
- 感染症の流行期(冬・梅雨)を考慮して1〜2回分は日程変更の余地をもたせておく
- 地域住民の代表者の都合(町内会・自治会の総会などと重ならない時期)を事前に確認する
- 家族の参加を促すため、平日の夜間または休日の午前中に設定する方法もある
- 年間の議題テーマをあらかじめ決めておくと(例:4月は感染症対策・6月は夏の熱中症予防・10月はBCP)、形式的な報告会になりにくい
よくある疑問
オンライン開催は認められますか
法令の文言は「開催」であり、対面限定とは書かれていません。感染症対策や遠方の家族の参加利便性を考慮してオンライン(Zoom・Teamsなど)で開催することは認められると解釈されることが一般的です。ただし指定権者の指導方針を確認してください。
議事録の保存期間は何年ですか
「事業所を廃止した日から2年間保存する」という規定があります。実務上は「退所後2年間以上」または「廃止後2年間」が目安として使われることが多いですが、指定権者が別途保存期間を定めている場合があります。
公表はウェブサイトがなくても大丈夫ですか
ウェブサイトがなくても事業所内への掲示で対応している事業所は多くあります。A4一枚に「何月何日に開催した・出席者・主な要望と対応方針」をまとめて掲示板に貼り出す方法が実務では一般的です。
家族が一度も来ない場合はどうしますか
家族に参加の機会を提供したという記録を残すことが重要です。案内状の送付・電話での連絡・アンケートの送付などを記録に残しておくことで、「家族が欠席しても義務を果たそうとしていた」ことが示せます。
まとめ:2月に1回以上・記録の作成と公表が義務です
認知症グループホームの運営推進会議の義務をまとめます。
- 根拠条文:「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」第107条
- 開催頻度:おおむね2月に1回以上(年6回以上)
- 構成員:利用者・利用者の家族・地域住民の代表者・市町村担当者・地域包括支援センターの職員など5グループ
- 記録の作成:義務
- 記録の公表:義務(「公表しなければならない」)
- 障害者GHの地域連携推進会議(年1回以上)と開催頻度が大きく異なる
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