消防設備士 1類(甲1・乙1)の試験科目・合格ライン・勉強の順番を、公式の数字でまとめます

消防設備士 1類(甲1・乙1)の試験科目・合格ライン・勉強の順番を、公式の数字でまとめます 資格

消防設備士 第1類は、屋内消火栓設備とスプリンクラー設備が対象の資格です。甲種(甲1)は工事・整備・点検の全部を行えて、乙種(乙1)は整備・点検のみ。令和6年度(令和6年4月〜令和7年3月)の受験者数は甲1が12,086人・乙1が2,161人でした(消防試験研究センター公表)。

試験科目、問題数、合格ラインの仕組み、甲1だけにある計算問題の内容、そして勉強の順番を、消防試験研究センターと消防庁の公表資料をもとにまとめます。

第1類の対象設備は屋内消火栓とスプリンクラー

消防設備士の免状は甲種1〜5類・特類、乙種1〜7類に分かれていますが、第1類だけが屋内消火栓設備とスプリンクラー設備の両方をカバーします。どちらも水を使って消火する「水系消火設備」で、ビル・工場・病院など多くの建物に設置義務があります(消防法第17条)。

1類の資格が活きる職場は、消防設備会社、建設会社の設備部門、防災設備の点検業者などです。施工・整備・点検のどこまでを担当するかによって、甲1か乙1かを選ぶことになります。

甲1と乙1でできることの違い

甲種第1類 乙種第1類
工事(新設・改造) できる できない
整備(修理・調整) できる できる
点検(機能・総合) できる できる
受験資格 必要(学歴・実務等) 誰でも受験可

根拠:消防法第17条の5(甲種は工事も含む)、消防法第17条の9(乙種は誰でも受験可)。

試験科目と問題数

甲1と乙1では筆記の科目構成が異なります。甲1には「規格に関する部分」に第1類の専門科目が入り、問題数が多くなります。実技試験は甲1のほうが問題数が多く、計算問題(製図に相当する内容)が含まれます。

甲種第1類の試験構成

区分 科目 問題数
筆記(多肢選択式) 消防関係法令(共通) 8問
消防関係法令(第1類) 7問
基礎的知識(機械・流体) 10問
構造・機能・工事・整備(第1類) 25問
実技(記述・製図) 鑑別(5問)+製図(2問) 計7問
合計 筆記50問・実技7問

乙種第1類の試験構成

区分 科目 問題数
筆記(多肢選択式) 消防関係法令(共通) 6問
消防関係法令(第1類) 4問
基礎的知識(機械・流体) 5問
構造・機能・整備(第1類) 15問
実技(記述式) 鑑別(5問) 5問
合計 筆記30問・実技5問

乙1の筆記30問・実技5問は乙6と同じ形式ですが、専門科目の内容(屋内消火栓とスプリンクラー)がまったく違います。甲1の実技7問には製図が2問含まれており、鑑別だけの乙1よりも準備の幅が広くなります。

試験時間

甲種第1類 乙種第1類
筆記試験 2時間 1時間
実技試験 1時間15分 45分
合計 3時間15分 1時間45分

甲1の試験時間は乙1の約2倍です。製図問題に手を動かす時間が必要なため、甲1は時間の使い方も意識して練習する必要があります。

合格ラインは3段階の条件がある

消防設備士試験の合格基準は「全体60%以上」の1条件だけではありません。筆記の各科目、実技試験のそれぞれについて、同時に基準を満たす必要があります。

基準 条件
筆記試験 各科目 40%以上
筆記試験 全体 60%以上
実技試験 60%以上

3つの基準をすべて満たして合格です。「筆記全体は60%超えたのに実技が50%で不合格」というケースがあります。実技(鑑別・製図)を軽く見ると足をすくわれます。

問題数に直した合格ライン

「40%以上・60%以上」という割合が、実際の問題数でどこまでに当たるかを計算します。

科目・試験 問題数 40%ライン 60%ライン
法令(共通)甲1:8問 8 4問(40%の科目足切り)
法令(第1類)甲1:7問 7 3問(40%の科目足切り)
基礎知識(甲1)10問 10 4問(40%の科目足切り)
構造機能(甲1)25問 25 10問(40%の科目足切り)
筆記全体(甲1)50問 50 30問
実技(甲1)7問 7 4.2問→5問で確実

乙1の筆記30問の場合:全体60%ラインは18問、実技5問の60%ラインは3問(4問で安全圏)です。

甲1にだけある計算問題が、最初の壁になる

乙1にはない、甲1固有の学習内容が「計算問題」です。実技試験(製図区分)の中に含まれ、3種類あります。

1. スプリンクラーヘッドの個数計算

設置が必要なヘッドの個数を求める問題です。建物の用途・構造によってヘッドの水平距離(1ヘッドがカバーする半径)が変わります(消防法施行規則第13条の2)。

防火対象物の種類 水平距離(R) 1ヘッドの防護面積(πR²)
耐火建築物 2.3m以下 約16.6㎡
耐火建築物以外 2.1m以下 約13.8㎡
舞台部 1.7m以下 約9.1㎡

計算手順:対象区域の面積 ÷ 1ヘッドの防護面積(小数点以下切り上げ)。実際の試験問題では「区画の縦×横からヘッドの配置を求める」形が多く出ます。

2. 水源水量の計算

設備を稼働させるのに必要な水の量を求める問題です(消防法施行令第12条)。

設備の種類 計算式 例(標準的な場合)
屋内消火栓(1号) 2基×2.6m³ 5.2m³
屋内消火栓(2号) 2基×1.2m³ 2.4m³
スプリンクラー(10階以下) 15個×1.6m³ 24m³
スプリンクラー(11階以上) 30個×1.6m³ 48m³

「最大2基同時使用」「同時開放15個(または30個)」という前提が問題文に書かれることがあります。建物の階数・設置条件によって同時開放数が変わる場合があるので、問題文の条件をよく確認します。

3. ポンプ全揚程の計算

ポンプが水を送り届けるのに必要な全揚程(全体の押し上げる力)を求める問題です(消防法施行令第12条・施行規則第12条)。

基本式:H(全揚程)= h1(ホース摩擦損失)+ h2(配管摩擦損失)+ h3(落差)+ 放水圧換算値

項目 1号消火栓 2号消火栓 スプリンクラー
ホース摩擦損失(h1) 17m 12m(15m型) なし(ホースなし)
放水圧換算値(末端圧力) 17m(0.17MPa) 17m(0.17MPa) 10m(0.1MPa)

問題には「配管の摩擦損失は○m」「落差は○m」と数字が与えられます。式に当てはめて計算するだけなので、式の構造を理解してから練習量を積むと解けるようになります。

勉強の順番。法令と基礎知識から入るのがつまずきにくい

第1類の試験は科目数が多く、設備の仕組みが複雑です。いきなり設備の構造から入ると、「何のための部品か」がイメージしにくく、覚えにくい状態になります。次の順番で進めると全体の繋がりが見えてきます。

推奨する学習の順番(目安)

  1. 消防関係法令(共通):消防設備全般のルール。他の類を持っている人はすでに知っている内容も多い。
  2. 消防関係法令(第1類):屋内消火栓とスプリンクラーの設置基準。「どこにどの設備が必要か」の条文を押さえる。
  3. 基礎知識(機械・流体):ポンプの揚程、圧力の単位、配管の流速など。計算問題の土台になる部分で、難しいが先に理解しておく価値がある。
  4. 構造・機能・整備(第1類):ヘッドの種類・弁の構造・ポンプ室の設備など。法令と基礎知識を理解してから入ると各部品の意味がつかみやすい。
  5. 実技(鑑別・製図):写真や図面の問題。構造を理解したうえで、鑑別の種類と製図の手順を練習する。甲1の製図は特に計算問題が繰り返し出るので、練習量が直結する。

1類の試験で点を落としやすいのは「閉鎖型と開放型スプリンクラーの違い」「1号消火栓と2号消火栓の放水量・圧力の違い」「延べ面積・階数による設置基準の違い」の3か所です。それぞれ数字のセットで覚えておくと、混乱が減ります。

屋内消火栓の設置基準。延べ面積と階数が判断の鍵

屋内消火栓設備の設置が義務になる条件は、防火対象物の用途と延べ面積によって決まります(消防法施行令第11条第1項)。

防火対象物の種類 設置義務が生じる延べ面積
(一)項(劇場・映画館等)・(二)項(遊技場・キャバレー等) 500㎡以上
(三)〜(十)項(飲食店・百貨店・病院・工場等) 700㎡以上(用途によって異なる)
(十一)〜(十五)項(事務所・倉庫等) 700㎡〜1,000㎡以上(用途による)

根拠:消防法施行令第11条第1項各号。地下階・無窓階・耐火性能によってさらに基準面積が変わる場合があります。試験では用途と面積と階数の組み合わせを条件として読み取る問題が出ます。

スプリンクラー設備の設置基準。11階以上はすべての防火対象物で義務

スプリンクラー設備は屋内消火栓よりも設置基準が厳しい設備です。11階以上の部分については、すべての防火対象物で設置義務があります(消防法施行令第12条第1項第12号)。

また、デパートや劇場など人が多く集まる施設では、低層部でも設置義務が発生する場合があります。試験では「何階以上か」「面積はいくらか」という条件と、「用途は何か」を組み合わせた出題が多く見られます。

スプリンクラーヘッドの種類と見分け方

スプリンクラーヘッドには閉鎖型と開放型があり、それぞれさらに種類が分かれます。試験の鑑別問題でも写真を見て種類を答える問題が出ます。

分類 種類 特徴
閉鎖型 標準型(上向き・下向き) 配管に直結。熱で感熱部が溶けて作動。
側壁型 壁面に設置。横方向に散水。
小区画型(ラックス等) 小さな区画向け。防護面積が小さい。
開放型 標準型(開放) 感熱部がなく、手動または自動弁で一斉放水。
水幕型 防火区画の代わりに水幕を作る。

ヘッドの色表示(感熱部の溶融温度)

閉鎖型ヘッドは感熱部(ヒュージブルリンクまたはガラスバルブ)の溶融温度によって色で区別されています(JIS B 9890)。

色 溶融温度(℃)
橙(だいだい) 57℃
赤 68℃
黄 79℃
緑 93℃
青 121℃
紫 141℃
黒 163℃以上

一般的な室内では橙(57℃)か赤(68℃)が使われます。厨房やサウナなど高温になる場所では黄や緑以上のヘッドを使います。試験ではこの色の対応表から数字を答える問題が出ます。

放水量と放水圧の基準値は設備ごとに異なる

1類の試験で取り違えやすい数字が「放水量」と「放水圧」です。設備の種類ごとに基準値が違い、混同すると問題を間違えます。

設備の種類 放水量 放水圧 根拠
1号消火栓 130L/min以上 0.17MPa以上 施行令第11条
2号消火栓(15m型) 60L/min以上 0.25MPa以上 施行規則第12条
スプリンクラーヘッド 80L/min以上 0.1MPa以上1MPa以下 施行規則第14条

「圧力は同じで量が違う」「スプリンクラーの圧力は0.1MPa以上(消火栓の0.17MPaより低い)」という点が混乱しやすいポイントです。

点検周期は機能点検と総合点検で異なる

消防設備士の点検義務は消防法で定められており、第1類の設備も対象です(消防法施行規則第31条の6第1項)。

点検の種類 周期
機能点検 6か月に1回
総合点検 1年に1回

点検の結果は消防庁に報告しますが、報告の周期は用途によって異なります(特定防火対象物:1年に1回、非特定防火対象物:3年に1回)。試験では点検周期と報告周期を混同しないよう注意が必要です。

問題を解きながら覚えるのが1類攻略の近道

第1類は出題範囲が広く、設置基準の数字・設備の構造・計算問題と、覚えることが多い試験です。テキストを読んで覚えようとすると、量の多さに気圧されます。問題を解きながら「この数字はどこから来るか」「この部品の名前は何か」を確認していく方が、定着が早いです。

特に甲1の計算問題は、公式の意味を理解してから練習問題を繰り返すことで点数が安定します。

消防設備士 第1類の問題集(確認済みの問題・数字ドリル・鑑別・計算問題・模試・AI問題生成)は無料で使えます。甲1・乙1どちらの模試にも対応しています。

消防設備士 第1類の問題集はこちら(無料・スマホ対応)

関連記事

出典:消防試験研究センター「試験実施状況(令和6年4月〜令和7年3月)」、消防法第17条の5・第17条の9、消防法施行令第11条・第12条、消防法施行規則第12条・第13条の2・第14条・第31条の6、JIS B 9890(スプリンクラーヘッド)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
資格
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました