消防設備士 第1類には甲種(甲1)と乙種(乙1)があります。どちらも屋内消火栓設備とスプリンクラー設備が対象ですが、できること・受験資格・試験の範囲が異なります。
「甲1と乙1のどちらを受けるか」で迷っている人向けに、2つの違いを整理します。
できることの違いは「工事できるか」の一点
甲1と乙1の実務上の違いは、工事(設備の新設・改造)ができるかどうかです(消防法第17条の5)。
| 甲種第1類 | 乙種第1類 | |
|---|---|---|
| 工事(新設・改造) | できる | できない |
| 整備(修理・調整) | できる | できる |
| 点検(機能・総合) | できる | できる |
「今の仕事が点検と整備だけなら乙1で足りる」「設計・施工まで担当するなら甲1が必要」という判断基準で考えます。
甲1が必要な代表的な業務
- 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備の新設工事
- 設備の改造・移設工事
- 着工届・設置届の提出が必要な工事の監督
乙1で足りる業務
- 既存設備の定期点検(機能点検・総合点検)
- ヘッドや弁の交換・調整(整備)
- 点検結果の報告書作成
受験資格の違い。乙1は誰でも受けられる
乙種はすべての類で受験資格なし(年齢・学歴・実務経験を問わず受験できる)です(消防法第17条の9)。
甲種は受験資格が必要です(消防法施行規則第33条の8)。主な受験資格を整理します。
| 受験資格の区分 | 内容 |
|---|---|
| 学歴 | 大学・高専・高校で機械・電気・化学・土木・建築等の学科を卒業した人 |
| 実務経験 | 消防設備士・電気工事士等の資格を持ち、設備工事・整備・点検の実務経験が2年以上ある人 |
| 免許保有 | 電気工事士(第1種・第2種)・電気主任技術者・管工事施工管理技士等の資格保有者 |
| その他 | 消防団員として5年以上(うち甲種対象設備に係る点検業務3年以上)など |
「今すぐ消防設備の仕事を始めたい・乙1から入門する」という場合は受験資格を気にせず申し込めます。甲1を目指している人でも、まず乙1を取得してから甲1に挑む人もいます。
試験の科目数と問題数の違い
試験の構成が甲1と乙1で異なります。甲1の方が問題数が多く、実技に製図(計算問題を含む)があります。
| 区分 | 甲種第1類 | 乙種第1類 |
|---|---|---|
| 筆記:法令(共通) | 8問 | 6問 |
| 筆記:法令(第1類) | 7問 | 4問 |
| 筆記:基礎知識(機械・流体) | 10問 | 5問 |
| 筆記:構造機能整備 | 25問 | 15問 |
| 実技:鑑別 | 5問 | 5問 |
| 実技:製図(計算問題含む) | 2問 | なし |
| 合計 | 筆記50問・実技7問 | 筆記30問・実技5問 |
乙1の問題数(筆記30問・実技5問)は、乙6と同じ形式です。ただし専門科目の内容(屋内消火栓・スプリンクラー)はまったく違います。
試験時間の違い
| 甲種第1類 | 乙種第1類 | |
|---|---|---|
| 筆記試験 | 2時間 | 1時間 |
| 実技試験 | 1時間15分 | 45分 |
| 合計 | 3時間15分 | 1時間45分 |
甲1は乙1の約2倍の試験時間です。製図問題で設計を描き起こす作業があるため、時間配分が合否に関係します(消防試験研究センター公表)。
甲1の試験で乙1にない内容
甲1の筆記「構造・機能・工事・整備」は25問(乙1は15問)です。問題数が多い分、乙1より深い知識が必要です。
また、甲1の実技には製図が2問あります。製図には計算問題(ヘッド個数・水源水量・ポンプ全揚程)が含まれることが多く、これが甲1の難しさの核心です。
| 項目 | 甲1にある | 乙1にある |
|---|---|---|
| 設備の設置計画(設計の考え方) | あり | なし |
| 着工届・設置届の手続き | あり | なし |
| 製図問題(ヘッド配置・水源・揚程の計算) | あり | なし |
| 設備構造の深い知識(部品・配管・弁の設計) | 多い | 基本のみ |
合格率の差から見る難易度の差
甲1の合格率は令和6年度24.1%、乙1は31.0%です(消防試験研究センター公表)。約7ポイントの差があります。
「乙1の方が簡単」かというと、乙1でも3割が合格できていない事実があります。1類全般が「準備なしには受からない」水準です。甲1の方が試験範囲が広く計算問題があるため、甲1の方が難易度は高いと言えます。
| 指標 | 甲1(令和6年度) | 乙1(令和6年度) |
|---|---|---|
| 受験者数 | 12,086人 | 2,161人 |
| 合格者数 | 2,914人 | 669人 |
| 合格率 | 24.1% | 31.0% |
どちらから受けるかの判断基準
甲1か乙1かを選ぶときに、次の3つを確認すると判断がつきやすくなります。
判断1:今の仕事で「工事」が必要か
設備の新設・改造工事を担当する予定があれば甲1が必要です。点検・整備だけなら乙1で法律上の業務は全部対応できます。
判断2:受験資格を今持っているか
甲1の受験資格(学歴・実務経験・関連資格)がある場合は、最初から甲1を目指せます。受験資格がない場合は乙1から始めて、乙1取得後に甲1の受験資格を得るルートを考えます(乙種消防設備士として2年の実務経験を積む方法もあります)。
判断3:計算問題に抵抗があるか
甲1の計算問題(ヘッド個数・水源水量・ポンプ全揚程)は数学的な理解が必要です。計算問題が苦手な場合は、まず乙1で1類の基礎を固めてから甲1に挑むのも一つの方法です。
乙1から甲1に切り替えるルート
乙1を持っている状態で甲1を受験する場合、試験の一部が免除されます(消防法施行規則第44条)。
乙1取得後に甲1を受験すると「消防関係法令(共通)8問」が免除されます。ただし免除された科目の点数はカウントされないため、残りの科目でしっかり点数を取る必要があります。
同時に他の類を受験することも考えられる
消防設備士の試験は、複数の類を同時に申し込んで同日に受験できる場合があります(午前・午後で別の類を受験するなど)。
1類と並行して取得を検討される資格として、4類(自動火災報知設備・乙4・甲4)や乙6(消火器)が挙げられます。設備会社での業務は複数の類を持っている方が対応できる作業の幅が広がります。
どちらを選んでも「1類の範囲」は同じ
甲1と乙1で出題範囲は変わりますが、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備の基本構造・法令・点検基準は共通です。乙1の勉強をしっかりやっていれば、甲1受験時に加える学習量は「製図・計算問題の追加」と「構造機能の深掘り」の2点が中心です。乙1→甲1のステップアップは現実的なルートです。
消防設備士 第1類の問題集(確認済みの問題・数字ドリル・鑑別・計算問題・甲1・乙1それぞれの模試・AI問題生成)は無料から使えます。どちらを受験する場合も使えます。
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出典:消防法第17条の5(甲種・乙種でできること)、消防法第17条の9(受験資格)、消防法施行規則第33条の8・第44条、消防試験研究センター「試験実施状況(令和6年度)」


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