消防設備士甲2の筆記試験(構造機能・工事整備)では、加圧送水装置の「制御回路」と「自動起動停止の仕組み」が繰り返し出題されます。ポンプの種類(3方式)は別記事で解説しているため、この記事では制御回路・電気系配線・自動起動停止の具体的な動作原理に絞って解説します。甲種ならではの「工事」視点での出題にも対応できる内容です。
加圧送水装置の制御回路の全体像
泡消火設備のポンプ(加圧送水装置)は、感知器の作動→一斉開放弁の開放→ポンプの自動起動という流れで動作します。甲2試験では、この「自動起動の流れ」と「各機器の接続関係」を系統図・配線図で問う問題が出題されます。
制御回路の主な構成要素は次のとおりです。
- 感知器回路:火災感知器(閉鎖型スプリンクラー型の場合は流水検知装置)が信号を発する
- 制御盤(消防設備用制御盤):感知器信号を受けて起動信号を出力する。電磁弁の開放・ポンプの起動・警報出力を制御する
- 電磁弁(一斉開放弁の起動用電磁弁):制御盤からの信号を受けて一斉開放弁を開放する
- 圧力スイッチ(起動用圧力スイッチ):ポンプを自動起動させるための圧力検出装置。配管内の圧力低下を検知してポンプを起動させる
- ポンプ制御盤(電動機制御盤):電動ポンプの起動・停止・異常表示を担う盤。消防設備用制御盤と連動する
ポンプの自動起動の2つのルート
電動ポンプ方式の泡消火設備では、ポンプの自動起動には「感知器信号ルート」と「圧力スイッチルート」の2種類があります。甲2試験でよく問われるのは、この2ルートの違いと動作条件です。
| 起動ルート | 動作タイミング | 仕組み |
|---|---|---|
| 感知器信号ルート | 火災感知器が作動したとき | 制御盤が感知器信号を受信→電磁弁を開放→ポンプ起動信号を出力 |
| 圧力スイッチルート | 配管内圧力が設定値以下に低下したとき | 圧力スイッチが作動→ポンプ制御盤にポンプ起動信号を送る |
重要なのは「感知器が作動しなくても、配管圧力が低下すればポンプが起動する」という点です。配管の微小漏れや試験時の放水でも圧力スイッチが作動します。試験では「圧力スイッチが動作する条件」として「配管内の圧力が一定値以下に低下したとき」が正解です。
自動停止の仕組みと手動停止の違い
消防設備のポンプは、原則として自動では停止しません。これは試験で頻繁に問われる重要ポイントです。
消防法施行規則第18条(泡消火設備に準用する規定)では、加圧送水装置について「起動後は手動でのみ停止できる構造」とすることが求められています。自動停止を禁止する理由は、消火活動中にポンプが自動停止すると放水が止まり、被害が拡大するリスクがあるためです。
- 自動起動:感知器信号または圧力スイッチで自動起動する(義務)
- 自動停止:原則禁止。ポンプの停止は手動操作による(義務)
- 手動停止の場所:ポンプ制御盤の停止スイッチ、または遠隔操作盤から操作する
ただし例外として、ポンプを連続運転することで機器に過熱等の障害が生じる恐れがある場合(通常は自動制御のポンプ試験弁がある場合など)は、メーカーの設計に従います。試験では「ポンプの停止は手動によってのみ行う」が正解の選択肢として出題されます。
配線の種類と甲2試験での出題
甲2の「工事整備」科目では、加圧送水装置に関連する電気配線の知識が問われます。配線は「制御用配線」と「電源配線」の2種類に分けて理解することが重要です。
| 配線の種類 | 用途 | 耐熱・耐火 |
|---|---|---|
| 非常電源から制御盤への配線 | ポンプ用電源の供給 | 耐火配線(消防法施行規則第12条) |
| 制御盤からポンプ制御盤への配線 | 起動・停止信号の伝達 | 耐熱配線または耐火配線 |
| 感知器回路の配線 | 感知器からの信号伝達 | 耐熱配線 |
| 電磁弁の配線 | 一斉開放弁の開放操作 | 耐熱配線 |
重要なのは「非常電源からの配線は耐火配線」という点です。耐熱配線と耐火配線を混同しないよう注意が必要です。耐火配線は火災時にも一定時間(通常30分以上)機能を維持できる配線で、非常電源回路・非常用照明・消防設備の電源回路に使用します。耐熱配線はそれより低い耐熱性です。
非常電源の種類と容量要件
泡消火設備の加圧送水装置には非常電源の設置が義務付けられています(消防法施行規則第18条)。非常電源の種類と容量は試験の頻出事項です。
- 使用できる非常電源の種類:自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のいずれか
- 必要な容量:30分以上継続して加圧送水装置を作動できる容量
- 設置場所の要件:非常電源は火災時にも機能を維持できる場所に設置する。床面積が1,000m²以上の防火対象物では自家発電設備が原則(消防法施行令第12条の規定を準用)
「30分以上」という数字は、乙6(消火器)の「蓄電池の容量は10分以上」とよく混同されます。泡消火設備は大規模な設備のため30分以上の継続運転が求められます。
制御盤の表示灯と操作スイッチの種類
甲2の鑑別問題では、制御盤に設置される表示灯や操作スイッチの種類と役割が問われることがあります。主な表示灯・スイッチは次のとおりです。
- 電源灯(白):制御盤に電源が供給されていることを示す
- 起動表示灯(赤):ポンプが起動中であることを示す
- 故障表示灯(黄):ポンプや制御盤に異常があることを示す
- 手動起動スイッチ:感知器信号なしにポンプを手動で起動させるためのスイッチ
- 停止スイッチ:起動したポンプを手動で停止させるためのスイッチ
- 自動・手動切替スイッチ:自動起動モードと手動起動モードを切り替えるスイッチ
「自動・手動切替スイッチ」は、平常時は「自動」に設定しておき、点検時など誤作動を防ぎたい場合に「手動」に切り替えます。試験では「点検時に切り替えるべきスイッチの設定」として問われることがあります。
製図試験で問われる制御回路の系統図
甲2の製図試験(実技)では、加圧送水装置の制御回路を系統図に描き加える問題が出ることがあります。対応するために把握しておくべき接続関係は次のとおりです。
- 感知器 → 感知器回路 → 受信機(P型またはR型)→ 制御盤 → 電磁弁(一斉開放弁起動)
- 圧力スイッチ → 制御盤(またはポンプ制御盤)→ ポンプ電動機
- 非常電源 → ポンプ制御盤 → 電動機
- 制御盤 → 表示盤(防災センター等)
製図問題では「欠けている配線を書き加えよ」という形式で出題されることが多いです。各機器の接続関係を系統図として頭に入れておくことが解答のコツです。特に「感知器→制御盤→電磁弁」と「圧力スイッチ→制御盤→ポンプ」の2系統を混同しないよう注意が必要です。
甲種特有の「工事」視点での注意点
甲2試験では、乙2では問われない「工事」に関する問題が出題されます。制御回路の工事に関して特に注意が必要なのは次の点です。
- 工事着工届の提出:泡消火設備の工事を行う前に、消防署長に「着工届」を提出する義務があります(消防法第17条の14)。着工10日前までに提出します
- 工事完了後の設置届:工事完了後4日以内に「設置届」を消防署長に提出し、完了検査を受ける必要があります(消防法第17条の3の2)
- 甲種でなければできない工事:ポンプや制御盤を新設・移設する工事は甲種の資格者が行います。乙種は既設の整備・点検のみ可能です
「着工届は工事の何日前までか」という問題の正解は「10日前まで」です。なお完了検査申請(設置届)は「工事完了後4日以内」で、前後を逆に覚えないよう注意が必要です。
キャビテーションとは何か・発生条件と防止策
ポンプの吸水管に関連して、甲2試験では「キャビテーション」の知識も問われることがあります。キャビテーションとは配管内の水が局所的に気化して気泡が発生し、ポンプや配管を損傷させる現象です。
- 発生条件:吸水管の流速が大きすぎる・吸込揚程が大きすぎる・水温が高い・吸水管が細すぎる
- 症状:ポンプの振動・騒音・叩き音(水撃)・流量の低下・羽根車の腐食・孔食(ピッチング)
- 防止策:吸水管の流速を1.5m/s以下に保つ(流速基準の根拠のひとつ)・吸込揚程を小さくする・吸水管を太くする・フート弁の詰まりを取り除く
試験では「キャビテーションが発生しやすい条件はどれか」という問題として、流速・揚程・水温の中から正解を選ぶ形式が出ることがあります。
ポンプの定期点検項目と甲2試験での出題
甲種の試験では「工事整備」の範囲で、ポンプの点検・整備に関する知識も問われます。泡消火設備のポンプ点検で確認する主な項目は次のとおりです。
| 点検項目 | 確認内容 | 点検種別 |
|---|---|---|
| 外観確認 | 腐食・変形・損傷・漏水の有無 | 機器点検(6か月ごと) |
| 起動試験 | 自動起動・手動起動が正常に動作するか | 機器点検・総合点検 |
| 性能試験 | 設計放水量・吐出圧力が仕様値以上かどうか | 総合点検(1年ごと) |
| 非常電源切替確認 | 常用電源遮断時に非常電源でポンプが起動するか | 総合点検 |
| 軸受・パッキン | 振動・異音・漏水の有無。グリスの補給 | 機器点検 |
「機器点検は6か月ごと・総合点検は1年ごと」という点検サイクルは試験で頻出です。消防法施行令第36条に基づく点検サイクルとして覚えておいてください。
試験直前のポイントまとめ
- ポンプの自動起動:感知器信号ルートと圧力スイッチルートの2種類がある
- ポンプの停止:手動のみ(自動停止は原則禁止)
- 非常電源の容量:30分以上の継続運転が可能な容量
- 非常電源からの配線:耐火配線(耐熱配線よりも高規格)
- 着工届:工事着工10日前まで提出
- 設置届:工事完了後4日以内に提出して完了検査を受ける
「機器点検は6か月・総合点検は1年」というサイクルは試験で必ず問われます。消防法施行令第36条を根拠として覚えておいてください。ポンプ関連の問題は「制御回路・起動停止・非常電源・点検サイクル」の4テーマを押さえることで、試験本番の得点に直結します。
出典:消防法・消防法施行令・消防法施行規則(e-Gov法令検索)、消防試験研究センター


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