通所介護の認知症加算。算定要件と収入への影響。

通所介護の認知症加算は、認知症の診断を受けた利用者が一定割合以上在籍し、認知症介護に関する研修を修了したスタッフを配置することで算定できる加算です。令和6年4月改定後の単位数は60単位/日です(告示原文で確認推奨)。定員20名・稼働率80%の事業所で認知症加算対象者が20%の場合、月間約5〜6万円の収入増が見込めます。

認知症加算とは

通所介護の認知症加算は、認知症の症状がある利用者を多く受け入れ、認知症ケアに特化した体制を整えた事業所を評価する加算です。介護報酬の告示(平成12年厚生省告示第19号・最終改正:令和6年3月)に基づき、通所介護の報酬区分として設定されています。

認知症の高齢者は通所介護の利用者の中でも大きな割合を占めており、専門的なケアへの需要は高い状況が続いています。認知症加算は事業所が専門職の配置・研修体制を整備することへのインセンティブとして機能しています。

算定要件の詳細

認知症加算の算定要件は主に以下の2点です。

要件①:認知症の利用者が一定割合以上

認知症高齢者の日常生活自立度(ランクⅡ以上またはⅢ以上)に該当する利用者が、前年度の平均で一定割合以上いることが要件の一つです。

割合要件の具体的な数値(20%以上・50%以上など)は告示・通知で定められており、令和6年改定後の正確な要件は告示原文または都道府県の指定権者にご確認ください。

要件②:認知症介護に係る研修修了者の配置

認知症介護に係る専門的な研修(認知症介護実践者研修・認知症介護実践リーダー研修など)を修了した者を、一定数以上配置することが必要です。

研修修了者の配置要件(何名以上・常勤換算か否かなど)は告示・通知を確認してください。

対象となる「認知症」の範囲

認知症加算の対象となる利用者は、医師が認知症と診断した者です。日常生活自立度のランク区分を根拠として確認します。

認知症高齢者の日常生活自立度とは

認知症高齢者の日常生活自立度は、主治医等が判定する認知症の症状の程度を示すスケールで、ランクⅠ〜Mの6段階があります。

  • ランクⅠ:認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している状態
  • ランクⅡ:日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意すれば自立できる状態(Ⅱaは家庭外、Ⅱbは家庭内でも)
  • ランクⅢ:日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする状態(Ⅲaは日中中心、Ⅲbは夜間も)
  • ランクⅣ:日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする状態
  • ランクM:著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする状態

認知症加算では一般にランクⅡ以上またはⅢ以上を対象とする要件が設定されています。正確な対象ランクは告示・通知で確認してください。

認知症介護に係る研修の種類

認知症加算の算定要件に含まれる研修修了者とは、主に以下の研修を修了した者を指します。

認知症介護実践者研修

認知症の人の特性を理解し、適切なケアを実践できる介護職員を養成する研修です。都道府県が実施しており、受講期間はおよそ2週間程度(座学・実習含む)です。

認知症介護実践リーダー研修

実践者研修の修了者を対象に、事業所内で認知症ケアのリーダーとして後輩を指導できる人材を養成する研修です。

認知症介護指導者養成研修

実践リーダー研修の修了者を対象にした、さらに上位の研修です。認知症専門ケア加算(Ⅱ)の算定要件でも必要とされます。

認知症加算の算定に必要な研修区分(実践者研修で足りるか、リーダー研修が必要か)は告示・通知で確認してください。

届出の手続き

認知症加算を算定するには、都道府県(または指定権者)への加算届出が必要です。

届出に必要な主な書類は以下のとおりです。

  • 加算算定に係る体制等に関する届出書
  • 研修修了証明書(研修修了者の氏名・研修名・修了日が確認できるもの)
  • 前年度の認知症日常生活自立度が一定ランク以上の利用者の割合を示す書類

届出が受理された翌月(または翌々月)から算定可能です。年度初めに届出を行う事業所が多く、都道府県の処理が集中する時期があるため、余裕を持って準備しましょう。

収入への影響の試算

認知症加算の収入への影響を具体的に試算します。

仮定条件:定員20名、月の稼働日数22日、稼働率80%(1日の平均利用者数16名)、認知症加算対象者の割合20%(1日あたり平均3〜4名)

  • 1日の認知症加算対象利用者:16名 × 20% = 約3名
  • 月間の認知症加算算定日数:22日
  • 月間算定単位数:3名 × 60単位(参考値) × 22日 = 3,960単位
  • 月間加算収入(地域単価10.27円で計算):3,960 × 10.27円 ≒ 40,669円

対象者の割合が50%(1日8名)になれば月間加算収入は約10万円規模になります。単位数の正確な数値は最新の告示・サービスコード表でご確認ください。

よくある算定上の注意点

前年度の利用者割合の確認と記録

認知症加算は前年度の利用者の状態を根拠に算定要件を満たすかどうかを判断します。日常生活自立度のランクを日々の記録から集計できる体制を整えておくことが重要です。年度末に集計が困難にならないよう、月次で管理することをおすすめします。

研修修了者の退職と要件維持

算定要件を満たす研修修了者が退職した場合、要件を満たせなくなり加算を継続算定できなくなる可能性があります。複数のスタッフが研修を修了しておくことで、一人の退職で要件が失われるリスクを減らせます。

認知症加算と認知症専門ケア加算の区別

「認知症加算」と「認知症専門ケア加算」は別の加算です。認知症専門ケア加算は要件がより厳しく(専門的な研修修了者の追加配置等が必要)、単位数も異なります。混同しないよう注意が必要です。

日常生活自立度の根拠書類の保管

要件として設定された日常生活自立度ランクの根拠(主治医意見書・居宅サービス計画など)は事業所で管理しておく必要があります。運営指導で提示を求められることがあります。

FAQ

認知症の診断書がない利用者は対象外ですか

日常生活自立度の判定は主治医が行います。診断書の形式で保管するかどうかではなく、要介護認定の際に作成された主治医意見書や、担当ケアマネジャーが把握している情報を根拠として確認します。

認知症加算と認知症専門ケア加算は同時に算定できますか

告示上の規定を確認する必要がありますが、一般的に同じ利用者に対して両方を同時算定することは想定されていません。加算の上位区分(専門ケア加算)を算定する場合の取り扱いについては告示・通知を確認してください。

研修はいつ受講すればよいですか

認知症介護実践者研修は都道府県が年数回実施しています。受講申込みから修了まで数か月かかる場合があるため、加算取得を計画している場合は早めに研修スケジュールを確認し、申込みをすることをおすすめします。

前年度に要件を満たしていなかった場合、年度途中から算定できますか

加算の算定開始時期の要件については告示・通知を確認してください。一般的には届出が受理された翌月から算定が可能ですが、前年度の実績要件をいつ時点で確認するかは告示の記載によります。

まとめ

通所介護の認知症加算は、認知症の利用者が一定割合以上在籍し、専門研修修了者を配置することで算定できる加算です。利用者の割合が高い事業所ほど月間の加算収入が大きくなり、認知症ケアに力を入れる事業所にとってメリットの大きい加算です。

算定に向けては、①スタッフの研修受講計画、②利用者の日常生活自立度の記録・集計体制、③届出書類の準備という3つのステップを早めに進めることをおすすめします。

通所介護(デイサービス)開業収支シミュレーター

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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