就労継続支援B型の食事提供体制加算、令和9年3月廃止前に算定を整理する。
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就労継続支援B型の食事提供体制加算は、令和9年3月31日をもって廃止されることが決まっています。現時点でこの加算を算定している事業所にとっては、廃止後の収入減を見越した収支計画の見直しが必要です。開業を検討している事業所にとっては、運営当初から算定できる期間が限られているという前提で計画を立てる必要があります。
この記事では、食事提供体制加算の仕組み・算定要件・収入への影響、食事提供形態ごとのコスト比較、保健所許可が必要になる場合と不要な場合の違い、廃止後の収支計画の考え方を整理します。
食事提供体制加算は1日30単位・低所得の利用者に算定できる
食事提供体制加算は、就労継続支援B型の利用者に対して昼食を提供した場合に、一定の要件を満たした利用者について算定できる加算です。厚生労働省告示第523号(以下「告示」)に規定されており、1日あたり30単位が加算されます。
算定対象となる利用者は、低所得(市町村民税非課税世帯)に該当する方です。所得が一定以上ある利用者には算定できません。具体的な対象要件は告示の最新版および都道府県・国保連の解釈通知で確認してください。
なお、食事提供体制加算の単位数(30単位)は1日1回の昼食提供に対するものです。実際に昼食を提供した日に限り算定でき、利用者が欠席した日・食事の提供がなかった日には算定できません。
令和9年3月31日に廃止される経緯
食事提供体制加算は、障害福祉サービスを利用する低所得者の食費負担を軽減する観点から設けられた時限的な加算です。令和6年度の報酬改定において、令和9年3月31日をもって廃止されることが改めて確認されています。
廃止の背景には、障害者の所得保障・食費負担に関する制度全体の見直しが進んでいることがあります。廃止後の対応については、厚生労働省が別途示す方針・通知を確認する必要があります。令和9年4月以降は、この加算による収入が発生しなくなることを前提に収支計画を組み直す必要があります。
廃止前に算定できる期間と収入の試算
2026年10月時点から令和9年3月31日まで、算定できる残り期間はおよそ1年半です。現在この加算を算定している事業所、または開業後に算定を予定している事業所にとって、残り期間の収入総額を把握しておくことは収支計画の重要な前提になります。
収入の規模感を確認するために、定員・稼働率・対象利用者の割合ごとに1か月あたりの加算収入の目安を示します(地域加算なし・単価10.27円・月22日稼働の場合)。
| 定員 | 稼働率 | 低所得利用者の割合 | 月間加算収入の目安 |
|---|---|---|---|
| 20人 | 80% | 100%(全員対象と仮定) | 約10.8万円/月 |
| 20人 | 80% | 70% | 約7.6万円/月 |
| 20人 | 80% | 50% | 約5.4万円/月 |
| 30人 | 80% | 70% | 約11.4万円/月 |
計算式:30単位 × 利用者数(定員×稼働率×低所得割合) × 22日 × 10.27円
例:定員20人・稼働率80%・低所得100%の場合:30 × 16 × 22 × 10.27 ≒ 108,500円/月
東京都特別区(1級地・単価11.18円)の場合はこれより約9%増となります。
実際の事業所では利用者の所得状況が混在するため、全員が低所得に該当するわけではありません。担当のサービス等利用計画上の支給決定情報から対象者の割合を把握し、現実的な想定で試算することが重要です。
廃止後の収入減を収支計画に反映する
令和9年4月以降、食事提供体制加算による収入はゼロになります。現在この加算から月10万円前後の収入を得ている事業所では、廃止後に同額の収入が消えることになります。
収支計画上の対応として考えられる方針は次のとおりです。
稼働率・利用者数の改善で補う
基本報酬は稼働率・定員・工賃月額の区分によって決まります。食事提供体制加算の廃止による収入減を、稼働率の向上(欠席日数の減少・新規利用者の確保)や工賃区分の改善によって補うことが基本的なアプローチです。加算が廃止される令和9年4月に向けて、現在から稼働率の底上げに取り組んでおくことが収支改善につながります。
食事提供コストの見直し
食事提供体制加算が廃止された後も、昼食の提供自体をやめるかどうかは事業所の判断です。ただし、加算収入がなくなれば、食事提供に伴うコスト(食材費・委託費・人件費)の回収は利用者からの実費徴収のみになります。廃止後の食事提供の継続可否を、コスト・利用者ニーズの両面から検討しておくことが必要です。
他の加算の算定強化
食事提供体制加算の廃止と同時期に、他の加算(福祉専門職員配置等加算・送迎加算など)の算定要件を整備して収入の穴を埋める準備をしておくことも一つの方針です。加算の全体像については「就労継続支援B型の加算、種類と算定要件を整理する。」を参照してください。
食事提供形態は3種類、それぞれコストと許可要件が異なる
食事提供体制加算を算定するための昼食の提供方法は、事業所によって異なります。主な形態は「自前厨房での調理」「仕出し・弁当業者への委託」「宅配弁当の利用」の3種類です。それぞれのコスト・設備・保健所許可の要否を整理します。
自前厨房での調理
事業所内に厨房を設けて利用者向けの食事を調理する形態です。提供する食品の種類・調理の方法によって、保健所への営業許可申請(飲食店営業・給食施設の届出等)が必要になります。
厨房の設置には、シンク・作業台・冷蔵冷凍設備・換気設備などの設備投資が必要です。設備のグレード・規模によって異なりますが、数十万円〜数百万円規模の初期投資になることがあります。また、調理担当職員(または調理委託スタッフ)の人件費が毎月の固定費として発生します。
メリットは、食事内容・量・食材を事業所がコントロールできることです。利用者の食事制限(アレルギー・宗教上の制約)への対応も、自前調理では柔軟に対応できます。生産活動として農業・食品加工に取り組んでいる事業所では、自前の農産物・加工品を食事に活用できる場合があります。
仕出し・弁当業者への委託
外部の仕出し業者・弁当業者に食事を発注し、事業所で配膳する形態です。食事の調理は業者が行うため、事業所側に保健所の調理営業許可は原則として不要です(ただし、事業所内での加熱・分割・盛り付けの範囲によっては確認が必要な場合があります。保健所に事前確認することをお勧めします)。
1食あたりのコストは、業者・地域・食事内容によって異なります。業者への発注単価は1食あたり数百円〜1,000円程度の幅があり、発注数量・継続期間によって交渉の余地があります。利用者からは実費(食材費相当)を徴収することが認められており、事業所の実質的な負担額は「業者への支払い−利用者からの実費徴収額」になります。
宅配弁当の利用
コンビニ・宅配弁当サービスを利用して昼食を確保する形態です。仕出し委託と同様に、事業所での調理は不要であり、保健所の調理営業許可は原則として不要です。
発注の柔軟性が高く、利用者の欠席に応じた数量変更がしやすいことがメリットです。一方で、食事内容の統一感・アレルギー対応の選択肢・割引交渉の余地は仕出し委託より限られることがあります。
保健所の営業許可が必要になる場合とならない場合
食事の提供に関して保健所の許可が必要かどうかは、「調理を行う場所」と「調理の内容」によって変わります。
事業所内で食品を加熱・調理して提供する場合は、飲食店営業の許可が必要になることが一般的です。特定多数の人(利用者)を対象に継続して食事を提供する場合は、食品衛生法に基づく施設基準(シンクの数・手洗い設備・保管設備・換気等)を満たしたうえで許可を取得する必要があります。
一方、外部業者が調理・梱包した弁当を事業所内で配膳するだけ(加熱・分割・盛り付けを行わない)場合は、保健所の調理営業許可が不要な場合があります。
ただし、この区分の解釈は保健所によって判断が異なる場合があります。「弁当を受け取って配膳するだけだから許可は不要」と判断して進めた後に指摘を受けるケースを避けるためには、開業前に地域の保健所に「事業所で行う食事提供の具体的な内容」を示して確認を取ることが重要です。
食事提供のコストと加算収入の採算ライン
食事提供体制加算を算定しながら食事を提供する場合、加算収入と食事提供コストのバランスを把握しておく必要があります。
加算収入は1人1日あたり30単位 × 10.27円 ≒ 308円です(地域加算なし・低所得利用者の場合)。これが食事提供の「補助」として機能します。
食事提供コストは、形態によって異なります。
- 自前厨房の場合:食材費(1食あたり200〜400円程度)+調理担当の人件費(時給換算)+設備の減価償却費
- 外部委託の場合:業者への発注費用(1食あたり500〜800円程度)
利用者から実費(食材費相当)を徴収する場合、事業所の実質的な持ち出しは「業者費用 − 利用者からの実費徴収額」になります。加算収入308円でこの持ち出し分の一部を補填できるかどうかが採算ラインの判断基準です。
例として外部委託(1食600円・利用者実費200円徴収)の場合:
事業所の持ち出し = 600円 − 200円 = 400円
加算収入(低所得利用者の場合) = 308円
差額 = −92円/人/日
この場合、事業所は1人1日あたり92円の持ち出しになります。定員20人・稼働率80%・月22日・全員低所得と仮定すると月間持ち出しは約3.2万円です。食事提供によって稼働率が安定する効果(欠席の減少・利用者確保)を加味して、全体の収益への貢献を判断することが必要です。
収入試算・コスト構造の詳細な確認には収支シミュレーターをご活用ください。
開業前から食事提供体制加算を収支計画に反映する際の注意点
これから開業する事業所が食事提供体制加算を収支計画に組み込む際には、次の点を踏まえる必要があります。
廃止時期(令和9年3月31日)を前提にする
2026年10月に開業した場合、この加算を算定できる期間は最大でも2年5か月程度です。開業後の3〜5年の収支計画では、令和9年4月以降は食事提供体制加算をゼロとして試算しておくことが必要です。廃止後も食事提供を続ける場合はその分のコストを、廃止を機に食事提供をやめる場合はその影響を計画に反映してください。
対象利用者の割合を保守的に見積もる
食事提供体制加算は低所得の利用者にのみ算定できます。開業当初は利用者の所得状況が不明であるため、全員が算定対象になるという前提は過大です。保守的な試算では対象割合を50〜70%に設定しておくことが、実態に近い見込みになることが多いです。
食事提供を始める前に保健所・指定権者に確認する
食事提供の開始前に、保健所(営業許可の要否)と指定権者(加算の算定要件・記録の方法)の両方に確認しておくことで、開業後の手戻りを防ぐことができます。
令和9年4月以降に向けた収支の組み直し方
食事提供体制加算の廃止が近づく中で、現在この加算を算定している事業所は収支への影響を具体的に把握し、対応策を準備しておく必要があります。
収支への影響を把握するステップは次のとおりです。
ステップ1:現在の加算収入を算出する
直近3か月の食事提供体制加算による収入の平均を計算します。月間の収入規模が分かれば、廃止後の収入減の数字が明確になります。
ステップ2:廃止後の収支シナリオを試算する
加算収入がゼロになった状態で、現在の稼働率・工賃区分・他の加算の算定状況のままだと月次収支がどうなるかを試算します。赤字に転落する場合は、稼働率・人員配置・コスト構造のどこに改善余地があるかを検討します。
ステップ3:令和9年4月までに取り組む対策を決める
稼働率の向上・新規利用者の確保・他の加算の算定強化・固定費の見直しなど、廃止前に取り組める対策の優先順位を決めます。食事提供の継続可否も、廃止後のコスト負担を踏まえて改めて判断することが必要です。
収支シミュレーターのPro版では、加算の有無・稼働率・定員の変動ごとに複数のシナリオを試算できます。食事提供体制加算の廃止後を想定したシナリオを現時点から確認しておくことで、令和9年4月に向けた準備をより具体的に進められます。
まとめ
就労継続支援B型の食事提供体制加算は告示第523号に規定された1日30単位の加算で、低所得の利用者に昼食を提供した日に算定できます。令和9年3月31日をもって廃止されることが決まっており、算定できる残り期間はおよそ1年半です。
定員20人・稼働率80%・低所得利用者が全員の場合、月間の加算収入は約10万円前後です。廃止後はこの収入がゼロになるため、収支計画では令和9年4月以降の加算収入をゼロとして試算しておく必要があります。
食事提供の形態は自前厨房・外部委託・宅配弁当の3種類があり、保健所の営業許可が必要かどうかは提供形態と調理内容によって異なります。開業前に保健所・指定権者への事前確認を行うことで、手続きの漏れを防ぐことができます。廃止後の収支への影響を収支シミュレーターで確認しながら、令和9年4月に向けた準備を進めることをお勧めします。
食事提供体制加算の廃止後を含むシナリオ試算はこちらから。
▶ 就労継続支援B型 開業収支シミュレーター
出典:厚生労働省告示第523号(指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準)別表第14。指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関する通知(厚生労働省)。作成日:2026年10月。

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