小規模多機能型居宅介護の加算。取得できる主な加算と収入への影響。

小規模多機能型居宅介護の加算は何があるか 介護

小規模多機能型居宅介護で算定できる加算には、認知症加算・看護職員配置加算・訪問体制強化加算・総合マネジメント体制強化加算・サービス提供体制強化加算・処遇改善加算などがあります。それぞれの単位数と要件は、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)に定められています。加算の種類や体制整備の状況によって、月あたりの収入が数万円から十数万円単位で変わります。この記事では、算定できる主な加算の種類・単位数・要件を整理し、具体的な試算例を示します。

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主な加算を種類ごとに整理する

小規模多機能型居宅介護の加算は、算定の単位(対象者1名ごとか、事業所全体か)と目的によって大きく4つに分けられます。

  • 利用者の状態・状況に応じて算定するもの:認知症加算、初期加算、退院時共同指導加算
  • 職員の配置体制に応じて算定するもの:看護職員配置加算、訪問体制強化加算、サービス提供体制強化加算
  • 運営管理体制に応じて算定するもの:総合マネジメント体制強化加算
  • 職員の賃金改善として算定するもの:処遇改善加算

以下の表に、主な加算の単位数と算定単位を一覧でまとめます。

小規模多機能型居宅介護の主な加算一覧(令和6年度改定後)
加算の種類 単位数 算定単位
認知症加算Ⅰ 920単位/月 対象者1名につき
認知症加算Ⅱ 848単位/月 対象者1名につき
初期加算 30単位/日 登録後30日以内の利用者1名につき
退院時共同指導加算 600単位/回 対象者1名につき
看護職員配置加算Ⅰ 1,171単位/月 事業所全体
看護職員配置加算Ⅱ 950単位/月 事業所全体
看護職員配置加算Ⅲ 800単位/月 事業所全体
訪問体制強化加算 1,000単位/月 事業所全体
総合マネジメント体制強化加算Ⅰ 1,000単位/月 事業所全体
総合マネジメント体制強化加算Ⅱ 800単位/月 事業所全体
サービス提供体制強化加算Ⅰ 750単位/月 事業所全体
サービス提供体制強化加算Ⅱ 640単位/月 事業所全体
サービス提供体制強化加算Ⅲ 350単位/月 事業所全体
処遇改善加算Ⅰ 14.9% 基本報酬等合計に乗じる
処遇改善加算Ⅱ 14.6% 基本報酬等合計に乗じる
処遇改善加算Ⅲ 13.4% 基本報酬等合計に乗じる
処遇改善加算Ⅳ 10.6% 基本報酬等合計に乗じる

出典:指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)・令和6年度介護報酬改定対応版

以下では、事業所全体として算定するものと、対象者ごとに算定するものに分けて要件を説明します。

認知症加算は対象者1名ごとに算定する

認知症加算は、認知症と診断された利用者(または認知症に準ずる状態にある者)を受け入れ、専門的な対応ができる体制を整えた場合に算定できます。他の多くの事業所全体加算と異なり、対象となる利用者1名ごとに月額単位で算定する点が特徴です。

認知症加算の区分
区分 単位数(月・対象者1名につき)
認知症加算Ⅰ 920単位
認知症加算Ⅱ 848単位

認知症加算Ⅰを算定するには、認知症介護実践リーダー研修の修了者や認知症ケア専門士などの資格・研修を修了した職員が一定数以上配置されていることが条件の一つです。認知症加算Ⅱは、認知症介護基礎研修修了者を含む体制で認知症ケアを提供している場合に算定できます。要件の細部は都道府県等の指定権者によって運用が異なることがあるため、事前に確認することをおすすめします。

計算例として、認知症加算Ⅰの対象者が月間4名いる場合を示します。

  • 920単位 × 4名 × 10.00円(その他の地域) = 36,800円/月
  • 年間では、36,800円 × 12か月 = 441,600円

認知症の利用者を多く受け入れるほど収入が増える仕組みです。小規模多機能は「顔なじみの職員」が通い・泊まり・訪問をワンセットで担うため、認知症の方の生活リズムを安定させやすい特性があります。認知症加算はその体制への評価として設けられています。

初期加算と退院時共同指導加算は利用開始・入院後の状況に応じて算定する

初期加算と退院時共同指導加算は、いずれも利用者の状態・状況に応じて算定するもので、事業所全体ではなく対象者1名ごとに算定します。

初期加算は、利用登録後30日以内の期間中に算定できます。登録から30日間にわたって1日30単位(単価10.00円の地域であれば1日300円)が加算され、最大30日間の算定が可能です。新規登録者の初期対応(アセスメント・ケアプランの作成・生活状況の把握など)にかかる労力を評価したものです。退院後に新たに登録する方も対象になります。

退院時共同指導加算は、利用者が病院・診療所に入院している間に、退院後の生活を見据えて医療関係者と共同指導を行った場合に算定できます。1回600単位(単価10.00円の地域であれば6,000円)で、入院中1回のみ算定できます。要件として、医師・看護師などの医療関係者と事業所の職員が共同して、在宅での生活に必要な指導を行うことが必要です。

出典:指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)

看護職員配置加算は職員の体制によって3段階に分かれる

小規模多機能型居宅介護では、訪問看護との連携や看護職員の配置によって医療的ニーズに対応できる体制が重要視されます。看護職員配置加算は、基準を上回る看護職員の配置体制を持つ事業所が算定できるもので、3つの区分があります。

看護職員配置加算の区分
区分 単位数(月・事業所全体) 単価10.00円の場合
看護職員配置加算Ⅰ 1,171単位 11,710円/月
看護職員配置加算Ⅱ 950単位 9,500円/月
看護職員配置加算Ⅲ 800単位 8,000円/月

区分が高いほど看護職員の配置要件が厳しくなります。看護師が常勤で配置されているか、訪問看護との密な連携体制があるかなどが評価されます。加算Ⅰは、常勤の看護師が専従で配置されるなど、医療対応の充実した体制が求められます。

単価が10.00円の地域では加算Ⅰで月11,710円(年間140,520円)となります。看護師1名の人件費全額を賄える金額ではありませんが、他の加算と組み合わせて算定することで全体の収入構成が変わります。

要介護度の高い利用者や医療依存度の高い利用者の受け入れを進めたい事業所にとっては、看護職員配置加算の取得が体制の整備・維持を後押しする財源の一つになります。

訪問体制強化加算は月1,000単位が事業所全体に加算される

訪問体制強化加算は、登録者への訪問サービスの機能を強化するための人員を確保している事業所が算定できます。加算は区分なしで月1,000単位(事業所全体)です。単価が10.00円の地域であれば月10,000円(年間120,000円)の収入増になります。

算定要件の一つとして、訪問サービスを担当する従業者を専従で配置するなど、訪問の体制を強化していることが求められます。小規模多機能の「通い・泊まり・訪問」のうち、特に訪問の部分を手厚くする体制への加算です。

登録者数が多くなっても、訪問対応の頻度や対象者数に関係なく事業所全体で月1,000単位が固定で算定されます。訪問体制を整えたうえで算定要件を満たしているかを確認しておくことが大切です。

総合マネジメント体制強化加算は計画の見直し体制が要件

小規模多機能では、ケアマネジャーが「通い・泊まり・訪問」を一体的に組み合わせた個別サービス計画を作成します。利用者の心身状態は日々変化するため、計画を定期的に見直し、関係者が集まって情報共有するマネジメント体制が重要です。総合マネジメント体制強化加算は、その体制の質に応じた評価です。

総合マネジメント体制強化加算の区分
区分 単位数(月・事業所全体) 単価10.00円の場合
総合マネジメント体制強化加算Ⅰ 1,000単位 10,000円/月
総合マネジメント体制強化加算Ⅱ 800単位 8,000円/月

加算Ⅰはサービス担当者会議などを定期的に開催し、利用者の状態に応じて計画を随時見直す体制があることが要件です。加算Ⅱは、それに準ずる体制で算定できます。

小規模多機能はケアマネジメントの機能を内包したサービスです。外部の居宅介護支援事業所に依頼するのではなく、事業所内のケアマネジャーが計画作成を担います。そのため、計画の質と見直し頻度が事業所の機能を直接左右します。加算の算定要件を整えることは、マネジメント体制の強化自体にもつながります。

加算Ⅰを取得した場合、月10,000円(年間120,000円)が基本報酬に上乗せされます。

サービス提供体制強化加算は職員の定着率・常勤割合が要件

サービス提供体制強化加算は、職員の勤続年数・常勤割合・介護福祉士の配置割合などの体制を整えた事業所が算定できます。3つの区分があり、要件の厳しさに応じて単位数が変わります。

サービス提供体制強化加算の区分
区分 単位数(月・事業所全体) 単価10.00円の場合
サービス提供体制強化加算Ⅰ 750単位 7,500円/月
サービス提供体制強化加算Ⅱ 640単位 6,400円/月
サービス提供体制強化加算Ⅲ 350単位 3,500円/月

加算Ⅰを算定するには、介護職員全体に占める介護福祉士の割合が60%以上である、または勤続10年以上の介護福祉士が25%以上在籍しているなどの要件があります(令和6年度改定後)。加算Ⅱはこれに次ぐ基準、加算Ⅲはより緩やかな基準での算定が可能です。

開業初期は介護福祉士の割合や勤続年数の要件を満たすことが難しいため、まず加算Ⅲから算定を始め、職員の育成・定着を進めながらⅡ、Ⅰへ移行していく事業所が多くあります。

職員の定着率を上げることが加算取得に直結するため、サービス提供体制強化加算の要件を意識することは採用・育成の方針にも影響します。加算Ⅰを取得し月7,500円(年間90,000円)を算定し続けることは、安定した職員体制があって初めて実現します。

処遇改善加算は月の報酬合計に率をかける

処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算)は、介護職員の賃金改善を目的とした加算です。基本報酬に他の加算(処遇改善加算を除く)を合算した月額に、一定の率をかけて算定します。

小規模多機能型居宅介護は、指定地域密着型サービスの中でも人件費割合70%の区分に分類されます。この割合に基づいて加算率が設定されており、通所介護(人件費割合55%)より高い率になっています。

処遇改善加算の区分と加算率(令和6年6月以降・小規模多機能型居宅介護)
区分 加算率
処遇改善加算Ⅰ 14.9%
処遇改善加算Ⅱ 14.6%
処遇改善加算Ⅲ 13.4%
処遇改善加算Ⅳ 10.6%

出典:指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)・令和6年度介護報酬改定対応版

重要な点として、処遇改善加算で算定した金額は、事業所の収益(利益)として残るものではありません。算定した加算額はすべて介護職員の賃金改善に充てる義務があります。区分Ⅰ・Ⅱでは加算額の3分の2以上を月額賃金(基本給・毎月支払われる手当)として継続的に支払う必要があります。

算定できる区分が高いほど職員への賃金改善の原資が大きくなりますが、その分の賃金支払いも増えます。計算例として、月の基本報酬と他の加算の合計が200万円の事業所で算定できる加算額を比べます。

  • 処遇改善加算Ⅰ(14.9%):200万円 × 14.9% = 298,000円(全額を職員賃金改善に充てる義務あり)
  • 処遇改善加算Ⅳ(10.6%):200万円 × 10.6% = 212,000円(全額を職員賃金改善に充てる義務あり)
  • 加算Ⅰと加算Ⅳの差:86,000円/月(年間約103万円)の賃金改善原資の差

取得できる区分は、職員へのキャリアパス要件の整備状況・月額賃金改善の仕組み・職場環境等の取り組みなど複数の要件の組み合わせによって決まります。要件を満たした書面(計画書)を都道府県等の指定権者に届け出てから算定が始まり、年度終了後2か月以内に実績報告書の提出も必要です。

算定した加算額はすべて職員の賃金改善に充てる義務があります。区分Ⅰ・Ⅱでは加算額の3分の2以上を月額賃金(基本給・毎月支払われる手当)として継続的に支払う必要があります。賃金改善を後から取りやめることは要件違反になるため、開業前から無理のない賃金設計と加算水準の見極めが重要です。

複数の加算を組み合わせると月収入はどう変わるか

加算の効果を具体的に把握するために、登録者15名(要介護3が8名・要介護1が5名・要支援2が2名)の事業所で試算します。地域区分はその他(1単位=10.00円)とします。

基本報酬の月額(基準値)

基本報酬の試算(登録者15名・その他地域)
単位数の出典:指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)・令和6年度改定版
要介護度 月額単位 人数 小計
要介護3 22,359単位 8名 1,788,720円
要介護1 10,458単位 5名 522,900円
要支援2 6,972単位 2名 139,440円
基本報酬合計 2,451,060円

加算なし(処遇改善加算Ⅰのみ)の場合

  • 処遇改善加算Ⅰ(14.9%):2,451,060 × 14.9% = 365,208円
  • 月収入合計:2,816,268円

主要加算を取得した場合(処遇改善加算Ⅰ含む)

加算取得後の月収入試算
加算の種類 加算額(月)
認知症加算Ⅰ(対象者4名) 36,800円
看護職員配置加算Ⅱ(事業所全体) 9,500円
訪問体制強化加算(事業所全体) 10,000円
総合マネジメント体制強化加算Ⅱ(事業所全体) 8,000円
サービス提供体制強化加算Ⅱ(事業所全体) 6,400円
加算小計(処遇改善除く) 70,700円
基本報酬+加算計 2,521,760円
処遇改善加算Ⅰ(14.9%) 375,742円
月収入合計 2,897,502円

加算なしの場合(2,816,268円)と比べると、差額は81,234円/月(年間約975,000円)です。

同じ登録者構成・同じ地域区分であっても、加算の取得状況によって月収入が約8万円、年間では約100万円の差が生じます。利用者数を増やすことと同様に、算定できる加算を一つひとつ取得していくことが収益の安定に直結します。

加算Ⅰへの移行でさらに収入が増える

上の試算では、看護職員配置加算と総合マネジメント体制強化加算をⅡ(中位)で計算しています。これをⅠ(上位)に移行すると以下の変化があります。

  • 看護職員配置加算Ⅱ(9,500円)→ Ⅰ(11,710円):差額 2,210円/月
  • 総合マネジメント体制強化加算Ⅱ(8,000円)→ Ⅰ(10,000円):差額 2,000円/月
  • サービス提供体制強化加算Ⅱ(6,400円)→ Ⅰ(7,500円):差額 1,100円/月
  • 合計差額(処遇改善前):5,310円/月

金額だけを見ると小さく見えるかもしれませんが、体制強化加算は職員が定着・成長するほど上位区分に移行できる仕組みです。開業から数年かけて職員を育て、加算区分を段階的に引き上げていくことが、長期的な収益改善につながります。

まとめ

  • 小規模多機能型居宅介護の加算には、利用者の状態に応じて算定するもの(認知症加算・初期加算・退院時共同指導加算)と事業所の体制に応じて算定するもの(看護職員配置加算・訪問体制強化加算・総合マネジメント体制強化加算・サービス提供体制強化加算)がある。
  • 認知症加算は対象利用者1名ごとに月920単位(Ⅰ)または848単位(Ⅱ)を算定する。認知症の利用者が多いほど収入増の効果が大きい。
  • 看護職員配置加算(最大1,171単位)・訪問体制強化加算(1,000単位)・総合マネジメント体制強化加算(最大1,000単位)・サービス提供体制強化加算(最大750単位)はいずれも事業所全体で月単位で算定される。
  • 処遇改善加算は月の報酬合計に14.9%(加算Ⅰ)〜10.6%(加算Ⅳ)を乗じて算定する。加算した金額はすべて職員の賃金改善に充てる義務がある。
  • 複数の加算を組み合わせると、基本報酬のみの場合と比べて月8万円前後(年間約100万円)の収入差が生じる場合がある(登録者15名・その他地域での試算)。
  • 各加算の要件(職員の資格・配置・体制の書面整備)は都道府県等の指定権者に確認のうえ取得を進めること。

出典:指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)・令和6年度介護報酬改定対応版

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業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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