生活介護の感染症対策、研修・訓練・委員会の3つを整理する。

生活介護の感染症対策 研修・訓練・委員会の3つを整理する 生活介護

生活介護の事業所には、感染症について研修・訓練・委員会の3つの義務があります。3つのうち回数が最も多いのが感染症の義務であり、訓練と研修が年2回以上、委員会はおおむね3か月に1回以上と解釈通知で定められています。

この記事では、義務の根拠・頻度・具体的な進め方を、基準省令と国の解釈通知をもとに整理します。

感染症の義務は3つある

生活介護の基準省令は、感染症について次の3つを義務としています。

  1. 感染症の予防及びまん延の防止のための研修を定期的に実施すること
  2. 感染症の予防及びまん延の防止のための訓練を定期的に実施すること
  3. 感染症の予防及びまん延の防止のための体制を整備すること(委員会設置・指針整備・担当者配置を含む)

これらは基準省令の第90条(生活介護の章に直接規定)に定めがあります。他サービスを準用しているのではなく、生活介護自身の条文として置かれています。

根拠条文と解釈通知

基準省令 第90条は、次のように定めています(一部抜粋)。

  • 感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)をおおむね3月に1回以上開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること
  • 感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること
  • 当該指定生活介護事業所において、従業者に対し、感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること

「定期的に」の具体的な頻度は、国の解釈通知(障発第1206001号・平成18年12月6日付け・現行版は改正を含む)で次のように示されています。

義務 頻度(解釈通知)
感染症研修 年2回以上(新規採用時には必ず実施)
感染症訓練 年2回以上
感染対策委員会 おおむね3か月に1回以上(年4回以上)

研修は年2回以上、新規採用時にも必ず行う

感染症研修の頻度は、虐待防止・BCP・身体拘束が「年1回以上」であるのに対して、年2回以上と多くなっています。これは、感染症が発生した際に職員全員が迅速かつ正確に対応できる状態を維持するために、繰り返し確認する機会が必要とされているためです。

解釈通知は、研修について次のように示しています。

定期的な研修(年2回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず感染症対策に関する研修を実施することが重要である。

(出典:厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」障発第1206001号)

定期研修を年2回実施しても、年度途中に入職した職員が次の定期研修まで数か月間、感染症の知識なしに業務に就く状態が生じます。新規採用時の研修はそれを防ぐための措置です。

訓練も年2回以上

感染症の訓練は、研修と同じく年2回以上とされています。訓練は、研修で学んだ知識を実際の動きに落とし込むための演習です。知識として持っていても、実際に動いてみると手順が曖昧だった・防護具の装着に時間がかかった・連絡先を確認していなかった、といった課題が見えてきます。

訓練で想定するシナリオとしては、次のようなものが考えられます。

  • 利用者に感染症の疑いが発生した場合の初動(個室対応・防護具着用・行政への連絡)
  • 感染者数が複数名に広がった場合の対応(サービス継続の判断・家族への連絡・事業所内動線の分離)
  • インフルエンザシーズンの集団発生を想定した訓練(発症者の隔離・職員の欠員対応)

訓練の記録には、実施日・参加者・想定シナリオ・実施内容・課題・改善策を残しておくことが必要です。

感染対策委員会はおおむね3か月に1回以上

感染対策委員会の開催頻度は「おおむね3か月に1回以上」であり、義務のテーマの中で最も高い頻度です。「おおむね」という表現は、厳密に3か月ごとでなくても前後の事情があれば構わないという意味ですが、年4回程度の実績が求められます。

委員会の開催方法は、オンライン(テレビ電話等)も認められています(条文に明記)。

委員会の議題としては、次のような事項が考えられます。

  • 感染症の発生状況の報告(施設内・地域全体)
  • 手洗い・消毒の実施状況の確認
  • 訓練の実施計画・結果の報告
  • 指針・マニュアルの見直し
  • 感染が拡大した場合の対応方針の確認

委員会の都度、議事録を作成し、内容を従業者全員に周知することが義務の趣旨に含まれています。

感染症指針の整備

研修・訓練・委員会に加え、感染症の予防及びまん延防止のための指針を整備することも義務です(第90条)。指針は一度作成して終わりではなく、年1回以上の定期的な見直しが求められています(解釈通知)。

指針に盛り込む内容としては、次のようなものが標準的です。

  • 感染症対策の基本的な考え方
  • 感染予防策(手洗い・換気・消毒の手順)
  • 感染者が発生した場合の対応手順
  • 行政・医療機関への連絡体制
  • 職員の健康管理(発症時の出勤停止基準等)

生活介護での感染症リスクの特徴

生活介護の利用者は、医療的ケアが必要な方・免疫機能に課題のある方・複数の基礎疾患をお持ちの方が含まれる場合があります。感染症が発生した際の重症化リスクが高い集団が一か所に集まる場という特性があります。

また、送迎の車両では複数の利用者と職員が密閉空間で長時間接触します。施設外での感染を施設内に持ち込まない仕組みとして、送迎時・来所時の健康確認を研修の中で確認しておくことが有効です。

記録と保存期間

感染症に関して作成した記録は、基準省令の規定(居宅介護の第34条第2項・第125条で準用)に基づき、完結の日から5年間保存する必要があります。保存が必要な主な書類は次のとおりです。

  • 感染症研修の実施記録(日時・参加者・内容)
  • 感染症訓練の実施記録
  • 感染対策委員会の議事録
  • 感染者が発生した場合の対応記録(発生した場合)

まとめ

生活介護の感染症に関する義務は、研修(年2回以上)・訓練(年2回以上)・委員会(おおむね3か月に1回以上)・指針整備の4つです。5テーマの義務の中で最も頻度が高く、計画的に年間スケジュールに組み込む必要があります。

新規採用時の研修も解釈通知で義務とされており、年2回の定期研修と合わせて管理する体制が必要です。

義務のテーマ・回数・根拠の全体像は、別の記事(生活介護の研修は、何が義務で、年に何回か。基準と解釈通知で確かめた一覧。)で確認できます。


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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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