消防設備士 甲種第3類の試験、何が出てどう合格するか。

消防設備士 甲種第3類(以下、甲3)は、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の工事・整備・点検を行う資格です。乙種第3類(乙3)が整備と点検だけできるのに対し、甲3は工事もできます。試験は筆記45問・鑑別5問・製図2問の構成で、甲種の中でも製図問題の対策が合否を分けます。受験には学歴や保有資格などの受験資格が必要です。

この記事では、甲3の試験の構成・甲3と乙3の違い・製図問題の概要・受験資格・3種類の設備の特徴・合格するための優先順位を整理します。

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甲3と乙3の違い。工事できる資格と整備だけの資格

甲種と乙種の最大の違いは「工事ができるかどうか」です。甲3を取ると、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の新設工事から整備・点検まで一貫して担当できます。

項目 甲種第3類(甲3) 乙種第3類(乙3)
できること 工事・整備・点検 整備・点検のみ
受験資格 あり(学歴・資格・実務経験のいずれか) なし(誰でも受験可)
筆記問題数 45問 30問
実技 鑑別5問+製図2問 鑑別5問のみ
試験時間 3時間15分 1時間45分
合格率の目安 25〜35%前後 30〜40%前後

甲3の試験時間は3時間15分と長く、製図問題の2問がある分、試験範囲が広くなります。乙3が「整備・点検業者向け」の資格とすると、甲3は「工事から管理まで担う技術者向け」の資格です。現場で施工管理を担当する立場を目指すなら甲3が必要です。

甲3の試験の構成。45問+製図2問の内訳

甲3の試験は筆記と実技に分かれます。免除がない場合の問題数と合格基準は次のとおりです。

区分 科目 問題数 出題形式 合格基準
筆記 消防関係法令(共通) 6問 四択 科目ごとに40%以上
消防関係法令(類別) 4問 四択 科目ごとに40%以上
基礎的知識(機械) 10問 四択 科目ごとに40%以上
構造・機能及び工事整備(機械15問+規格10問) 25問 四択 科目ごとに40%以上
実技 鑑別 5問 記述式 60%以上
製図 2問 記述式(系統図・平面図)

筆記45問は4つの科目に分かれており、どの科目も40%未満だと不合格になります。構造・機能及び工事整備は25問と最も多く、設備の構造・計算・工事手順まで問われます。基礎的知識は乙3の5問から10問に増えており、高圧ガス関連の力学・流体・材料の問題が出ます。

実技は鑑別5問と製図2問の合計7問で、鑑別と製図を合わせて60%以上が合格基準です(科目別ではなく合算で判定します)。

製図問題とは何か。系統図と平面図の2種類が出る

甲3の製図問題は、乙3にない甲種固有の出題です。与えられた条件をもとに、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の配管系統図や平面図を書く問題が出ます。

製図問題では、主に以下の内容が問われます。

  • 防護区画の体積と消火薬剤量の計算(全域放出方式)
  • 噴射ヘッドの個数と配置(設置間隔・防護半径の条件を満たす配置)
  • 配管の系統と起動装置・選択弁・集合管の接続
  • 誤りのある系統図を見て不備を指摘する問題

製図問題は暗記だけでは解けません。消火薬剤量の計算式を理解したうえで、防護区画の条件に当てはめる演習が必要です。乙3の勉強だけでは製図は対策できないため、甲3を受験する場合は製図の参考書を別途用意することをおすすめします。

甲3の受験資格。学歴・資格・実務経験のどれかが必要

甲種消防設備士試験には受験資格があります。消防法施行令第36条の2に定められており、次のいずれかを満たす必要があります。

  • 大学・短大・高専・専門学校で機械・電気・工業化学・土木・建築などの学科を修了または卒業
  • 乙種消防設備士免状を取得後、2年以上の実務経験
  • 管工事施工管理技士(1級・2級)の資格を持つ
  • 電気工事士(第1種・第2種)の免状を持つ
  • 電気主任技術者(第1種〜第3種)の免状を持つ
  • 技術士(機械・電気電子・化学・建設・農業・衛生工学部門)の資格を持つ
  • 給水装置工事主任技術者免状を持つ

実務経験を使う場合、2年以上の期間を証明する書類が必要です。乙種消防設備士免状を先に取得してから甲3を目指す方法は、受験資格を確実に得られるルートです。消防設備士以外の資格(電気工事士・管工事施工管理技士など)でも受験資格になるため、すでに持っている資格を確認してみてください。

詳細な受験資格の条件と証明書類については、消防試験研究センターの受験案内(最新版)で確認してください。

甲3が扱う3種類の消火設備の特徴

甲3は、消火の仕組みが異なる3種類の設備を対象にしています。試験では3種類の違いが問われます。

設備の種類 主な消火薬剤 消火の仕組み 設置される場所の例
不活性ガス消火設備 CO2・窒素・IG-55・IG-541 酸素濃度を下げる窒息消火 電気室・通信機器室・駐車場・美術館
ハロゲン化物消火設備 HFC-227ea・HFC-23・FK-5-1-12 燃焼の連鎖反応を断つ抑制消火(窒息も補助) コンピューター室・通信機器室・航空機格納庫
粉末消火設備 第1〜第4種粉末薬剤 燃焼の連鎖反応を断つ抑制消火 駐車場・飛行機格納庫・工場

3種類に共通するのは「水を使わないため水損がなく、電気設備や精密機器のある場所に適する」という点です。CO2消火設備は不導電性で電気設備に使えますが、放射後に人がいる空間では窒息の危険があるため、安全装置と退避の手順が消防法施行規則で定められています。

粉末消火設備は水損もなく安価ですが、消火後の粉末の清掃が必要で、精密機器がある環境では使いにくい場合があります。ハロゲン化物消火設備は水損がなく残留物が少ないため、精密機器室に向いています。

不活性ガス消火薬剤の種類と特徴

不活性ガス消火設備で使われる主なガスの特徴は次のとおりです。CO2だけが液化貯蔵で、他の3種は圧縮ガス貯蔵という点が試験で問われます。

ガスの種類 主成分 貯蔵方法 主な特徴
CO2(二酸化炭素) 液化CO2 液化ガス 比重が空気の約1.5倍。低所に滞留しやすい。放射後に結露・冷却あり。人体への窒息リスクあり
窒素 N2 圧縮ガス GWPゼロ。毒性・腐食性なし。高圧で貯蔵するため容器本数が増えやすい
IG-55 窒素50%・アルゴン50% 圧縮ガス GWPゼロ。大気成分のみで構成
IG-541(イナージェン) 窒素52%・アルゴン40%・CO2 8% 圧縮ガス GWPゼロ。少量のCO2が人体の呼吸反射を維持する効果があるとされる

粉末消火薬剤の4種類。適応火災の違いで覚える

粉末消火薬剤は第1種から第4種まで4種類あります。第3種だけがA火災(普通火災)に対応する点が試験でよく問われます。

種別 主成分 化学式 適応火災
第1種粉末 炭酸水素ナトリウム NaHCO₃ B火災・C火災
第2種粉末 炭酸水素カリウム KHCO₃ B火災・C火災
第3種粉末(ABC粉末) リン酸二水素アンモニウム NH₄H₂PO₄ A火災・B火災・C火災
第4種粉末 炭酸水素カリウムと尿素の反応物 ― B火災・C火災

「第3種粉末だけがABC全対応」と覚えると区別しやすくなります。第4種は第2種より消火性能が高いとされますが、適応火災はB・C火災のみです。

甲3の合格のための優先順位

甲3の試験範囲は広く、すべてを均等に勉強するのは効率がよくありません。問題数と難易度から優先順位をつけて学習するのが合格への近道です。

科目・分野 問題数 優先度 理由
構造・機能及び工事整備(機械) 15問 高 問題数が最多。設備の構造・工事手順・計算式を理解する必要がある
構造・機能及び工事整備(規格) 10問 高 充填比・設計濃度・薬剤量など数値問題が多い。正確な数値を覚える
製図(鑑別と合算) 2問 高 甲3固有。計算と作図の両方が必要で、対策なしでは得点できない
消防関係法令(共通) 6問 中 他の類と共通。甲1・甲4を持っている場合は科目免除になる
基礎的知識(機械) 10問 中 力学・流体・高圧ガスの計算。理系出身者は得点源にしやすい
消防関係法令(類別) 4問 中 設置対象・防護区画・起動装置の基準。条文の内容を理解して覚える
鑑別 5問 中 写真・図から機器を識別する。機器の名称と外観を一致させて覚える

構造・機能及び工事整備の25問(機械15問+規格10問)が全体の55%以上を占めます。まずここを固めることが合格への近道です。製図は計算式を理解してから問題演習を重ねる必要があるため、早めに取り組むことをおすすめします。法令共通は他の類と同じ内容なので、甲種の他の類を持っている場合は科目免除を活用できます。

甲3の問題集と試験対策ツール

当サイトの問題集では、消防法・消防法施行令・消防法施行規則・各消火薬剤の規格省令をもとに生成した問題を収録しています。筆記264問(55テーマ)は無料で解けます。鑑別87問・AI無限生成・本番模試(45問+鑑別5問)は買い切り980円で利用できます。

問題の種別は次のとおりです。

  • 無料:筆記の確認済み問題全264問・数字ドリル・基本の確認問題
  • 有料(980円・買い切り):鑑別87問・AI無限生成・本番模試

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出典:消防法(昭和23年法律第186号)・消防法施行令(昭和36年政令第37号)・消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)・不活性ガス消火薬剤の規格を定める省令(昭和49年自治省令第27号)・ハロゲン化物消火薬剤の規格を定める省令(昭和50年自治省令第15号)・粉末消火薬剤の規格を定める省令(昭和49年自治省令第26号)。合格率の出典:消防試験研究センター「消防設備士試験の実施状況」(最新年度)。
作成日:2026年11月5日

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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