認知症の看取り後の手続き:死亡届・後見終了・相続・介護保険の手順まとめ

認知症の親が亡くなった後の「看取り後の手続き」は、悲しみの中で短期間のうちに多くのことをこなさなければならない。認知症高齢者の看取り後に必要な手続き——死亡診断書の受け取り・葬儀・相続・後見人の終了手続き等——を整理した。

5問の診断で今すぐ危険度と損失額を確認できます。
▶ 認知症診断後 手続きナビ(無料診断)

死亡後の最初の手続き

亡くなった直後から数日以内に必要な手続きを整理した。

  • 死亡診断書(または死体検案書)の受け取り:病院・施設で亡くなった場合は担当医が「死亡診断書」を発行する。自宅で亡くなった場合は訪問診療医が発行する(訪問診療医がいない場合は警察が対応する「変死扱い」になる場合がある)。死亡診断書はその後の手続き(死亡届・保険請求等)で必要になるため、複数枚コピーを取っておく
  • 死亡届の提出(7日以内):死亡を知った日から7日以内に「死亡届(死亡診断書の左半分が死亡届の用紙になっている)」を故人の本籍地・死亡地・届出人の住所地のいずれかの市区町村に提出する(戸籍法第86条・第87条)
  • 火葬許可証の取得:死亡届と同時に「火葬許可申請書」を提出して「火葬許可証」を取得する。火葬は死亡後24時間経過後に行うことができる(墓地埋葬等に関する法律第3条)
  • 葬儀の手配:死亡後は速やかに遺体の搬送・安置・葬儀社への連絡が必要だ。葬儀の形式(家族葬・一般葬・直葬等)の決定は事前に家族で話し合っておくと、急な場面での混乱を避けられる

成年後見人が選任されていた場合の終了手続き

被後見人(認知症の親)が亡くなった場合の後見人の終了手続きを整理した。

  • 被後見人の死亡で後見は終了する:被後見人が死亡すると成年後見は当然に終了する(民法第653条第1号準用)。後見人としての権限は死亡と同時に消滅する
  • 後見人は「管理の計算(後見終了の計算)」を相続人に引き渡す義務がある:民法第870条では、後見が終了した後、後見人は「管理の計算(後見期間中の財産管理の内容)」を相続人に報告する義務を負う。後見期間中の収支を整理した報告書・領収書等を相続人に引き渡す
  • 残余財産を相続人に引き渡す:後見終了後、後見人が管理していた財産(預金残高・不動産等)を相続人全員に引き渡す。遺産分割協議が終わるまでは「相続人全員の合意」が必要な場合がある
  • 後見終了の登記が必要(法定後見の場合):法定後見の場合は、後見終了後に後見登記の終了登記(後見終了の申請)が必要。法務局(東京法務局)への申請を後見人が行う(後見登記等に関する法律第8条)

「相続手続き」への引き継ぎ

認知症高齢者が亡くなった後の相続手続きの流れを整理した。

  • 相続開始後は「相続人」が財産を引き継ぐ:被相続人(亡くなった人)の財産は相続開始(死亡)と同時に相続人に引き継がれる(民法第882条・第896条)。預貯金は「相続人全員の同意」なしには引き出せない状態(凍結)になる
  • 相続放棄は3か月以内:相続放棄をする場合は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要がある(民法第915条)。認知症高齢者が借金・債務を抱えていた場合は相続放棄を検討する
  • 準確定申告(4か月以内):亡くなった年の確定申告(準確定申告)は、相続人が「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」に行う義務がある(所得税法第124条)。家賃収入・年金等の所得がある場合に必要
  • 相続税申告(10か月以内):相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える財産がある場合は相続税申告が必要(相続税法第27条)。申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」

家族信託が設定されていた場合の看取り後の手続き

親が家族信託を設定していた場合の看取り後の手続きを整理した。

  • 信託の終了と清算:委託者・受益者が亡くなって信託が終了した場合は、受託者(清算受託者)が残余財産を帰属権利者に移転する清算手続きを行う(信託法第177条)。信託財産に不動産が含まれる場合は「信託登記の抹消」と「帰属権利者への所有権移転登記」が必要
  • 信託財産は通常の相続とは別に処理される:信託財産は「帰属権利者への移転(信託法第182条)」として処理され、通常の相続財産とは分けて扱われる。ただし相続税の申告には信託財産の評価額を含める必要がある
  • 信託終了の税務申告:信託終了年分の確定申告(信託財産から生じた所得の最終年分)・相続税申告(信託財産の帰属権利者への移転分)が必要になることがある。税理士に早めに相談することをすすめる

「施設入居中の看取り」と死亡後の手続き

特養・グループホーム・有料老人ホーム等に入居中に亡くなった場合の手続きを整理した。

  • 施設の嘱託医が死亡診断書を発行する:施設に嘱託医がいる場合は、施設の嘱託医が死亡診断書を発行する。施設に看取り体制(嘱託医の対応)がある場合は深夜でも嘱託医への連絡が可能だ。施設に嘱託医がいない場合は救急搬送になることもある
  • 施設の荷物の引き取りが必要:入居者が亡くなった後は、施設に置いていた衣類・日用品・貴重品等の荷物を家族が引き取る必要がある。施設によって荷物の引き取り期限が異なるため、早めに確認する
  • 施設の利用料の清算:施設の利用料は「死亡月の日割り精算」となる場合が多い。保証金(入居一時金)の返還がある施設では、返還金の計算と振り込みに数週間〜数か月かかることがある
  • 施設のケアマネジャーへのお礼と記録の引き継ぎ:施設のケアマネジャーに対して「これまでお世話になった連絡」をするとともに、ケアプランや介護記録等の書類の引き取りを確認しておくことが望ましい。相続手続きや後見終了の報告書作成に使用する資料になることがある

「葬儀後の行政手続き」の一覧

葬儀後に必要な行政・保険等の手続きを整理した(相続・後見終了以外の手続き)。

  • 年金の停止手続き(速やかに):年金受給者が亡くなった場合は「受給権者死亡届(報告書)」を日本年金機構に提出する。14日以内(国民年金)または10日以内(厚生年金)が手続き期限。停止が遅れると受給した過払い年金を返還しなければならない
  • 健康保険・後期高齢者医療保険の資格喪失:健康保険証・後期高齢者医療保険証は市区町村(後期高齢者医療)または職場の健康保険組合に返却する。手続き期限は死亡後14日以内が一般的
  • 銀行口座の名義変更・解約:被相続人の銀行口座は相続手続き(遺産分割協議・法定相続情報証明書または遺産分割協議書)が完了した後に解約・名義変更ができる。各銀行の窓口で手続きする
  • 不動産の相続登記(3年以内・2024年4月から義務化):2024年4月1日から相続登記の申請が義務化された(不動産登記法第76条の2)。相続を知った日から3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料の対象となる

「介護保険の手続き」の終了

介護保険に関する死亡後の手続きを整理した。

  • 介護保険資格喪失届の提出(14日以内):死亡後14日以内に「介護保険被保険者証」を市区町村に返却し「資格喪失届」を提出する(介護保険法第12条・第13条)
  • 介護保険料の清算:死亡月以降分の介護保険料は返還される(日割り計算)。市区町村から過誤納金として還付される
  • 介護サービスの利用停止:ヘルパー・デイサービス・訪問看護等の介護サービスは死亡と同時に利用停止となる。各サービス事業者に速やかに連絡する

「認知症の親の看取り」で家族が抱えやすい感情と支援

認知症の看取りを経験した家族が抱えやすい感情と、支援の活用方法を整理した。

  • 「介護を施設に任せていた罪悪感」:施設で亡くなった場合に「もっと会いに行けばよかった」「在宅で看ていれば」という罪悪感を抱く家族は多い。施設での看取りは本人が最期まで専門的なケアを受けたということであり、家族が最善の選択をした結果だ
  • 「グリーフケア(悲嘆支援)」の活用:介護を長期間続けた後に親を看取った家族は、安堵感と喪失感が入り混じった複雑な感情を持つことがある。地域包括支援センター・介護者支援グループ・ホスピスのグリーフケア(悲嘆支援)プログラムを活用することで感情を整理できる
  • 「介護期間中の確定申告の確認」:介護期間中に「医療費控除・障害者控除(要介護認定を受けていた場合)・社会保険料控除」等の控除を申告していなかった場合は、死亡後の準確定申告(4か月以内)で合わせて申告できる可能性がある。税理士に確認することをすすめる

この記事のまとめ

  • 死亡後の最初の手続き:死亡診断書受け取り→死亡届(7日以内・戸籍法第86条)→火葬許可証の取得→葬儀手配
  • 後見人の終了:被後見人の死亡で後見終了(民法第653条)→管理の計算を相続人に引き渡す(同第870条)→後見終了登記(後見登記等に関する法律第8条)
  • 相続手続き:相続放棄(3か月・民法第915条)→準確定申告(4か月・所得税法第124条)→相続税申告(10か月・相続税法第27条)
  • 家族信託があった場合:信託清算(信託法第177条)→不動産の信託登記抹消・所有権移転登記→税務申告(信託終了分)
  • 介護保険:被保険者証返却・資格喪失届(14日以内・介護保険法第13条)→保険料の清算→各サービス事業者への連絡
  • 相談先:市区町村の窓口(死亡届・介護保険)・税理士(相続税申告)・司法書士(後見終了登記・信託清算)

出典:戸籍法第86条・第87条(死亡届)、墓地埋葬等に関する法律第3条(火葬の時期)、民法第653条(委任終了)・第870条(後見終了の計算)・第882条(相続開始)・第896条(相続の一般的効力)・第915条(相続放棄の期間)、所得税法第124条(準確定申告)、相続税法第27条(相続税申告)、介護保険法第12条・第13条(被保険者の資格)、後見登記等に関する法律第8条(後見終了の登記)、信託法第177条(清算)・第182条(帰属権利者)

5問の診断で今すぐ危険度と損失額を確認できます。
▶ 認知症診断後 手続きナビ(無料診断)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
認知症の手続きと備え
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました