家族信託で一人っ子が受託者になるケースでは、「チェック機能がない状態での財産管理」という特有のリスクがある。兄弟がいれば互いに牽制が働くが、一人っ子の場合は誰も受託者の行動を監視しない状態が続く。受益者(親)が認知症で監督できない場合、問題が発生しても気づかれにくい。一人っ子向けの家族信託設計で注意すべきデメリットと対処法を整理した。
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一人っ子が受託者になる場合の主なデメリット
一人っ子が家族信託の受託者になる場合、次のデメリットに注意する必要がある。
- チェック機能の欠如:兄弟がいる場合は他の家族が暗黙の監督者として機能するが、一人っ子にはその機能がない。受益者(親)が認知症の場合、財産管理が適正に行われているかを確認する人がいない状態になる
- 受益者の権利を代行できる人がいない:受益者である親が認知症の場合、信託財産の管理に問題があっても「受益者から異議を申し立てる」ことができない。受益者代理人(信託法第138条)または信託監督人(信託法第131条)を設置していなければ、問題が発覚しにくい
- 二次受益者の問題:受益者である親が死亡した後の財産(残余財産)の行き先を設計するとき、一人っ子の場合は「誰に渡すか」の選択肢が少ない。配偶者との関係・孫の存在等によって設計が複雑になる場合がある
- 受託者自身の健康・死亡リスク:一人っ子が受託者として亡くなった場合、後継受託者の指定が必要だ。信託契約書に後継受託者の指定がなければ、信託が終了するリスクがある
チェック機能の欠如への対処:信託監督人の設置
信託法では「信託監督人」を設置できる(第131条)。信託監督人は受益者の代わりに受託者を監督する役割を持つ第三者だ。
司法書士・弁護士等の専門家を信託監督人として指定することで、定期的な帳簿確認・報告受領が行われる体制を整えられる。信託監督人の報酬は月5,000〜10,000円程度が多い。
一人っ子が受託者になる場合は信託監督人の設置を「標準装備」として設計に含める。
「受益者代理人」の設置
受益者(親)が判断能力を失った後に受益者の権利を代わりに行使する「受益者代理人」(信託法第138条)を設ける方法もある。受益者代理人は受益者の権利全般を代行できるため、問題が起きたときに対処できる人物として機能する。
後継受託者の指定は必須
一人っ子が受託者の場合、自分が先に亡くなった場合や重篤な病気・認知症になった場合のために「後継受託者」を信託契約書に定めておく必要がある。後継受託者は「長子の配偶者」「信頼できる親族」「信託会社(商事信託)」等から選べる。
後継受託者の指定がなければ、受託者の死亡・辞任後に新たな受託者が選任されるまで信託が停止し、財産管理に空白が生まれる。
家族信託の代替として任意後見を選ぶ場合
チェック機能の問題を重視するなら、家族信託ではなく任意後見を選ぶ方がシンプルな場合もある。任意後見は開始後に家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任するため、監督機能が制度的に組み込まれている。
家族信託と任意後見では対応できる範囲が異なるため(不動産売却・株式処分等は家族信託が対応しやすい)、一人っ子のケースでは司法書士に「家族信託と任意後見のどちらが適しているか」を相談することから始めるのが最善だ。
この記事のまとめ
- 一人っ子が受託者になる場合のデメリット:チェック機能の欠如・二次受益者の設計・後継受託者の問題
- チェック機能の欠如には信託監督人(信託法第131条)の設置で対処する
- 受益者代理人(信託法第138条)を設置すると受益者の権利行使の代行ができる
- 後継受託者の指定は一人っ子受託者では必須の設計事項
- 監督機能を重視するなら任意後見の選択も検討する
出典:信託法第131条(信託監督人)・第138条(受益者代理人)・第62条(受託者の辞任)、任意後見契約に関する法律(任意後見監督人)
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