認知症の親がスマートフォンやタブレットを使うようになっている場合、ネット詐欺・フィッシング詐欺の被害リスクが高まる。「当選通知」「セキュリティ警告」「銀行を装ったメール」に引っかかって個人情報やお金を騙し取られるケースは高齢者でも急増している。認知症の家族がネット詐欺にあった場合の対処と、事前の防止策を整理した。
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認知症高齢者が狙われるネット詐欺の主な手口
高齢者・認知症高齢者を狙ったネット詐欺の手口を整理した。
- フィッシング詐欺:銀行・クレジット会社・宅配業者・行政機関を装ったメールやSMSで「アカウントが停止される」「本人確認が必要」等と誘導し、偽サイトに入力させてIDとパスワードを盗む手口。「三菱UFJ銀行」「楽天銀行」「PayPay」等の実在する企業名を使うケースが多い
- サポート詐欺:パソコン・スマートフォンの画面に「ウイルスに感染しました」「至急サポートに電話を」という警告画面を表示させ、電話番号に電話させてリモート操作ソフトのインストールや有料サービスへの申し込みをさせる手口
- フリマ・オークション詐欺:メルカリ・ヤフオクを装った偽メール・偽サイトで、商品代金を偽の振込先に振り込ませる手口
- 懸賞・当選詐欺:「あなたは○万円に当選しました」等のメール・SMSで、当選金の受け取りのために「手数料」「税金」を先払いさせる手口
- 架空請求:「未払いの料金があります」「法的手続きを開始します」等のメール・SMSで、身に覚えのない請求をして支払わせる手口
被害が発覚したときの緊急対応
ネット詐欺の被害が発覚した場合の緊急対応手順を整理した。
- パスワードの変更・アカウントのロック:フィッシング詐欺でIDとパスワードが盗まれた疑いがある場合は、直ちに対象サービスのパスワードを変更する。同じパスワードを使い回している他のサービスも変更する
- 銀行・クレジット会社への連絡:不正アクセスによる出金・クレジット利用の疑いがある場合は、直ちに銀行・クレジット会社のカスタマーサポートに連絡して口座・カードの停止を依頼する
- サポート詐欺でリモートソフトをインストールした場合:インストールしたリモート操作ソフトを削除する。削除方法がわからない場合は、端末を「機内モード」または「WiFi/通信オフ」にしてリモートアクセスを遮断した上で、パソコン・スマホの販売店または専門家に相談する
- 警察への相談:サイバー犯罪相談窓口(都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口)または警察相談電話(#9110)に相談する
- 消費者ホットライン(188)への相談:架空請求・フリマ詐欺等の消費者被害は消費生活センターでも相談を受け付けている
フィッシング詐欺で情報が盗まれた場合の対応
フィッシング詐欺によって「銀行のID・パスワード」「クレジットカード番号」「マイナンバー」等が盗まれた疑いがある場合の対応を整理した。
- 銀行のID・パスワードが盗まれた場合:直ちに銀行に連絡してオンラインバンキングを停止・パスワードを変更する。不正出金がないか直近の取引履歴を確認する
- クレジットカード番号・有効期限・CVVが盗まれた場合:直ちにクレジット会社に連絡してカードを停止・再発行を依頼する。不正利用がある場合は「不正利用の申告」を行うことで被害額が補填される可能性がある
- マイナンバーが盗まれた場合:マイナンバーカード・マイナポータルへの不正アクセスの可能性がある場合はマイナポータルでパスワードを変更する。不審な個人番号利用の疑いがある場合はマイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)に相談する
認知症の親のスマートフォン・パソコン管理の対策
認知症の親がスマートフォン・パソコンを使っている場合の事前対策を整理した。
- フィルタリング・詐欺サイトブロックの設定:スマートフォンにセキュリティアプリをインストールして、詐欺サイト・フィッシングサイトへのアクセスをブロックする設定にする。スマートフォンキャリア(docomo・au・SoftBank等)のセキュリティサービスを活用する方法もある
- 購入・送金の通知設定:ネットバンキング・クレジットカードの利用通知をリアルタイムで家族のスマートフォンにも届くよう設定する。家族が不審な取引に気づける体制を作る
- ネットバンキングの送金上限額を下げる:ネットバンキングで設定できる「1日の送金上限額」を低く設定する。万一不正アクセスされても被害額を最小化できる
- Apple ID・Google アカウントの二要素認証を設定する:パスワードが盗まれても、二要素認証(SMS・認証アプリ)があれば不正ログインを防げる可能性がある
- 「電話番号検索」の習慣をつける:知らない番号から「サポートに電話して」と言われた場合は、その番号をWeb検索して詐欺かどうか確認する習慣をつける。家族がそばにいる場合は「知らない番号には折り返さない」というルールを設ける
「サポート詐欺」のリモートソフトを削除する手順
「ウイルスに感染しました」等の警告画面に誘導されてリモート操作ソフトをインストールしてしまった場合、できるだけ早く削除することが重要だ。
Windowsパソコンの場合の削除手順を整理した。
- 直ちにネット接続を切る:WiFiをオフにする・LAN ケーブルを抜く。リモートアクセスを遮断することが最優先だ
- コントロールパネルからアンインストール:「コントロールパネル」→「プログラムのアンインストール」でインストールされているソフトを確認し、見覚えのないリモート操作ソフト(AnyDesk・TeamViewer・UltraViewer等)をアンインストールする
- セキュリティソフトでスキャン:Windows Defenderまたはインストール済みのセキュリティソフトでフルスキャンを実行する
- パスワードを全て変更する:リモートアクセス中に操作された可能性があるため、ネットバンキング・メール・SNS等のパスワードを変更する
スマートフォンの場合は「端末の初期化(工場出荷時の設定に戻す)」が最も確実な対処法だ。初期化する前に写真・連絡先のバックアップを取ることを忘れない。操作方法がわからない場合はキャリアショップ(docomo・au・SoftBank等)に持ち込んで相談することをすすめる。
ネット詐欺被害後に使える法的手段
ネット詐欺によって金銭的被害を受けた場合の法的手段を整理した。
- 不当利得返還請求(民法第703条):詐欺によって受け取った金銭は「法律上の原因のない利益(不当利得)」として返還請求できる。ただし詐欺グループの実在・所在が不明な場合は実際の回収が困難だ
- フィッシング詐欺による不正出金の補償(預金者保護法):偽サイトに入力したことで不正ログイン・不正出金が起きた場合、金融機関に補償を請求できる場合がある。預金者保護法では「偽造・盗難カードによるATM不正出金」の補償が定められているが、ネットバンキングの不正送金については各金融機関の補償制度・規約によって扱いが異なる。早期に申告することが重要だ
- クレジットカードの不正利用申告:フィッシング詐欺によりクレジットカード番号が盗まれて不正利用された場合、カード会社への「不正利用の申告」によって被害額が補填される可能性が高い。クレジットカード各社は不正利用保険を持っており、本人が申告すれば補填を受けられることが多い
- 消費者契約法による取り消し(消費者契約法第4条):「サポート詐欺」等で「誤った情報(ウイルス感染しているという虚偽の説明)」によって契約させられた場合は「不実告知」として消費者契約法による取り消しができる可能性がある
後見人と連携したネット詐欺対策
後見人が設定されることで、ネット詐欺の被害を防止する効果がある。
- ネットバンキングの管理:後見人が財産管理を担うと、被後見人(本人)のネットバンキングのID・パスワード管理も後見人の職務になる。本人が詐欺電話に「ネットバンキングのパスワードを教える」ということを防ぐことができる
- 大額の決済の事前チェック:後見人の同意なしに行われた本人の法律行為は取り消せる(民法第9条)。業者が「後見人がいる」と認識することで、高額な契約の締結を諦めることが多い
- スマートフォン・パソコンの設定管理:後見人が財産管理の一環として、本人のスマートフォン・パソコンのセキュリティ設定・フィルタリング設定を管理する体制を作ることができる
後見申立てはすぐに設定されるわけではない(申立てから審判まで数か月かかることが多い)。ネット詐欺のリスクが高い状態では、後見申立てと同時に「スマートフォンの設定変更」「ネットバンキングのパスワード変更」等の早急な対策を先行して実施することが重要だ。
警察の「サイバー犯罪相談窓口」の活用
各都道府県警察にはサイバー犯罪相談窓口が設置されており、ネット詐欺・フィッシング詐欺・ネットを使った架空請求等の相談を受け付けている。被害が疑われる場合は「被害届」を提出することで捜査が開始される可能性がある。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ安心相談窓口(電話:03-5978-7509)」は、フィッシング詐欺・サポート詐欺等のネット犯罪に関する相談を無料で受け付けている。
この記事のまとめ
- 認知症高齢者が狙われるネット詐欺の主な手口:フィッシング詐欺・サポート詐欺・架空請求・当選詐欺
- 被害発覚直後:パスワード変更・銀行・クレジット会社への連絡・リモートソフトの削除・警察相談(#9110)
- フィッシング詐欺で情報が盗まれた場合はサービスの停止・パスワード変更・クレジットカードの停止・不正利用の申告を速やかに行う
- 事前対策:セキュリティアプリの設定・送金上限額の制限・利用通知の家族共有・二要素認証の設定
- 相談先:サイバー犯罪相談窓口・IPA・消費者ホットライン(188)・警察(#9110)
出典:消費者契約法第4条(不当な勧誘による取り消し)、特定商取引法、不正競争防止法(フィッシング・なりすまし行為)、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ安心相談窓口」
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