認知症グループホームの身体拘束適正化委員会、3月に1回の確認事項。

認知症グループホームの身体拘束適正化委員会、3月に1回の確認事項。 介護

身体拘束適正化委員会は3月に1回以上の開催が義務です

認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム、以下GH)の身体拘束適正化委員会は、3月に1回以上の開催が義務です。根拠は「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令第34号)第97条第7項第1号です。

他のテーマ(虐待防止・感染症・BCP等)は第108条による準用規定ですが、身体拘束については第97条が認知症対応型共同生活介護を直接対象とした条文です。委員会の開催回数は年4回以上(3月に1回×4期)が最低ラインになります。

委員会・指針・研修の3点がそろっていないと、所定単位数の10%が減算されます。この記事では、第97条第7項の内容・委員会の議題・研修の実施方法・記録の残し方を解説します。

第97条第7項の条文

第97条第7項には、委員会の開催・指針の整備・研修の実施が義務として定められています。

指定認知症対応型共同生活介護事業者は、身体的拘束等の適正化を図るため、次に掲げる措置を講じなければならない。
一 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を三月に一回以上開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
二 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
三 従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。

出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第34号)第97条第7項

条文のとおり、委員会・指針・研修の3点がすべて義務です。「委員会だけ開催していればよい」ではなく、3点セットで整備する必要があります。

委員会・指針・研修の3点と減算

身体拘束に関する基準を満たしていない場合、サービス費の減算が発生します。

義務の内容 頻度・規定 根拠条文
身体拘束適正化委員会の開催 3月に1回以上(年4回以上) 第97条第7項第1号
身体拘束適正化のための指針の整備 常時整備・定期見直し 第97条第7項第2号
従業者への研修の実施 定期的に実施(回数の明示規定なし) 第97条第7項第3号

委員会・指針・研修のいずれかが未整備の場合は、所定単位数の10%が減算されます(施設・居住系サービスの身体拘束廃止未実施減算)。1つ欠けても10%の減算対象になるため、3点すべての整備状況を定期的に確認することが必要です。

3月に1回以上=年4回以上のスケジュール例

「3月に1回以上」は、3か月に1回という意味です。1年を4期に分けると、次のような開催スケジュールになります。

開催時期の目安 委員会の主な議題の例
4〜6月(第1回) 前年度の振り返り・年間計画の確認・指針の見直し
7〜9月(第2回) やむを得ず実施した事例の検討・記録の確認
10〜12月(第3回) 3要件の判断基準の確認・職員からの報告・家族への説明実績の確認
1〜3月(第4回) 年間の実績まとめ・次年度計画・研修の実施状況の確認

スケジュールは事業所の運営実態に合わせて調整できますが、3か月以上の間隔が空いた場合は義務を果たしていないと判断される可能性があります。委員会の開催日程を年度初めに確定しておくことで、開催漏れを防げます。

委員会で確認すること(議題の具体例)

身体拘束適正化委員会で確認・検討すべき項目を示します。運営指導では「議事録の内容が形式的すぎる」という指摘が出ることがあります。議事録に議論の経過と結論が具体的に残っているかが評価の対象になります。

やむを得ず実施した事例の検討

前回の委員会以降に身体拘束を実施した事例がある場合、3要件(切迫性・非代替性・一時性)を満たしていたかを委員会で確認します。

  • 拘束の内容・期間・利用者への説明・家族への説明は記録されているか
  • 3要件の判断プロセスが記録に残っているか
  • 代替手段の検討が十分だったか
  • 拘束の必要性がなくなった時点で解除されているか

「拘束に近い行為」の点検

法令上の身体拘束には、ベルトによる固定だけでなく、向精神薬の過鎮静・ドアの施錠による閉じ込め・ミトン型手袋の使用なども含まれます。「明らかな拘束はしていない」という事業所でも、日常的な行為が実質的に身体拘束に当たる場合があります。

  • 夜間の徘徊を防ぐために居室ドアを外から施錠していないか
  • 転倒防止のためにベルトやひもで椅子に固定していないか
  • 落ち着かせるために薬を通常より多く使用していないか(処方医との確認)
  • 行動を制止するために職員が継続的に押さえていないか

指針の内容の確認・更新

身体拘束適正化のための指針は、整備するだけでなく内容が実態に合っているかを定期的に確認することが求められます。委員会での見直し結果を指針に反映させ、更新日を記録しておきます。

  • 指針に記載されている連絡体制(本人・家族・行政への連絡手順)は現状に合っているか
  • 委員会の構成員・担当者に変更があった場合、指針に反映されているか
  • 前回の委員会での決定事項が指針に反映されているか

研修の実施状況の確認

委員会では、研修の実施状況も確認します。「研修を実施した記録はあるか」「未受講の職員はいないか」「新規採用者には採用後すみやかに実施したか」を確認します。

身体拘束が認められる緊急やむを得ない場合の3要件

身体拘束は原則として禁止です。緊急やむを得ない場合のみ、次の3要件をすべて満たす場合に限り、例外的に認められます。

要件 内容
切迫性 利用者本人または他の利用者等の生命・身体に危険が及ぶ可能性が高い
非代替性 身体拘束以外に代替する方法がない
一時性 身体拘束が一時的なものである

3要件をすべて満たす場合でも、実施する前に委員会で検討を行い、本人・家族への説明と同意確認・記録の作成が必要です。

「3要件の確認は委員会で行う」という流れが基本ですが、緊急の場合は事後に委員会で確認する方法も認められています。事後確認の場合でも、実施した日時・判断の理由・代替手段の検討状況を記録しておく必要があります。

身体拘束を実施した場合の記録

やむを得ず身体拘束を実施した場合は、次の項目を記録します。

記録の項目 記載の内容
実施日時・場所 拘束を開始した日時・実施場所
拘束の内容 どのような方法で拘束したか(ベルト・部屋への施錠等)
3要件の確認 切迫性・非代替性・一時性それぞれの判断内容
代替手段の検討 拘束以外の方法を検討したか・なぜ実施できなかったか
本人・家族への説明 説明した日時・相手・内容・本人・家族の反応
解除の日時 拘束を解除した日時・解除した理由
委員会への報告 次回委員会での確認日・確認者

記録は「実施したこと」だけでなく「判断の根拠」まで残すことが重要です。「転倒リスクがあったので」という記述だけでは、3要件の確認が不十分と判断される可能性があります。

研修は定期的に・新規採用者には採用後すみやかに

身体拘束の研修について、第97条第7項第3号は「定期的に実施すること」と定めています。虐待防止(年1回以上)・感染症(年2回以上)と異なり、身体拘束の研修には回数の明示規定がありません。

実務上は年1回以上を最低ラインとして、委員会の開催と合わせて研修記録を残している事業所が多い状況です。運営指導では「何回実施したか」より「継続的に取り組んでいるか」が評価の基準になります。

新規採用者には採用後すみやかに研修を実施します。身体拘束の研修は、虐待防止・感染症とともに新規採用時に必ず実施する3テーマのひとつです。

テーマ 年間研修の頻度 新規採用時
虐待防止 年1回以上 必須(採用後すみやかに)
感染症 年2回以上 必須(採用後すみやかに)
身体拘束 定期的に(回数の明示規定なし) 必須(採用後すみやかに)

よくある疑問

委員会の構成員に外部の専門家は必要ですか

第97条第7項は委員会の構成員について「外部の専門家を含む」という規定をしていません。事業所内の職員で構成することが基本です。ただし、特定の事案について専門的な意見が必要な場合は、外部の医師や相談員等に意見を求めることが推奨されます。

委員会はテレビ電話で開催できますか

第97条第7項第1号には「テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする」と明記されています。ZoomやTeams等を使ったオンライン開催が認められています。開催方法(オンライン・対面)は議事録に記録しておきます。

身体拘束がゼロの場合でも委員会は開催が必要ですか

身体拘束の実施がない場合でも、3月に1回以上の委員会の開催は義務です。「実施案件がないから今回は不要」とはなりません。実施がない期間の委員会は、指針の確認・研修の実施状況の確認・「拘束に近い行為」の点検などを議題にします。

指針はどの程度詳しく作ればよいですか

法令に「指針の様式」の規定はありません。少なくとも、身体拘束の禁止の方針・3要件の考え方・委員会の役割・実施した場合の記録方法・本人・家族への説明手順を記載することが推奨されます。厚生労働省が公表している「身体拘束ゼロへの手引き」が指針の作成に参考になります。

まとめ:身体拘束適正化委員会は3月に1回以上・3点セットの整備が必要です

認知症グループホームの身体拘束に関する義務をまとめます。

  • 根拠条文:第97条第7項(第108条による準用ではなく直接規定)
  • 委員会の開催:3月に1回以上(年4回以上)
  • 指針の整備:常時・定期的な見直し
  • 研修の実施:定期的に(回数の明示規定なし)・新規採用者には採用後すみやかに
  • 3点がそろっていない場合:所定単位数の10%の減算
  • やむを得ず実施した場合:3要件の確認・本人・家族への説明・記録の作成が必要

各テーマの研修資料・委員会の議事録様式・確認テストをまとめて使えるツールを用意しています。

認知症GH 法定研修・訓練キット(/ninchisho-gh/)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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