児童発達支援の感染症対策、研修・訓練・委員会の義務をまとめる。

児童発達支援の感染症対策、研修・訓練・委員会の義務をまとめる。 福祉事業の開業と運営



児童発達支援の感染症対策、研修・訓練・委員会の義務をまとめる。

児童発達支援(以下、児発)の事業所には、感染症の予防とまん延防止のための研修および訓練を定期的に実施することが義務づけられています。根拠は指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(以下、指定通所支援基準)第41条です。

同条文は研修・訓練の実施に加え、感染症委員会の設置・定期開催・結果の職員への周知も義務としています。

未就学児(0〜6歳頃)は免疫が十分に発達していないため、感染症に対して特に脆弱な年齢層です。集団で過ごす通所施設では感染が広がりやすく、重症化するリスクも高いことから、感染症対策の研修・訓練は特に重要な位置づけとなります。

感染症対策の義務は研修・訓練・委員会の3つ

指定通所支援基準第41条が定める義務を整理します。

義務の内容 頻度・形式
感染症予防・まん延防止のための研修の実施 定期的に(年1回以上が目安)
感染症発生時の対応訓練の実施 定期的に(年1回以上が目安)
感染症委員会の設置・定期開催 年1回以上の開催が目安
委員会の結果を職員に周知 議事録の回覧・説明会など

(出典:指定通所支援基準 第41条)

未就学児の施設で流行しやすい感染症

学齢児が通う放課後等デイサービスと比べ、児発では以下のような感染症が特に注意を要します。

RSウイルス感染症:2歳以下の乳幼児が重症化しやすく、入院が必要になることがあります。成人や年長の子どもには軽症でも、0〜1歳の子どもには肺炎・細気管支炎を引き起こすことがあります。

ノロウイルス・ロタウイルス:嘔吐・下痢の感染性胃腸炎の原因として多く見られます。ロタウイルスは乳幼児に重症化しやすく、脱水症状に注意が必要です。

手足口病・ヘルパンギーナ:夏季に多い、乳幼児を中心とした感染症です。高熱・口腔内の水疱が出るため食事が取りにくくなり、脱水に注意が必要です。

溶連菌感染症:適切に治療しなければリウマチ熱・腎炎につながる可能性があります。咽頭炎の症状が出る感染症で、集団感染が起こりやすいとされています。

これらの感染症は、感染者が見つかった場合に保健所や市区町村への報告が必要なケースがあります(学校保健安全法の対象外の施設でも、社会福祉施設としての感染症発生時の報告義務があります)。

研修の内容:職員が知っておくべきこと

感染症予防の研修では、次の内容を職員全員が理解していることを目標とします。

感染経路ごとの対策:飛沫感染(せきやくしゃみ)・接触感染(手・物の表面)・経口感染(口から)それぞれの対策が異なります。マスク・手洗い・消毒・換気の組み合わせを感染経路に合わせて選択します。

おう吐物・排泄物の処理:ノロウイルス感染症の場合、おう吐物・排泄物の処理が感染拡大の重要なポイントとなります。次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)での消毒・処理用の使い捨て手袋・ガウン・マスクの使用・処理後の手洗いという手順を、職員全員が実施できるようにしておきます。

報告・連絡の手順:施設内で感染者が出た場合に、誰がいつ何を誰に報告するかを事前に決めておきます。保護者への連絡・管轄指定権者への報告・必要に応じた保健所への相談の手順を共有します。

登所基準と登所停止の判断:発熱・嘔吐・下痢等の症状がある場合の登所停止基準を保護者に事前に説明しておくことと、症状が治まった後の登所再開の目安を職員間で共有しておくことが重要です。

訓練の内容:感染者発生時の対応フローを実践する

訓練は知識の習得を超え、実際の動きを身体で覚えることが目的です。感染症の対応訓練では、施設内で感染者が出た場合を想定したシナリオを設定して行います。

訓練のシナリオ例としては、「施設内で子どもが嘔吐した」という想定で、次の手順を実際に動きながら確認します。

  1. 嘔吐した子どもを別の場所(施設に個室があれば隔離室)に安全に移動させる
  2. おう吐物の処理を担当する職員が手袋・ガウン・マスクを着用して処理を実施する(処理方法・消毒の手順を実際にやってみる)
  3. 他の子どもを別の部屋に移動させる(集合場所の確認)
  4. 保護者への連絡を担当する職員が連絡文面の確認をする
  5. 感染症の状況によっては行政・保健所への報告の要否を確認する

訓練後に振り返りを行い、不明確だった手順・準備が足りなかった備品・役割分担の問題点を記録しておきます。

感染症委員会の運営

委員会の構成・開催頻度については、指定通所支援基準第41条に詳細の規定はありません。実務上は年1回以上の開催が目安となっています。

委員会の議題としては、次のような内容が挙げられます。

  • 前年度に発生した感染症の事例と対応の振り返り
  • 季節ごとに注意が必要な感染症の確認
  • 備品(手袋・消毒液・マスク・おう吐処理セット)の在庫確認と補充計画
  • 今年度の研修・訓練の計画確認
  • 保護者への感染症情報の共有方法の確認

保護者との連携:入所前からの情報共有

児発の保護者には、施設の感染症対策の方針と登所停止の基準を、利用開始前に説明しておくことが実務的には重要です。

子どもが発熱・嘔吐・下痢等の症状を持って登所してきた場合の対応(連絡・早退・送迎の手順)、施設内で他の子どもに感染者が出た場合の保護者への連絡方法についても、あらかじめ合意を取っておくことで、感染症発生時の保護者への対応がスムーズになります。

研修・訓練の記録として残すもの

  • 研修の実施日・テーマ・実施方法
  • 参加した職員の氏名・受講確認サイン
  • 訓練の実施日・シナリオ内容・参加者・振り返りの結果
  • 感染症委員会の開催記録:日時・出席者・議事内容・決定事項
  • 委員会結果の職員への周知の証拠:回覧サイン・説明会の記録など

法定研修・訓練のキットを使う

放課後等デイサービス・児童発達支援の法定研修に対応した研修・訓練キットを公開しています。感染症テーマの教材・確認テスト・訓練記録様式・委員会の議題案をブラウザで使えます。

▶ 放課後等デイサービス・児童発達支援 法定研修・訓練キット


出典:指定通所支援基準(指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準)第41条・厚生労働省「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」・国立感染症研究所「感染症発生動向調査事業」。


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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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