就労移行支援の処遇改善加算。算定割合と要件の比較。

就労移行支援の処遇改善加算は、令和6年度改定で「福祉・介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。加算の区分は(Ⅰ)から(Ⅳ)の4段階で、算定割合は基本報酬と各加算の合計(処遇改善加算を除く)の11.9〜8.1%です。最高区分(Ⅰ)の算定には、キャリアパス要件・賃金改善要件・職場環境等要件をすべて満たす必要があります。

出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表第12の16(令和6年改定後)

就労移行支援の処遇改善加算は4段階。算定割合は8.1〜11.9%。

就労移行支援の処遇改善加算の区分と算定割合は、告示523の第12の16に次のとおり定められています。

就労移行支援の福祉・介護職員等処遇改善加算の区分と算定割合
区分 算定割合(通所事業所) 算定割合(指定障害者支援施設)
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ 11.5% 11.9%
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ 11.9% 12.3%
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)イ 11.3% —
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)ロ 11.7% —
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) 9.8% 10.1%
福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) 8.1% 8.3%

告示の条文には「1から15の7までにより算定した単位数の1000分の○○に相当する単位数」と記載されており、この「1から15の7まで」は基本報酬から移行準備支援体制加算までの各加算(処遇改善加算を除いたすべての単位数)を指します。

区分(Ⅰ)と(Ⅱ)の各イ・ロは、令和6年度の改定で導入された「職場環境等要件の達成状況」の区分です。後述しますが、より多くの職場環境改善に取り組んでいる場合は算定割合が上乗せされます(ロ)。

処遇改善加算の仕組み。基本報酬と加算の合計に割合を掛ける。

処遇改善加算は、事業所が算定したその月の「所定単位数」(基本報酬+各加算の合計)に、上記の割合を掛けた単位数を加算します。加算の算定要件を満たしていることを都道府県知事に届け出ることで、算定が開始されます。

たとえば定員20人の就労移行支援事業所が、ある月に次の単位数を算定したとします。

  • 基本報酬(定着率30〜40%未満、20人×22日):719単位×20人×22日=316,360単位
  • 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)(15単位×20人×22日):6,600単位
  • 合計所定単位数:316,360+6,600=322,960単位

このとき処遇改善加算(Ⅰ)イを算定すると、322,960×11.5%≒37,141単位が加算されます。1単位10円(その他地域)で換算すると約37万円が上乗せされる計算です。

処遇改善加算はあくまでも職員の賃金改善に充てることが前提であり、事業の利益として自由に使うことはできません。

要件は3系統。キャリアパス・賃金改善・職場環境等。

処遇改善加算の算定要件は、大きく次の3系統に分かれます。より上位の区分を算定するには、より多くの要件を満たす必要があります。

要件の詳細は「別に厚生労働大臣が定める基準」(厚生労働省告示)に定められており、厚生労働省の留意事項通知や各都道府県の実施要領で具体的な内容が示されています。ここでは令和6年度改定後の概要を整理します。

キャリアパス要件

職員の処遇改善に関するキャリアパス要件です。令和6年度改定後の主な内容は次のとおりです。

  • 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備し、書面で周知していること(キャリアパス要件I)
  • 資質の向上のための計画を策定し、研修・教育等の機会を設けていること(キャリアパス要件II)
  • 経験・資格・評価に基づく昇給の仕組みを設けていること(キャリアパス要件III)

賃金改善要件

基準年度(処遇改善加算を算定する前の賃金水準)から実際に賃金改善を行っていることを確認する要件です。加算として受け取った額の全額を職員の賃金改善に充てる義務があります。処遇改善計画書と実績報告書を毎年提出する必要があります。

職場環境等要件

令和6年度改定から本格的に強化された要件です。入職促進・資質向上・両立支援・腰痛対策・生産性向上・情報公表などの区分ごとに、一定数以上の取り組みを実施することが求められます。(Ⅰ)ロを算定するには、より多くの区分でより多くの取り組みを実施することが条件となります。

区分(Ⅰ)〜(Ⅳ)の違い。要件の充足状況で区分が決まる。

4区分の大まかな整理は次のとおりです(「別に厚生労働大臣が定める基準」の概要)。

処遇改善加算の区分別の要件の概要
区分 主な要件の充足状況
(Ⅰ)ロ(11.9%) キャリアパス要件I〜III+賃金改善要件+職場環境等要件(より多くの取り組み)をすべて満たす
(Ⅰ)イ(11.5%) キャリアパス要件I〜III+賃金改善要件+職場環境等要件(標準的な取り組み数)をすべて満たす
(Ⅱ)ロ(11.7%) キャリアパス要件I〜II+賃金改善要件+職場環境等要件(より多くの取り組み)を満たす
(Ⅱ)イ(11.3%) キャリアパス要件I〜II+賃金改善要件+職場環境等要件(標準的な取り組み数)を満たす
(Ⅲ)(9.8%) キャリアパス要件Iまたは II+賃金改善要件+職場環境等要件の一部を満たす
(Ⅳ)(8.1%) 賃金改善要件+職場環境等要件の最低限を満たす

開業から最初の処遇改善加算を算定する場合、新規事業所では就業規則や賃金規程の整備が必要です。開業前から人事担当者または社会保険労務士と連携し、キャリアパス要件に対応した賃金体系を整えておくことが、速やかな届出につながります。

処遇改善加算の届出と算定開始の手順。

処遇改善加算を算定するには、都道府県知事(または市区町村長)に届出を行う必要があります。届出の手順は概ね次のとおりです。

  • 処遇改善計画書の作成(当該年度の賃金改善の計画を記載)
  • 都道府県等への届出(原則として算定を開始したい月の前月末まで)
  • 実績報告書の提出(当該年度終了後)

届出の様式は各都道府県によって異なります。初年度の届出は、開業届出の手続きと同時期に行うことが多く、指定申請の準備と合わせて確認しておきます。

処遇改善加算が収支に与える影響。年間でまとまった金額になる。

処遇改善加算(Ⅰ)イを算定した場合の月間加算額の概算は次のとおりです。定員20人、基本報酬719単位(30〜40%未満)、稼働率70%(14人)、月22日、地域区分その他(1単位10円)で計算します。

  • 基本報酬の月間合計:719×14×22=221,452単位
  • 処遇改善加算(Ⅰ)イ:221,452×11.5%≒25,467単位≒254,670円

年間では254,670円×12か月≒306万円規模の上乗せになります。ただし、この全額を職員の賃金改善に充てる義務があります。

全国の就労移行支援事業所の処遇改善加算の算定状況は、厚生労働省の「障害福祉サービス等経営概況調査」で確認できます。令和6年度決算の調査では、大半の事業所が何らかの区分の処遇改善加算を算定しています。

→ 就労移行支援 開業向け収支シミュレーターでは、処遇改善加算の算定割合を入力することで月収入への影響を確認できます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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