短期入所の意思決定支援研修は、基準第57条第2項(第145条で準用)に根拠があります。国の意思決定支援ガイドライン(平成29年3月・障発0331第15号)が示す3つの基本原則と、日常の支援の場面で意思決定支援を行う姿勢を、職員全員が理解することが研修の目的です。この記事では、短期入所の意思決定支援研修の義務の根拠・内容・記録について整理しました。
意思決定支援研修の義務の根拠は、基準第57条第2項
基準第57条第2項は、次のように定めています。(短期入所には第145条の準用で当てはまります。)
「利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、利用者の意思決定の支援に配慮しなければならない。」
出典:平成18年厚生労働省令第171号 第57条第2項(第145条で準用)
解釈通知(障発第1206001号)は、この条文について次のように述べています。
「意思決定支援ガイドラインを踏まえて、利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、意思決定支援ガイドラインに掲げる次の基本原則に十分に留意しつつ、利用者の意思決定の支援に配慮すること。」
「意思決定支援の根拠となる記録の作成に努めること。」
出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)
研修の回数は、解釈通知に明示されていません。虐待防止研修と同様、年1回以上の定期的な実施と新規採用時の研修が実務上の目安になります。
意思決定支援とは何か
国の意思決定支援ガイドライン(「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」平成29年3月・障発0331第15号)は、意思決定支援を次のように定義しています。
「意思決定支援とは、自ら意思を決定することに困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援し、本人の意思の確認や意思及び選好を推定し、支援を尽くしても本人の意思及び選好の推定が困難な場合には、最後の手段として本人の最善の利益を検討するために事業者の職員が行う支援の行為及び仕組みをいう。」
出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年3月・障発0331第15号)
意思決定支援の3つの基本原則
ガイドラインが示す3つの基本原則は次のとおりです。
| 原則 | ガイドラインの原文 |
|---|---|
| ①自己決定の尊重 | 「本人への支援は、自己決定の尊重に基づき行うことが原則である。」 |
| ②不合理な決定でも尊重する | 「職員等の価値観においては不合理と思われる決定でも、他者への権利を侵害しないのであれば、その選択を尊重するよう努める姿勢が求められる。」 |
| ③意思確認が困難な場合 | 「本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は、本人をよく知る関係者が集まって、記録や生活史などから根拠を明確にしながら意思及び選好を推定する。」 |
出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年3月・障発0331第15号)
日常の支援の全てに意思決定支援の要素がある
ガイドラインは、意思決定支援の場面について次のように示しています。
「日頃から本人の生活に関わる事業者の職員が場面に応じて即応的に行う直接支援の全てに意思決定支援の要素が含まれている。」
出典:同上
年1回の「意思決定支援会議」だけが意思決定支援ではありません。食事・活動・休憩の取り方など、日常の小さな場面で本人が選べているかどうかが問われます。
短期入所では、初めて利用する方や普段と異なる環境にある方が多くいます。宿泊中の生活場面(起床・食事・就寝の時間帯や方法)で、本人が選べる工夫があるかどうかを研修で振り返ることが有効です。
ガイドラインは、選択が難しい場合の工夫について次のように示しています。
「幅広い選択肢から選ぶことが難しい場合は、選択肢を絞った中から選べるようにしたり、絵カードや具体物を手がかりに選べるようにしたりするなど、本人の意思確認ができるようなあらゆる工夫を行い、本人が安心して自信を持ち自由に意思表示できるよう支援することが必要である。」
出典:同上
リスクを理由に意思決定を制約しすぎない
ガイドラインは、リスク管理について次のように注意を促しています。
「リスク管理を強調するあまり、本人の意思決定に対して制約的になり過ぎないよう注意することが必要である。」
出典:同上
「危ないから」「夜間だから」という理由で、利用者の選択を一方的に制限していないかを研修で振り返ることが求められます。
意思決定支援の根拠となる記録を作る
ガイドラインは、記録について次のように示しています。
「本人の日常生活における意思表示の方法や表情、感情、行動から読み取れる意思について記録・蓄積し、本人の意思を読み取ったり推定したりする際に根拠を持って行うことが重要である。」
出典:同上
意思決定支援の根拠となる記録(利用者がどんな方法でどのような意思を示したか)を個別支援計画に残すことが、解釈通知の求める「記録の作成に努めること」の実践になります。研修記録は5年間の保管が必要です。
当方の法定研修・訓練キット(短期入所版)では、意思決定支援をテーマにした研修資料・確認テストを含んでいます。
この記事は、基準の条文(e-Gov法令検索の現行の条文)、国の解釈通知(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)、厚生労働省「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年3月・障発0331第15号)の原文を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。作成:fufumumu_design


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