放課後等デイサービスの稼働率と損益分岐、87.8%が基準になる理由

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 福祉事業所の経営診断ツール(無料で試せます)

放課後等デイサービスは、通学中の障害児が放課後・長期休暇中に利用するサービスです。稼働率の変動が大きく、収支管理において稼働率の把握が特に重要なサービスです。厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)と、福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標(2023年度決算)から整理しました。

稼働率の全国参考値は87.8%

福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標(2023年度決算)では、放課後等デイサービスの稼働率参考値は87.8%です。WAMの調査対象はWAMから融資を受けた事業所のため全国の平均ではありませんが、規模感の目安になります。

稼働率とは、定員と年間営業日数に対して実際に利用された日数・人数の割合です。WAMの参考指標では、稼働率(用いた計算式)=(年間延べ利用者数)÷(定員 × 年間営業日数)× 100 で算出されています。

7サービスの中で比較すると、87.8%は生活介護(84.2%)と同水準で、就労移行支援(69.2%)よりかなり高い水準です。

収支差率の中央値が2.7%という意味

令和6年度決算の放課後等デイサービスの収支差率は、全国平均(表の値)9.1%・中央値2.7%です。平均と中央値の差が大きく(9.1% vs 2.7%)、一部の高収益事業所が平均を引き上げています。

中央値2.7%というのは、304事業所を収支差率の低い順に並べたとき真ん中(152番目)の事業所の収支差率です。全国の放課後等デイサービスの事業所の半数は収支差率が2.7%以下です。

指標 令和6年度(R6) 令和5年度(R5)
収支差率(表の平均) 9.1% 7.9%
収支差率(中央値) 2.7% 0.4%
調査事業所数 304 —
人件費率(給与費率) 64.4% —
赤字割合(収支差率<0%) 36.2% —

令和5年度の中央値は0.4%でしたが、令和6年度は2.7%と改善しています。令和6年4月の報酬改定(特に重症心身障害児・医療的ケア児に関する加算の改定)が一部事業所の収益改善に寄与したと考えられますが、調査データからは特定できません。

稼働率が収支差率に直接影響する構造

放課後等デイサービスの収支は稼働率に大きく左右されます。その理由は収入の構造にあります。

放デイの収入の大部分は、利用者が実際に来所した日の利用日数に応じた報酬(日額報酬)です。来なければ収入はゼロです。一方、職員の人件費・家賃・水道光熱費などの固定費は利用者が来ない日も発生し続けます。

調査事業所の平均規模は、定員11人・年間収入3,102万円・スタッフ5.13人です(令和6年度)。人件費率64.4%で計算すると年間人件費は約1,998万円、固定費を含む支出は約2,831万円です。稼働率が10ポイント下がると(87%→77%)、年間収入は約310万円(3,102万円×10%)減少し、収支差率は急速に悪化します。

損益分岐稼働率の考え方

損益分岐稼働率とは、収支がプラスマイナスゼロになる稼働率の水準です。これを把握することで、「今の稼働率であと何人増えれば黒字になるか」を具体的に計算できます。

概算で計算する方法を示します。

  • 年間の固定費の合計(人件費+家賃+その他)を算出する
  • 利用者1人・1日あたりの収入(基本報酬+加算)を確認する
  • 損益分岐の年間利用者延べ数=固定費 ÷ 利用者1人・1日あたり収入
  • 損益分岐稼働率=損益分岐の延べ利用者数 ÷(定員 × 年間営業日数)× 100

たとえば定員20人・年間営業日数250日の事業所で、固定費合計が年3,000万円・1人あたり日収入が8,000円の場合:損益分岐の延べ利用者数=3,000万円 ÷ 8,000円=3,750人日、損益分岐稼働率=3,750 ÷(20 × 250)=75%です。これを上回る稼働率を維持できれば黒字になります。

稼働率が下がりやすい時期に備える

放課後等デイサービスは、利用者が学校に通学する日と長期休暇(夏休み・冬休み・春休み)で利用パターンが変わります。

長期休暇中は1日の利用時間が長くなるため、報酬単価は通学日と異なります(通学日の単価の方が高いケースが多い)。長期休暇中に稼働率が上がっても、1日あたり収入が下がるため、収入は思ったほど増えないことがあります。

稼働率だけでなく、月別の収入推移を管理することが、収支を安定させるうえで重要です。

放課後等デイサービスの平均規模と収支の目安

調査事業所の令和6年度平均を見ると、定員11人・年間収入3,102万円・スタッフ5.13人という規模感です。定員1人あたりの年収入は291万円(月24万円)です。

定員10人・稼働率87.8%(WAM参考値)で試算すると、年間利用者延べ数は10人×稼働率87.8%×年間営業日数に相当します。放デイの年間営業日数は平均283日(WAM参考値)なので、10×0.878×283=2,485人日/年が目安です。1人日あたり約1.25万円(報酬単価・加算の合計)で試算すると、年収は約3,106万円と、全国平均の3,102万円に近い数字になります。

職種別月給(放課後等デイサービス・全国平均)

職種 常勤月給(全国平均) 非常勤月給(全国平均)
施設長・管理者 327,355円 —
児童発達支援管理責任者 290,852円 —
看護職員 281,554円 117,662円
機能訓練担当職員 286,482円 —
児童指導員 233,656円 96,645円
保育士 233,352円 103,702円

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和7年4月分の給与)

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 福祉事業所の経営診断ツール(無料で試せます)

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算・令和7年4月分給与)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標 2023年度決算分。当方が読み取り・整理したもので、各機関が作成したものではありません。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
サービス共通福祉事業の開業と運営
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました