2026年9月19日に、PFC(たんぱく質・脂質・炭水化物)を「グラム」で直接入力して記録できるWebツール、「グラム帳」を公開しました。40代になった私が、自分の体調管理のために作ったものです。この記事は、何を、なぜ、どう作ったかの記録です。作ったものの紹介というより、途中で何を決めて、何をやめたかを、そのまま書いてみます。
先に、全体像です
- 場所:https://fufumumu-design.com/gramucho/
- 使い方:ブラウザで開くだけです。アプリのインストールは要りません。ホーム画面に追加すると、アプリのように使えます
- 値段:基本の機能は無料です。一部の機能(Pro)は、買い切り1,980円(税込)です
- 記録の置き場所:お使いの端末の中だけです。私のサーバーには送られません
- できないこと:iPhone・iPadでは、カメラでのバーコード読み取りが使えません(理由は後で書きます)
「これだけ分かれば十分」という方は、ここで読むのをやめても大丈夫です。以下は、判断の中身を知りたい方向けの、長い記録です。
作った理由は、自分の体調管理でした
いちばん最初の理由は、自分のためです。私は40代になりました。これから先は、自分ひとりで稼いでいく力を、少しずつつけていかなければならない状況にいます。
そうなると、大事なのは体です。自分が動けなくなれば、その分の仕事は、そのまま止まります。代わりに働いてくれる人は、いません。40代に入って、体調のことが、前よりずっと気になるようになりました。
体調を整える第一歩として、まず「何を、どれくらい食べているのか」を、きちんと数字で見たいと思いました。それには、自分で決めた目標の数字を、そのまま入れて記録できる道具が欲しい。探すより、作ったほうが早いと思い、作ることにしました。体をどう整えるかは、人それぞれです。ここでは、私のやり方の話までは書きません。
同じ不満を持つ人が、ほかにもいました
自分が欲しいと思ったものが、自分だけの困りごとなのか。それを確かめるために、PFCの管理に使われている食事記録アプリのレビューを読みました。書き込みのあるレビューが248件ある、あるアプリを、1件ずつです。
そのうち約21件が、「目標のPFCの数字を、自分で直接入力できない」という内容でした。ほかの、よく使われている食事管理アプリのレビューにも、同じ種類の不満が、それぞれ10件前後ありました。
評価の低いレビューで目立ったのは、次のような声です。これは、私が読んで分類した目安の数です。
- アプリが途中で落ちる(約18件)
- 日付をあとから直せない、履歴が見られない(約13件)
- 広告が、保存ボタンを隠してしまう(約13件)
ここで、注意しておきたいことがあります。レビューは、困った人ほど書く傾向があります。248件のうちの約21件、というのは、利用者全体の割合ではありません。「困っている人が、確かにいる」という手がかりとして受け取りました。それ以上の意味は持たせていません。
決めたこと1:目標の数字は、アプリが決めない
多くの食事アプリは、身長・体重・活動量を入れると、目標のカロリーとPFCを自動で決めてくれます。これは、何も分からない人には、とても親切な仕組みです。
ただ、トレーナーやコーチと一緒に数字を決めている人、自分で試行錯誤して数字を決めている人にとっては、「勝手に決められた数字に合わせる」形になります。レビューの不満は、ここにありました。
そこでグラム帳では、目標のkcal、たんぱく質、脂質、炭水化物を、グラムでそのまま入力します。アプリの側で、目標を自動で決めることはしません。
- 「トレーニングの日」「休みの日」のように、目標に名前を付けて、複数持てます(この単位を「目標セット」と呼んでいます)。無料版は2つまで、Proは無制限です
- P・F・Cを入れると、kcalを計算するボタンがあります。たんぱく質と炭水化物は1gあたり約4kcal、脂質は1gあたり約9kcalとして計算します
- 逆に、kcalとP・Fを入れて、残りを炭水化物で埋めるボタンもあります
自分で決めた数字が、そのまま画面に出る。当たり前のことのようですが、これが今回の一番の出発点です。
決めたこと2:食品のデータは、国の成分表を使う
「鶏むね肉を150g食べた」と入力したら、その栄養が出る。これには、食品ごとの栄養データが必要です。
私は、文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を使うことにしました。この成分表には、2,538の食品が載っています。データは、100gあたりの数値で載っているので、入力したグラム数に合わせて計算しています。
使う前に、利用条件を確認しました。文部科学省のサイトの利用規約(政府標準利用規約に準じたもの)では、商用利用は可能で、出典を書くこと、加工した場合はその旨を書くこと、国が作成したかのように見せないこと、が条件でした。グラム帳の画面の下部には、出典と、「加工して利用している」旨を書いています。
成分表そのものの注意点も、そのまま出すことにしました。成分表には、推定値で示された数値や、測定されていない項目があります。そうした食品は、今回のデータで309件ありました。食品を追加する画面に、その旨の注記を出しています。
成分表の数字の読み方(生と調理後の違い、廃棄率、記号の意味)は、別の記事にまとめました。成分表の数字の見方:鶏むね肉は、生と焼きで100gあたりの数字がなぜ違うのか
コンビニや外食チェーンの商品は、入っていません
これは、はっきりした弱点です。コンビニのおにぎりや、外食チェーンのメニューの栄養値は、同梱していません。
各社の栄養情報の利用条件を見たところ、複製や再配布ができないと書かれているものがありました。ほかの会社も、確認が取れませんでした。確認できないものを、勝手に入れることはしませんでした。
代わりに、「マイ食品」という機能を用意しました。パッケージの表示値を、自分で一度登録すれば、次からは呼び出せます。手間はかかりますが、これが今できる、正直なやり方です。
決めたこと3:記録は、端末の中だけに置く
食事や体重の記録は、自分の体のことなので、人に見られたくない方が多いと思います。グラム帳は、記録をブラウザの保存領域(ローカルストレージ)に置き、サーバーには送りません。会員登録もありません。
この決め方には、もう1つ理由があります。記録を預かるサーバーも、AIも使わないので、利用者が増えても、私の運営費がほとんど増えません。あとで書く「買い切り」という値段の決め方が、これで成り立ちます。
アクセス解析(Googleアナリティクス)は入れています。ページの表示回数など、一般的なアクセス情報に加えて、「Proの案内が開かれた」「購入ボタンが押された」のような、機能の名前を記録しています。食べたもの、体重、目標の数字は、一切送っていません。この内容は、画面の下部と、当サイトのプライバシーポリシーにも書いています。
代わりに、記録が消えるリスクが生まれます
端末の中だけに置く、ということは、端末を変えたり、ブラウザのデータを消したりすると、記録も消える、ということです。ここは、真剣に手当てをしました。
- 設定から、記録をファイルに保存(バックアップ)できます。表計算ソフトで開けるCSV形式の書き出しもあります。バックアップとCSVは、無料のままにしています。記録を人質に取るようなことはしたくないからです
- 3日以上の記録があるのに、まだバックアップを取っていない、または最後から2週間たっている場合は、保存を促す表示を出します
- データを書き換える直前の状態を、自動で1つ退避しておきます
- ブラウザに「消さないでほしい」と申請する機能(永続保存の申請)も使っています
iPhoneのSafariには、7日間ルールがあります
調べていて、いちばん驚いたのがこれです。WebKit(iPhoneのSafariの土台)の公式ブログ「Full Third-Party Cookie Blocking and More」(2020年)には、Safariを使っていて、あるサイトを7日間まったく操作しないと、そのサイトがブラウザに保存したデータを削除する、という趣旨の記載があります。一方、ホーム画面に追加したWebアプリは、この対象外と説明されています。
記録アプリにとっては、大きなことです。そこで、iPhoneでSafariから開いた場合に限り、この仕様と「ホーム画面に追加すると対象外になる」ことを、画面上の案内と設定の中に書きました。
もう1つ、iPhone特有の注意があります。Safariに入れた記録と、ホーム画面のアイコンから開いたときの記録は、別々に保存されます。先にホーム画面に追加してから、記録を入れ始めてください。これも、追加の手順のところに書いています。
決めたこと4:やらないことを、先に決めた
減量や大会の準備は、無理をすると、体を壊すことがある分野です。だからこそ、作る前に、やらないことを決めました。
- 水分や塩分を、極端に減らす方法の案内はしません
- 利尿薬などに関することは、扱いません
- 目標のkcalを、極端に低く自動で提案することはしません
- 「コンディション」欄(水分、食塩、睡眠、メモ)はありますが、記録専用です。量の目安は出しません
体重の欄では、大会の日と目標体重を入れると、1週間あたりに必要な変化の大きさを計算します。この変化が大きすぎる場合は、警告を出します。この警告の基準は、アプリ側の目安として私が置いたもので、医学的な基準を示すものではありません。
画面には、次の注意も出しています。このツールは、医療や栄養の助言ではありません。未成年の方、妊娠中の方、摂食障害の経験がある方、持病がある方は、医師などに相談してください。極端な減量は、健康を損なうおそれがあります。私は栄養や医療の専門家ではありません。だから、専門家がやることは、やらないでおきます。
Proの中身:提案はするが、勝手には変えない
買い切りのProで使える機能のうち、いちばん時間をかけたのが「推定消費カロリー」です。
考え方は、次のとおりです。直近14日間の食事の平均カロリーと、その間の体重の変化を見ます。体脂肪1kgあたりのエネルギーを、約7,200kcalとして計算し、「この人は、実際には1日にどれくらい消費していたか」を逆算します。7,200kcalは、一般に使われている目安の数字で、個人差があります。あくまで目安です。
そのうえで、「週に体重の何%くらい変えたいか」を選ぶと、そのペースに合いそうなkcalを提案します。ここで大事にしたのは、次の3点です。
- 提案するだけで、目標は、あなたがボタンを押したときにだけ変わります
- 1回の変更は、1週間で150kcalまでにしています。急に大きく変えません
- 提案した変更は、取り消せます
記録が足りないときは、無理に計算せず、「食事の記録があと何日、体重の記録があと何日必要です」と表示します。
そのほかのProの機能は、次のとおりです。
- 週次レビュー:直近7日の、kcal・P・F・C・体重の表と、目標の達成率。コーチや仲間にLINEで送れる、チェックイン用の文章をコピーできます
- レシピ:作り置きの材料をすべて入れ、調理後の総重量で割って、100gあたりの栄養を出します。そのまま「マイ食品」に登録できます
- 基礎代謝の目安(Mifflin-St Jeor式):参考値として出します。18歳未満の場合は、対象外と警告します
どう作ったか:AIに書かせて、人が判断する
プログラムの大部分は、AI(Claude Code)に書いてもらいました。私がやったのは、何を作るか、何を作らないかを決めること、表現の確認、そして出てきたものの点検です。調査から公開まで、1日でした。
速く作れることには、危ういところもあります。そこで、自動のテストを用意しました。計算の部分に対する単体テストが52件、画面を実際に操作するブラウザテストが87件です。検索して、グラム数を入れて、追加する、削除して取り消す、といった一通りの操作を、自動で確認しています。
公開したあとに、もう一度、穴を探しました
公開後、「穴」「出典」「法的な表現」「バグ」の4つの観点で、もう一度、丁寧に点検しました。見つかったものの一部を、書いておきます。
- iPhoneでは、カメラのバーコード読み取りが使えません。私が調べた範囲では、Safariは、バーコード読み取りに必要なブラウザの機能(Shape Detection API)に対応していません。iPhoneの別のブラウザも、土台が同じなので同様です。そこで、iPhone・iPadではカメラを試さず、「使えません」と明記し、バーコードの下の数字を手で入れる方法を、主な入口にしました。Androidでは、Chromeなど対応するブラウザで、カメラで読み取れる作りにしています。機種やブラウザによって動きが異なることがあるため、読み取れないときは、手入力でも登録できます
- スマホで、バックアップのファイル保存が動かない場合がある。iPhoneのホーム画面から開いた場合、通常のダウンロードの方法が効かない例が知られていました。そこで、スマホでは共有画面から「ファイルに保存」を選べる方法を優先するようにしました
- CSVを表計算ソフトで開くと、文字が数式として動くことがある。「=」「+」「-」「@」で始まる文字は、表計算ソフトが数式と受け取ることがあります。自由入力の食品名やメモに、そうした文字が入っても安全なように、書き出しのときに処理を加えました
- 「これからもずっと無料です」という文章を、やめました。将来のことは、私にも約束できないからです。「無料のまま使えます」という、いまの事実だけを書く形に直しました
値段は、どう決めたか
無料の範囲と、Proの範囲は、次のように分けました。
- 無料:食事の記録、目標セット2つまで、体重の7日平均とグラフ、大会日からの逆算と警告、マイ食品・マイメニュー、バーコード(JANコード)の登録と呼び出し、バックアップ、CSV書き出し
- Pro(買い切り1,980円・税込):推定消費カロリーと目標の提案、週次レビューとチェックイン文、レシピ、目標セットの無制限化
月額にしなかった理由は、月額にする根拠がないからです。記録を預かるサーバーも、AIの利用料も要らないので、使う人が増えても、私の費用はほとんど増えません。そのうえで、1回払いにしました。金額を決めるときには、似た種類の有料アプリが、私が調べた範囲で、買い切りで3,000円台のものがあることも参考にしました。
Proはデジタル商品のため、購入後の返金はできません。購入前に、無料版で動きを確認してください。特定商取引法に基づく表記は、こちらに載せています。https://fufumumu-design.com/tokushoho/
決済は、Stripeというサービスを使っています。カードの情報は、Stripeの画面で入力する形で、私の側には届きません。公開したあと、自分のカードで実際に購入して、購入後の画面にコードが表示されること、そのコードを入力するとProが有効になることを、確かめました。
こんな人には向いています。こんな人には、向いていません
向いていると思うのは、次のような方です。
- 目標のkcalとPFCを、自分やコーチが決めていて、その数字で記録したい方
- 広告なしで、静かに記録したい方
- 食品のデータの出どころが、はっきりしているものがよい方
- 記録を、自分の端末の中だけに置きたい方
向いていないのは、次のような方です。
- 商品のバーコードを読み取るだけで、栄養が自動で出る全自動のアプリがよい方(グラム帳は、商品データベースを持っていません)
- iPhoneで、カメラでのバーコード読み取りを使いたい方
- 写真を撮ると、料理の栄養を自動で判定してほしい方
- 複数の端末で、記録を自動で同期したい方(同期機能はありません)
- スマートフォンの健康管理アプリ(ヘルスケアなど)と、自動でつなぎたい方
できないことを先に書いたのは、買ったあとで「思っていたものと違った」となるのが、いちばん残念だからです。
まだ分からないことも、書いておきます
- 公開したばかりで、使ってくれた方の声は、まだほとんどありません。役に立つかどうかは、これから分かります
- スマートフォンは機種やブラウザの種類が多く、表示や動きが少しずつ違うことがあります。使いづらい点や、動かない点があれば、教えてください
- コンビニや外食の商品データがないのは、弱点のままです。よい方法が見つかれば、追加したいと思います
ご意見は、info@fufumumu-design.com までお寄せください。
ひとりで稼ぐ、その途中の記録として
ふふむむデザインは、中小事業者さん向けに、ホームページやLPを作っている屋号です。今回のグラム帳は、事業者さん向けのサービスではありません。自分の体を守りながら、ひとりで稼いでいく、その途中で、自分のために道具を作り、公開するところまでやってみた記録です。
自分の体のことなので、「セルフケア」のカテゴリーに入れました。同じカテゴリーには、「わかっているのに、動けない」をテーマにした記事もあります。どちらも、自分の生活を、自分で整えるための工夫、という点でつながっています。
まとめ
- 40代になり、ひとりで稼いでいく中で、体調管理が気になって、自分のために作りました。
- PFCの管理アプリのレビューを読むと、「目標の数字を、自分で直接入力できない」という不満が、一定数ありました(ある1つのアプリの248件のうち、約21件)。
- グラム帳は、目標のkcal・たんぱく質・脂質・炭水化物を、グラムで直接入力できる記録ツールです。目標は、アプリが自動で決めません。
- 食品データは、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の2,538食品です。コンビニや外食の商品は、入っていません。
- 記録は、端末の中だけに保存され、サーバーには送りません。その代わり、消えないように、バックアップの仕組みを用意しました。iPhoneのSafariには、7日間ルールがあるので、ホーム画面への追加をおすすめします。
- 基本は無料、Proは買い切り1,980円(税込)です。iPhoneでは、カメラのバーコード読み取りは使えません。
本ツールは、疾病の診断、治療又は予防を目的とするものではなく、医師・管理栄養士などの専門家による助言に代わるものではありません。食品の栄養データは、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を、当サイトで加工して利用しています(国が作成したものではありません)。


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