エステサロンのメニュー別原価率。フェイシャル・脱毛・痩身で、何が違うか。

エステサロンのメニュー別原価率。フェイシャル・脱毛・痩身で、何が違うか。 エステサロンの開業

エステサロンのメニューは、フェイシャル・脱毛・痩身・リラクゼーションなどに大別されますが、それぞれで使う消耗品・機器の種類が異なるため、原価率も変わります。同じ客単価でも、メニュー構成によって手元に残る粗利が変わります。

ここでは、メニュー別の原価の構造と、収益に影響する要因を整理します。

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エステサロン全体の粗利率は、約83%(原価率約17%)

日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(エステティック業・2024年度調査)によると、エステティック業の売上総利益率(粗利率)の平均は83.0%(中央値86.0%)です。裏を返すと、原価率は平均で約17%(中央値約14%)です。

飲食業の原価率(平均30〜40%台)と比べると、エステティック業の原価率はかなり低い水準です。これは、施術の主な価値が「技術・時間・施術環境」にあり、消耗品(化粧品・消耗品)は施術金額の一部にすぎないためです。

ただしこの83%という粗利率は、サロン全体の平均であり、メニューによって差があります。原価(消耗品費)の多寡でメニュー別の粗利率は変わります。

エステティック業の売上総利益率(粗利率)
指標 平均値 中央値 黒字企業のみ(n=47)
売上総利益率(粗利率) 83.0% 86.0% 85.3%

出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」エステティック業(2024年度調査)

フェイシャルの原価率:消耗品が多く、原価率は高め

フェイシャルメニュー(クレンジング・美容液・パック・保湿など)は、施術ごとに使う化粧品・消耗品の種類が多いです。使用する製品のグレードによって、1回の施術当たりの消耗品費が変わります。

業務用の化粧品を使う場合、1施術あたりの消耗品費は使用する製品・使用量によって異なりますが、低コストのものから高グレードのものまで幅があります。客単価8,000〜15,000円のフェイシャルコースであれば、原価率は10〜20%台が多い水準とされています(公式の業種別統計はないため、業界の一般的な観察に基づく概算です)。

フェイシャルの特徴として、消耗品費(変動費)が高い分、機器への初期投資は少なく済む傾向があります。高品質の化粧品を使うほど客単価を高く設定できますが、原価率も上がります。

フェイシャルの原価率の概要(目安)
項目 特徴
主な原価 化粧品・美容液・パック・コットンなどの消耗品
原価率の傾向 エステ全体の中では高め(消耗品の使用量が多い)
初期投資 機器がなくてもできるメニューが多く、初期コストは低め
収益性の特徴 製品グレードを上げると客単価も上げやすいが原価も上がる

脱毛の原価率:機器の償却が主なコスト

光脱毛・レーザー脱毛・IPL脱毛などの脱毛メニューは、消耗品費(ジェル・使い捨て保護シート等)よりも、脱毛機器の初期投資と維持費が主なコスト要因です。施術1回あたりの消耗品費は比較的低い一方、機器代金の減価償却費が実質的な原価として乗ります。

業務用脱毛機器の価格は、機種・方式によって数十万円から数百万円と幅があります。機器の耐用年数(減価償却期間)は機器の種類によりますが、購入代金を施術件数で割った「1施術あたりの機器コスト」が収益計算の重要な要素です。

脱毛は1回よりもコース契約(6〜12回)での販売が一般的です。コース販売では前払いで現金が入りますが、施術はその後に続くため、「受け取った現金がそのまま利益になるわけではない」という点を抑えておく必要があります。

脱毛の原価率の概要(目安)
項目 特徴
主な原価 脱毛機器の減価償却費・ジェル・使い捨て保護材等の消耗品
原価率の傾向 消耗品費は低め。機器の償却が実質的な原価の中心
初期投資 脱毛機器への投資が必要(数十万〜数百万円)
収益性の特徴 コース前払いで現金回収が早いが、未消化施術が負債として残る

痩身の原価率:機器+消耗品の両方がかかる

痩身メニュー(キャビテーション・ラジオ波・EMS・温熱系など)は、使用機器の種類が多く、消耗品(導電ジェル・シート類)も必要なため、フェイシャルや脱毛に比べて「機器コスト+消耗品コスト」の両方が発生する傾向があります。

機器の価格は方式や機能によって大きく異なります。廉価な単機能機器から高機能な複合機まで幅があり、選択によって初期投資額が変わります。

痩身は施術時間が長いことが多く(60〜90分のコースが一般的)、施術者の稼働時間単位で見た収益効率に影響します。単価が高くても、1日に施術できる件数が限られるため、売上の上限も計算する必要があります。

痩身の原価率の概要(目安)
項目 特徴
主な原価 機器の減価償却費+ジェル・シート等の消耗品
原価率の傾向 機器費と消耗品費の両方がかかる
施術時間 長めのコースが多く、1日あたりの施術件数に上限がある
収益性の特徴 高単価を設定しやすいが、時間効率を確認する必要がある

メニュー構成を変えると粗利率が変わる

同じ売上金額でも、消耗品の多いフェイシャルと消耗品の少ない施術を組み合わせると、粗利率が変わります。公庫の調査ではエステティック業全体の粗利率の平均83%ですが、これはサロンごとのメニュー構成によって上下します。

メニュー構成別の粗利率のイメージ(月商100万円のサロン・試算)
メニュー構成 推定原価率 推定粗利率 推定粗利額
化粧品中心のフェイシャル(高品質ライン) 約20〜25% 約75〜80% 75〜80万円
公庫調査の平均的なエステサロン 約17%(平均) 約83%(平均) 83万円
機器施術中心(脱毛・痩身) 約10〜15%(消耗品のみ) 約85〜90%(消耗品ベース) 85〜90万円

試算は当方が行いました。機器施術の推定原価率は消耗品のみで計算しており、機器の減価償却費は含みません。減価償却費を加えると実質的な原価率は変わります。

機器施術は消耗品の原価率が低い分、表面上の粗利率は高くなります。ただし機器への初期投資(減価償却費)を含めると実質的な費用が増えるため、「消耗品ベースの原価率が低い=全体のコストが低い」とは単純には言えません。

原価率と施術時間の両方で収益を考える

原価率だけでなく、施術時間も収益に影響します。同じ粗利率でも、60分のメニューと30分のメニューでは1時間あたりに稼げる粗利が異なります。

施術時間と客単価の違いによる時間当たり粗利の比較(試算)
メニュー例 施術時間 客単価 原価率 粗利額 時間あたり粗利
フェイシャルA(高品質化粧品) 60分 12,000円 20% 9,600円 9,600円/時間
フェイシャルB(スタンダード) 60分 8,000円 12% 7,040円 7,040円/時間
脱毛(顔・全身コース1回) 45分 10,000円 8%(消耗品のみ) 9,200円 12,267円/時間
痩身コース 90分 15,000円 10%(消耗品のみ) 13,500円 9,000円/時間

試算は当方が行いました。客単価・施術時間・原価率は一例であり、サロンの設定によって異なります。機器の減価償却費・消耗以外の固定費は含んでいません。

時間あたりの粗利を計算すると、施術時間の短い脱毛が高くなります。ただしこれは消耗品ベースの原価のみで、機器の投資回収費用は含んでいません。実際には機器の減価償却費を含めて計算する必要があります。

高単価の化粧品を使う場合のメリットとデメリット

フェイシャルで高品質の化粧品(業務用ブランド品)を使うと、客単価を高く設定できる反面、1回あたりの消耗品費も増えます。

消耗品費が増えるのに客単価も上がるなら、どちらが得かは粗利額で比較します。例えば、スタンダードの化粧品を使う場合(客単価8,000円・原価率12%・粗利7,040円)と、高品質の化粧品を使う場合(客単価12,000円・原価率20%・粗利9,600円)を比べると、後者の方が粗利額が大きいです。

ただし「高品質の化粧品=必ず客単価を上げられる」わけではありません。客単価を上げられるかどうかは、施術者の技術・サロンのブランド力・顧客層によります。化粧品にかけるコストを増やして客単価が上がらなければ、原価率だけが上がって利益が減ります。

コース販売での注意点:前払い金は収益ではない

脱毛・痩身などのコース販売では、複数回の施術料を一括で受け取ることが多いです。この場合、受け取った現金はすぐに利益になりません。施術が完了した分が売上として計上されます(民法・会計の原則に基づく)。

前払い金(未消化のコース分)は、法律上・会計上は「前受金(負債)」です。顧客が解約や返金を求めた場合、消費者契約法・特定商取引法の規定に基づく返金義務が生じます。

特定商取引法(特商法)の「特定継続的役務提供」では、エステサロンの継続コース(5万円超・期間1か月超)は規制対象になります。中途解約の際のキャンセル料は、特商法で上限が定められています(最後に行った施術の対価に相当する額とその10%を上限とする違約金が目安)。

出典:消費者庁「特定継続的役務提供(エステティックサービス等)」

収支計画ではメニュー別の原価率を分けて考える

サロンの収支計画を立てる際は、主力メニューの原価率を個別に確認することが大切です。「全体の原価率を17%(公庫の平均値)で一律に使う」よりも、フェイシャル・脱毛・痩身などメニュー別に原価を積み上げた方が、実態に近い計画になります。

当方の「エステサロンの開業 収支シミュレーター」では、客単価・原価率・人件費・固定費などを入力して、月次・年次の収支と損益分岐点を試算できます。基本機能は無料です。

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出典

作成:fufumumu_design(ふふ)。確認日:2026年10月19日。原価率の業界水準については公式の業種別統計がないため、一部は業界の一般的な観察に基づく概算を含みます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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