就労継続支援B型の収入は、工賃月額の区分で決まる。

就労継続支援B型の収入は、工賃月額の区分で決まる。 就労継続支援B型

就労継続支援B型の収入は、毎日の利用実績に「基本報酬の単位数」を掛けて計算する。その単位数は、前年度に利用者へ支払った平均工賃月額の区分と、事業所の利用定員の区分の、2つの組み合わせで決まる。

つまり、前年度の工賃が高いほど単位数が上がり、翌年度の収入が増える仕組みだ。新しく開設した事業所は前年度の実績がないため、最初は最も低い区分からスタートする。

この記事では、工賃月額の区分・定員の区分・具体的な単位数・月収入の試算・全国の事業所の実態を、一次資料の数値で説明する。

工賃月額と定員の組み合わせで単位数が決まる

就労継続支援B型の基本報酬(就労継続支援B型サービス費(Ⅰ))は、「前年度の平均工賃月額の区分」と「利用定員の区分」の2軸で構成されている。前者が14区分、後者が5区分で、70通りの組み合わせそれぞれに単位数が定められている(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準 別表第14、以下「告示第523号」)。

単位数に地域単価(円/単位)を掛けた金額が、1利用者1日あたりの報酬額になる。地域単価は、事業所が所在する市区町村によって異なり、東京23区(11.18円)から最も低い地域(10.00円)まで8段階ある。

報酬の合計は、月間の延べ利用者数(利用人数×利用日数の合計)に1日あたりの報酬額を掛けて計算する。加算(送迎加算・処遇改善加算など)が加わり、利用者負担額が差し引かれた残りが、国保連から振り込まれる。

工賃月額の14区分

前年度の平均工賃月額の区分は、低い方から順に次の14段階だ(告示第523号 別表第14の注2より)。

「前年度の平均工賃月額」は、前年度に利用者全員へ支払った工賃の総額を、前年度の延べ利用者数(延べ日数ではなく人数)で割った額だ。翌年度の報酬区分はこの額で決まる。

区分番号 前年度の平均工賃月額
14(最低) 1万円未満
13 1万円以上1万5千円未満
12 1万5千円以上1万8千円未満
11 1万8千円以上2万円未満
10 2万円以上2万3千円未満
9 2万3千円以上2万5千円未満
8 2万5千円以上2万8千円未満
7 2万8千円以上3万円未満
6 3万円以上3万3千円未満
5 3万3千円以上3万5千円未満
4 3万5千円以上3万8千円未満
3 3万8千円以上4万5千円未満
2 4万5千円以上4万8千円未満
1(最高) 4万8千円以上

全国の就労継続支援B型の事業所数は14,047か所(令和7年1〜3月・国保連データ・厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向について」より)で、前年度比274か所の増加が続いている。全国の平均工賃月額は16,507円(令和5年度・厚生労働省「就労継続支援B型事業所における工賃等の水準について」)だ。

この16,507円という水準は、14区分のうち「1万5千円以上1万8千円未満」(区分12)に相当する。14段階のうち下から3番目だ。全国の事業所の平均がこの位置にあるということは、区分12以下に多くの事業所が集まっていることを示している。

定員の5区分

利用定員は、次の5区分に分かれている(告示第523号 別表第14)。

区分 利用定員
1 20人以下
2 21人以上40人以下
3 41人以上60人以下
4 61人以上80人以下
5 81人以上

定員が少ない事業所ほど1人あたりの単位数が高く設定されている。定員が大きい事業所はスタッフ1人が複数の利用者を担当できるため、1人あたりのコストが下がるという考え方を反映している。

就労継続支援B型の最低定員は20人だ(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準 第74条)。ただし、多機能型事業所(複数のサービスを一体的に行う事業所)は10人以上から認められる場合がある。

単位数の具体例(定員20人以下の場合)

定員20人以下の事業所を例に、工賃区分ごとの単位数(1利用者1日あたり)を見てみる。告示第523号 別表第14と令和8年6月施行のサービスコード表の全件一致を確認した数値だ。

前年度の平均工賃月額の区分 単位数(1人1日)
4万8千円以上(最高区分) 837単位
4万5千円以上4万8千円未満 812単位
3万8千円以上4万5千円未満 805単位
3万5千円以上3万8千円未満 781単位
3万3千円以上3万5千円未満 758単位
3万円以上3万3千円未満 738単位
2万8千円以上3万円未満 738単位
2万5千円以上2万8千円未満 726単位
2万3千円以上2万5千円未満 726単位
2万円以上2万3千円未満 705単位
1万8千円以上2万円未満 703単位
1万5千円以上1万8千円未満(全国平均の工賃に相当) 682単位
1万円以上1万5千円未満 673単位
1万円未満(最低区分・新規事業所) 590単位

最高区分(837単位)と最低区分(590単位)の差は247単位だ。地域単価10.00円の地域で計算すると、1利用者1日あたり2,470円の差になる。稼働日数20日・利用者20人の事業所では月間で約98万8千円の収入差が生じる。工賃への投資がそのまま翌年度の報酬に跳ね返る仕組みだ。

月収入の試算:工賃区分別・稼働率別の比較

定員20人・月稼働22日・地域区分「その他」(1単位10.00円)で、工賃区分と稼働率を変えた場合の月収入(基本報酬のみ)を試算する。

工賃区分 単位数 稼働率70%
(延べ308人日)
稼働率85%
(延べ374人日)
稼働率100%
(延べ440人日)
最低区分(1万円未満・新規) 590単位 約182万円 約221万円 約260万円
全国平均相当(区分12・1.5〜1.8万円) 682単位 約210万円 約255万円 約300万円
最高区分(4.8万円以上) 837単位 約258万円 約313万円 約368万円

この試算は基本報酬のみで、送迎加算・処遇改善加算などは含んでいない。新規開設(最低区分590単位)と工賃が全国平均水準に達した場合(682単位)の差は、稼働率85%で約34万円/月になる。工賃向上への取り組みが収入に直結することがわかる。

処遇改善加算を加えると月収入はどれだけ増えるか

処遇改善加算(Ⅰ)(24.0%)を算定できれば、基本報酬にさらに24.0%が加わる。定員20人・稼働率85%で工賃区分ごとに試算すると次のようになる。

工賃区分 基本報酬(月) 処遇改善加算(Ⅰ)24.0% 合計
最低区分(590単位) 約221万円 約53万円 約274万円
全国平均相当(682単位) 約255万円 約61万円 約316万円
最高区分(837単位) 約313万円 約75万円 約388万円

出典:障害福祉サービス等報酬告示(令和6年3月改定)(処遇改善加算率)

損益分岐点の目安

損益分岐点は加算の取得状況と固定費によって変わるため一概には言えないが、定員20人の新規事業所の目安を示す。

月間の固定費の概算(職員2〜3名・職業指導員1名・生活支援員1名・サービス管理責任者1名)は以下のとおりだ。

費用の種類 月額の目安
職員の人件費(3名) 約180万〜250万円
家賃・光熱費・通信費 約20万〜40万円
消耗品・材料費・その他 約10万〜20万円
合計(概算) 約210万〜310万円

固定費を220万円と仮定した場合、最低区分(590単位×10.00円)で損益分岐に達する延べ利用者数の目安は次のようになる。

220万円 ÷(590単位×10.00円)÷ 22日 ≈ 16.9人/日(稼働率約84%相当)。処遇改善加算込みなら、より低い稼働率で均衡する。

開業直後は利用者が徐々に集まる期間がある。稼働率50〜70%から始まるケースが多く、黒字化まで半年〜1年程度かかることを想定した運転資金の確保が必要だ。

入金タイムラグに注意する

障害福祉サービスの報酬は、サービスを提供した月の翌々月に入金される。4月1日に開業した場合、4月のサービス提供分が入金されるのは6月だ。4月・5月は職員の人件費・家賃・光熱費などが出ていくが、報酬の入金はない。最低でも2か月分の支出を賄える運転資金が必要になる。

新規事業所の扱い

告示第523号の規定上、新しく指定を受けた事業所は「前年度の平均工賃月額の実績がない」ため、最低区分(1万円未満・590単位)から始まる。就労継続支援B型には就労移行支援のような「新規指定の引き下げ」はないが、最低区分スタートは同様だ。

2年目には、1年目に支払った工賃の実績が反映され、区分が上がる可能性がある。ただし、初年度に工賃を全く払えなかった場合は2年目も最低区分のままとなる。工賃の水準を早期に引き上げることが、報酬の底上げに直結する。

1年目の運営は最低区分の単位数で計算しながら、利用者の作業能力を高め、工賃支払いの原資となる受託作業や自社製品の販路を確保する動きを同時に進めることが、財務的には最も効率のよい順序だ。

全国の平均工賃月額の実態

全国の就労継続支援B型の平均工賃月額は、令和5年度時点で16,507円だ(厚生労働省「就労継続支援B型事業所における工賃等の水準について」・国保連データ)。前述のとおり、14区分のうち「1万5千円以上1万8千円未満」(区分12)に位置する。

就労継続支援B型は最低賃金法の対象外のサービスで、「一般就労に向けた訓練の場」として設計されている。工賃を高めることは、利用者のモチベーションと生活水準の向上につながるとともに、事業所自身の報酬増にも直結する。工賃向上計画(毎年度末に策定・都道府県に提出)の策定が義務付けられているのはこのためだ。

全国の経営実態

厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査(令和6年度決算)」によると、就労継続支援B型の全国の平均は次のとおりだ(集計対象605事業所)。

項目 全国平均(1事業所あたり)
年間収入 約3,163万円
工賃支払総額 約2,103万円
収支差(税引前) 約149万円
収支差率 約4.7%
調査時の平均定員 約25人

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算・就労継続支援B型)

収支差率4.7%は、訪問介護(全国平均-0.3%)と比べると相対的に高い水準だ。ただし、この4.7%は平均であり、事業所ごとのばらつきは大きい。工賃を多く払えている事業所は報酬も高くなるため、工賃水準と収支差率には正の相関があると考えられる。

人員基準は、職業指導員と生活支援員の総数が利用者÷10(それぞれ1人以上・省令第171号 第213条)だ。定員20人の事業所では最低2人(職業指導員1人・生活支援員1人)が必要で、サービス管理責任者を加えると最低3人の体制となる。常勤換算で計算するため、非常勤スタッフを組み合わせることも可能だ。

まとめ

  • 基本報酬は前年度の平均工賃月額の区分(14段階)×定員区分(5段階)の70パターンで決まる(告示第523号 別表第14)
  • 全国の平均工賃月額は16,507円(令和5年度)で14区分中の下から3番目の区分12に相当する
  • 定員20人・稼働率85%の月収入は最低区分で約221万円、全国平均相当で約255万円、最高区分で約313万円(基本報酬のみ)
  • 処遇改善加算(Ⅰ)24.0%を算定できれば月収入はさらに約53〜75万円(定員20人・稼働率85%の場合)増加する
  • 新規事業所は最低区分スタート。工賃水準を早期に引き上げることが翌年度の報酬底上げに直結する
  • 報酬入金は翌々月のため、最低2か月分の支出を賄える運転資金が開業時に必要
  • 全国平均の収支差率は約4.7%・年間収入約3,163万円(令和7年度経営概況調査・令和6年度決算)

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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