飲食店の廃棄ロスを1%減らすと、年間38万円の原価削減になる。3つの管理方法。

飲食店の廃棄ロスを1%減らすと、年間38万円の原価削減になる。3つの管理方法。 飲食店の開業

食材廃棄ロスは原価率を直接押し上げます。公庫の記入例(洋風居酒屋)では原価率35%ですが、廃棄ロスが月商の3%相当発生すると原価率は実質38%に上昇し、月次損益が約9.7万円悪化します。廃棄ロスを減らす方法は主に3つです。「仕込み量を実績客数に連動させる」「FIFO(先入れ先出し)を徹底する」「ロス率を記録して可視化する」。廃棄ロスの改善は設備投資や値上げを必要とせず、即日始められるコスト削減策です。

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廃棄ロスが原価率を直接引き上げる仕組み

食材廃棄ロスとは、仕入れた食材のうち販売・提供せずに廃棄した分の原価です。廃棄した食材は売上を生まないまま原価として計上されるため、同じ仕入れ額でも売上が増えず原価率が上がります。

月商 食材仕入れ額(原価35%) 廃棄ロス0% 廃棄ロス3%発生時の実質原価率 月次損益の変化
322万円 112.7万円 35.0% 38.0%(+9.7万円の廃棄) -9.7万円
322万円 112.7万円 35.0% 37.0%(+6.4万円の廃棄) -6.4万円
322万円 112.7万円 35.0% 36.0%(+3.2万円の廃棄) -3.2万円

廃棄ロスを月商の1%から0%に削減するだけで、月次損益が3.2万円改善します。年間では38.4万円の差になります。値上げや集客施策なしで達成できる改善のため、コスト管理の最初の対象になります。

廃棄ロスが多い食材のパターン

飲食店で廃棄ロスが発生しやすい食材のパターンを整理します。

食材の種類 廃棄が起きやすい理由 主な対策
鮮度が落ちやすい生鮮品(魚・肉・野菜) 消費期限が短い。週末に多く仕入れると週初めに余る 少量多回発注・曜日別の仕込み量調整
仕込みの量が多すぎる品 「念のため多めに」が積み重なる 前週の実績客数を基に仕込み量を計算する
オーバーポーションの料理 提供量が多すぎてお客さんが残す→次の客への再提供不可 盛り付け基準をグラムで決める
季節商品・期間限定品 フェア終了後に残る食材 期間終了2週前から発注量を絞る
低回転メニューの食材 月に数回しか出ないメニューの食材が余る 提供頻度の低いメニューを削除・他のメニューと食材を共有する

廃棄ロスを減らす3つの方法

廃棄ロスを削減するために現場で実施しやすい3つの方法を整理します。

第1の方法は「仕込み量を実績客数に連動させる」ことです。前週の同じ曜日の客数・注文傾向をもとに、翌週の仕込み量を設定します。「昨日何人来たか」ではなく「先週の同じ曜日は何人だったか」を参照すると、天候・曜日パターンの影響を考慮しやすくなります。

仕込み量の基準式:

仕込み量 = 予測客数 × 1人あたりの平均使用量 × (1 + バッファ率5〜10%)

バッファ率を5〜10%程度にとどめることで「念のため多め」の積み重ねを防げます。

第2の方法は「FIFO(先入れ先出し)の徹底」です。FIFOとは「先に仕入れた食材を先に使う」原則で、冷蔵庫・冷凍庫への収納時に古いものを前に、新しいものを後ろに配置します。

FIFO実施前 FIFO実施後
新しい食材を前面に置きがちで古い食材が奥に残る 新しい食材を後ろに置く決まりにすることで、自然と古い食材を先に使う流れになる
気づいたら賞味期限が切れた食材が出てくる 食材の廃棄が減る

冷蔵庫・冷凍庫の棚に「古い← →新しい」のラベルを貼るだけで、スタッフ全員が自然とFIFOを実行できるようになります。

第3の方法は「廃棄ロスを記録して可視化する」ことです。廃棄した食材の品目と量を日次で記録します。月次の集計で「何の食材をどのくらい廃棄しているか」が把握でき、仕込み量の調整と発注量の見直しに使えます。

記録の形式はシンプルで構いません。日付・食材名・廃棄量・廃棄理由(賞味期限切れ・仕込み余り・提供不可)を記録するだけで、傾向が見えてきます。

メニュー設計で廃棄ロスを構造的に減らす

個々の食材管理だけでなく、メニュー設計を変えることで廃棄ロスを構造的に減らすことができます。

食材の使い回しができるメニュー構成にする方法が有効です。たとえば「豚バラ」を使ったメニューを2〜3品作ることで、1品の注文数が少なくても豚バラ全体の消費量が増え、廃棄が減ります。食材を絞ってメニューを構成することは、発注管理・仕込みの効率化にもつながります。

原価率を下げる方法全体については、飲食店の原価率を下げる方法で詳しく説明しています。

廃棄ロス率の計算方法

廃棄ロス率は以下の式で計算します。

廃棄ロス率 = 廃棄した食材の原価合計 ÷ 月商 × 100

月商322万円の場合の廃棄ロス率別の影響:

廃棄ロス率 月次の廃棄金額 年間の廃棄金額 月次損益への影響
0%(理想) 0円 0円 0円
1% 3.2万円 38.4万円 -3.2万円
2% 6.4万円 76.8万円 -6.4万円
3% 9.7万円 116.4万円 -9.7万円
5% 16.1万円 193.2万円 -16.1万円

廃棄ロス率5%は「月商322万円のうち16.1万円分を捨てている」状態です。年間では193万円相当の食材が無駄になっています。廃棄ロス率を5%から1%に改善するだけで、年間154万円の原価削減になります。

原価率・FL比率の目標値の設定は飲食店の開業 収支シミュレーターで確認できます。

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本記事の数値は公庫の創業計画書記入例(洋風居酒屋・2025年4月版)の原価率・月商をもとに計算しています。廃棄ロス率の目安は業態・仕入れ内容によって異なります。本ツールは当方が作成した民間のシミュレーターであり、日本政策金融公庫が作成・提供するものではありません。むむ(fufumumu_design)作成・2026年11月確認。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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