飲食店の原価率を下げる方法。仕入・廃棄・メニューの3点で原価率を35%から30%に改善すると月次損益がどう変わるか。

飲食店の原価率を下げる方法。仕入・廃棄・メニューの3点で原価率を35%から30%に改善すると月次損益がどう変わるか。 飲食店の開業

公庫の創業計画書記入例(洋風居酒屋・月商322万円)では原価率35%で月次損益が約47.4万円です。原価率を5ポイント下げて30%にすると、月次の食材費が16.1万円(322万円×5%)減り、単月損益は63.5万円に改善します。年間では193万円の差になります。仕入れの見直し・廃棄ロスの削減・メニュー構成の最適化の3点で、原価率は段階的に改善できます。

飲食店の原価率の計算式と全国の水準

原価率=食材費÷売上高×100で計算します。月商322万円・食材費112.7万円であれば、112.7÷322×100=35.0%です。食材費には仕入れ代だけでなく、廃棄した食材のコストも含まれます。仕込みで捨てた部分・営業後の余り・傷みで廃棄した在庫はすべて食材費として原価に乗ってきます。

日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査2025年度」によると、飲食店の原価率(売上原価率)の全体中央値は35%前後です。黒字企業の平均は30%台前半(31〜34%程度)で、赤字・黒字を合わせた全体より3〜4ポイント低い水準です。原価率35%から30%台前半への改善が、黒字企業と非黒字企業の差のひとつになっています。

原価率 月次食材費(万円) 月次粗利(万円) 単月損益(万円) 全国水準との比較
30% 96.6 225.4 63.5 黒字企業の平均水準
32% 103.0 219.0 57.1 黒字企業の平均水準内
35% 112.7 209.3 47.4 全体の中央値(公庫記入例)
38% 122.4 199.6 37.7 中央値より高い水準
40% 128.8 193.2 31.3 改善が必要な水準

※月商322万円・固定費156.1万円(人件費88.6万+家賃20万+その他47.5万)・返済5.8万円/月を前提にしたシミュレーションです。

原価率1ポイントの差は月商322万円に対して3.22万円の損益の差になります。原価率が35%と32%の違いは月次で9.66万円(年間で115.9万円)の違いです。原価率の管理は月次の損益に直接響く数値です。

原価率を1ポイントずつ改善した場合の損益の変化

原価率を1ポイントずつ改善していった場合に、月次・年間の損益がどう変わるかを整理します。固定費・返済は変わらず、売上の改善分がそのまま損益の改善になります。

改善後の原価率 月次食材費の削減(万円) 月次損益の改善(万円) 年間損益の改善(万円) 改善後の単月損益(万円)
35%(現状) − − − 47.4
34%(−1pt) 3.2 3.2 38.6 50.6
33%(−2pt) 6.4 6.4 77.3 53.8
32%(−3pt) 9.7 9.7 115.9 57.1
31%(−4pt) 12.9 12.9 154.6 60.3
30%(−5pt) 16.1 16.1 193.2 63.5

原価率を1ポイント改善するだけで月次損益が3.2万円増え、年間では38.6万円の差になります。原価率を35%から30%まで5ポイント改善すると、年間の損益は193万円増えます。これは固定費を下げることなく、食材の管理だけで実現できる改善です。

仕入れ管理で原価率を下げる

原価率を下げる最初の着手点は仕入れです。仕入れ価格が同じでも、発注のタイミング・ロット・仕入先の見直しで食材費を削減できます。

発注の頻度と量が食材費に影響します。毎日少量を仕入れると鮮度は保てますが、配送コストと小ロット割増が発生しやすいです。週2〜3回の発注にまとめると配送コストが下がり、仕入先との関係も強化できます。ただし在庫が増えると廃棄リスクが上がるため、仕入れ量と廃棄のバランスを取る必要があります。

仕入先の選択も原価率に影響します。食材の種類ごとに卸業者・市場・業務スーパーの価格を比較し、コストと品質のバランスを確認します。飲食店向けの食材卸では同じ品目でも業者によって価格が5〜15%程度異なることがあります。主要な食材について年1〜2回、相見積もりを取る習慣が原価率の管理に役立ちます。

原価率が高くなりやすい食材は業態によって異なります。居酒屋・ダイニングバーでは肉・魚介の仕入れが原価の大半を占めます。仕入れ量が多いカテゴリーから順に管理を強化する方が、全体の原価率改善の効率が良くなります。

廃棄ロスを減らして原価率を改善する

廃棄ロスは原価率に直接上乗せされます。月商の2〜5%が廃棄になっているとすると、月商322万円では6.4〜16.1万円の廃棄コストです。廃棄率を3%から1%に改善すると、月次で6.4万円(9.66万−3.22万)の食材費が減ります。

廃棄率 月次廃棄額(万円) 廃棄が原価率に加算するポイント 廃棄率0.5%との差(月次・万円)
0.5% 1.6 +0.5pt −
1.0% 3.2 +1.0pt 1.6
2.0% 6.4 +2.0pt 4.8
3.0% 9.7 +3.0pt 8.1
5.0% 16.1 +5.0pt 14.5

廃棄率3%と0.5%では原価率に2.5ポイントの差があります。月商322万円でこの差は8.1万円/月(年間97万円)です。廃棄ロスを下げることは、仕入れ価格の交渉と同等かそれ以上の効果を生むことがあります。

廃棄ロスを減らす具体的な手順として、日次の在庫チェックがあります。食材ごとに発注量・使用量・廃棄量を記録し、廃棄が多い食材を特定します。廃棄が多い食材はメニューから使用頻度を上げるか、発注量を減らすかを判断します。季節・曜日・天候で来客数が変わる業態では、予測に基づいた発注量の調整が廃棄削減の核心です。

日替わりや週替わりのメニューを設けることで、売れ残りやすい食材を消費しやすくなります。前日の余りを翌日の仕込みに転用するサイクルを作ることも、廃棄率の低下につながります。

メニュー構成の見直しで原価率を下げる

すべてのメニューの原価率が同じではありません。ドリンク類は食材費が低く原価率が10〜20%程度になることがあります。魚介の刺身・高級肉は原価率が40〜50%を超えることもあります。メニュー全体の売上構成によって、店全体の原価率が変わります。

原価率が低いメニューの売上比率を上げると、全体の原価率が下がります。居酒屋であれば、ドリンクの売上比率を高める工夫(飲み放題プランの導入・メニューでのドリンク誘導・客席スタッフによる追加注文の促し)が原価率の改善に有効です。同じ食材を使っても調理方法を変えることで原価率に差が出る場合があります。

メニューカテゴリ 一般的な原価率の目安 月商322万円のうち20%を占める場合の月次原価
アルコールドリンク 15〜25% 9.7〜16.1万円
ソフトドリンク 10〜20% 6.4〜12.9万円
揚げ物・炒め物 25〜35% 16.1〜22.5万円
肉料理(標準品) 35〜45% 22.5〜29.0万円
魚介・刺身 40〜55% 25.8〜35.4万円

※目安は一般的な相場であり、店舗・仕入先・調理方法によって異なります。

メニューの価格設定の見直しも原価率に影響します。原価率が高い食材を使うメニューで、提供価格を引き上げると原価率が改善します。客単価4,500円(公庫の記入例の夜の単価)から4,800円に引き上げると、仮に客数が変わらない場合は月商が約6.7%増加し、固定費比率が下がります。ただし価格改定は客離れのリスクを伴うため、原価率が高いメニューに絞って価格を見直す方が影響が少なくなります。

客単価を上げる方が原価率改善より効果が大きいケース

原価率を下げる代わりに客単価を上げた場合と、月次の損益への影響を比較します。

客単価を10%上げた場合(夜4,500円→4,950円)、月商は約10%増加して354万円になります(席数・回転数が変わらない前提)。原価率が35%のままでも、粗利は354万×0.65=230.1万円です。固定費・返済は変わらないため、単月損益は230.1−156.1−5.8=68.2万円になります。

同じ月商322万円で原価率を35%から30%に改善した場合の単月損益は63.5万円です。客単価10%アップの効果(68.2万円)が、原価率5ポイント改善の効果(63.5万円)をやや上回ります。客単価を上げることができれば、原価率改善より大きな損益の改善につながります。

ただし客単価を上げると客離れのリスクがあります。同じエリアの競合店と比べて割高になると、客数が落ちて月商が増えない可能性があります。原価率の改善は売上の水準を維持したまま損益を改善できるため、客離れのリスクがない分、安定した改善策です。両者を組み合わせる(原価率を少し下げながら、原価率が低いメニューの単価を少し上げる)アプローチが現実的です。

FL比率との関係

FL比率は原価率と人件費率の合計です。公庫の記入例では原価率35%+人件費率27.5%(88.6万÷322万)=FL62.5%です。

「FL比率60%が目安」という経験則がありますが、公庫の経営指標調査・行政の基準のいずれにも「FL60%以下が目標」という公的な根拠はありません。当方が確認した範囲では、この数字が公的な文書として示されているものは見つかりませんでした(詳しくは「FL比率の記事」を参照してください)。

原価率を35%から30%に改善した場合、FL比率は30%+27.5%=57.5%になります。人件費率が変わらなければFL60%以下を達成する水準です。ただし原価率を下げるために仕込みの手間が増えると、それをカバーするために人件費が増える場合があります。原価率だけを下げてもFL比率が変わらない、あるいは悪化するケースがあるため、原価率と人件費率をあわせて管理することが重要です。

原価率を1ポイント下げることで生まれた月次3.2万円の余裕を、人件費の改善(スタッフの待遇改善・正社員化)に充てる選択肢もあります。原価率を改善した利益をどこに配分するかは、経営の優先順位によって変わります。

原価率を下げすぎると起きること

原価率を下げようとして食材の品質を落とすと、料理のクオリティが低下して客数が減る可能性があります。月商322万円で客数が10%落ちると月商が289.8万円になり、原価率が30%に改善していても粗利は289.8×0.70=202.9万円です。これは原価率35%のままで月商322万円を維持した場合の粗利209.3万円より低くなります。原価率を下げた効果を、客数の減少が上回る場合があります。

原価率の改善を検討する際は、品質を維持したまま達成できる方法(廃棄削減・仕入先の交渉・発注方法の最適化)から着手する方がリスクが小さくなります。食材の品質を落とすことで原価率を下げるアプローチは、客数・客単価の維持を確認しながら慎重に進める必要があります。

原価率の水準が適切かどうかは、業態・立地・客単価によって異なります。高単価のレストランでは高品質な食材を使うことが価値提供の核心であり、原価率が40%を超えていても黒字が維持できる場合があります。一方、回転が速くて客単価が低い大衆飲食店では、原価率を30%前後に抑えることが損益管理の基本になります。自店の業態で「適切な原価率」がどの水準かを、公庫の業種別データと照らし合わせながら判断することが重要です。

まとめ

原価率を35%から30%に5ポイント改善すると、月商322万円の店では月次損益が16.1万円増え、年間では193万円の差になります。改善の出発点として、廃棄ロスの削減(廃棄率3%→1%で月6.4万円の改善)と仕入れの見直し(相見積もり・発注量の最適化)が有効です。メニュー構成の見直し(ドリンク比率の向上・高原価メニューの価格調整)も原価率の改善につながります。ただし品質を落として客数が減ると改善効果が相殺されるため、廃棄削減と仕入れ交渉から始めることをおすすめします。

原価率・人件費率・固定費を合わせた月次損益の試算は、飲食店の開業 収支シミュレーターで確認できます。原価率の入力値を変えると、損益分岐点・月次損益・36か月の収支が自動で再計算されます。

本記事の数字は日本政策金融公庫「創業計画書記入例(2025年4月版・洋風居酒屋)」および「小企業の経営指標調査2025年度」をもとにした試算です。実際の数字は業態・物件・経営状況により異なります。本ツールは当方が作成した民間のシミュレーターであり、日本政策金融公庫が作成・提供するものではありません。むむ(fufumumu_design)作成・2026年10月確認。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
飲食店の開業
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました