飲食店の内装工事費は、業態と坪単価で大きく変わる。公庫の記入例400万円と、スケルトン・居抜きの比較。

飲食店の内装工事費は、業態と坪単価で大きく変わる。公庫の記入例400万円と、スケルトン・居抜きの比較。 飲食店の開業

飲食店の内装工事費は、公庫の創業計画書の記入例(洋風居酒屋)では内外装が400万円です。業態や規模によって坪単価は大きく変わり、居酒屋・ダイニング系は坪50〜80万円程度、ラーメン・定食業態は坪30〜50万円が目安とされています。スケルトン物件(躯体のみの状態)から開業する場合は工事費が最も高くなり、居抜き物件の活用で200〜300万円程度の削減につながるケースがあります。内装工事費は開業資金の中で最も変動が大きい費目のため、見積もりを複数社から取ることが重要です。

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公庫の記入例で内装工事費は400万円・設備資金の41%

公庫の創業計画書の記入例(洋風居酒屋・2025年4月版)では、設備資金970万円のうち内外装が400万円(41.2%)です。設備資金の内訳を整理すると以下のようになります。

費目 金額 設備資金合計に占める割合
内外装 400万円 41.2%
厨房設備 450万円 46.4%
什器・備品 70万円 7.2%
その他(開業準備費等) 50万円 5.2%
設備資金合計 970万円 100%

記入例の店舗規模は25席(洋風居酒屋)です。25席の店舗面積は一般的に30〜40坪程度が多く、仮に35坪とすると内外装400万円÷35坪=約11.4万円/坪という計算になります。ただし記入例の坪単価はかなり低い水準です。記入例が居抜き物件を想定しているか、もしくは内装の仕上げを簡素に抑えた場合の数字を参考にしていると考えられます。

業態別の内装工事費の坪単価の目安

飲食店の内装工事費は業態によって大きく異なります。複数の内装業者・建設業者の公開情報を参考にすると、以下の目安があります。

業態 坪単価の目安 30坪の内装工事費の目安 特徴
居酒屋・ダイニングバー 50〜80万円 1,500〜2,400万円 内装の仕上げに凝るケースが多い。照明・木材仕上げ等でコストが上がりやすい
ラーメン・定食・ファミリー系 30〜50万円 900〜1,500万円 内装はシンプルで機能重視が多い。厨房機器への投資が大きくなる傾向
カフェ・スイーツ系 40〜70万円 1,200〜2,100万円 内装デザインがブランドに直結するため、単価が上がりやすい
バー・ラウンジ系 60〜100万円超 1,800〜3,000万円超 高単価業態のため内装にかける予算が大きくなる傾向
ファストフード系(セルフ) 20〜40万円 600〜1,200万円 内装はシンプル。厨房の効率化への投資が中心

※上記はスケルトン(躯体のみ)から施工する場合の目安です。物件の状態・仕上げのグレード・地域によって大きく変動します。見積もりを複数社から取ることを強くおすすめします。

公庫の記入例の「内外装400万円」は30〜35坪の居酒屋としては標準より低い水準にあります。開業資金の計画を立てる際は、記入例の数字をそのまま使わず、物件の状態(スケルトン/居抜き)と業態に合わせた坪単価で試算することが重要です。

スケルトン物件と居抜き物件で内装費が大きく変わる

内装工事費に最も影響するのは、物件がスケルトン(躯体のみ)か居抜き(前テナントの設備が残っている)かです。

物件の状態 内装工事費の目安(30坪・居酒屋系) 主な違い
スケルトン物件 1,500〜2,400万円 床・壁・天井・電気・水道・排気など全工事が必要
居抜き物件(同業態) 200〜500万円 内装・厨房の一部を流用できるため工事費が減少
居抜き物件(異業態) 500〜1,000万円 厨房レイアウト変更が必要な場合は工事費が増える

居抜き物件を居酒屋→居酒屋に改装する場合は、什器や厨房の一部が使えるため初期工事費を大幅に削減できます。ただし、前テナントの内装の「色」が残ってしまい、改装に追加費用がかかる場合があります。また、設備が古く交換が必要なケースも少なくありません。

居抜き物件と初期費用の削減効果については、飲食店の居抜き物件と新装、初期費用の差で詳しく説明しています。

内装工事費を計画する際に見落としやすい費目

内装工事の見積もりを取る際に、見落とされやすい費目があります。開業後に追加費用が発生しないよう、見積もり段階で確認しておく必要があります。

費目 内容 目安
排気・換気設備 厨房の排気ダクト・換気扇。保健所の基準を満たす設備が必要 50〜200万円(規模・設備による)
電気容量の増設 厨房設備の消費電力に応じて電気容量を増やす工事 30〜100万円
二槽シンク・手洗い設備 保健所の基準で設置が義務付けられる設備 10〜30万円
サイン(看板・外観) 店頭の看板・外観デザイン 30〜200万円(規模・素材による)
防音工事 深夜営業・音楽使用の場合は防音処理が必要な場合がある 50〜300万円
原状回復費(退去時) 退去時の原状回復費用。保証金で賄えない場合は別途必要 坪3〜7万円程度が目安

排気・換気設備は保健所の基準(調理場の換気回数・排気能力)を満たす必要があり、後から追加工事すると費用が大きくなります。内装工事の前に保健所への事前相談(無料)を行い、設備の仕様を確認しておくことをおすすめします。

内装工事費を抑える3つの方法

内装工事費を計画の範囲に収めるための方法を3つ整理します。

第1は、内装デザインの優先順位を決めることです。飲食店の内装は「見える部分(客席・入口・トイレ)」と「見えない部分(厨房・バックヤード)」で仕上げのグレードを変えることができます。客席の内装に予算を集中し、バックヤードはコストを抑えることで、全体の工事費を削減できます。

第2は、複数社から見積もりを取ることです。内装工事は同じ仕様でも業者によって見積もりが30〜50%程度差が出ることがあります。最低でも3社から見積もりを取り、内訳を比較します。ただし、安価な業者を選ぶ際は施工実績(飲食店の施工経験があるか)と保証の内容を確認することが重要です。

第3は、工事の範囲を絞ることです。開業時点では必要最低限の工事にとどめ、軌道に乗ってから追加投資する方法もあります。照明の変更・内装のリフレッシュなどは開業後でもできるため、初期費用を抑えて資金繰りの安定を優先するケースも多いです。

内装工事費が収支に与える影響

内装工事費は設備資金の一部として借入に含まれます。設備資金を公庫から借り入れる場合、内装工事費の金額が月次の元金返済額に影響します。

内装工事費 追加の借入額(概算) 月次の元金返済増加額(7年返済)
400万円(記入例水準) — —
700万円 +300万円 +約3.6万円
1,000万円 +600万円 +約7.1万円
1,500万円 +1,100万円 +約13.1万円

内装工事費が記入例の400万円より600万円多い1,000万円の場合、月次の元金返済が約7.1万円増えます。損益分岐点が月商で約10.9万円(元金返済増加÷限界利益率65%)高くなる計算です。開業前に工事費の見積もりと月次の収支計画をセットで確認することが必要です。

開業資金の全体像と借入計画については、飲食店の開業資金はいくら必要かで確認できます。収支シミュレーターでは設備資金・借入額を変えて月次損益を試算できます。

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本記事の坪単価の目安は複数の内装工事業者・建設業者の公開情報をもとにした概算であり、実際の費用は物件の状態・仕上げのグレード・地域・工事業者によって大きく異なります。開業前に複数社から見積もりを取り、保健所への事前相談を行うことを強くおすすめします。本ツールは当方が作成した民間のシミュレーターであり、日本政策金融公庫が作成・提供するものではありません。むむ(fufumumu_design)作成・2026年11月確認。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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