泡消火設備は、水と泡消火薬剤を混合した水溶液を泡立てて放出し、燃料面を覆うことで「酸素の遮断(窒息)」と「冷却」を同時に行う設備です。消防設備士 甲種第2類(甲2)の試験では、設備全体の構成・各機器の名称・動作の流れが問われます。筆記25問中「構造・機能及び工事整備(機械)」からの出題が多い科目です。
泡消火設備の全体構成
泡消火設備は大きく「水供給系統」「薬剤混合系統」「放出系統」「起動・制御系統」の4つで構成されます。
| 系統 | 主な設備・機器 |
|---|---|
| 水供給系統 | 水源(タンク・消火栓)・ポンプ・起動用圧力タンク・逆止弁・仕切弁 |
| 薬剤混合系統 | 泡消火薬剤タンク・プロポーショナー(混合装置)・薬剤調整弁 |
| 放出系統 | 配管(主配管・支管)・一斉開放弁・フォームヘッド(または高発泡放出口) |
| 起動・制御系統 | 感知器(熱感知器等)・手動起動装置・制御盤・パイロット弁・非常電源 |
出典:消防法施行規則第15条〜第18条・消防法施行令第13条。
水源(タンク)の役割と容量
水源は泡消火設備が連続放出するための水を貯めるタンクです。有効水量は設置規模(フォームヘッドの個数・放出量)から算出されます。施行規則第15条では、泡消火設備の水源の容量は「規定の放水量を一定時間(10分以上)放出できる量」とされています。
水源タンクの設置位置は「ポンプの吸込口より低い位置(自然流下)または同等以上の水位を確保」が原則です。地下タンク・高架タンクのいずれかが設置されます。
ポンプの役割と種類
ポンプは水源の水を加圧して配管に送り出す機器です。泡消火設備では電動機駆動の渦巻きポンプ(遠心ポンプ)が一般的に使われます。
主ポンプと補助ポンプ
大規模な設備では主ポンプ(定格性能のポンプ)と補助ポンプ(小型・常時運転して配管圧力を維持する)を組み合わせることがあります。補助ポンプはポンプ休止中の圧力低下を防ぎ、起動時間を短縮する役割があります。
起動用圧力タンク
配管内を常時一定の圧力に保つため、小型の圧力タンク(起動用圧力タンク)が設置されます。配管の圧力が下がったとき(火災発生等)にポンプを自動起動するためのセンサーとして機能します。
プロポーショナー(薬剤混合装置)の種類
プロポーショナーは、水と泡消火薬剤を一定の混合比(3%・6%等)で混合する装置です。混合比が設計値からずれると泡の消火性能が低下します。主な方式を整理します。
| 方式 | 原理 | 特徴 |
|---|---|---|
| ライン式(ラインプロポーショナー) | 文丘里管(管路の圧力差)を利用して薬剤を吸引・混合 | シンプルな構造・電源不要・流量変動に弱い |
| ポンプ式(プレッシャープロポーショナー) | 薬剤ポンプで薬剤を加圧・強制的に混合 | 混合比が安定・大規模設備向き |
| バランス式(バランスプレッシャー) | 圧力バランス弁で薬剤の圧力を調整・混合 | 流量変化に強い・高精度な混合 |
| アラウンドザポンプ式 | ポンプの吐出側と吸込側の圧力差で薬剤を引き込む | 構造が比較的シンプル |
試験では各方式の名称・特徴・原理(圧力差を使う/ポンプで強制注入する)の区別が問われます。
フォームヘッドの構造と種類
フォームヘッドは泡消火薬剤水溶液を空気と混合して泡を生成し、放出する機器です。
低発泡用ヘッド(フォームヘッド)
駐車場・道路用途に設置される標準的なヘッドです。膨脹比20以下の低発泡(Low Expansion Foam)を生成します。有効散水面積は1個あたり9㎡です。
高発泡放出口
膨脹比80以上の高発泡を放出する機器です。地下駐車場・大型格納庫での全域放出方式に使われます。大量の泡を短時間で区画に満たすことができます。
スプリンクラー型ヘッド(フォームウォーター)
通常のスプリンクラーヘッドと組み合わせた形式もあります。水と泡を同時に放出するタイプです。
一斉開放弁と起動の流れ
泡消火設備が起動するまでの典型的な流れを示します。
- 火災感知器(熱感知器等)が感知
- 制御盤が感知信号を受信
- 制御盤がポンプ起動信号・一斉開放弁への起動信号を送出
- ポンプが起動(または起動用圧力タンクの圧力低下でポンプ自動起動)
- 一斉開放弁が開放(感知信号から60秒以内に開放・規格省令第5条)
- 加圧された薬剤水溶液がフォームヘッドへ流れ込む
- フォームヘッドが泡を放出
手動起動装置(手動起動弁・起動ボタン)からも起動できます。手動起動は自動感知に失敗した場合や、設備の点検時に使われます。
非常電源(予備電源)
泡消火設備は停電時でも作動できるよう非常電源が必要です(消防法施行規則第12条第1項第4号準用)。非常電源の容量は30分間以上運転できることが基準です。
非常電源の種類は蓄電池設備・自家発電設備・燃料電池設備のいずれかです。蓄電池設備は即時に電源を供給できますが、長時間の運転には自家発電設備が向いています。
設備全体の維持管理
泡消火設備は設置後に定期的な点検(機器点検6か月・総合点検1年)が必要です(消防法第17条の3の3)。総合点検では実際に設備を起動して放出試験を行うことがあります。点検後の後片付け(泡の清掃・薬剤の補充)も作業の一部です。
甲2・乙2の免状保有者が点検を担当します。工事(改造・増設)は甲2が必要です。
泡消火の原理(なぜ泡で消えるのか)
泡消火は「窒息消火」と「冷却消火」の2つの効果を同時に発揮します。
窒息消火(酸素遮断)
泡は液体(薬剤水溶液)の膜が空気を包んだ集合体です。燃料面に泡を積み重ねることで、空気(酸素)が燃料に届かなくなり、燃焼が継続できなくなります。これが窒息消火です。特に液体燃料の火災では、水を使っても火が消えない(水が蒸発して酸素が届く)ため、燃料面を覆う泡が有効です。
冷却消火
泡の大部分(90〜99%)は水分です。泡が燃料面に乗ると水分が燃料を冷やします。冷却によって燃料の蒸発速度が下がり、燃焼継続が難しくなります。
水成膜泡の追加効果
水成膜泡消火薬剤は燃料面に薄い水の膜(水成膜)を形成します。この膜は泡が崩壊した後も残り、燃料の蒸発を防いで再燃を抑制します。飛行機格納庫や石油タンクでよく使われます。
泡消火設備と水噴霧消火設備の違い
同じ液体火災向けの設備として水噴霧消火設備があります。泡消火設備との違いを整理します。
| 比較項目 | 泡消火設備 | 水噴霧消火設備 |
|---|---|---|
| 消火メカニズム | 窒息(泡で覆う)+冷却 | 冷却+乳化+窒息(微細な水滴) |
| 主な対象 | 駐車場・格納庫・指定可燃物(液体) | 変圧器・屋外駐車場・トンネル |
| 薬剤 | 泡消火薬剤(水と混合) | 水のみ(添加剤なし) |
| 後処理 | 泡の清掃が必要 | 水を除去すれば済む |
消防法施行令では、泡消火設備が義務付けられている場所(施行令第13条)に水噴霧消火設備を代替設置することは原則として認められません。
移動式泡消火設備
固定式(フォームヘッド方式・全域放出方式)のほかに、移動式泡消火設備があります。ホースリールやノズル付きのホースを手動で操作し、局所的に泡を放出します。屋外タンク・格納庫の補完用や、固定式の設置が難しい場所に使われます。移動式の設備も消防法施行令第13条の設置対象になります。
建物内の系統の分け方
大型の駐車場では、フォームヘッドを複数の系統(ゾーン)に分けて設計します。各系統に一斉開放弁を設け、火災が発生したゾーンだけを放出する設計にすることで、必要な水・薬剤の量を最小化できます。
系統の分け方は「区画の面積・感知器のゾーン・配管の経路」を考慮して甲2免状保有者が設計します。系統を細かく分けるほど一斉開放弁の数が増え、制御盤の配線も複雑になります。
甲2の試験での出題傾向
構造・機能及び工事整備(25問)は試験の半数以上を占める科目です。主な出題テーマは次のとおりです。
- プロポーショナーの種類と原理(ライン式・ポンプ式・バランス式・アラウンドザポンプ式)
- 一斉開放弁の構造・動作・規格数値(作動時間60秒・材質制限)
- フォームヘッドの構造・有効散水面積(9㎡)
- 高発泡放出口と低発泡ヘッドの違い(膨脹比・用途)
- ポンプの揚程・流量・起動方式
- 非常電源の容量(30分以上)と種類
- 配管の材質・接続方法・圧力試験
これらのテーマは単独問題として出るだけでなく、鑑別問題(写真で名称を答える)でも出題されます。設備の外観・形状と名称・機能を一致させる学習が必要です。
配管と接続方法
泡消火設備の配管は、腐食に強く一定の強度を持つ材質が使われます。甲2の工事範囲では配管の接続方法が問われます。
主な配管材質
- 配管用炭素鋼管(スチールパイプ):標準的な配管材料。亜鉛めっき(白ガス管)で腐食防止
- ステンレス鋼管:耐食性が高い。薬剤が接触する箇所に使われることがある
接続方法
| 接続方法 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ねじ接続 | ねじを切って継手で接続。取り外し可能 | 小口径(50A以下)・点検しやすい箇所 |
| フランジ接続 | フランジとボルトで接続。高圧に対応 | 大口径・一斉開放弁など分解が必要な部分 |
| 溶接接続 | 溶接で恒久的に接続。強度が高い | 主配管・埋設配管 |
圧力試験
工事完了後は配管の耐圧性能を確認するため圧力試験を実施します。水圧試験(ウォーターテスト)が一般的で、設計圧力の1.5倍以上の水圧をかけて漏れ・変形がないことを確認します。この試験は甲2の工事整備の出題範囲です。
ポンプの設置基準と性能試験
泡消火設備のポンプは、消防法施行規則第12条・第15条に基づく性能を持つことが必要です。設置時に行う主な試験は次のとおりです。
- 締切(全閉)運転試験:吐出側弁を閉じた状態で運転し、過熱・振動・異音がないかを確認
- 定格流量試験:規定の流量を送水したときの揚程(吐出圧)が設計値以上であることを確認
- 最大流量試験:吐出側弁を全開にしたときの吐出量が過剰でないことを確認
甲2の試験ではポンプの性能試験の流れ・目的が出題されます。「締切試験でポンプが止まる→配管漏れがない証拠」という関係を覚えておくと役立ちます。
甲2の試験で問われる「仕組み」の学習ポイント
泡消火設備の仕組みを学ぶ際、試験で問われる視点から整理すると効率よく覚えられます。試験の出題パターンは「名称を答える(鑑別)」「特徴・動作を選ぶ(筆記多選択)」の2種類があります。
名称を問う出題(鑑別)
写真・図を見てプロポーショナーの種類・一斉開放弁・フォームヘッドの名称を答えます。各機器の外観と名称を対応させて覚えることが必要です。テキストの写真を見ながら名前を繰り返す練習が効果的です。
特徴・動作を選ぶ出題(筆記)
「ライン式プロポーショナーは文丘里管の圧力差を利用する(○)」「一斉開放弁の作動時間は30秒以内(×・正しくは60秒以内)」のような正誤問題が出ます。各機器の特徴・動作原理の正しい内容を記憶しておくことが必要です。
工事手順を問う出題(甲種固有)
「ポンプの性能試験は締切試験→定格流量試験→最大流量試験の順に行う」「圧力試験は工事完了後に設計圧力の1.5倍以上の水圧で行う」などの工事手順も出題されます。乙2にはないテーマです。
泡消火設備の圧力試験と完成検査
甲2の工事には完成後の性能確認が義務付けられています。消防法施行規則第31条の6に基づく総合点検・機能試験の前に、工事完了後の配管圧力試験(1.5倍以上の水圧)が行われます。なお、甲2の試験では工事手順そのものよりも「どの機器がどの目的で試験されるか」を問う問題が多いため、試験と目的のペアを覚えておくことが効率的です。
- 配管の水圧試験:使用圧力の1.5倍以上の水圧を加え、漏水・変形がないことを確認
- ポンプの性能試験:締切運転・定格流量・最大流量の3段階で確認
- 泡放出試験:実際に薬剤水溶液を放出し、泡の質・発泡倍率を確認
泡消火設備の整備・点検には甲種または乙種第2類消防設備士が必要です。工事(新設・増設・配管改造)は甲種第2類が担います。工事着工届は着工10日前までに消防署に提出します(消防法第17条の14)。仕組みを理解していると着工届・竣工届のどのタイミングでどの試験が行われるかを自然に整理でき、試験の工事関連問題でも迷いにくくなります。
構造・機能の問題練習は消防設備士 甲種第2類 AI問題集で。筆記106問は無料で解けます。
消防設備士全般の情報は消防設備士の問題集・試験対策(5類横断)をご覧ください。
出典:消防法施行令第13条・消防法施行規則第12条・第15条〜第18条・第31条の6・一斉開放弁の技術上の規格を定める省令第5条。

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