消防設備士 甲2の製図対策。フォームヘッドの個数計算と系統図の書き方

消防設備士 甲種第2類(甲2)の実技試験には製図(2問)があります。乙種にはない甲種固有の科目で、令和7年度合格率27.2%という低さの一因です(消防試験研究センター「試験実施状況」)。製図では「フォームヘッドの配置計算(個数算出)」と「配管系統図の作図」が主なテーマです。計算の考え方・図面の書き方・よくある採点ポイントを整理します。

製図問題の出題パターン

甲2の製図2問は、次の2つのテーマが出題される可能性が高いです。

テーマ 出題の形式 必要な知識
フォームヘッドの配置計算・平面図への配置 区画の平面図が与えられ、ヘッドの個数と位置を記入する 有効散水面積9㎡・設置間隔・死角のない配置
配管系統図の作図・補完 系統図の一部が与えられ、不足する部品・管径・記号を記入する 一斉開放弁・起動装置・ポンプ・水源の接続関係

製図問題は記述式・作図式のため、マーク式の筆記と異なり「書けるかどうか」が問われます。正解パターンを繰り返し書いて体で覚えることが合格の近道です。

フォームヘッドの配置計算の基本

フォームヘッドの個数を求める基本的な考え方は次のとおりです。

有効散水面積(9㎡)

フォームヘッド1個の有効散水面積は9㎡です(消防法施行規則第15条)。1個のヘッドが有効にカバーできる床面積が9㎡です。

必要個数の算出

設置区画の床面積(㎡)を9で割り、小数点以下を切り上げた整数が必要個数です。

計算例:

  • 27㎡の区画 → 27 ÷ 9 = 3.0 → 3個
  • 30㎡の区画 → 30 ÷ 9 = 3.33… → 4個(切り上げ)
  • 36㎡の区画 → 36 ÷ 9 = 4.0 → 4個
  • 40㎡の区画 → 40 ÷ 9 = 4.44… → 5個(切り上げ)

「9㎡ちょうど割り切れる場合はそのまま」「割り切れない場合は切り上げ」が原則です。切り捨てると有効散水面積が不足するため、切り上げが必須です。

フォームヘッドの平面図への配置

個数が決まったら、区画に均等に散水できるよう配置を決めます。配置の基本的な考え方を示します。

均等配置の原則

区画を格子状に分割し、各格子の中央にヘッドを置くイメージで配置します。

例:30㎡(5m × 6m)の区画・ヘッド4個の場合

  • 横方向(5m)を2分割→各2.5m間隔の中点(1.25m・3.75m)
  • 縦方向(6m)を2分割→各3m間隔の中点(1.5m・4.5m)
  • 2 × 2 = 4個の格子中心にヘッドを置く

試験の問題用紙には方眼や縮尺のある平面図が与えられます。定規を使って均等な位置を計算・記入します。ヘッドの記号(○や⊕)を図面に書き込む練習をしておくことが重要です。

壁・柱・死角への対応

駐車場の柱・壁の影になる部分には散水が届きません。平面図に柱や壁が描かれている場合は、死角ができないよう配置を工夫します。試験では「柱があるから死角が生じる配置」を問われることがあります。

配管系統図の作図

配管系統図は、泡消火設備の全体構成(水源タンク→ポンプ→混合装置→一斉開放弁→フォームヘッド)を線図で表した図面です。

系統図の構成要素

設備部分 記号・表記
水源(タンク) □ 記号または水源タンクの平面図形
ポンプ △または▽(ポンプの図記号)
起動用圧力タンク □+圧力計付き
泡消火薬剤混合装置(プロポーショナー) 設備の種類に応じた記号
一斉開放弁 弁記号(施行規則に準じた図記号)
フォームヘッド ○または専用記号
感知器→制御盤→起動装置のライン 信号線(破線等)で表現

系統図作図のポイント

  • 水の流れを上流から下流へ(水源→ポンプ→混合→一斉開放弁→ヘッド)左から右または上から下に描く
  • 配管は実線・信号線は破線で区別する
  • 各機器に名称または記号を付記する
  • 一斉開放弁の配管への取り付け位置(ヘッドの手前)を明示する

配管口径の記入(出題される場合)

設計条件が与えられた場合、配管口径を系統図に記入する問題が出ます。基本的な考え方を示します。

  • フォームヘッドへの支管(各ヘッドへの分岐管):個数・流量をもとに口径を選定
  • 主配管(幹管):複数の系統をまとめた配管で、支管より大径になる
  • 施行規則第15条・第16条の設計基準に基づく

試験では「この設計条件では主配管の口径はいくつか」という選択肢形式、または「口径を記入せよ」という記述形式で出題されることがあります。

製図の練習方法

製図は独学が難しいとされます。効果的な練習方法を整理します。

パターン学習

「20㎡の区画→ヘッド3個→配置を書く」「30㎡→4個」のように、面積とヘッド個数の対応パターンを繰り返し手書きで練習します。10〜20パターン練習すると、本番でどんな面積が出ても即座に計算できるようになります。

系統図を手書きで模写

問題集の系統図解答例を手書きで模写します。記号の書き方・配置の順序が体に入るまで繰り返します。5〜10回模写すると解答スピードが上がります。

定規の使い方を練習する

甲2の実技試験では定規の持ち込みが可能です。試験当日に定規を使って直線を引く作業に慣れておくことで、図面の読みやすさが上がり採点者に伝わりやすい答案になります。

製図の採点のポイント

製図は記述式のため、完全な正解でなくても部分点が取れます。採点の観点として重要なポイントは次のとおりです。

  • ヘッドの個数が正しいか(最重要)
  • 均等配置になっているか(死角がないか)
  • 系統図の構成が正しいか(水源→ポンプ→混合→一斉開放弁→ヘッドの順)
  • 一斉開放弁の設置位置が正しいか
  • 図面が読み取れる程度に丁寧に書かれているか

「ヘッドの個数は正しいが配置が不均等」「系統図の順序は正しいが記号が間違っている」場合でも部分点が得られることがあります。まず個数と基本構成を正確に書くことを優先してください。

製図問題の難しさと対処法

製図が難しい最大の理由は「書いて覚えるしかない」という点です。法令の暗記は読んで繰り返せますが、製図は実際に手を動かして書く練習が必要です。

問題集が少ない

甲2の製図問題は市販テキストに掲載されている例題が少なく、過去問も公開されていません(消防試験研究センターは過去問の商業利用を禁止)。そのため、テキストに載っている例題を繰り返し解くか、オリジナルで計算条件を変えた練習問題を自作する必要があります。

採点基準が非公開

実技試験の採点基準は公開されていません。解答用紙を見た採点官が「設計意図が読み取れるか・主要な要素が含まれているか」で採点すると考えられます。部分点が取れる可能性があるため、分からなくても空欄にせず書ける部分を書くことが重要です。

練習問題の作り方(自己練習)

市販テキストの例題を解き終えたら、条件を変えた練習問題を自作することで練習量を増やせます。

ヘッド配置の自作問題

面積を変えるだけで無限に問題が作れます。例:

  • 18㎡の区画 → ヘッド個数は?(答え:2個)
  • 45㎡の区画 → ヘッド個数は?(答え:5個)
  • 10m × 8m の区画 → ヘッド個数は?(答え:80 ÷ 9 = 8.89… → 9個)
  • 柱が4か所ある20m × 15m の区画 → 配置はどうなる?

いくつかのパターンを解いていると「9㎡ちょうどの倍数」と「端数あり」の2パターンに分けられることに気づきます。端数がある場合は必ず切り上げという原則を反射的に適用できるようになります。

系統図の作図練習ステップ

系統図をゼロから書くための練習ステップを示します。

  1. 白紙に「水源タンク」「ポンプ」「プロポーショナー」「一斉開放弁」「フォームヘッド×3」を箱・記号で配置する(レイアウト確認)
  2. 水の流れを矢印で示す(水源→ポンプ→混合装置→一斉開放弁→ヘッド)
  3. 各機器を実線でつなぐ(配管)
  4. 感知器→制御盤→一斉開放弁の信号線を破線で追加
  5. 各機器に名称・記号を付記する

この手順を3〜5回繰り返すと、系統図の構成を見ずに書けるようになります。試験では「不足している部品を記入せよ」形式が多いため、完成形を知っていることが重要です。

フォームヘッドの有効散水面積(9㎡)の根拠

有効散水面積9㎡は消防法施行規則第15条の規定です。この9㎡という数値は、フォームヘッドの半径(約1.7m)からは来ておらず、設計上の有効面積として施行規則で定められた値です。試験では「フォームヘッドの有効散水面積は?」という直接の数値問題と、「個数算出→配置」という応用問題の両方に出ます。

製図で落ちないための最低限の準備

製図の対策ができていない場合でも、次の最低限の準備をしておくことで点数を確保できます。

  • フォームヘッドの個数算出(面積÷9の切り上げ)の計算は確実に習得する
  • 系統図の基本構成(水源→ポンプ→混合装置→一斉開放弁→ヘッド)を手書きできるようにする
  • 一斉開放弁の位置(フォームヘッドの手前・防護区画の外側)を覚える
  • 定規を持参して直線を引く練習をしておく

製図2問のうち1問でも部分点が取れれば実技60%以上に届きやすくなります。鑑別5問と製図2問の合計で60%以上が必要であるため、鑑別で高得点を取ることも製図をカバーする手段です。

製図と鑑別の得点配分を意識した戦略

実技試験(7問)の配点は「鑑別5問・製図2問」です。実技全体で60%以上が合格基準です(消防法施行規則第33条の14)。得点配分を考えながら対策します。

製図が難しい場合は鑑別で稼ぐ

鑑別5問をすべて正解できれば、製図2問が0点でも「5/7 ≒ 71%」で実技を通過できます(満点係数により若干異なる可能性があります)。製図の準備が不十分な場合は、まず鑑別の完全正答を目指してから製図を仕上げる順序が現実的です。

製図の部分点を狙う

製図2問とも完全正答できなくても部分点があります。ヘッドの個数が正しい・系統図の基本構成が正しいだけで部分点が取れる可能性があります。白紙で提出するより書ける部分を書く方が得点が上がります。

乙2合格者が甲2の製図を学ぶときの重点

乙2は実技に製図がありません。甲2を受験する乙2合格者が製図を初めて学ぶ場合の重点を示します。

  • フォームヘッドの有効散水面積(9㎡)は乙2では問われないが甲2では基本中の基本。最初に覚える
  • 系統図の全体構成(水源→ポンプ→混合装置→一斉開放弁→ヘッド)を手書きで3回書いて覚える
  • 一斉開放弁の設置位置(防護区画の手前・配管の分岐前)を確認する
  • プロポーショナー(混合装置)の形状・記号を鑑別と並行して学ぶ

乙2合格後の経験がある人は、実務で設備を見ているため鑑別の勉強時間が短くて済みます。その分を製図の練習に割り当てることが効率的な学習配分です。

製図対策のまとめ

甲2の製図で合格するために最低限覚えること・練習することをまとめます。

  • フォームヘッドの有効散水面積は9㎡(施行規則第15条)
  • 必要個数は(床面積 ÷ 9)の切り上げ
  • 配置は死角がないよう均等に
  • 系統図の基本構成:水源タンク→ポンプ→プロポーショナー→一斉開放弁→フォームヘッド
  • 感知器→制御盤→一斉開放弁の信号線(破線)を追加する
  • 定規を持参して直線を引く練習をしておく

製図は書いて覚えることが前提です。テキストの例題を3〜5回手書きで模写してから練習問題を解く、というサイクルが独学での定着に効果的です。

製図問題で減点されやすいポイント

甲2製図の採点では「正しく書けているか」だけでなく「マイナス点を避けるか」も重要です。特に多い減点パターンを整理します。

  • ヘッドの個数が足りない:計算結果を切り捨てて記入するミス。小数点以下が0でなければ必ず切り上げ
  • 配管の系統が逆:水源→ポンプ→プロポーショナー→一斉開放弁→ヘッドの流れを把握していないと配管の向きを誤る
  • 信号線(破線)を忘れる:感知器→制御盤→一斉開放弁の制御配線が抜けるケースが多い
  • 部品記号の誤り:フォームヘッドとスプリンクラーヘッドの記号を混同する

製図問題は部分点があります。計算が合っていれば配置が多少ずれても点は入ります。まず計算を正確に行い、その後配置・配管・信号線の順で書く習慣をつけると時間内に仕上げやすいです。試験時間は2問で70分(鑑別5問と合わせた実技全体)のため、製図1問に35分前後が割けます。時間を計って練習することを強くおすすめします。

製図を含む実技の練習は消防設備士 甲種第2類 AI問題集で。鑑別問題と模試は買い切り980円です。

消防設備士全般の情報は消防設備士の問題集・試験対策(5類横断)をご覧ください。

出典:消防法施行規則第15条・第16条・消防試験研究センター「試験科目及び問題数」令和7年度・「試験実施状況」令和7年度。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
資格
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました