認知症GHの認知症専門ケア加算:2区分の要件と算定の準備

認知症GHの認知症専門ケア加算は、加算Ⅰが3単位/日、加算Ⅱが4単位/日で、要件として「日常生活自立度ランクⅢ以上の利用者が入所者の50%以上いること」と「認知症ケアに関する研修修了者が一定割合以上配置されていること」が求められます(令和6年厚生労働省告示第128号)。1ユニット9人で加算Ⅱを取得した場合、月間で約9,800〜11,200円の収入増になります。

2区分の違いと単位数

認知症専門ケア加算には2区分あり、区分によって要件と単位数が異なります。

区分 単位数/日 主な要件
加算Ⅰ 3単位 日常生活自立度ランクⅢ以上が入所者の50%以上/認知症ケアに関する研修修了者が配置され入所者の50%以上を担当
加算Ⅱ 4単位 加算Ⅰの要件に加え、認知症ケアの指導・管理を担う者(指導者)を配置し、他職員への技術指導を実施

出典:令和6年厚生労働省告示第128号(指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準)

「日常生活自立度ランクⅢ以上」の意味

日常生活自立度ランクⅢは、「日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする状態」(厚生労働省の「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」)を指します。Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・Mがこれに該当します。認知症GHの入居者は性質上この水準の方が多いため、要件の50%は多くの事業所で満たしやすい条件です。ただし、入居者の状態は毎月変動するため、判定記録の管理と定期的な集計が必要です。

「認知症ケアに関する研修」の対象となる研修

加算の算定要件に定める「認知症ケアに関する研修」として認められる研修は以下のとおりです(厚生労働省の解釈通知による)。

  • 認知症介護実践者研修
  • 認知症介護実践リーダー研修
  • 認知症介護指導者養成研修

加算Ⅰでは「実践者研修以上の修了者」が入所者の50%以上を担当することが必要です。加算Ⅱでは「実践リーダー研修または指導者養成研修の修了者」が追加で必要になります。研修は都道府県または都道府県が指定した研修機関が実施しており、受講に数日〜1週間程度かかるため、開業前から職員のスケジュールに組み込んでおく必要があります。

月間収入への影響(試算)

1ユニット9人・その他地域(単価10.00円)・全員が加算対象の場合の月間収入増加額の目安は以下のとおりです。

区分 単位数/日 月間増加額(30日換算)
加算Ⅰ 3単位×9人=27単位/日 27×10.00円×30日=8,100円
加算Ⅱ 4単位×9人=36単位/日 36×10.00円×30日=10,800円

金額としては小さく見えますが、年間では加算Ⅱで約129,600円の差になります。また、処遇改善加算の算定ベース(加算を除く報酬)には含まれないため、処遇改善加算の金額には直接影響しません。

算定開始前に準備すること

算定を始めるには、加算の体制を整えたうえで市区町村(指定権者)に体制届を提出する必要があります。主な準備事項は以下のとおりです。

  1. 入所者の日常生活自立度の確認・集計:入居者全員についてランクⅢ以上の者の割合を算出し、記録に残す。
  2. 研修修了者の確認:認知症介護実践者研修以上の研修修了証を保管し、配置状況を整理する。
  3. 体制届の提出:市区町村の介護保険担当課に「加算に係る体制等に関する届出書」を提出する(算定開始月の前月15日までが多いが、自治体によって期限が異なる)。
  4. 運営規程・重要事項説明書への記載:加算の内容を利用者に事前に説明する義務があるため、関連書類を更新する。
  5. 記録の整備:認知症ケアを担当した職員の記録、技術指導の実施記録(加算Ⅱ)を算定月から作成する。

算定できない場合の主な理由

  • 入所者の日常生活自立度ランクⅢ以上の割合が50%を下回った月
  • 要件を満たす研修修了者が退職して充足率を下回った場合(体制届の変更が必要)
  • 体制届を提出していない月

加算要件は月単位で管理し、毎月の請求前に充足状況を確認することが大切です。

開業時から算定するための段取り

開業と同時に加算Ⅰを算定するには、開業前に職員の研修修了と体制届の提出を完了させる必要があります。認知症介護実践者研修は都道府県が年1〜2回しか実施しないため、開業予定日から逆算して受講計画を立てる必要があります。

開業前後の収支シミュレーションは認知症GH収支シミュレーターで試算できます。処遇改善加算の取得状況や稼働率を変えながら、収支への影響を確認してください。

加算制度全体については認知症GHの収入計算、人員基準との関係については人員基準の記事もあわせてご覧ください。

認知症専門ケア加算の取得フロー

  1. 認知症介護実践リーダー研修の修了者を確保する:職員のうち1名以上(Ⅱは2名以上)が同研修を修了している必要があります。研修は都道府県が指定する機関が実施し、受講には一定の実務経験要件があります。
  2. 要件確認:「日常生活自立度ランクⅢ以上の利用者が50%以上」「認知症介護指導者研修修了者を中心としたケアチームを構成している」等の算定要件を満たしていることを確認します。
  3. 加算届出:市区町村に加算算定の届出(体制届)を提出します。
  4. 記録整備:利用者の認知症日常生活自立度・ケアの内容・担当者会議の記録を整備します。

実地指導では修了証・会議録・利用者のアセスメント記録が確認されます(令和6年厚生労働省告示第128号)。

認知症介護実践リーダー研修の概要

認知症介護実践リーダー研修は、認知症介護の指導的立場を担う職員のための研修です。受講要件は通常「認知症介護実践者研修修了後2年以上の実務経験」です。研修期間は概ね5〜7日間(複数日程に分かれる場合あり)、都道府県によって実施回数・費用が異なります。修了者は事業所内での認知症ケアの指導役を担います。

利用者要件(日常生活自立度ランクⅢ以上50%以上)の管理

算定要件の「日常生活自立度ランクⅢ以上の利用者が50%以上」は、毎月の利用者全体の状況で確認します。利用者の要介護度や日常生活自立度は状態変化により変わるため、定期的にアセスメントを行い記録しておくことが重要です。定員9人の場合、5名以上がランクⅢ以上であれば要件を満たします。利用者の認知症の程度が比較的軽い場合、要件を満たせなくなる可能性があるため、入居相談時に利用者の状態を適切に評価しておくことが重要です。

月間加算収入の試算(1ユニット9人・その他地域)

  • 加算Ⅰ(3単位/日):3×10.00×9×30.4=8,208円/月
  • 加算Ⅱ(4単位/日):4×10.00×9×30.4=10,944円/月

単体の収入は月1万円程度ですが、認知症専門ケアの実績が事業所の差別化につながり、利用者・家族からの信頼と稼働率の維持に寄与します。

出典

  • 令和6年厚生労働省告示第128号(指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準)
  • 厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」
  • 厚生労働省「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(認知症専門ケア加算)の解釈通知」

認知症専門ケア加算と処遇改善加算の関係

認知症専門ケア加算は、処遇改善加算の算定ベースとなる報酬に含まれます。つまり、認知症専門ケア加算を取得することで処遇改善加算の算定額も増加します。1ユニット9人で加算Ⅱ(4単位/日)を取得した場合、月間の処遇改善加算Ⅰ(18.6%)への影響は以下のとおりです。

項目 計算 月間金額
認知症専門ケア加算Ⅱ(月間) 4単位×9人×10.00円×30日 10,800円
処遇改善加算への波及(18.6%) 10,800円×18.6% 約2,009円
合計増加額 — 約12,809円/月

年間では約154,000円の収入増となります。金額は小さいですが、研修体制の整備は職員のスキル向上にもつながるため、加算の取得を目指す事業所が多くなっています。

算定できる事業所・できない事業所の違い

認知症専門ケア加算を算定できる事業所とできない事業所の主な違いは、職員の研修修了の状況です。新規開業時に研修修了者が在籍していない場合、開業後に職員を研修に派遣し、修了後に体制届を提出して算定を開始することになります。都道府県の研修は年1〜2回しか開催されないため、開業後から算定開始まで数か月〜1年かかることがあります。

また、認知症GHの利用者は性質上、日常生活自立度ランクⅢ以上の方が多いため、入居者要件の50%はほとんどの事業所で自然に満たせます。加算取得の実質的なボトルネックは研修修了者の確保です。

加算Ⅰから始めてⅡに移行する方法

開業時は加算Ⅰから算定を始め、「認知症ケアの指導者」となる実践リーダー研修または指導者養成研修の修了者が確保できた段階で加算Ⅱに移行するという方法が現実的です。移行の際は体制届を変更し、算定開始月に遡れないため、修了後すみやかに届出を行うことが大切です。

人員体制と加算の全体像については人員基準の記事、処遇改善加算との計算については処遇改善加算の記事もあわせてご覧ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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