生活介護で稼働率84.2%を90%に改善すると収支差率はどう変わるか(試算)

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生活介護の稼働率(WAM参考値)は84.2%で、収支差率(令和6年度平均)は6.3%です。大規模な事業所(平均定員28人・年収7,939万円)において、稼働率が1〜2ポイント変化するだけで収支差率に大きな影響が出ます。本記事では、稼働率を84.2%から90%に改善した場合の収支差率の変化を試算します。

生活介護の収支差率と稼働率の現状

生活介護の収支差率は平均6.3%・中央値7.9%です。中央値が平均を上回っていることは「多くの事業所(半数以上)が7.9%以上の収支差率を実現しているが、一部の大幅赤字事業所が平均を引き下げている」状態を示します。稼働率84.2%(WAM参考値)はほぼ全サービスで最も安定した水準(GH系は85〜86%台、放デイは87.8%)に近い値ですが、さらに90%以上に引き上げられれば収支差率の大幅改善が期待できます。

定員28人(平均)という大規模事業所の場合、稼働率1ポイントの変化が年間約94万円の収入変化に相当します(79,388千円÷84.2%×1%≒943千円)。これは小規模サービス(就労移行支援の416千円/pt、短期入所の104千円/pt)と比べて最も大きい値です。大規模事業所ほど稼働率の改善インパクトが大きいことを示しています。

生活介護の基本データ(令和6年度全国平均)

項目 数値
事業所数 368件
平均定員 28人
稼働率(WAM参考値) 84.2%
年間収入(平均) 79,388千円(約7,939万円)
年間人件費(平均) 54,885千円(約5,489万円)
人件費率 69.1%
収支差額 5,015千円(約502万円)
収支差率 6.3%

稼働率改善による収支差率の変化試算

稼働率84.2%から各水準への改善で、年間収入はどう変化するか試算します。

稼働率1%当たりの収入変化 = 79,388千円 ÷ 84.2% × 1% ≒ 943千円(約94万円)

稼働率 推計年収入 収支差額(試算) 収支差率(試算)
84.2%(全国平均) 79,388千円 5,015千円 6.3%
86%(+1.8pt) 約81,085千円 約6,712千円 約8.3%
88%(+3.8pt) 約83,011千円 約8,638千円 約10.4%
90%(+5.8pt) 約84,895千円 約10,522千円 約12.4%

稼働率84.2%→90%(5.8ポイント改善)で、年間収入は約5,507千円(約551万円)増加し、収支差率は6.3%から12.4%に改善する試算です(人件費・固定費が変わらない前提)。

試算の前提と注意点

上記は「費用が固定のまま収入だけ増加する」という単純化した試算です。実際には利用者が増えると次の費用変動も起きる可能性があります。

  • 支援員の増員が必要になるケース:定員が28人で稼働率84.2%(約23.6人)から90%(25.2人)に増えた場合、人員配置基準(利用者数に応じた支援員の最低配置数)を満たすために非常勤職員の増員が必要になる場合があります
  • 食材費の増加:給食提供がある場合、利用者の増加に伴い食材費が増えます(ただし利用者負担でカバーされる部分もあります)
  • 消耗品・日用品の増加:利用者数に比例して増えます

これらの費用増加を考慮しても、稼働率5〜6ポイントの改善は収支差率を大幅に改善する効果があります。

生活介護の稼働率を84%から90%に引き上げる方法

長期欠席・退所の早期対応:生活介護は毎月の利用実績が稼働率に直結します。体調不良・入院による長期欠席が増えると稼働率が下がります。欠席が続く利用者へのフォロー(連絡・家庭訪問等)と、退所見込みが出た際の新規利用者確保ルートを常に準備しておくことが重要です。

相談支援事業所との連携強化:新規利用者の多くは相談支援専門員からの紹介です。地域の相談支援事業所に自事業所の受け入れ可能な利用者像(対応できる障害種別・支援区分等)を定期的に伝えることが、安定した利用者確保につながります。

体験利用の積極的な受け入れ:見学や体験利用(数日間)を受け入れることで、利用開始までの期間を短縮できます。体験の受け入れ枠を設けておくことで、空き枠が発生した際の迅速な充足が可能になります。

定員の見直し(小規模化・大規模化):稼働率が慢性的に84%前後にとどまっている場合、定員を見直すことも選択肢です。実利用者数に合わせた定員に変更することで、稼働率は上昇します(ただし収入絶対額は変わらない)。逆に収入を増やすには、定員を増やして稼働率を維持することが必要です。

稼働率90%達成の現実的な時間軸

稼働率を84.2%から90%に引き上げるには、定員28人のうち現在の約23.6人から25.2人に増やす必要があります(約1.6人分の増加)。

新規利用者1名の確保から利用開始までには通常1〜3ヶ月かかります(相談・体験・支給決定・利用契約等のプロセス)。2名分の増加であれば、積極的な営業・連携活動を開始してから3〜6ヶ月での達成が現実的な目標です。

稼働率が90%を超えてキャンセル待ちが発生するようになれば、定員増設(別室の確保・事業拡大)を検討するタイミングです。収支差率10%以上の安定した収益を基盤に事業を成長させるための正のサイクルが生まれます。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標2023年度決算。収支差率の試算は全国平均データをもとにした概算であり、個別事業所の実績を保証するものではありません。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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