就労定着支援事業所は、省令(厚生労働省令第171号)に基づき、利用者一人ひとりについて個別支援計画を作成する義務があります。個別支援計画は「いつ・どのような支援を行うか」を明示した計画書であり、支援の根拠となる重要書類です。実地指導でも必ず確認されます。作成の手順・モニタリングの方法・記録の保管を整理します。
個別支援計画の作成は省令で義務付けられている
就労定着支援の個別支援計画(サービス計画)は、省令第171号および解釈通知に基づいて作成が義務付けられています。以下の点が求められています。
- 作成義務者:就労定着支援のサービス管理責任者(サービス管理責任者と就労定着支援員を兼務している場合を含む)が作成します
- 作成のタイミング:利用開始から一定期間内(原則として利用開始後すみやかに)に作成することが求められます。解釈通知では「利用開始後速やかに」が基本とされています
- 本人への説明と同意:作成した個別支援計画は利用者(および必要に応じて家族)に書面で交付し、説明を行い、同意を得ることが義務付けられています(省令第171号)。同意の記録(署名)を残すことが必要です
- 定期的なモニタリングと見直し:一度作成して終わりではなく、定期的なモニタリング(実施状況の評価)と計画の見直しが義務付けられています
個別支援計画に記載すべき内容
個別支援計画には以下の内容を記載することが解釈通知で求められています。
| 記載項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 利用者の氏名・基本情報 | 氏名・生年月日・住所・障害種別・就労先・雇用形態・勤務時間 |
| 利用者の課題・ニーズ | 就労継続にあたって生じている生活面・職場面の課題。本人が希望する解決方法 |
| 支援の目標(長期・短期) | 長期目標:「3年後も安定した雇用継続ができている状態」等。短期目標:「3か月後までに遅刻ゼロを達成する」等 |
| 支援の内容・方法 | 月次の面談・電話連絡・企業訪問・医療機関との連絡調整の具体的な内容 |
| 支援の頻度・担当者 | 月1回以上の面談・担当就労定着支援員の氏名 |
| 評価の時期 | 次回のモニタリング予定時期(次回評価日) |
記載内容は法令で細かく書式が定められているわけではありませんが、「利用者の課題と支援目標が具体的に書かれているか」「支援の内容と頻度が明確か」が実地指導の確認ポイントになります。支援目標が曖昧な表現(「安心して働けるよう支援する」のみ)にとどまる場合は、具体性の不足として指摘される場合があります。
個別支援計画の作成手順:5つのステップ
個別支援計画は以下の手順で作成します。
| ステップ | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| ①アセスメント(課題把握) | 利用者の状況(就労先・雇用形態・職場での困りごと・生活面の課題・障害・医療情報等)を把握する。初回面談・就労移行支援事業所からの引き継ぎ情報を活用する | サービス管理責任者・就労定着支援員 |
| ②課題の整理と目標の設定 | アセスメントで把握した課題を整理し、長期目標・短期目標を設定する。目標は利用者本人の希望・意向を踏まえて設定することが重要 | サービス管理責任者・就労定着支援員 |
| ③計画書の作成 | 上表の記載事項を盛り込んだ個別支援計画書を作成する | サービス管理責任者 |
| ④利用者への説明・同意 | 作成した計画書を利用者・家族に説明し、署名(同意)を得て1部を利用者に交付する | サービス管理責任者・就労定着支援員 |
| ⑤計画に基づく支援の実施・記録 | 計画に定めた支援内容を実施し、支援記録として残す | 就労定着支援員 |
モニタリング:定期的な計画の見直し義務
個別支援計画は作成後も定期的にモニタリング(進捗の評価)を行い、必要に応じて計画を見直す義務があります(省令第171号・解釈通知)。
- モニタリングの頻度:解釈通知では、少なくとも6か月に1回以上のモニタリングが求められています(自治体によって頻度が異なる場合がありますので、指定権者に確認してください)
- モニタリングの内容:計画に定めた目標の達成状況・支援内容の適切性・利用者の状況変化(就労状況・体調・生活の変化等)を確認します
- 計画の変更:モニタリングの結果、計画の変更が必要と判断された場合は、計画を修正し、再度利用者に説明・同意を得ます
- モニタリング記録の作成:モニタリングを行ったことを記録に残します。「いつ、どのような評価を行ったか」が確認できる記録が必要です
節目となるモニタリングタイミングの例:
- 就労定着支援開始から3か月後(初期の適応状況の確認)
- 就労定着支援開始から6か月後(定期モニタリング)
- 転職・職場環境の大きな変化が生じた際(随時)
- 就労定着支援終了(3年満了)の3か月前(終了後の支援体制の確認)
支援記録と個別支援計画の整合性
実地指導では、個別支援計画に記載した支援内容と実際の支援記録(面談記録・連絡調整記録等)が整合しているかどうかが確認されます。
- 計画に書いた支援が実施されているか:「月1回以上の面談」と計画に書いているのに、実際の支援記録が3か月分空白になっている場合は省令違反となります
- 支援目標に向けた支援が行われているか:「遅刻の改善」を目標に掲げているのに、支援記録に遅刻対策に関する記述が一切ない場合は計画と記録が連動していないと見なされます
- 計画の変更が必要な状況になっても変更していない:転職・体調悪化・就労状況の大幅な変化があったのに計画を更新していない場合は、計画の形骸化として指摘されます
個別支援計画の保管期間と管理
個別支援計画書・モニタリング記録・説明同意書等の関連書類は、省令で原則5年間の保管が義務付けられています(自治体によって保管期間が異なる場合があります。指定権者に確認してください)。
- 保管方法:利用者ごとにファイルにまとめて整理し、施錠可能なキャビネット等に保管します
- 電子化の可否:紙の書類をスキャンして電子保管することは可能ですが、自治体によって対応が異なる場合があります。電子保管を採用する場合は、指定権者に事前確認をお勧めします
- 廃棄:保管期間終了後はシュレッダー処理等で適切に廃棄します
就労定着支援員が計画に基づいて動くための仕組みづくり
個別支援計画を作成するだけでなく、計画を実際の支援に活かす仕組みを事業所内で整えることが重要です。
- 担当者会議の活用:複数の就労定着支援員がいる場合、利用者の状況・計画の進捗を共有する担当者会議(ケース会議)を定期的に開催することで、支援の一貫性を保てます
- 次回モニタリング日の管理:全利用者のモニタリング予定日を一覧表で管理し、漏れを防ぎます
- 計画書への支援員コメント:月次の支援記録に「計画に沿った支援ができているか」「次回のモニタリングに向けて確認すべきこと」を記録しておくと、モニタリング時の評価がスムーズになります
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参考・出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
- 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。
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