就労定着支援の人員基準では、就労定着支援員を常勤換算1以上配置することが省令で定められています。「常勤換算1」は必ずしも常勤職員1名を指すわけではなく、複数の非常勤職員の勤務時間を合算して1に達すれば基準を満たせます。開業初期の費用を抑えたい事業所にとって、非常勤活用の仕組みを正しく理解することは重要です。
常勤換算の定義:勤務延べ時間数を常勤の基準時間で割った数値
「常勤換算」とは、当該事業所の従業者の勤務延べ時間数を、当該事業所で定めた常勤の従業者が勤務すべき時間数で割った数値です。
計算式は以下のとおりです。
常勤換算数=対象職員全員の週勤務時間の合計 ÷ 当該事業所が定めた1週間の常勤勤務時間数
ここで重要なのは「当該事業所が定めた1週間の常勤勤務時間数」です。法律上の労働時間(週40時間)ではなく、事業所の就業規則で定めた時間が分母になります。省令・解釈通知では、この時間数は週32時間以上であることが条件とされています。実務上は週40時間とする事業所が多いですが、週32〜40時間の範囲で事業所が設定できます。
計算例(週40時間・週32時間それぞれのケース)
具体的な計算例で確認します。
| 職員 | 雇用形態 | 週勤務時間 | 常勤換算 |
|---|---|---|---|
| 支援員A | 非常勤 | 20時間 | 20 ÷ 40 = 0.50 |
| 支援員B | 非常勤 | 20時間 | 20 ÷ 40 = 0.50 |
| 合計 | — | 40時間 | 1.00(基準を満たす) |
| 職員 | 雇用形態 | 週勤務時間 | 常勤換算 |
|---|---|---|---|
| 支援員A | 非常勤 | 16時間 | 16 ÷ 32 = 0.50 |
| 支援員B | 非常勤 | 16時間 | 16 ÷ 32 = 0.50 |
| 合計 | — | 32時間 | 1.00(基準を満たす) |
週32時間を常勤の基準とすれば、週16時間ずつ働く非常勤職員2名で常勤換算1を満たせます。常勤基準時間を小さく設定するほど、1名あたりの必要勤務時間が少なくなり、より少ない時間数で基準を充足できます。
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常勤換算を計算する際の注意点
常勤換算の計算では、以下の点に注意が必要です。
- 分母は事業所規程の時間数(法定時間ではない):法定労働時間の週40時間ではなく、事業所の就業規則に定めた「1週間の常勤勤務時間数(32時間以上)」が分母です。この時間数は就業規則・運営規程に明記しておく必要があります
- 育児・介護休業中の職員は算入できない:産前産後休業・育児休業・介護休業で不在の職員は、その不在期間中は常勤換算に含めません。代替要員の確保が必要です
- 複数事業所を兼務する場合は当該事業所の勤務時間のみカウント:他の事業所でも勤務している職員は、就労定着支援事業所で実際に勤務する時間のみを分子に算入します。他事業所の勤務時間は含みません
- 週の平均で計算する:週ごとの変動がある場合は、1か月の平均週勤務時間で常勤換算を計算します。特定の週だけ時間数が多くても、月平均が基準を下回っていると違反になります
管理者と就労定着支援員の兼務と常勤換算の考え方
就労定着支援の管理者は、「管理上支障がない場合」に限り、就労定着支援員と兼務することができます(省令第171号)。管理者が就労定着支援員を兼務する場合、管理業務と支援業務の両方をこなせる時間的余裕があることが前提です。
兼務の場合の常勤換算の扱いについては、以下のように整理されています。
- 管理者として常勤で配置されている場合:当該事業所で週の常勤基準時間以上勤務していれば、就労定着支援員としての常勤換算もその勤務時間をもとに計算できます。管理業務と支援業務を分けてカウントするのではなく、当該事業所での総勤務時間で常勤換算を求めます
- 注意点:管理者兼務が認められるのは「管理上支障がない場合」のみです。利用者数が増加して支援業務の量が多くなった場合や、管理業務が増加した場合は、兼務のままでは「管理上支障がある」と判断される可能性があります。指定権者に事前に相談することが推奨されます
非常勤職員を活用するメリットと注意点
開業初期や利用者数が少ない時期は、常勤職員1名を雇用すると人件費が月収入を上回るリスクがあります。非常勤職員を活用することで、人件費を段階的に増やすことができます。
非常勤活用のメリット
- 開業初期の固定費(人件費)を抑えられる
- 利用者数に応じて勤務時間・人数を段階的に増やせる
- 常勤1名を採用するより採用の難易度が下がる場合がある
非常勤活用の注意点
- シフト管理の複雑化:複数の非常勤職員で常勤換算1を維持するには、各職員の週勤務時間の管理が必要です。1人が休んだだけで常勤換算1を下回るリスクがあります
- 退職・急な離職への備え:非常勤2名で常勤換算1を構成している場合、1名が退職すると即座に基準を下回ります。常時0.5以上の余裕を持たせる・代替候補を確保しておくことが現実的な対策です
- 法定福利費の扱い:週20時間以上勤務・月額賃金8.8万円以上等の条件を満たす非常勤は社会保険への加入義務があります(2024年10月から従業員51人以上の企業まで対象が拡大)。法定福利費を含めたコスト計算が必要です
- 処遇改善加算の算定への影響:加算の算定計画書・実績報告書では職員の勤務形態を記載します。非常勤職員の処遇改善も計画・実績に含まれるため、管理が複雑になる場合があります
常勤換算を満たせなくなった場合の対応
退職・育児休業・長期病欠等の理由で常勤換算1を一時的に下回った場合は、速やかに指定権者(都道府県・政令市等)に変更届や相談を行うことが必要です。
- 変更届の提出:人員体制に変更があった場合は、自治体が定める期間内(多くは変更後10日以内)に変更届を提出する義務があります
- 減算の適用:基準を下回る状態が続いた場合は、報酬の減算(人員基準欠如減算)が適用される場合があります。減算の内容は自治体・サービス種別によって異なりますが、月次報酬が大幅に減少します
- 人員確保の優先:常勤換算1を割り込んだ場合は、新たな職員の採用・他事業所からの応援等で速やかに基準を回復することが最優先です
指定更新・実地指導での常勤換算の確認
都道府県・政令市等が行う実地指導(運営指導)では、以下の書類・記録をもとに常勤換算が確認されます。
| 書類 | 確認内容 |
|---|---|
| 勤務形態一覧表 | 各職員の勤務時間・雇用形態・常勤換算数が記載されているか |
| タイムカード・出勤簿 | 勤務形態一覧表と実態が一致しているか |
| 雇用契約書・労働条件通知書 | 週の契約勤務時間が記載されているか |
| 就業規則・運営規程 | 常勤の基準時間(週何時間)が明記されているか |
勤務形態一覧表は毎月作成・保管することが実地指導の標準的な確認対象です。「月末に振り返って作成した」では実態の記録として認められない場合があります。毎月の勤務終了後に速やかに作成・保管する運用を徹底することが重要です。
また、指定更新の際にも人員基準の充足状況が審査されます。指定更新申請時点で常勤換算1を満たしていることはもちろん、指定期間中も継続して満たしていたことが求められます。
開業後の人員体制の変化と常勤換算の見直し
利用者数が増加するにつれ、1名の就労定着支援員では対応しきれなくなる場合があります。利用者数の増加に合わせて人員体制を段階的に強化する計画を立てておくことが重要です。
- 利用者10〜15名程度まで:就労定着支援員1名(常勤換算1)で対応できる場合が多いですが、職場訪問・記録・企業連絡の業務量を踏まえて判断が必要です
- 利用者20〜30名以上:支援員1名では月間の支援件数(月1回以上×利用者数)の確保が難しくなる場合があります。常勤換算を1.5〜2.0に増やすことを検討します
人員体制の強化は人件費の増加を伴います。人員増加のタイミングを事前に収支計画に組み込んでおくことで、資金繰りの悪化を防げます。
参考・出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。
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