訪問介護の事業所を立ち上げた。あるいは、これから開業しようとしている。指定の申請も進めて、いよいよスタート。ところが、いざ始めてみると、利用者さんがなかなか増えない。ヘルパーさんも集まらない。このままでは事業が回らない。開業して最初にぶつかるのが、この壁です。
はっきりお伝えします。事業所の指定を取ることは、ゴールではなくスタートラインです。本当の勝負は、そこから「利用者」と「ヘルパー」という2つの生命線を、どう立ち上げるかにあります。私は営業ひとすじで20年、約70名の営業組織をマネジメントし、介護事業者さんの採用にも関わってきました。この記事では、その視点から、訪問介護の開業直後にやるべきことを、順番に整理します。
訪問介護には、2つの生命線がある
まず、頭に入れておいてほしい大前提があります。訪問介護という事業は、次の2つがそろって初めて回ります。
- 利用者:サービスを使ってくれる方。ここが売上になります
- ヘルパー:実際にサービスを提供するスタッフ。ここがなければ、利用者が増えても対応できません
この2つは、どちらか一方だけでは意味がありません。利用者を集めても、ヘルパーがいなければお断りするしかない。ヘルパーをそろえても、利用者がいなければ人件費だけがかかる。だから開業直後は、この両方を、同時に、順番を考えて立ち上げていく必要があります。そして厄介なことに、この2つは、集め方がまったく違います。
利用者は「広告」ではなく「ケアマネさんとの関係」で決まる
まず、利用者の集め方です。ここで多くの開業者が勘違いします。訪問介護の利用者は、チラシやWeb広告を打てば来る、というものではありません。実際には、そのほとんどが、ケアマネジャー、つまり居宅介護支援事業所からの紹介で決まります。
介護保険を使って訪問介護を利用する方には、ケアプランを作るケアマネジャーがついています。そのケアマネジャーが、「この方には、この訪問介護事業所が合いそうだ」と判断して、事業所を紹介します。つまり、あなたの事業所を選ぶ入口を握っているのは、利用者本人よりも、地域のケアマネジャーなのです。
だから、開業直後にまずやるべきは、地域のケアマネジャーや地域包括支援センターへの挨拶まわりです。ここは、まさに営業の世界と同じです。自分の事業所がどんなサービスを、どんな想いで提供しているのか。今、どのくらい受け入れの余裕があるのか。困ったときにすぐ動けるのか。こうしたことを、顔を出して、正直に伝えていく。一度で信頼されることはありません。何度も足を運び、紹介してもらった案件に誠実に応えることで、少しずつ「あそこなら安心して任せられる」という関係ができていきます。
私は営業を20年やってきましたが、この「相手の信頼を、時間をかけて積む」という部分は、商材が何であっても変わりません。訪問介護の利用者集めは、派手なマーケティングではなく、この地道な関係づくりが土台になります。自社のホームページは、ケアマネさんや利用者のご家族が「どんな事業所だろう」と調べたときに、きちんと安心してもらうための受け皿として持っておく、という位置づけです。
本当に難しいのは、ヘルパーの採用です
そして、訪問介護の一番の生命線であり、一番苦労するのが、ヘルパーの採用です。介護業界全体で人手が足りていないことは、あなたも肌で感じているはずです。訪問介護の分野は、その中でも特に人材の確保が難しいとされています(出典:厚生労働省などの各種調査)。利用者の依頼が来ても、動けるヘルパーがいなければ、その依頼はお断りするしかありません。せっかくケアマネさんと築いた信頼も、「あそこはいつも人がいなくて受けてくれない」となれば、次第に紹介が来なくなります。採用は、事業の生死を分けます。
多くの事業所が、ここで求人媒体やハローワーク、人材紹介に頼ります。もちろん、それも入口としては必要です。ただ、求人媒体には掲載料がかかり、人材紹介には成功報酬として、採用1人あたり数十万円という費用がかかることも珍しくありません。しかも、お金をかけたからといって、応募が来るとは限らない。ここが、開業直後の資金が限られている事業所にとって、大きな痛手になります。介護の採用にかかる費用の比べ方については、介護の採用単価はいくら?人材紹介・求人広告・採用LPを正直に比べた記事でも整理しているので、あわせて読んでみてください。
「応募が来る」仕組みを、自分の手元に作る
では、どうすればいいのか。開業直後にこそ持っておきたいのが、自分の事業所の「採用ページ、あるいは採用LP」です。求人媒体に頼りきるのではなく、応募が生まれる受け皿を、自分の手元に作っておくのです。
採用の現場を見てきて、はっきり言えることがあります。求職者、特に介護で働きたいと考えている方が一番気にしているのは、給料の額そのものよりも、「どんな職場なのか」「どんな人と働くのか」「無理なく続けられそうか」という点です。求人媒体の決まった枠に、条件だけを並べても、この不安はなかなか消えません。だから応募につながらないのです。
応募が来る採用ページには、条件だけでなく、次のようなものが載っています。
- 職場の雰囲気が伝わる写真:実際に働くスタッフや、事業所の様子。文字だけでは伝わらない空気を届けます
- 先輩スタッフの声:どんな人が、どんな思いで働いているのか。同じ立場の人の言葉は、何より安心につながります
- 代表の想い:どんな介護をしたくてこの事業所を始めたのか。ここに共感が生まれると、単なる求人が「この人のところで働きたい」に変わります
- 働き方の柔軟さ:直行直帰ができるのか、勤務時間は選べるのか。訪問介護で働きたい人が本当に知りたい、現実的な情報
- 応募しやすい入口:電話・LINE・フォームなど、迷わず一歩を踏み出せる導線。スマートフォンで見やすいことも欠かせません
こうした採用ページがあれば、求人媒体からの流入も、Googleで事業所名を調べた人も、しっかり応募につなげられます。求人媒体に毎月お金を払い続ける状態から、少しずつ、自分の手元で応募が生まれる状態へ。ここが、開業直後の採用を安定させる分かれ目になります。なぜ応募が来ないのかについては、介護施設で求人を出しても応募が来ない、その理由と見直せることでも詳しく書いています。
開業直後の、立ち上げの順番
ここまでを踏まえて、開業直後にやるべきことを、順番に整理します。全部を一度にはできませんから、順番が大事です。
まず、指定申請と並行して、ケアマネさんへの挨拶を始める。利用者の入口はケアマネさんです。事業が始まってから動くのでは遅い。準備段階から、地域の居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに、顔をつなぎ始めます。
次に、採用の受け皿を用意する。ヘルパーがいなければ、せっかくの紹介にも応えられません。求人媒体に出すのと並行して、応募が生まれる自分の採用ページ・採用LPを用意します。開業直後の一番の課題が採用である以上、ここは早めに手を打つ価値があります。
そして、Googleビジネスプロフィールを整える。ケアマネさんも、求職者も、ご家族も、あなたの事業所を一度は検索します。そのときに、正確な情報と、事業所の雰囲気が伝わる写真があること。これは無料でできる、大事な受け皿です。
最後に、口コミと紹介の循環を作る。誠実に対応した利用者やケアマネさんからの信頼、働きやすさを実感したヘルパーからの紹介。この循環ができると、宣伝に頼らなくても、人と利用者が集まる状態に近づいていきます。
開業者がつまずきやすい、よくある失敗
最後に、遠回りを減らすために、よくある失敗を挙げておきます。
ケアマネさんへの営業を後回しにする。「サービスの質さえ良ければ、いずれ紹介は来る」と考えて、関係づくりを後回しにすると、いつまでも利用者が増えません。紹介の入口は、こちらから動いて開くものです。
採用を、求人媒体だけに頼る。お金をかけ続けても応募が来ない、という状態から抜け出せません。自分の手元に、応募が生まれる受け皿を持つことが、長い目で見て事業を守ります。
採用ページが、条件を並べただけの薄いものになっている。求職者の不安を消せなければ、どんなに条件を並べても応募にはつながりません。働く姿が見える、人柄が伝わるページになっているかどうかが分かれ目です。
「開業すれば、あとは自然に回る」と思ってしまう。指定を取ることと、事業が回ることは、まったく別です。開業直後こそ、利用者と人材の両方を、意識して立ち上げにいく時期です。
まとめ:開業してからが、本当のスタート
訪問介護の開業は、指定を取った瞬間に成功が約束されるものではありません。そこから、利用者とヘルパーという2つの生命線を、順番に立ち上げていく。その地道な立ち上げこそが、事業を軌道に乗せる本番です。
おさらいすると、利用者はケアマネさんとの関係づくりで、ヘルパーは自分の手元の採用の仕組みで集める。開業準備の段階からケアマネさんに顔をつなぎ、応募が生まれる採用ページを早めに用意し、Googleビジネスプロフィールを整え、口コミと紹介の循環を育てる。この順番なら、限られた時間とお金でも、一つずつ前に進めます。
特に、開業直後の最大の課題である採用は、求人媒体に払い続けるお金を減らし、自分の手元で応募が生まれる仕組みを持てるかどうかで、その後がずいぶん変わります。あなたが始めた事業所で「一緒に働きたい」と思ってもらえる。その気持ちを、きちんと伝わる形にすることが、立ち上げの一番の近道です。
開業直後の一番の壁である「ヘルパーの採用」。求人媒体に頼り続けるのではなく、あなたの事業所の雰囲気・スタッフの声・代表の想いを、求職者が「ここで働きたい」と思う形にまとめるのが、採用LPです。
訪問介護・デイサービス・グループホームなど介護事業者向けの採用LP制作については、介護施設向けの採用LP制作サービスもあわせてご覧ください。制作の流れ・料金の目安・実際のサンプルを掲載しています。営業20年の視点で、”きれいなだけ”ではなく”応募につながる”ページを作ります。


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