就労移行支援の事業所数が減っている。収支構造から見る背景。
就労移行支援の収支を試算できます。3年目の警告も表示します。
▶ 就労移行支援 開業収支シミュレーター
就労移行支援の事業所数はピーク時の3,063か所(令和3年10〜12月)から2,834か所(令和7年1〜3月)へと減少しています(厚生労働省・障害福祉サービス等経営概況調査ほか)。事業所数の減少は、廃業・指定取り消し・新規開業の停滞等が積み重なった結果です。この記事では、就労移行支援の収支構造の特徴から、廃業につながりやすい要因を整理します。
事業所数の推移
就労移行支援の事業所数の推移は次のとおりです(厚生労働省データ)。
| 時点 | 事業所数 |
|---|---|
| 令和3年10〜12月(ピーク) | 3,063か所 |
| 令和6年1〜3月(1年前) | 2,919か所 |
| 令和7年1〜3月(最新) | 2,834か所 |
ピーク時から約230か所(約7.5%)の減少です。1年前と比べても85か所(約2.9%)減っています。増加が続いていた事業所数が転換点を迎えていることが分かります。事業所数の減少の背景については「就労移行支援の事業所数が減り続けている理由」でも整理しています。この記事では、特に「収支構造」の面から廃業につながりやすい要因を説明します。
就労移行支援の収支構造の特徴
就労移行支援の収支が他の障害福祉サービスと大きく異なる点は、「基本報酬が就労定着者の割合によって7段階に変動する」ことです(告示523号別表第12の1)。
定員20人以下の基本報酬(1日1人あたり)の7段階を示します。
| 就労定着者の割合 | 単位数(定員20人以下) |
|---|---|
| 50%以上 | 1,210単位 |
| 40%以上50%未満 | 1,020単位 |
| 30%以上40%未満 | 879単位(新規2年目みなし) |
| 20%以上30%未満 | 719単位 |
| 10%以上20%未満 | 569単位 |
| 零より大きく10%未満 | 519単位 |
| 零 | 479単位 |
50%以上(1,210単位)と零(479単位)では、同じ定員・稼働率でも年間収入に1.5倍以上の差が生じます。
新規事業所は2年間879単位のみなし期間がある
新規に指定を受けた事業所は、指定後2年間は就労定着者の割合が「30%以上40%未満」とみなされ、879単位が適用されます(就労移行支援に係る報酬算定の留意事項)。
この2年間(879単位)に経営を軌道に乗せ、3年目以降の定着率を高めておかないと、3年目に大きな収入減が起きます。
3年目に起きやすい収支の悪化
問題が生じやすいのが「3年目」です。3年目以降は「前年度と前々年度に就労継続6か月に達した者 ÷ 前年度と前々年度の利用定員の合計」で就労定着者の割合を計算します(告示523号注3)。
定員20人・稼働率70%・退所率4%(毎月0.56人退所)の事業所で、2年間の退所者が約13〜14人、うち就職・定着した利用者が4人の場合の割合を試算します。
就労定着者の割合 = 4人 ÷ (20人 + 20人) = 4/40 = 10%
10%では区分が「10%以上20%未満(569単位)」となり、879単位から310単位の減少です。その他(10円/単位)で計算すると、定員20人・稼働率70%・22日稼働の場合の月収入の差は次のとおりです。
- 879単位:約2,429,000円/月
- 569単位:約1,572,000円/月
- 差額:約857,000円/月(年間約1,028万円の収入減)
このような収入の急落が3年目に発生すると、人件費・家賃等の固定費を回収できなくなり、廃業の選択につながるケースがあります。
全国平均の収支データ
厚生労働省の障害福祉サービス等経営概況調査(令和7年)では、就労移行支援の全国平均の収支データが公表されています(以下は令和7年調査・年間・千円単位)。
| 項目 | 全体(n=296) | 定員20人以下(n=288) |
|---|---|---|
| 収入合計 | 28,784千円 | 27,909千円 |
| 給与費 | 18,476千円 | 18,099千円 |
| 収支差額 | 1,741千円 | 1,443千円 |
| 収支差率 | 約6.0% | 約5.2% |
| 平均定員 | 定員14 | 定員13 |
全国平均の収支差率は約5〜6%と低水準です。この数字は「全事業所の平均」であり、定着率が低い事業所・3年目以降の収入減を抱える事業所は平均を大きく下回ることもあります。
廃業を避けるための収支の確認ポイント
就労移行支援の開業を検討する際に確認しておくべきポイントを整理します。
1. 3年目以降の収支試算を必ず行う
新規2年間の879単位で黒字でも、3年目に569単位等に下がった場合の収支が耐えられるかを確認する必要があります。「2年目の損益分岐人数」だけでなく「3年目(定着率10〜20%水準)の損益分岐人数」も計算してください。
2. 就労支援員の配置と定着支援体制を整える
定着率を高めるには、就労支援員が就職活動を支援し、就職後の定着支援(退所後6か月の相談支援等)に注力することが重要です。就労支援員は利用者15人あたり1人の配置が省令171号第175条第1項第2号で定められています。
3. 稼働率の管理
稼働率が低いと収入が不足します。ただし稼働率を上げるために就労準備が整っていない利用者を長期間支援し続けると、定着率が下がり基本報酬の区分も下がります。稼働率と定着率の両方を管理することが求められます。
4. 1か所あたりの費用額を把握する
厚生労働省の「最近の動向」資料では、就労移行支援の1事業所当たり月額費用額が約2,414千円(月)と公表されています。これが目安となります。自事業所のコスト構造と比較することで、適正な稼働率・定員の設定が可能です。
収支シミュレーターで3年目の警告を確認する
就労移行支援の開業収支シミュレーターは、1〜3年目の収支を試算できるツールです。定着者数の見込みを入力すると、3年目に定着率が低い区分に移行した場合の収支悪化も自動で警告します。
3年目の収支警告つきシミュレーターです。
▶ 就労移行支援 開業収支シミュレーター

コメント