クレーンのワイヤロープ廃棄基準|素線切断10%・直径減少7%超えで使用禁止

クレーンのワイヤーロープ廃棄基準とは

クレーンに使用するワイヤーロープは、使用を継続することが危険な状態になったら廃棄(使用禁止)しなければなりません。クレーン等安全規則第215条では、ワイヤーロープを使用禁止とする具体的な基準を定めています。これはクレーン・デリック運転士試験(関係法令・クレーン知識)で頻出の重要事項です。 ワイヤーロープは多数の細い素線(ストランドを構成する金属線)をより合わせた構造のため、表面から見ただけでは内部の劣化が分かりにくい場合があります。正確な廃棄判断基準を知ることが安全管理の基本です。

法定廃棄基準(クレーン則第215条)

クレーン則第215条が定める廃棄基準は次の4項目です。すべての条件が独立しており、どれか1つでも該当すれば使用禁止(廃棄)です。
廃棄基準の種類具体的な基準値確認のポイント
①素線の断線数1よりの間で素線数の10%以上が断線1撚り(1ピッチ)の中で10%を超える断線があれば廃棄
②直径の減少公称径(カタログ径)の7%を超える減少ノギスで実測径を計り、公称径との差を確認
③キンク(よじれ)キンクがある使用中にワイヤーがよじれた(キンクした)場合は即廃棄
④著しい変形・腐食著しい形崩れ・腐食がある外観で明らかに形状が変化・腐食している場合

素線の断線数の数え方

廃棄基準①「1よりの間で素線数の10%以上の断線」について詳しく解説します。 「1より」とはワイヤーロープのストランドが1回りするピッチ(長さ)のことです。ワイヤーロープは複数のストランドがよじれており、1ピッチの中に含まれる全素線数の10%以上が断線していたら廃棄です。 具体例:
  • ワイヤーロープの構成が6×24(6本ストランド×24本素線)の場合、全素線数は6×24=144本
  • 1よりの間に14本(144×0.097≒10%未満)の断線があった場合 → 廃棄しない
  • 1よりの間に15本(144×0.104≒10%以上)の断線があった場合 → 廃棄する
ただし現場では1ピッチの全素線数を数えることは難しいため、目視で明らかに多数の断線が見られる場合は廃棄を検討し、疑わしい場合は上長や専門家に判断を仰ぎます。

直径減少の確認方法

廃棄基準②「公称径の7%超の直径減少」の確認方法を説明します。
  • 公称径:ワイヤーロープのカタログに記載された設計上の直径。例:「12mm径のワイヤーロープ」なら公称径は12mm
  • 実測径:ノギスを使って実際のワイヤーロープの直径を測る(同じ断面で2点以上計測し平均を取る)
  • 廃棄判断:(公称径 – 実測径)÷ 公称径 × 100 が7%超なら廃棄
例:公称径12mmのロープ → 実測径が11.1mm以下(12 × 0.93 = 11.16mm)になったら廃棄 直径の減少は、主にワイヤーロープの摩耗・内部素線の断線・外部コアの圧縮によって生じます。

キンクとは(廃棄基準③)

キンク(kink)とは、ワイヤーロープが使用中に輪(ループ)を作ってよじれ、その状態で引っ張られることで生じる「ひし形変形」です。
  • キンクが生じると、その部分で素線の配列・テンションが乱れ、局所的に強度が大幅に低下する
  • 外見ではわずかなよじれに見えても、内部では素線に永久変形や断線が生じている
  • キンクが発生したワイヤーロープは即廃棄(切り取って再使用も禁止)
  • キンクを防ぐには:ワイヤーロープのドラムへの巻き取りを適切に管理し、ドラム上での蛇行・交差を防ぐ

腐食・変形の判断基準(廃棄基準④)

「著しい腐食または変形」の判断は、一定の目安があります。
  • 腐食:表面が全体的に赤茶色に変色(赤錆)していたり、素線間に腐食が進んでいる場合。点錆なら潤滑油塗布で継続使用可能な場合もあるが、判断が難しい
  • 変形:ローリング(素線のよれほぐれ)・鳥籠(バードケージ)状の膨らみ・一部のストランドが突出している状態
  • バードケージ(鳥籠状変形):ロープを過大な衝撃荷重で使用した場合や急激な負荷変動で生じる特徴的な変形。ストランドが外側に広がり鳥籠のように見える。即廃棄対象

廃棄基準と月次点検・年次点検の関係

ワイヤーロープの廃棄基準は定期自主検査でも確認します。
  • 月次定期自主検査(月1回):ワイヤーロープの断線・摩耗・変形・腐食の有無を目視で点検。クレーン則第35条
  • 年次定期自主検査(年1回):より詳細な点検。荷重試験の際にワイヤーロープへの負荷状態も確認
  • 作業前点検(毎日):作業開始前にフック・ワイヤーロープの状態を確認する(クレーン則第36条)

ワイヤーロープの廃棄と交換の手順

  • 廃棄基準に該当するワイヤーロープは即使用中止し、切断・廃棄する(他の用途への転用も禁止)
  • 交換は同等以上の規格(型式・径・強度)のワイヤーロープで行う
  • 交換後は作業前にロープの張り具合・シーブへの収まりを確認する
  • ワイヤーロープの端末加工(ソケット・クリップ等)が正しく行われているかも確認する

一問一答(試験対策)

  • Q:ワイヤーロープの断線廃棄基準は「1よりの間に素線数の何%以上」か? A:10%以上
  • Q:直径の廃棄基準は公称径の何%超の減少か? A:7%超
  • Q:キンクが生じたワイヤーロープはどうすべきか? A:即廃棄(再使用不可)
  • Q:バードケージ変形とは何か? A:ストランドが外側に広がり鳥籠状になった変形。即廃棄対象
  • Q:ワイヤーロープの月次点検はどの条文に定めがあるか? A:クレーン則第35条

まとめ

ワイヤーロープの廃棄基準4項目(①断線10%以上・②直径7%超減少・③キンク・④著しい変形腐食)はすべて試験頻出です。特に「10%と7%」という数値は混同しやすいので、①断線=10%、②直径減少=7%として個別に覚えましょう。キンクとバードケージは発見したら即廃棄が原則です。 クレーン・デリック運転士の過去問演習にはAI問題演習アプリをご活用ください。

ワイヤーロープの種類と構造の基本

廃棄基準を正確に理解するために、ワイヤーロープの基本構造を確認します。構成の呼び方も試験に関連します。

  • 素線(もとせん):ワイヤーロープを構成する最も細い金属線
  • ストランド:複数の素線をより合わせた束。複数本のストランドをさらにより合わせてロープになる
  • 心綱(しんつな/コア):ストランドの中心または複数ストランドの中心に配置される芯。繊維心(FC)・ワイヤー心(WC)・独立ワイヤーロープ心(IWRC)がある
  • 「6×24」の意味:6本のストランドに各24本の素線。全素線数=6×24=144本。断線廃棄基準は1よりの間で144×0.1=14.4本超(15本以上で廃棄)

ワイヤーロープの廃棄基準4項目(再まとめ)

廃棄基準具体的数値覚え方
①素線断線1よりの間で素線数の10%以上「断線はジュッパーセント(10%)」
②直径減少公称径の7%超「直径は7%」(断線の10%より少ない)
③キンクキンクがある(量は問わない)「キンクは即廃棄」
④著しい変形・腐食著しいもの(判断が必要)バードケージ変形・全面赤錆は即廃棄

「10%と7%の数値を逆に覚えない」ことが試験での最大の注意点です。断線は10%・直径は7%です。公称径の7%超(12mmなら0.84mm超の減少で廃棄)は意外と厳しい基準であり、実際の現場でも定期的なノギス測定が重要な理由です。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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