クレーン電動機の出力計算公式|P=W×v÷ηと単位換算の方法

クレーン電動機の出力計算とは

クレーン・デリック運転士試験の「原動機及び電気に関する知識」科目では、電動機(モータ)の出力を求める計算問題が毎回出題されます。公式を正確に覚え、単位換算ができれば確実に得点できる科目です。計算問題が出題される科目は「原動機電気」と「力学」の2科目で、この2つで苦手が多いため、繰り返し練習することが合格への近道です。

出力計算の基本公式

巻上用電動機(荷を持ち上げるモータ)の出力Pは次の公式で求めます。
  • P(kW)= W(kN)× v(m/s)÷ η
各変数の意味:
  • P:電動機の出力(単位:kW)
  • W:荷重(単位:kN / 1kN=1,000N)
  • v:巻上速度(単位:m/s)
  • η(イータ):機械効率(0以上1以下の小数。例:0.80=80%)
ηが分母にある理由:摩擦ロスがあるため、電動機が発生する電力は実際の有効仕事より大きくなります。有効仕事P有効=Wvに対して、実際の電力P実際=P有効÷η(ηが小さいほど必要電力が大きくなる)という関係です。

単位換算の早見表(試験頻出)

変換の種類換算式例
t(トン)→ kN×9.82t → 19.6kN
kg → N×9.8500kg → 4,900N
m/min → m/s÷6012m/min → 0.2m/s
kW → PS÷0.73557.35kW → 10PS
PS → kW×0.73510PS → 7.35kW

計算例①(標準問題)

問題:質量2tの荷を速度10m/minで巻き上げる電動機の出力(kW)を求めよ。機械効率は0.80とする。 解答ステップ:
  • W = 2t × 9.8 = 19.6kN
  • v = 10m/min ÷ 60 = 0.1667m/s
  • P = 19.6 × 0.1667 ÷ 0.80 ≒ 4.08kW

計算例②(応用問題)

問題:質量3tの荷を速度20m/minで巻き上げる。機械効率0.75。出力を kW で求めよ。 解答ステップ:
  • W = 3t × 9.8 = 29.4kN
  • v = 20m/min ÷ 60 ≒ 0.333m/s
  • P = 29.4 × 0.333 ÷ 0.75 ≒ 13.07kW

計算例③(逆算問題)

問題:出力15kW・機械効率0.80・速度12m/minの電動機で何tの荷を吊り上げられるか? 解答ステップ(逆算):
  • v = 12 ÷ 60 = 0.2m/s
  • W = P × η ÷ v = 15 × 0.80 ÷ 0.2 = 60kN
  • W(t)= 60 ÷ 9.8 ≒ 6.1t
逆算問題では「P × η ÷ v = W」と式を変形することがポイントです。

機械効率ηの意味と一般的な値

機械効率ηは、電動機が発生した電力エネルギーのうち実際に荷の持ち上げに使われた割合です。
  • 一般的な巻上装置の効率:η = 0.75〜0.85程度
  • 滑車(シーブ)を多く使う構成ほどηは小さくなる
  • シーブ1個の効率:約0.98。3本かけた場合:0.98³≒0.94程度(参考値)
  • ηが0.8から0.75に低下 → 必要電力が約6.7%増加

走行・横行用電動機の出力計算

走行・横行用電動機の出力計算は走行抵抗Fを用います。
  • P = F(kN)× v(m/s)÷ η
  • 走行抵抗F = (クレーン全重量 + 荷重)× 走行抵抗係数(μ)
  • 走行抵抗係数μの標準値:0.015〜0.020(鉄車輪・鉄レールの場合)
例:クレーン重量+荷重=100kN、μ=0.015、v=0.5m/s、η=0.8の場合
  • F = 100 × 0.015 = 1.5kN
  • P = 1.5 × 0.5 ÷ 0.8 = 0.9375kW

電動機の種類(三相誘導電動機)

クレーンの駆動用電動機には「三相誘導電動機(かご形・巻線形)」が主に使用されます。
  • かご形三相誘導電動機:構造が簡単・保守が容易。クレーン以外の一般機械に多用される
  • 巻線形三相誘導電動機:二次抵抗制御が可能で起動・速度制御性が良好。クレーン巻上装置に広く使用される
近年はインバータ(周波数変換器)を使った速度制御が普及しており、かご形電動機でも精密な速度制御が可能になっています。

電動機出力と定格荷重の関係

電動機の定格出力は、定格荷重を定格速度で連続して巻き上げることができる出力として設定されます。ただし実際の作業では荷が定格荷重を下回ることが多いため、電動機は余裕を持って運転できます。
  • 定格荷重+過負荷防止装置の作動閾値<つり上げ荷重 という関係
  • 起動時には慣性を克服するための起動トルクが必要(定常運転時より大きな電流が流れる)

一問一答(試験対策)

  • Q:P=Wv÷ηでηが分母にあるのはなぜか? A:摩擦ロスがあるため必要電力は有効仕事より大きいから
  • Q:1t=何kNか? A:9.8kN(1t×9.8)
  • Q:12m/minは何m/sか? A:0.2m/s(12÷60)
  • Q:ηが0.8→0.75に変化すると必要電力はどうなるか? A:増加する(分母が小さくなるため)
  • Q:走行用電動機の出力計算で使う値は? A:走行抵抗F・走行速度v・機械効率η

まとめ

電動機出力の基本公式は「P=Wv÷η」です。重さはkN(1t=9.8kN)、速度はm/s(m/min÷60)、効率ηは小数で計算します。逆算問題はP×η÷v=Wと変形します。試験では単位換算を間違えないことと、逆算問題への対応が最重要ポイントです。計算例を繰り返し練習して数値処理に慣れておきましょう。 クレーン・デリック運転士の過去問演習にはAI問題演習アプリをご活用ください。

電動機の出力計算に必要な数値のまとめ(試験直前確認)

変換の種類換算式例
t(トン)→ kN×9.8(重力加速度)1t → 9.8kN / 2t → 19.6kN
kg → N×9.81,000kg → 9,800N = 9.8kN
m/min → m/s÷6012m/min → 0.2m/s
kW → PS÷0.73557.35kW → 10PS
PS → kW×0.73510PS → 7.35kW

電動機の種類と起動方式(追加)

  • スターデルタ(Y-Δ)起動:三相誘導電動機の起動電流を抑える方法。起動時はスター結線(Y)→定常時はデルタ結線(Δ)に切り替える。クレーンの走行・横行用電動機に使用されることがある
  • 二次抵抗制御(巻線形):巻線形三相誘導電動機の二次側(ローター側)に外部抵抗を接続して起動トルクと速度を制御。クレーン巻上装置に広く使われる
  • インバータ制御:電源の周波数を変化させて回転速度を連続制御。現代のクレーンで主流。起動・停止が滑らかで省エネ
  • 電磁ブレーキ:電源OFFと同時にブレーキがかかるフェイルセーフ設計。停電時も荷が落下しない重要な安全装置
この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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