放課後等デイサービスでは、てんかんのある子どもが一定の割合で利用しています。てんかん発作は予告なく起こるため、「発作が起きたときにどう動くか」を全職員が身につけておく必要があります。この記事では、放デイでのてんかん発作対応研修の内容・発作時の手順・座薬の取り扱い・記録の書き方を整理します。
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放デイでてんかん発作対応を研修する必要がある理由
てんかんは、小児期に発症することが多い疾患です。知的障害・脳性まひ・自閉症スペクトラムを持つ子どもでは、てんかんの合併率がより高い傾向があります。放デイの利用児童の中には、てんかんを持つ子どもが複数在籍しているケースが珍しくありません。
てんかん発作は、突然意識を失う・全身がけいれんする・動きが止まる・意識が曇ったまま歩き回るなど、発作の種類によって見た目が大きく異なります。対応を知らない職員が「どうしていいかわからず、ただ見守るだけ」になることを防ぐために、研修での事前習得が不可欠です。
てんかん発作の主な種類と放デイでの出現パターン
発作の種類を知っておくと、対応の優先度と記録の正確さが上がります。放デイで遭遇しやすい発作の種類を以下の表に整理します。
| 発作の種類 | 見た目の特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 強直間代発作(大発作) | 全身硬直→両腕両脚のけいれん→意識消失 | 最もわかりやすい。受傷防止と時間の計測が最優先 |
| 欠神発作(プチマル) | 数秒間、動作が止まりぼーっとする。すぐ元に戻る | 「ぼんやりしていた」と見逃されやすい。繰り返しなら記録へ |
| 焦点(部分)発作 | 片腕だけがぴくつく・口をもぐもぐする・意識が曇ったまま歩き回る | 二次性全般化(大発作へ移行)することがある |
| ミオクロニー発作 | 腕や脚が瞬時にぴくっとする | 朝に多い。転倒のリスクがある |
| 脱力発作(アトニー) | 急に全身の力が抜けてその場に倒れる | 転倒による頭部外傷のリスクが高い |
てんかん発作時の対応手順。5ステップで動く
発作が起きたときの動き方を、5ステップで整理します。パニックにならずに動けるよう、研修で繰り返し確認しておきます。
- 安全を確保する:危険なものを遠ざけ、床や柔らかい場所に横向きに寝かせる。頭の下に何か柔らかいものを置く。口の中に物を入れない(舌を噛まないようにと指や棒を入れるのは誤り。歯が折れる・指を噛まれるリスクがある)。
- 時間を計る:発作が始まった時刻と終わった時刻を計測する。5分以上続く場合はてんかん重積状態の可能性があるため、救急要請を検討する。
- 観察する:発作の種類・身体のどこから始まったか・目の向き・顔色・呼吸の状態を記録用に観察・メモする。
- 緊急対応の判断をする:①5分以上発作が続く ②意識が戻らないまま次の発作が起きる ③呼吸が止まる・顔色が悪い —— のいずれかに該当したら迷わず119番通報する。
- 発作後の対応をする:発作が収まった後も、意識が戻るまで(ポスタール状態)そばを離れない。吐き気・嘔吐があるため横向きを維持する。保護者・管理者に連絡し、記録を作成する。
坐薬(ダイアップ・ジアゼパム)の取り扱い。使用できる条件と手順
てんかんのある子どもの一部は、発作が長引いた場合に挿入するジアゼパム坐薬(商品名:ダイアップ)を処方されています。放デイでの坐薬投与は、以下の条件がそろっている場合に限り対応できます。
- 保護者から書面で「使用の依頼と同意」を得ていること
- 医師の指示書(どのような状態になったら使用するかの具体的な条件が記載されたもの)があること
- 使用に関する手順書が事業所内に整備されていること
- 職員が事前に手順を確認していること。ダイアップ坐薬挿入は医行為であり、法的取り扱いはグレーゾーンです。実施の可否は事前に自治体の指導担当・主治医に確認してください(第3号研修の対象範囲外)
「5分以上発作が続いたら使用する」など、使用の開始条件を保護者・医師と確認しておくことが重要です。挿入後に救急要請が必要な状態になることも想定し、119番への連絡手順と並行して行います。
| 確認事項 | 確認状況 |
|---|---|
| 保護者の書面同意の有無 | ( )あり ( )なし |
| 医師の指示書の有無 | ( )あり ( )なし |
| 使用条件の具体的な記載(何分で使用するか) | |
| 保管場所・温度管理(要冷蔵) | |
| 使用後の記録様式の準備 | ( )あり ( )なし |
てんかん発作と心停止・失神の見分け方。判断のポイント
てんかん発作によく似た状態として「心停止(心臓が止まっている状態)」と「失神(血圧低下で一時的に意識を失う状態)」があります。心停止の場合はAEDと心肺蘇生が必要であり、てんかん発作と混同して対応が遅れると命に関わります。
| 状態 | 見た目の特徴 | 対応 |
|---|---|---|
| てんかん発作(強直間代) | 全身のけいれん・顔が紫色(チアノーゼ)になることがある・呼吸はある | 安全確保・時間計測・発作後に回復を待つ |
| 心停止 | 突然倒れる・呼吸なし(あるいは死戦期呼吸)・反応なし・けいれんが起きることもある | すぐ119番・AED・心肺蘇生 |
| 失神(血管迷走神経反射等) | 顔が青白い・数秒〜数十秒で意識が戻る・けいれんはほぼない | 横に寝かせる・意識回復後に経過観察 |
「呼吸の有無」を最初に確認する習慣を全職員に浸透させておくことが、最も重要な判断基準です。
てんかん発作後の記録。書くべき5項目
発作後に記録に残す内容を事前に決めておくと、パニック状態でも漏れが防げます。記録には以下の5項目を含めます。
- 発作開始時刻と終了時刻(何分間続いたか)
- 発作の種類・経過(どこから始まったか・どんな動きだったか)
- 対応した職員の名前と対応内容(坐薬使用の有無・119番連絡の有無)
- 発作後の状態(意識回復の時刻・嘔吐の有無・様子)
- 保護者への連絡時刻と内容
研修での実施方法。動画・ロールプレイ・事例共有の3段階
てんかん発作対応の研修は、知識の習得だけでなく「動ける」状態を目指します。以下の3段階で実施すると、実践力が身につきます。
第1段階:知識の習得(座学) — 発作の種類・手順・坐薬の取り扱いを資料で学ぶ。30〜45分程度。
第2段階:動画確認 — 実際の発作の映像(医療機関が公開している研修用映像)で、発作の見た目を確認する。「どれが欠神発作か」「どれが焦点発作か」を見分ける練習をする。
第3段階:ロールプレイ — 「発作が起きた場面」を想定したロールプレイを行い、手順どおりに動く練習をする。「安全を確保して」「時間を計って」という指示の出し方まで確認する。
在籍している子どものてんかんの状態(どんな発作が起きやすいか・坐薬の使用条件)を職員全員が把握しているかどうかも、研修内で確認します。
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作成者:fufumumu_design 作成日:2026-11-01
【出典】
・日本てんかん学会「てんかん診療ガイドライン2018」
・消防庁「救急蘇生法の指針2020(市民用)」
・厚生労働省「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(令和3年法律第81号)
本記事の内容は情報提供を目的としたものです。個々の子どもへの対応は、主治医・保護者の指示に従ってください。


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