放課後等デイサービスのヒヤリハット。記録・共有・再発防止の仕組みの作り方。

放課後等デイサービスのヒヤリハット。記録・共有・再発防止の仕組みの作り方。 放課後等デイサービス・児童発達支援

放課後等デイサービスのヒヤリハットとは、事故には至らなかったが、あと少しで利用児童の安全が脅かされたかもしれない出来事のことです。ヒヤリハットを記録して共有し、再発防止策を講じることが、重大事故の予防につながります。この記事では、放デイにおけるヒヤリハットの記録・共有・再発防止の仕組みの作り方を整理します。

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ヒヤリハット1件の背後には、重大事故につながるリスクが潜んでいる

「ハインリッヒの法則」は、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故、さらにその背後には300件のヒヤリハットが存在するという経験則です。産業安全の分野で知られるこの概念は、福祉・介護の現場でもリスク管理の考え方として広く活用されています。

放デイでは、300件のヒヤリハットを拾い上げ、組織として対応することで、1件の重大事故を防ぐという考え方が基本になります。「たいした事故にならなかった」と流さず、記録して分析することが重要です。

放デイでよく発生するヒヤリハットの例

放デイにおけるヒヤリハットの例
場面 ヒヤリハットの例
送迎 送迎車から子どもが乗降中に転倒しそうになった/チャイルドロックの確認漏れ
屋外活動 公園で目を離した際に子どもが道路に出かけた/熱中症の初期症状に気づかなかった
屋内活動 工作中にハサミを人に向けた/走り回った際に棚の角に頭をぶつけそうになった
食事・おやつ アレルギーのある食材が混入しかけた/丸飲みで誤嚥しかけた
服薬管理 服薬の確認漏れがあった/薬を誤って別の子どもに渡しかけた
緊急時対応 てんかん発作の際に対応に迷い、連絡に時間がかかった

放デイ特有のリスクとして、発達障害のある子どもの「衝動的な行動」「感覚探求による危険な行動」「緊急時に意思表示が難しい」という特性を踏まえたヒヤリハット事例が多い点が特徴です。

ヒヤリハット記録票は、事実を書く5W1Hで整理する

ヒヤリハット記録票に書く内容は、感想や評価ではなく「事実」が基本です。5W1Hで整理することで、後から分析しやすくなります。

ヒヤリハット記録票の記入例
項目 記入内容の例
いつ(When) 2026年11月1日(土)14:30頃
どこで(Where) 送迎車(ハイエース)の降車時・○○公民館前
誰が(Who) 利用者A(9歳・男児)・対応職員:田中(支援員)
何を(What) 車の降車ステップから足が滑り、転倒しかけた
なぜ(Why) 雨で路面が濡れており、ステップも湿っていた。職員が手を離すタイミングが早かった
どのように(How) 職員が腕を支えて転倒を防いだ。けがはなし

「危なかった」「注意すればよかった」という主観的な表現は記録として不十分です。「何が起きたか」「どう対応したか」を客観的な事実で書くことが、後の分析に役立ちます。

ヒヤリハットは、記録したその月に委員会で共有する

ヒヤリハットは記録しただけでは意味がありません。月1回の事故防止委員会または安全管理委員会で共有し、再発防止策を検討することがセットになります。

委員会での検討の流れは次のとおりです。

  1. 当月のヒヤリハット件数を集計する
  2. 件数の多い場面・種類を分類する(送迎・活動・食事など)
  3. 再発しやすいリスク要因を分析する
  4. 具体的な再発防止策を決定する(誰が・何を・いつまでに)
  5. 決定した防止策を記録し、全職員に周知する

「再発防止策を話し合った」という一行の記録ではなく、「降車時は職員が手を握って誘導する手順を統一することにした」など具体的な内容を会議録に残すことが重要です。

再発防止策は、ルール変更または環境改善で対処する

ヒヤリハットの再発防止策は、大きく「ルール変更」と「環境改善」の2種類で対応します。

再発防止策の分類
分類 例
ルール変更 送迎時の降車は必ず職員が手を取る、アレルギー確認は2人でダブルチェックする
環境改善 送迎車のステップに滑り止めマットを設置する、ハサミを収納するケースを鍵付きにする
教育・研修 てんかん発作への対応手順を全職員で確認する研修を実施する

「気をつける」「注意する」は再発防止策になりません。誰が見ても同じ行動をできる「手順の具体化」または「物理的な環境変更」が、再発防止として有効です。

ヒヤリハット件数は、報告しやすい文化の指標になる

ヒヤリハットの件数が少ない事業所が必ずしも安全とは限りません。「報告しにくい雰囲気」「書く手間が大きい」「報告すると叱られる」という文化がある場合、ヒヤリハットが隠れてしまいます。

ヒヤリハットの報告件数を増やすために有効な取り組みの例は以下のとおりです。

  • 「どんな小さなことでも書いてよい」とルールを明確にする
  • 記録票をシンプルにして記入の手間を減らす(スマホから入力できる形式も有効)
  • 報告したことを評価する(「よく気づいてくれた」と管理者が声をかける)
  • 委員会で「報告してくれたヒヤリハットで○件の防止策が取れた」と結果を共有する

ヒヤリハットを積極的に報告できる職場文化は、重大事故の予防だけでなく、職員が安心して働ける環境づくりにもつながります。

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作成者:fufumumu_design 作成日:2026-11-01
【出典】
・ハインリッヒの法則(W.H. Heinrich著「Industrial Accident Prevention」1931年)
・厚生労働省「放課後等デイサービスガイドライン」平成27年4月(安全管理の取り組み)
本記事の内容は情報提供を目的としたものです。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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