短期入所の申し送り・記録記載研修。主観と客観の区別と引継ぎ8項目。

短期入所の申し送り・記録記載研修。主観と客観の区別と引継ぎ8項目。 短期入所

短期入所では宿泊中に複数の職員が利用者に関わるため、申し送りと記録が支援の継続性を担保します。基準第41条(第145条準用)は記録の作成・保管を義務としており、記録漏れや主観的な記述は指導監査で改善指導の対象になります。記録の書き方・申し送りの伝達項目・保管年数の確認方法をまとめました。

短期入所の記録義務は基準第41条(第145条準用)が定める法的義務である

基準第41条(第145条で準用)は、「指定短期入所事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しなければならない」「利用者に対するサービスの提供に関する記録を整備し、完結の日から5年間保存しなければならない」としています。(出典:基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索))

保管年数の原則は次のとおりです。

記録の種類 保管年数 備考
支援記録・サービス提供記録 5年 完結の日から
契約書・重要事項説明書 5年 契約終了後から
事故報告書・ヒヤリハット記録 5年(事故記録) ヒヤリハットは内部規定による
申し送りノート・引継ぎ記録 施設の規定による 支援記録と一体の場合は5年

表は当方が基準の規定をもとに整理したものです。所在地の指定権者に最終確認してください。

指導監査では記録の保管状況が確認されます。「書いていたが廃棄した」「電子データを削除した」という状況は改善指導の対象になります。

短期入所の申し送りは宿泊中に複数の職員が関わるため情報の継続性が命綱になる

通所サービスでは利用者が毎回帰宅するため、翌日の状態は当日に確認し直せます。一方、短期入所では宿泊中に日勤→夜勤→早番→日勤と複数の職員が同じ利用者に関わります。前の担当者が把握していた情報が次の担当者に伝わらない場合、対応の遅れや誤った判断につながります。

申し送りで最低限伝えるべき項目は次のとおりです。

  • バイタル:体温・血圧・SpO2・脈拍の最新値と、平常時との差異
  • 服薬:次の服薬時刻と薬の準備状況。服薬拒否があった場合はその経緯
  • 食事・水分:摂取量(全量・7割・半量など)、食形態の変更の有無、嚥下の様子
  • 排泄:排尿・排便の回数と性状。便秘傾向・下痢の有無
  • 睡眠:就寝時刻・起床時刻・夜間の覚醒回数・徘徊の有無
  • 気になる変化:普段と異なる言動・身体症状・気分の変化
  • 対応済み事項:家族への連絡内容・医療機関への相談結果
  • 次のシフトへの引継ぎ事項:観察を継続してほしい点・対応を継続してほしい事項

口頭の申し送りだけに頼ると、伝達ミスや聞き漏らしが発生します。口頭申し送りと記録記載を組み合わせることで、後から確認できる状態を作ります。

記録は主観と客観を区別して書き、事実を具体的に記述する

記録でよく見られる問題は、職員の主観的な解釈が事実と混ざった書き方です。記録が主観的だと、後から読んだ職員が「実際に何が起きたか」を把握できません。

主観的な書き方(避けるべき例)

  • 「不穏だった」→ 何を根拠に「不穏」と判断したかが不明
  • 「食欲がなさそうだった」→ 摂取量が記録されておらず、次の職員が判断できない
  • 「普通に過ごした」→ 何も起きなかったのか、記録していないだけなのか区別がつかない

具体的な書き方(望ましい例)

  • 「19:00、居室から廊下に出て往復する行動が30分続いた。声をかけると返答はあったが居室には戻らず、担当者が同伴して20分後に就床した」
  • 「夕食(軟食)の摂取量は3割程度。「おいしくない」との発言あり。水分は200mL摂取」
  • 「22:00の巡回時、呼吸は整。体位は右側臥位。表情穏やか」

記録は「いつ・誰が・何をしたか・利用者の反応はどうだったか」の4点を意識して書くと、後から読んだ職員が状況を再現できます。(出典:解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日))

SOAP記録と経過記録は目的に応じて使い分ける

記録の形式はひとつに統一する必要はありませんが、目的に応じて使い分けると効率的です。

SOAP記録

  • S(Subjective・主観的情報):利用者が話した内容(「頭が痛い」「眠れなかった」など)
  • O(Objective・客観的情報):観察した事実(バイタル・行動・表情・摂取量など)
  • A(Assessment・アセスメント):情報から判断した状態(「熱が上がり始めている可能性あり」など)
  • P(Plan・計画):次のシフトへの引継ぎ事項・対応の方針

SOAP形式は状態変化があった場面で、経緯と判断を整理して記録したいときに適しています。

経過記録(時系列記録)

時刻を追って出来事を記録する形式です。夜間の巡回記録・服薬実施の記録・申し送り内容の記録など、定期的に発生するルーティンの記録に適しています。

どちらの形式でも、「職員の判断」と「利用者の状態の事実」を区別して書くことが基本です。

記録漏れは指導監査でサービスの質が問われる根拠になる

運営指導では、記録の整備状況が確認されます。具体的には次のような場面で問題になります。

  • 宿泊中の利用者に事故が発生したが、事故前の経過記録が残っておらず、前兆を見逃していたかどうか確認できない
  • 服薬の実施記録が途切れており、飲み忘れがあったかどうか遡れない
  • 申し送りノートが保管されておらず、夜間の対応状況を確認できない

基準が求める記録義務は「適切なサービスが提供されていたこと」を証明する手段でもあります。記録がなければ、適切なサービスを提供していたとしても証明できません。

特に事故が発生した後は、事故前後の記録が詳細に保管されているかどうかが、行政への報告と家族への説明の両方で重要になります。

電子記録は閲覧権限・バックアップ・保管終了後の削除を施設内ルールで定める

記録を電子化(専用ソフト・タブレット・Excelなど)している場合、紙記録と異なる管理上の注意点があります。

  • アクセス権限:利用者の個人情報が含まれるため、閲覧・編集できる職員の範囲を設定する
  • バックアップ:クラウド保存またはローカルバックアップを定期的に実施し、データ消失リスクに備える
  • 保管終了後の削除:保管期間(5年)を過ぎた記録を適切に削除・廃棄する手順を定める
  • 端末の紛失・盗難対応:タブレット端末を施設外に持ち出さない・パスワードロックを設定するなどの規定を設ける

電子記録であっても、指導監査では記録の内容(事実の記述・日時の記録)が確認されます。ソフトウェアを導入しただけで記録の質が上がるわけではなく、職員が何を・どう書くかの研修が必要です。

申し送り・記録研修は年1〜2回・新人は採用後速やかに実施する

記録の研修には法定の義務回数の明示はありませんが、安全管理と指導監査への備えとして年1〜2回の確認が適切です。新入職員は記録の書き方を習得しないまま宿泊利用者の担当につく状況を避けるため、採用後速やかに実施します。

研修で確認するとよい内容:

  • 施設の記録様式の確認と記入例の共有
  • 「主観と客観の区別」の実習(過去の記録を例に、改善点を全員で検討)
  • 申し送りのロールプレイング(何を・どのように伝えるかを実演)
  • 保管年数と廃棄手順の確認

個人情報の取り扱いに関しては短期入所の個人情報保護・記録管理研修、ヒヤリハット記録の書き方は短期入所のヒヤリハット研修もあわせて確認してください。

研修資料・確認テスト・記録様式の一式は法定研修・訓練キット(短期入所版)でまとめて用意できます。

この記事は、障害者総合支援法に基づく基準(平成18年厚生労働省令第171号)、解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日)の内容を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。所在地の指定権者(都道府県・市)の案内もあわせて確認してください。作成:fufumumu_design

この記事の出典

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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