短期入所の収支をよくする3つの変数。定員・稼働率・障害支援区分の感度分析。

短期入所の収支をよくする3つの変数。定員・稼働率・障害支援区分の感度分析。 短期入所





短期入所の収支をよくする3つの変数。定員・稼働率・障害支援区分の感度分析。

短期入所の収支をよくする3つの変数。定員・稼働率・障害支援区分の感度分析。

短期入所の収支を試算できます。
▶ 短期入所 開業収支シミュレーター

短期入所の月次収入は「定員 × 稼働率 × 1人日当たりの報酬単価」で決まります。この式を構成する変数のうち、どれを変えると収益が最も大きく変わるかを数値で比較します。結論を先に述べると、稼働率が収益に最も直接的に影響する変数です。定員は設計時に決まる固定的な変数で、区分構成は受け入れる利用者層によって変わります。

3つの変数の整理

短期入所の収支に影響する3つの主要変数を整理します。

変数 性質 事業者が影響できるか
定員 居室面積・設備基準から決まる上限。開業時に決める 開業時に一度決まる(増員には変更届・設備投資が必要)
稼働率 定員に対して実際に何%利用されているか 利用者開拓・営業活動・紹介ルート強化で改善できる
障害支援区分(区分構成) 利用者1人当たりの1日の基本報酬を左右する 受け入れる利用者層によって変わる(一定の制御は可能)

ベースケースの設定

感度分析のベースケースとして次の条件を設定します。試算はモデルケースであり、実際の収支を保証するものではありません。

  • 事業形態:単独型(単独型加算320単位を算定)
  • 定員:10名
  • 稼働率:80%(1日平均8名利用)
  • 区分構成:区分5中心(基本報酬784単位)
  • 加算:単独型加算+食事提供体制加算+処遇改善(Ⅰ)ロ
  • 地域区分:その他(1単位10円)
  • 1日1人当たり報酬(概算):(784+320+48)×1.193×10円 ≈ 13,742円
  • 月間収入(基準):13,742円 × 8名 × 30日 ≈ 330万円
  • 月間固定費(基準):約138万円
  • 月次利益(基準):約192万円

変数1:定員を変えると収益はどう変わるか

定員を変えた場合の月次収益の変化を試算します。稼働率80%・区分5中心・地域区分その他は固定。定員が増えると固定費(家賃・人件費)も増えると仮定します。

定員 月間利用人日(稼働率80%) 月間収入(概算) 月間固定費(概算) 月次利益
8名 192人日 約264万円 約135万円 約129万円
10名(ベース) 240人日 約330万円 約138万円 約192万円
12名 288人日 約396万円 約141万円 約255万円

定員を8名から12名に増やすと月次利益は約126万円増加します(129万→255万)。ただし、定員を増やすには居室の増設(1人8m²以上・1室4人以下の設備基準)・変更届・追加人件費が必要です。設備投資の回収期間も含めて判断してください。

また、定員20名以上になると単独型の所定単位数に0.9の減算が適用されます。20名以上の規模を検討する場合は、減算前後の収支を試算して比較してください。

変数2:稼働率を変えると収益はどう変わるか

稼働率を変えた場合の月次収益の変化を試算します。定員10名・区分5中心・地域区分その他は固定。固定費は稼働率に関わらず同一です。

稼働率 月間利用人日 月間収入(概算) 月間固定費 月次損益
60% 180人日 約247万円 約138万円 約+109万円
70% 210人日 約289万円 約138万円 約+151万円
80%(ベース) 240人日 約330万円 約138万円 約+192万円
90% 270人日 約371万円 約138万円 約+233万円

稼働率が10ポイント上がるごとに月次利益は約41〜42万円増加します。稼働率の改善は固定費を増やさずに収益を増やせる最もコストパフォーマンスの高い手段です。

稼働率を高めるためには、相談支援専門員への事業所説明・訪問・地域の福祉関係者へのネットワーク構築が有効です。定期利用者(毎月定期的に利用する固定客)を増やすことが稼働率の安定につながります。

変数3:障害支援区分を変えると収益はどう変わるか

区分構成を変えた場合の月次収益の変化を試算します。定員10名・稼働率80%・地域区分その他は固定。

区分構成 1人日当たり基本報酬 1人日当たり合計(処遇改善後概算) 月次利益(概算)
区分3中心(583単位) 583単位 約11,356円 約+136万円
区分5中心(784単位・ベース) 784単位 約13,742円 約+192万円
区分6中心(923単位) 923単位 約15,403円 約+232万円

区分3中心から区分5中心に変わると月次利益が約56万円増加し(136万→192万)、区分6中心ではさらに40万円増えます(192万→232万)。区分が高い利用者は医療的ケアや重い介護負担を伴うことが多く、必要な支援体制(人員・設備)も高まります。区分構成の変化は収益だけでなく支援体制のコストにも影響することを踏まえて計画してください。

また、重度障害者支援加算(障害支援区分5・6の利用者が50%以上)が算定できる場合は、1日1人当たり30単位の追加収入が見込めます。

3変数の感度まとめ

感度(収益への影響の大きさ)を比較すると次のようになります。

変数 変化の例 月次利益の変化(概算) 事業者が動かせるか
定員 8名→12名(+4名) 約+126万円 設備投資が必要(低い)
稼働率 60%→80%(+20ポイント) 約+83万円 営業・利用者開拓で改善(高い)
区分構成 区分3→区分6(重度化) 約+96万円 受け入れ方針によって変わる(中程度)

稼働率は定員増設や設備投資なしに改善できる変数であり、運営初期から継続的に取り組むべき最優先の課題です。区分構成は支援体制の整備と表裏一体であることを忘れずに計画してください。

自事業所の数字で試算する

上記の試算はモデルケースです。実際の収支は地域区分・人員配置・物件コスト・算定する加算の組み合わせによって異なります。開業収支シミュレーターでは、定員・稼働率・区分構成・加算の有無・地域区分を入力して自事業所に近い条件で試算できます。

短期入所の収支を試算できます。
▶ 短期入所 開業収支シミュレーター

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出典:令和3年厚生労働省告示第523号(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の報酬の算定に関する基準)別表第7の1。本記事の試算はモデルケースであり、実際の収支を保証するものではありません。当ページは法令の解説を目的としており、法的助言ではありません。最新の内容は指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。作成:2026年11月。


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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