居宅介護支援事業所の開業スケジュール。法人設立から指定まで6〜12か月の流れ。

居宅介護支援事業所の開業スケジュール。法人設立から指定まで6〜12か月の流れ。 介護

居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)の開業は、法人設立から指定取得まで最短でも6か月、余裕を持った準備では12か月程度を見込む必要があります。小規模多機能型居宅介護や認知症グループホームと異なり、公募制度がないため自治体の空き枠を待つ必要はありません。ただし、主任介護支援専門員の確保・事務所の確保・指定申請書類の準備が同時進行することが多く、スケジュール管理が重要です。この記事では法人設立から開業までの全ステップを整理します。

居宅介護支援の指定に公募制度はない

居宅介護支援事業所は「地域密着型サービス」ではなく「居宅サービス」に分類されるため、市区町村が件数を制限する公募制度の対象外です。条件を満たせば、原則として申請すれば指定を受けられます。

ただし、令和3年4月からは指定権者が都道府県から市区町村に移管されており、市区町村の窓口に申請します。申請月や受付のタイミングは市区町村によって異なるため(毎月受付・4半期ごとの受付等)、事前に確認が必要です。

開業までの全体スケジュール

開業準備の全体の流れを時系列で示します。各ステップは並行して進めることが多く、必要な期間はケースによって異なります。

居宅介護支援事業所 開業までの全体スケジュール(目安)
ステップ 所要期間の目安 主な作業
①事業計画の作成・収支の試算 1〜2か月 担当件数の目標・人件費・家賃の試算。収支シミュレーターで3年収支を確認
②法人設立 2〜4か月 定款作成・法人登記(株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人等)。種類によって期間と費用が異なる
③主任介護支援専門員の確保 1〜3か月(採用活動) 求人・面接・採用。自身が主任ケアマネの場合は証明書の有効期限確認
④事務所の確保 1〜2か月(物件探し・契約) 物件選定・省令上の設備要件の確認・賃貸契約
⑤指定申請書類の準備 1〜2か月 運営規程・重要事項説明書・各種誓約書・平面図等の作成
⑥指定申請の提出 申請受理から1〜2か月 市区町村への申請書類一式の提出(郵送・窓口・電子申請)
⑦指定(認可)の取得 指定日(通常月初) 指定通知書の受領・指定番号の確認・国保連への届出
⑧開業・サービス提供開始 指定日以降 利用者の受け入れ開始・初回のケアプラン作成

主任介護支援専門員の確保が最初の課題

令和3年4月から、居宅介護支援事業所の管理者には主任介護支援専門員の資格が必要とされています(省令第3条)。

主任介護支援専門員(主任ケアマネ)とは、介護支援専門員として一定の実務経験を持ち、主任介護支援専門員研修を修了した者です。

主任介護支援専門員の要件
要件 内容
介護支援専門員証の保有 有効な介護支援専門員証が必要。有効期限は5年ごとの更新
主任介護支援専門員研修の修了 都道府県が指定する研修機関での研修を修了していること
主任介護支援専門員更新研修 主任ケアマネ資格の有効期間は5年。更新研修の修了が必要

主任ケアマネを採用する場合は、求人活動に1〜3か月を要することが多く、資格保有者の数が限られているため早めの採用活動が重要です。採用後も介護支援専門員証の有効期限・主任ケアマネ資格の有効期限を確認し、開業時に有効であることを確認してください。

自身が主任ケアマネとして管理者を兼ねる場合は、介護支援専門員証と主任ケアマネ資格証の有効期限を確認します。期限が開業前後に迫っている場合は、更新研修の受講を先に済ませることが必要です。

事務所の設備要件

居宅介護支援事業所の事務所には、省令(平成11年厚生省令第38号)に定められた設備要件があります。

  • 区画:サービスの提供に必要な広さを確保し、居宅介護支援の業務専用として区画されていること
  • 設備・備品:手順書等の書類・情報管理に必要な設備(書庫・ファイリング機器等)、ケアプランの作成に必要な機器(パソコン等)が備わっていること
  • プライバシーの確保:利用者・家族との相談を外部に漏れない環境で行える構造

自宅の一室を事務所とする場合でも、居宅介護支援の業務に専用のスペースが確保されていれば認められるケースがあります(市区町村の判断による)。申請前に担当窓口に相談することが確実です。

指定申請で必要な主な書類

指定申請に必要な書類の種類は市区町村によって異なりますが、一般的に以下が求められます。

指定申請の主な提出書類
書類 内容
指定申請書 市区町村の様式を使用。法人名・代表者・事業所名・所在地・開始予定日等を記載
付表(従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表) 管理者・介護支援専門員の氏名・資格・勤務時間・雇用形態を記載
運営規程 省令第19条の記載要件を満たした運営規程(上記を参照)
事業所の平面図 事務所の間取り・面積・各設備の位置を記載した図面
法人の登記事項証明書 法人設立後に取得した登記簿謄本(発行から3か月以内)
介護支援専門員証の写し 管理者・担当ケアマネジャー全員分の証明書(有効期限の確認も忘れずに)
誓約書 欠格事由に該当しない旨の誓約書(法人・代表者・管理者)
賃貸借契約書等の写し 事務所の賃貸契約書(自己所有の場合は固定資産税の証明等)

指定後:開業前に確認すること

指定を取得したら、開業前に以下を確認・準備します。

  • 国保連への届出:介護給付費の請求のために国保連への登録が必要。登録後に「事業所番号」が交付される
  • 重要事項説明書の準備:利用者への事前説明に使用する重要事項説明書の印刷・確認
  • ケアプランの様式・管理ソフトの準備:ケアプランの作成・給付管理に使うソフトウェアの導入・設定
  • 介護保険証・認定結果通知書の確認方法の整備:利用者から提示される書類の管理手順の確認
  • 苦情相談窓口・緊急連絡体制の整備:省令上の義務(緊急時の連絡先・苦情処理の手順)を整備する

居宅介護支援事業所の開業から3年間の収支変化の試算は、居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)収支シミュレーターで確認できます。担当件数・加算の組み合わせごとの損益分岐点を試算できます。

参考・出典

  • 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第3条・第19条
  • 介護保険法(平成9年法律第123号)

この記事は2026年11月時点の法令に基づいています。指定申請の詳細は事業所所在地の市区町村に確認してください。

福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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