就労定着率は、就労定着支援の報酬区分を決める指標です。区分1(9割5分以上)と区分7(3割未満)では月額単位数が3,512対1,074と3倍以上の差があります。定着率を高めることは、利用者の就労継続を支援するという本来の目的と同時に、事業所の収益にも直結します。
就労定着率は「確認した人数÷前年度終了者数」で計算する
就労定着率の計算の前提を正確に押さえることが重要です。定着率は「前年度に利用を終了した者のうち、就労を継続していることが確認できた者の割合」で算定されます。
確認できなかった者は「就労継続できていない」として扱われます。つまり、実際に就労を継続していても確認記録がなければ定着率のカウントに入らないという点を理解しておく必要があります。
就労定着率を高めるための実務上のポイント
1. 利用終了後も連絡を取り続ける仕組みを作る
就労定着支援の利用が終了(最長3年を経過)した後も、就労継続の確認のために連絡が取れる関係を保っておくことが重要です。利用終了時に本人の同意のもとで連絡先を確保し、年1回以上の確認ができるようにしておきます。
2. 就労が不安定になるタイミングを把握して早期対応する
一般的に、就労が不安定になりやすいタイミングとして以下が挙げられます。
- 就職後3か月〜6か月ごろ(業務が本格化し、ストレスが増える時期)
- 年度の変わり目(職場の異動・担当者の変更)
- 体調の変化・通院の中断
- 職場のトラブル(人間関係・ミスの連発)
これらのタイミングで支援頻度を上げ、問題が大きくなる前に対応することが就労継続につながります。
3. 職場担当者との関係を維持する
利用者本人だけでなく、職場の担当者(上司・人事担当者)との関係を定期的に維持することが、職場側の配慮の継続につながります。職場側が「就労定着支援員に相談できる」と認識していると、問題が起きたときに連絡をもらいやすくなります。
4. 医療機関・支援機関との連携を早めに整える
利用開始時に、主治医・精神保健福祉士・相談支援専門員などの関係者との連携体制を整えておくことで、体調悪化時の対応が早くできます。利用者の同意のもとで、医療機関・支援機関との連絡窓口を就労定着支援員が担うことで、連携が取りやすくなります。
5. 生活面の支援も視野に入れる
就労の継続を妨げる要因は、職場の問題だけではありません。家賃・生活費の問題・家族関係のストレス・睡眠の問題なども就労継続に影響します。これらの問題が浮かび上がったときに、適切な支援機関(市区町村の福祉窓口・生活困窮者自立支援機関等)につなぐことも就労定着支援員の役割です。
新規事業所は最初の3年間、定着率の実績がない
就労定着支援を新たに開始した事業所は、最初の3年間は就労定着率の計算対象となる「前年度利用終了者」がいないため、報酬区分7(3割未満・月1,074単位)が適用されます。4年目以降に初めて前年度の実績が反映されます。
このことは、開業時の収支計画において重要です。最初の3年間は最低区分からのスタートとなる収益構造を前提に、人件費・事業費の計画を立てることが必要です。
| 区分 | 就労定着率 | 月額単位数 |
|---|---|---|
| 1 | 9割5分以上 | 3,512単位 |
| 2 | 9割以上9割5分未満 | 3,348単位 |
| 3 | 8割以上9割未満 | 2,768単位 |
| 4 | 7割以上8割未満 | 2,234単位 |
| 5 | 5割以上7割未満 | 1,690単位 |
| 6 | 3割以上5割未満 | 1,433単位 |
| 7 | 3割未満(新規1〜2年目含む) | 1,074単位 |
出典:障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号)
定着率の向上は質の高い支援の結果
就労定着率を「数字として上げる」ために利用終了者への連絡確認の記録を整備することは重要ですが、それだけでは持続しません。利用者一人ひとりの状況に応じた支援の質を高め、職場・医療・生活を含めたサポート体制を整えることが、結果として定着率の向上につながります。
就労定着支援の収支シミュレーション(利用者数・定着率区分・加算の組み合わせ)は就労定着支援 収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号)
この記事は2026年11月時点の法令に基づいています。
福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。


コメント