就労定着支援の報酬は、就労定着率によって7段階に分かれています。その計算に使われる「誰を、どう数えるか」のルールを、告示・解釈通知の原文から整理します。1年目・2年目は実績がなく、最低区分の扱いになります。3年目以降は前年度の実績で区分が決まるため、計算の仕組みを事前に把握しておくことが収支計画の精度に直結します。
就労定着率は「前年度の終了者」と「就労継続者」の比率
就労定着率の計算式は以下のとおりです(障害福祉サービス等報酬告示、令和6年4月施行版)。
就労定着率 = 前年度終了者のうち就労継続者数 ÷ 前年度終了者数 × 100
「前年度」は、算定する年度の前の年度(4月1日〜翌年3月31日)を指します。たとえば令和8年度の報酬区分を決める場合、令和7年度(令和7年4月〜令和8年3月)に就労定着支援の利用を終了した方が分母になります。
「就労定着支援の利用終了」とは何か
就労定着支援の利用期間は最長3年間です(障害者総合支援法第5条第16項、施行規則第6条の11)。この3年の期間が満了した、または本人が途中でサービスを辞退・廃止などにより利用が終わった方が「前年度終了者」に含まれます。
注意が必要なのは、「終了者」の数え方です。支援期間中に転居・転職・体調不良などで連絡が途絶えた場合でも、利用を正式に終了した者として記録されていれば分母に含まれます。
「就労継続者」の定義。週20時間以上が目安
分子となる「就労継続者」は、前年度に利用を終了した方のうち、当該年度の前年度末(3月31日)時点で一般就労を継続している方です。
就労の継続を確認する方法は通知で定められており、原則として事業者が利用終了後も定期的に連絡・確認を行います。ここで重要なのは確認できなかった者は「就労継続できていない」ものとして扱うという点です(解釈通知)。つまり、連絡が取れないまま放置すると、就労継続者の数が減り、定着率が下がります。
「就労している」状態の具体的な基準については、解釈通知で「雇用契約に基づく一般就労を継続している者」と整理されています。就労継続の確認方法(面談・書類確認等)や確認時期の詳細は、都道府県・市区町村の運用によって差があることがあるため、指定権者に確認することをお勧めします。
就労継続者を数える「時点」は年度末の3月31日
報酬区分を算定するにあたって、就労の継続を確認する基準日は当該年度の前年度末(3月31日)です。
つまり令和8年度の報酬区分(令和8年4月1日から適用)を決めるためには、令和8年3月31日時点で就労継続者の確認を終えている必要があります。年度の変わり目に向けて、3月中に利用終了者への連絡・確認作業を計画的に行うことが運営上の重要な管理ポイントになります。
1年目・2年目は実績がなく、区分7(3割未満)として扱われる
新規で指定を受けた事業所は、1年目・2年目は「前年度終了者」が存在しないか極めて少ない状態です。このため、報酬告示の注では、前年度に就労定着支援の利用を終了した者がいない(または1名のみ)場合は、就労定着率を「3割未満」として算定すると規定されています。
区分7(就労定着率3割未満)の単位数は1,074単位/月です。地域区分が1級地(東京都特別区)の場合、1単位あたり11.4円で計算すると、月額報酬は約12,244円/人となります。新規事業所が1年目から収益を出しにくい構造は、この点に起因しています。
| 区分 | 就労定着率 | 月額単位数 |
|---|---|---|
| 1 | 9割5分以上 | 3,512単位 |
| 2 | 9割以上9割5分未満 | 3,348単位 |
| 3 | 8割以上9割未満 | 2,768単位 |
| 4 | 7割以上8割未満 | 2,234単位 |
| 5 | 5割以上7割未満 | 1,690単位 |
| 6 | 3割以上5割未満 | 1,433単位 |
| 7 | 3割未満(新規1〜2年目含む) | 1,074単位 |
出典:障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号による改定版)
3年目以降の区分変更はいつ反映されるか
前年度の就労定着率の実績は、当年度4月1日から報酬区分に反映されます。ただし、前年度の利用終了者の確認・集計が年度末ぎりぎりになった場合、国民健康保険団体連合会への請求に間に合わないリスクがあります。3月中に確認作業を完了し、正確な就労継続者数を記録しておくことが必要です。
区分が上がる場合は請求額が増えますが、下がる場合もあります。高い区分を維持するためには、支援終了後も利用者との定期連絡を継続し、転職・離職の変化を早期に把握することが実務上のポイントです。
死亡・傷病による退職は就労継続者として扱えるか
就労定着率の計算において、利用終了後に死亡または長期の傷病により就労できなくなった場合の扱いについては、解釈通知に記載があります。一般的には、本人の意思や能力に関係なく就労が継続できなくなった特定の事情(死亡・重度の傷病など)は、分母から除外できる場合があるとされています。ただし、適用範囲は限定的であり、詳細は指定権者に確認することをお勧めします。
この取り扱いは事業所の就労定着率を「実力以上」に見せるためのものではなく、やむを得ない事情に対する合理的な調整であることを念頭に置いてください。
就労定着率を上げるために必要なこと
計算式から見えてくる実務上のポイントは3つです。
- 利用終了後も連絡を絶やさない:確認できなかった者は就労継続していないとみなされます。退職・転職を把握するためにも、定期的な連絡体制を作ることが重要です。
- 離職リスクの高い利用者への早期介入:3年の利用期間中に職場環境の変化(職場の人間関係の悪化、体調の変動)を早期に察知し、職場・医療機関と連携することが定着率の維持につながります。
- 計画的な記録:就労継続の確認方法・確認日・確認内容を記録に残すことで、報酬区分の算定根拠が明確になります。
就労定着率と収支の関係
区分1(9割5分以上)と区分7(3割未満)では、月額単位数が3,512対1,074と約3.3倍の差があります。契約者数が10名の場合、地域区分が同じであれば月間報酬の差は約27万円(年間約320万円)に達します。
就労定着率を上げることは、事業所の使命であるとともに、収益の安定に直結します。開業前の収支計画でも、1〜2年目の低単価の期間をどう乗り越えるかを試算しておくことが重要です。
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参考・出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第5条第16項
- 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号による改定版)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。
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