放課後等デイサービスの医療的ケア児加算は、医療的ケアが必要な児童を受け入れる際に、基本報酬とは別に算定できる加算です。令和3年4月改定で医療的ケアスコアによる判定方式に変わり、スコア32以上で最高区分(加算区分1)が算定できます。加算額は区分1で基本報酬の約5〜6割相当に達するため、医療的ケア児を受け入れる事業所では収入に大きく影響します。
医療的ケア児加算とは
医療的ケア児加算は、人工呼吸器管理・経管栄養・気管切開ケアなど、日常的に医療的ケアが必要な児童を放課後等デイサービスが受け入れた際に、その日ごとに基本報酬とは別に算定する加算です。
令和3年4月の報酬改定以前は「医療連携体制加算」として算定していましたが、医療的ケアの必要度合いをより細かく評価できるよう、医療的ケアスコアによる区分制度が導入されました。
背景には、令和3年6月に成立した「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(令和3年法律第81号)があります。同法は医療的ケア児の支援を国・地方自治体の責務と定め、障害福祉サービス事業者による支援を促進する内容を含んでいます。
医療的ケアスコアの仕組み
医療的ケアスコアとは、児童が必要とする医療的ケアの種類・頻度・侵襲性などに応じてポイントを積み上げ、支援の必要度を数値化したものです。スコアが高いほど医療的ケアの必要度が高く、より高い区分の加算が算定できます。
スコアは1点から最高スコアまで設定されており、主な項目は以下のとおりです(実際のスコア表は都道府県または国保連の通知で確認してください)。
- 人工呼吸器(侵襲型・非侵襲型)の管理
- 気管切開部のケア
- 経管栄養(経鼻・胃ろう・腸ろう)
- 中心静脈カテーテルの管理
- 喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内)
- 導尿・膀胱留置カテーテルの管理
- インスリン注射
スコアの合計によって加算区分が決まります。令和3年改定で導入された区分の構造は以下のとおりです。
医療的ケア児加算の区分と単位数
医療的ケア児加算は医療的ケアスコアの合計値によって区分が分かれます。各区分の単位数は厚生労働省告示(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等)で定められています。
| 区分 | 医療的ケアスコアの目安 | 算定単位数の水準 |
|---|---|---|
| 加算区分1 | 32点以上 | 高い(告示原文で確認推奨) |
| 加算区分2 | 16点以上32点未満 | 中程度(告示原文で確認推奨) |
| 加算区分3 | 3点以上16点未満 | 低い(告示原文で確認推奨) |
※単位数の具体的な数値は報酬改定のたびに変わる可能性があるため、都道府県や国保連から届く通知または国保連のサービスコード表で必ず確認してください。
算定の前提:看護職員の配置が必要
医療的ケア児加算を算定するには、医療的ケアを実施できる看護師(または准看護師)を配置することが原則として求められます。
特定行為(喀痰吸引・経管栄養)については、研修を修了した介護職員等が実施することも可能ですが、医療的ケアスコアが高い児童に対応するには看護師の常駐または緊急時の連絡体制の整備が現実的です。
また、加算を算定する日は、その利用者に実際に医療的ケアを提供した記録が必要です。提供記録が不十分な場合、運営指導で指摘を受ける原因になります。
算定要件のポイント
医療的ケア児加算の主な算定要件は以下のとおりです。
- 医療的ケアスコアの判定:医師が作成した医療的ケアの内容を示す書類(主治医意見書・診断書等)をもとに、スコアを確認します。
- 看護職員等の配置:医療的ケアを安全に提供できる体制が必要です。
- 個別支援計画への反映:医療的ケアの内容と提供方法が個別支援計画に記載されていることが求められます。
- 保護者等への説明と同意:医療的ケアの内容・リスク・緊急時の対応について保護者に説明し、同意を得ることが必要です。
- 当日の記録:実際に提供したケアの内容・時間・担当者を記録します。
医療的ケア児を受け入れる際の実務準備
医療的ケア児を受け入れるには、加算の算定要件を満たすだけでなく、実務面での準備が不可欠です。
主治医との連携体制の構築
医療的ケアの内容は主治医の指示に基づいて実施します。主治医から医療的ケアの指示書を取得し、ケアの種類・頻度・緊急時の連絡先を文書で確認しておきます。
看護師の採用と体制整備
スコアが高い児童を継続的に受け入れるには、看護師の採用または訪問看護ステーションとの連携が現実的な選択肢になります。看護師採用の場合は人件費が増加しますが、加算収入がそれを補う構造になっています。
緊急時対応マニュアルの整備
急変時の対応手順(119番通報の判断基準・主治医への連絡タイミング・保護者への連絡方法)を文書化し、スタッフ全員が把握していることを確認します。
設備・備品の確認
吸引器・経管栄養用ポンプ・酸素飽和度モニター(パルスオキシメーター)など、児童が必要とする医療機器が使用できる環境を整えます。電源の確保や停電対策も重要です。
収入への影響の考え方
医療的ケア児加算の収入への影響を理解するには、基本報酬との合算で考える必要があります。
放課後等デイサービスの基本報酬は、定員・利用時間・区分(機能強化型・標準型)によって異なりますが、医療的ケア児加算(区分1)は基本報酬の数倍に達するケースもあります。そのため、医療的ケア児を1日数名受け入れるだけで、事業所全体の月間収入が大きく変わります。
一方で、看護師の人件費が固定費として増加する点に注意が必要です。医療的ケア児の利用日数が少ない場合、人件費が加算収入を上回り、収支が悪化するリスクがあります。
収支計画を立てる際は、①想定する医療的ケア児の人数・利用日数、②区分(スコア水準)の見通し、③必要な看護師数と人件費、の3点を明確にした上で試算することをおすすめします。
「主として重症心身障害児を通わせる事業所」との区別
放課後等デイサービスには、「主として重症心身障害児を通わせる事業所」という区分があります。この区分は基本報酬の体系がまったく異なり、高い単価が設定されています。
医療的ケア児加算は、「主として重症心身障害児以外の事業所」において医療的ケアが必要な児童を受け入れた場合に算定するものです。重症心身障害児を主として受け入れる事業所とは報酬体系が別になっているため、混同しないよう注意してください。
開業時にどちらの区分で運営するかは事業計画の段階で決定する必要があり、後から変更することは難しいため、事前に都道府県の担当窓口に確認することをおすすめします。
届出の手続き
医療的ケア児加算を算定するには、都道府県(または指定権者)への加算の届出が必要です。
届出に必要な書類は自治体によって異なりますが、一般的には以下が求められます。
- 加算算定に係る体制等に関する届出書
- 看護師等の資格を証明する書類
- 緊急時対応マニュアル
- 主治医との連携に関する体制を示す書類
届出が受理された月の翌月(または翌々月)から算定可能になることが多いですが、都道府県の処理スケジュールによって異なります。開業前から準備を進め、余裕を持って届出を行いましょう。
よくある算定上のミスと注意点
医療的ケア児加算の運営指導で指摘されやすいポイントを整理します。
スコアの根拠書類が不足している
医療的ケアスコアの判定根拠となる主治医の指示書・診断書等が事業所に保管されていないケースがあります。スコアは口頭確認では不十分で、文書化が必要です。
ケアを提供した記録がない日に算定している
加算はケアを実際に提供した日に算定するものです。利用はあったが医療的ケアは提供しなかった日に算定することは不可です。
看護師不在日の算定
看護師が出勤していない日に加算を算定すると、要件を満たさないとして返還を求められる場合があります。非常勤看護師のシフト管理と記録の整合性を保つことが重要です。
個別支援計画への未記載
医療的ケアの内容が個別支援計画に記載されていないと、計画と実際のサービスの乖離として指摘されます。計画の更新と記録を連動させましょう。
FAQ
医療的ケア児加算は毎日算定できますか
対象の児童が利用し、実際に医療的ケアを提供した日は算定できます。提供のない日は算定できません。
医療的ケアスコアは変わることがありますか
はい。児童の状態変化(呼吸器の装着・取り外しなど)によりスコアが変わる場合があります。変化があった場合は主治医に書類の更新を依頼し、区分を見直してください。
現在の事業所に看護師がいませんが、加算は取れますか
看護師の配置が算定要件に含まれているため、看護師なしで加算を算定することは基本的に認められません。訪問看護ステーションとの連携による体制整備が認められるかどうかは都道府県の解釈によって異なるため、事前確認が必要です。
加算区分1と区分3では収入にどのくらい差がありますか
区分によって加算単位数が大きく異なります。具体的な単位数は最新の告示・サービスコード表で確認してください。
まとめ
放課後等デイサービスの医療的ケア児加算は、医療的ケアスコアに応じた区分で算定できる加算で、スコアが高い児童を受け入れると基本報酬に加えて大きな収入増につながります。
算定には看護師の配置・主治医との連携体制・個別支援計画への反映・提供記録の整備が必要です。運営指導で指摘されやすい「スコアの根拠書類不足」「未提供日の算定」に注意しながら、正確な体制を整えましょう。
放課後等デイサービスの開業・経営の数字を把握したい方は、収支シミュレーターをご活用ください。

コメント