就労継続支援A型の指定申請は、障害者総合支援法第36条に基づき、事業所の所在地を管轄する都道府県知事(または指定都市・中核市の長)に対して行います。申請から指定を受けるまでには通常2〜3か月かかるため、法人設立・物件確保・人員採用を並行して進める必要があります。A型は利用者と雇用契約を結ぶため、就労移行支援やB型とは異なり、最低賃金法・労働保険・雇用保険への対応も申請準備と並行して進める必要があります。
指定申請の根拠と指定権者はどこか
障害者総合支援法第29条は、障害福祉サービスを提供するためには「指定障害福祉サービス事業者」としての指定を受けなければならないと定めています。就労継続支援A型はこの障害福祉サービスに含まれるため、事業を開始するには指定が必要です。
指定の権限は、原則として事業所の所在地を管轄する都道府県知事にあります(障害者総合支援法第36条第1項)。ただし、政令指定都市(大阪市・名古屋市・横浜市など)または中核市(宇都宮市・高崎市など)の区域にある事業所については、それぞれの市長が指定権者となります(同条ただし書き)。
開業予定地が決まった段階で、管轄がどの自治体になるかを確認してください。申請先が「県」か「市」かで、窓口も必要書類の様式も異なります。
指定を受けるために整える3つの準備
指定申請の前に、次の3つを整える必要があります。
法人格の取得と定款の目的欄
就労継続支援A型の指定申請は、法人(株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人など)でなければ行えません(障害者総合支援法第34条の欠格事由)。個人事業主は指定を受けられません。
株式会社または合同会社で申請する場合、定款の事業目的欄に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく就労継続支援事業」等の記載が必要です。定款目的欄の記載が不足していると差し戻しになりやすいため、申請予定の都道府県・市の手引きで目的記載例を確認してから法人設立を進めてください。法人設立後に目的変更するには登記変更が必要で、費用・時間がかかります。
物件の確保と設備基準の充足
就労継続支援A型の設備基準(平成18年厚生労働省令第171号)を満たす物件を確保します。訓練・作業室・相談室・洗面所・便所が必要です。訓練・作業室の面積は「支障がない広さ」という定性的な規定のほか、自治体が条例・規則で具体的な数値を定めている場合(例:利用者1人当たり3.3平方メートル以上)もあります。物件が基準を満たすかは、申請前に申請先の担当窓口に事前相談で確認しておくと安全です。
人員の採用・確保(サービス管理責任者が鍵)
指定を受けるためには、開業日から人員基準(平成18年厚生労働省令第171号の就労継続支援A型の章)を満たしていることが必要です。
| 職種 | 配置基準(概要) | 主な要件 |
|---|---|---|
| 管理者 | 1名(常勤) | 施設管理・従業者管理。支障がなければ兼務可 |
| サービス管理責任者(サビ管) | 利用者60名以下1名(常勤) | 実務経験+相談支援従事者初任者研修+サービス管理責任者等研修の修了 |
| 職業指導員 | 職業指導員・生活支援員の合計が常勤換算で利用者÷10以上(サービスⅡ)または÷7.5以上(サービスⅠ) | 特定の資格要件なし |
| 生活支援員 | (同上) | (同上) |
サービス管理責任者の研修には、申込みから修了まで数か月かかることがあります。開業の1年前には研修の受講申込みを進めてください。
指定申請に必要な書類の一覧
指定申請に必要な書類は都道府県・市によって異なります。以下は共通して求められることが多い書類の一覧です。申請予定先の最新の手引き・様式集を必ず入手し、定められた書式を使用してください。
| 書類名 | 内容・ポイント |
|---|---|
| 指定申請書 | 申請先の様式を使用。申請日・開業予定日・事業所名・所在地・定員等を記入 |
| 事業計画書 | サービスの内容・定員・収支の見込み・人員確保の計画等 |
| 付表(就労継続支援A型用) | 人員配置・設備の概要・事業所の概要を申請先様式で記入 |
| 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表 | 各職員の職種・勤務時間・常勤/非常勤・兼務状況 |
| サービス管理責任者の要件確認書 | 実務経験と研修修了の証明。研修修了証の写しを添付 |
| 資格証・研修修了証の写し | 各職員の保有資格・研修修了証 |
| 平面図・設備の概要 | 作業室・相談室・洗面所・便所等の位置・面積を記載した図面 |
| 賃貸借契約書の写し | 物件を賃借している場合。事業目的での使用が認められていることを確認 |
| 法人の定款(または規約)の写し | 事業目的欄に「就労継続支援事業」の記載があることを必ず確認 |
| 登記事項証明書 | 発行から3か月以内のもの(株式会社・合同会社の場合) |
| 役員・管理者の名簿 | 氏名・役職・生年月日等 |
| 誓約書 | 欠格事由(障害者総合支援法第34条)に該当しないことの誓約 |
| 運営規程(案) | サービスの目的・対象者・利用料金・緊急時対応・苦情対応等を記載 |
申請窓口と事前相談
指定申請の窓口は次のとおりです。
| 開業予定地 | 申請先 |
|---|---|
| 政令指定都市の区域内 | 指定都市の障害福祉担当課 |
| 中核市の区域内 | 中核市の障害福祉担当課 |
| 上記以外の市区町村 | 都道府県の障害福祉担当課 |
本申請の前に「事前相談(事前協議)」を行うことを推奨します。物件の設備基準の適否・必要書類の確認・申請スケジュールの確認を担当者と事前に打ち合わせることで、差し戻しのリスクを下げることができます。自治体によっては、事前相談なしでは本申請を受け付けない場合もあります。
申請から指定通知までの流れと期間
| ステップ | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 事前相談 | 担当窓口に物件・人員・書類について相談 | 開業希望日の3〜6か月前 |
| 2. 書類の準備・収集 | 申請書類の作成。定款・登記・研修修了証等の収集 | 1〜2か月 |
| 3. 申請書の提出 | 窓口または郵送で提出。受理後に審査開始 | 開業希望日の1〜2か月前 |
| 4. 審査・補正 | 担当者が書類を確認。不備があれば補正指示 | 1か月前後 |
| 5. 指定通知・指定日 | 指定通知書が交付。指定日から事業開始可能 | 申請受理から1〜2か月後 |
申請から指定通知まで、通常2〜3か月かかります。書類の不備・補正が発生するとさらに1〜2か月遅れます。開業希望日の4〜6か月前には事前相談を始めてください。
A型だけに必要な労働関係の手続き
就労継続支援A型は、利用者と雇用契約を結びます(障害者総合支援法第5条第14項)。雇用契約を結ぶことで、利用者には最低賃金法が適用されます(最低賃金法第4条)。このため、就労移行支援・就労継続支援B型とは異なり、次の手続きが必要です。
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の加入:開業時に労働基準監督署・ハローワークへ届出。利用者も労働者として労災保険の対象となる
- 最低賃金以上の賃金支払い:時間給を地域の最低賃金(都道府県別に毎年改定)と照合
- 就業規則の作成:常時10名以上の労働者がいる場合は労働基準監督署への届出が必要(労働基準法第89条)
指定申請の担当窓口は障害福祉担当課ですが、労働関係の手続きは所管が異なります。申請準備と並行して、労働基準監督署・ハローワークにも事前相談を進めておくとよいでしょう。
指定後の届出義務
指定を受けた後も、次の場合は変更届・廃止届等の提出が必要です。
- 事業所の名称・所在地・定員・管理者・サービス内容等を変更したとき:変更届(自治体により変更後10日以内等)
- 廃止・休止・再開するとき:廃止・休止・再開届(多くの自治体で1か月前まで)
- 指定の有効期間(6年間)が満了するとき:更新申請(期限前に手続きが必要)
変更届の提出漏れは運営指導での指摘事由になります。担当者が変わったとき・定員変更時にも確実に届け出てください。
差し戻しになりやすい5つのポイント
- 定款の事業目的欄の記載不足:「就労継続支援事業」の記載が明示されていない。設立後の登記変更は費用・時間がかかる
- サービス管理責任者の要件不足:実務経験の期間・業務内容が要件を満たしていない・研修未修了のまま申請
- 常勤換算の計算誤り:非常勤職員の勤務時間の合計算入ミス
- 運営規程の必須項目漏れ:利用料・緊急時の対応・苦情対応等の記載が不足
- 物件の賃貸借契約の使用目的:「居宅」「倉庫」など事業利用が認められていない物件での申請
よくある質問
- 申請は郵送でも可能ですか?
- 自治体によって郵送申請を認めている場合と窓口持参のみの場合があります。申請先の担当窓口に事前に確認してください。
- 指定申請の手数料はかかりますか?
- 障害福祉サービスの指定申請は、多くの自治体で手数料は不要です。ただし自治体によって異なるため確認してください。
- 指定の有効期間はどのくらいですか?
- 指定の有効期間は6年間です(障害者総合支援法第41条第1項)。有効期間が満了する前に更新申請が必要です。
- 複数の事業所を運営したい場合はどうなりますか?
- 事業所ごとに指定申請が必要です。同一法人でも事業所が異なれば、それぞれ申請先の自治体に申請します。
まとめ
就労継続支援A型の指定申請は、①法人設立(定款の事業目的記載)、②物件確保(設備基準の充足)、③人員採用(サービス管理責任者の研修修了)の3つを整えてから始めます。申請から指定まで通常2〜3か月かかるため、開業希望日の4〜6か月前には事前相談を開始してください。A型は利用者との雇用契約があるため、労働保険の加入・最低賃金の確保という、B型・就労移行支援にはない手続きも必要です。
就労継続支援A型の収支・開業資金の試算は、以下のシミュレーターをご活用ください。

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