この記事の最後で紹介する「計画づくりメモ」は、私が作って販売しているツールです。宣伝を含みますので、先にお伝えしておきます。また、私は行政書士・中小企業診断士・税理士などの資格者ではありません。この記事は、事務局が公開している公募要領を読んで確認できたことと、自分で作ったツールを試した結果を書いたものです。申請の代行や、個別の申請へのアドバイスではありません。
補助金の計画書は、AIに書かせたら早いのではないか。そう思ったことは、ありませんか。
質問に答えるだけで、それらしい文章がたくさん出てくる。時間のない小さなお店や事務所にとって、これはとても魅力的です。私も、同じことを考えました。ただ、小規模事業者持続化補助金の公募要領を読み込んでいくうちに、「書かせる」よりも先にやったほうがいいことが見えてきました。
この記事では、第20回の公募(受付は2026年11月5日から12月15日まで)を前提に、AIに計画を書かせず、「足りないところを見つけるだけ」に使ってみた結果を書きます。架空のお店で実際に試したので、うまくいった点と、うまくいかなかった点の両方を載せます。
公募要領に書いてあった、少し怖い一文
持続化補助金の公募要領(第20回・通常枠・第8版)には、注意事項として、次の一文があります。
事業者自らが検討しているような記載が見られない場合や、自らが検討していなかったことが発覚した場合、評価に関わらず不採択・交付決定取消となります。
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募要領(第8版)
読んだとき、少し背筋が伸びました。「評価に関わらず」とありますので、どんなに文章がきれいでも、事業者本人が考えたものでなければ、結果が取り消されることがある、ということです。
つまり、この補助金は「計画書という書類」を提出する制度というより、「自分の事業を自分で見つめ直した記録」を出す制度です。公募要領の冒頭でも、この補助金は、小規模事業者が自ら経営を見つめ直し、経営計画を作ったうえで行う販路開拓の取組を支援するもの、と説明されています。
ここで、AIに文章を丸ごと書かせるやり方は、少し慎重に考えたほうがよさそうだと感じました。AIは、あなたのお店の常連さんの顔も、先月の売上も知りません。もっともらしい一般論は書けても、「自分で検討した内容」にはなりにくいのです。
審査で見られるのは、この4つです
では、何を見られるのか。公募要領には、計画の審査で見られる観点が4つ書かれています。原文はやや固いので、やさしい言葉に言い換えて表にしました。
| 観点 | やさしく言うと |
|---|---|
| 1. 自社の経営状況の分析 | 自分の事業の今を、強みも弱みも含めて、ちゃんと分かっているか |
| 2. 経営方針・目標と今後のプラン | 強みと弱みを踏まえて、お客様のニーズをつかんだ目標になっているか。売上高と売上総利益(粗利)が増える方向か |
| 3. 補助事業計画の有効性 | 効果の目標は「客観的な事実」に基づいているか。実現できそうか。新しい価値があるか。デジタル技術を使うか。終わったあとも使い続けるか |
| 4. 積算の透明・適切性 | お金の内訳は計画に合っていて、金額の根拠がはっきりしているか |
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募要領(第8版)「審査の観点」を、筆者がやさしく言い換えたもの。正確な文言は必ず公募要領でご確認ください。
この4つを見ると、共通していることがあります。それは「客観的事実に基づいて」「売上高・売上総利益の増加」という言葉が、何度も出てくることです。また、申請の要件の説明にも、客観的なデータを使った市場やお客様のニーズの分析と、売上高・売上総利益の増加という数字の成果を、根拠や説明とともに書くように、と書かれています。
営業の現場にいると、「その数字の根拠は何ですか」と聞かれ続けます。補助金の計画も、まったく同じだと感じました。気持ちや雰囲気ではなく、根拠のある数字が問われます。
だから「書かせる」より「穴探し」にしました
ここまで読んで、私は次のように考えました。
- 計画の文章は、事業者本人が考えて、自分の言葉で書く必要がある
- 審査で見られるのは、客観的な事実と数字の根拠である
- その根拠は、AIではなく、本人の頭の中や手元の記録にしかない
それなら、AIにやらせるのは「書くこと」ではなく、「書かれていないことを見つけること」がいいのではないか。自分で書いた回答をAIに読ませて、「観点に照らして、ここがまだ書かれていません」「この数字の根拠はどこですか」と指摘してもらう。書くのは、最後まで自分です。
この考え方で、実際にツールを作って試してみました。
実際に試してみました(架空のお店で)
試した設定
実在のお店の情報は使えませんので、架空のハウスクリーニング店(従業員2名)を用意しました。以下の数字は、すべて試すために作った架空のものです。回答は、わざと薄く、足りない部分を残して入力しています。
結果その1:観点1(経営状況)
入力した回答は、次の4つです。「弱み」の欄は、わざと空欄にしました。
| 質問 | 入力した回答(架空) |
|---|---|
| 事業の内容と主力商品 | エアコン洗浄が売上の6割、1台12,000円。残りは浴室清掃。 |
| 売上・利益の状況 | 年商は約480万円。粗利率は6割くらい。 |
| 自社の強み | リピートのお客様に「予約が取りやすい」と言われる。 |
| 自社の弱み | (空欄) |
AIが返してきた「まだ書かれていない点」には、次のような指摘が入っていました。
- 自社の弱みや困っていることが未記入
- 具体的な顧客数やリピート率などが記載されていない
私が期待していたとおり、空欄の「弱み」を、AIが勝手に想像で埋めることはありませんでした。「未記入です」と指摘しただけです。また、「予約が取りやすい」という強みについて、リピートのお客様が何人なのか、という数字の不足も、ちゃんと拾ってくれました。
結果その2:観点3(補助事業計画)
次に、観点3を試しました。回答は、「料金表と施工事例のサイトを作り、Web予約を設ける」という取組です。「増える件数・単価の根拠」の欄には、あえて「夜間の問い合わせを取りこぼしている気がする」とだけ書きました。「気がする」という、根拠の薄い書き方です。
AIの指摘は次のとおりでした。
- デジタル技術の具体的な活用方法が未記入
- 増える件数や単価に関する具体的な数字が未入力
- 売上高・売上総利益の増加を見込む根拠が弱い
「根拠が弱い」と指摘されたのは、ほぼ狙いどおりでした。あわせて、AIは「ご自身で考えてみる問い」も返してきます。たとえば「増える件数や単価は、どのように見込んでいるのか」という問いです。答えを出してくれるのではなく、考えるきっかけだけをくれる形です。
うまくいかなかったところ
良い結果だけを書くと、都合のいい記事になってしまいますので、うまくいかなかった点も書きます。
最初に試した観点1では、審査の観点と関係のない指摘が混ざりました。たとえば「競合他社との比較がない」「今後の成長に向けた具体的な戦略は何か」といったものです。観点1で聞かれているのは、自社の今の状況の把握であり、競合比較や将来の戦略は、観点の範囲外です。
このままだと、「これも書かなきゃ」と、要らない心配をさせてしまいます。そこで、観点ごとに「指摘してよい範囲」をAIに具体的に伝えるようにしました。それでもすり抜けることがあったので、「競合」「戦略」という言葉を含む指摘は、画面に出さないようにしました。それでも、AIの指摘が完全に的確とは限りません。ここは、読む人が自分で「これは関係ない」と判断してください。
穴が見つかったあと、自分で埋める
穴が見つかっただけでは、まだ計画は良くなりません。大事なのは、そのあとです。
例:「気がする」を「数えた」に変える
先ほどの「夜間の問い合わせを取りこぼしている気がする」を、根拠のある文にするには、どうしたらいいでしょうか。私なら、手元の記録を数えます。
- 直近半年の、電話とLINE(メッセージ)の記録を見返す
- そのうち、夜の遅い時間帯に来た問い合わせが何件あったかを数える
- そのうち、実際に依頼につながったのが何件だったかを数える
「気がする」と書くのと、「直近半年で、夜間の問い合わせが◯件あった」と書くのとでは、読む人に伝わる説得力がまったく違います。数字は、ぜひ本物を入れてください。この記事の数字は架空ですので、そのまま使わないでください。
例:数字を並べてみると見えること
もう一つ、数字のチェックで気づいたことがあります。同じ架空のお店で、次の数字を計算してみました。
| 項目 | 数字(架空の例) |
|---|---|
| 増える成約数 | 月2件 |
| 1件の単価 | 12,000円 |
| 効果が出る期間 | 12か月 |
| 見込む追加売上 | 288,000円(2件×12,000円×12か月) |
| 見込む追加の粗利(粗利率60%) | 172,800円 |
| 補助対象にしたい経費 | 50万円(サイト制作費40万円+チラシ10万円) |
| 補助額の目安(補助率2/3) | 約33万円 |
| 自己負担額の目安 | 約17万円 |
補助率2/3、補助上限50万円、ウェブサイト関連費の上限30万円は、第20回公募要領(第8版)通常枠の値。特例による上乗せは考慮していません。あくまで概算です。
並べてみると、追加の粗利(約17万円)と自己負担額(約17万円)が、ほぼ同じ金額です。つまり、この計画は「1年かけて、自己負担分をようやく取り戻す」程度の効果になっています。
これは良い悪いの話ではありません。ただ、「この取組で、本当に売上が伸びると言えるか」を、もう一度考え直すきっかけにはなります。件数をもう少し多く見込める根拠があるのか。単価の高いメニューも一緒に売れるのか。あるいは、取組の内容そのものを見直すのか。こうした検討を、申請の前にできるのが、数字を並べる一番の良さだと思います。
数字を入れてみて気づく、3つの落とし穴
数字の計算をしていると、公募要領のルールに引っかかる場面がありました。よくある落とし穴を3つ、公募要領から拾っておきます。
- ウェブサイト関連費だけ、広報費だけでは申請できません。どちらも「のみによる申請はできません」とされており、ほかの経費と一緒に申請する必要があります。また、ウェブサイト関連費の補助金の上限は30万円(税込)です。
- 経費は、交付決定日より後に発生したものだけです。補助の対象になる経費は、交付決定日以降に発生し、補助事業期間中に支払いが完了したものとされています。採択されたからといって、その前に発注や支払いをしてはいけません。
- 補助金は後払いです。先に自分で全額を支払い、あとから補助金が入ります。自己負担のほかに、立て替えるお金も必要です。
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募要領(第8版)
申請の流れ全体と日程は、別の記事にまとめました。あわせてご覧ください。
▶ 持続化補助金 第20回の流れを1枚に。締切12月15日から逆算した準備スケジュール
補助対象になる経費・ならない経費は、別の記事「持続化補助金の対象経費は8区分。広報費・ウェブサイト関連費は単独申請できません」で整理しています。
AIに聞く前に、自分にこう聞いてみてください
AIに穴を探してもらう前に、自分で自分に質問してみるだけでも、かなり穴は見つかります。4つの観点ごとに、私が使っている問いを載せます。紙に書き出して、答えられるかどうか試してみてください。
| 観点 | 自分に聞く問い |
|---|---|
| 1. 経営状況 | 売上の何割が、どの商品・サービスから来ているか。お客様に実際に言われた「ここが良い」は何か。逆に、自分でも「ここは弱い」と思う点は何か。 |
| 2. 方針・目標 | 主なお客様は、どんな人で、どんな場面で困っているか。そう考える根拠(聞いた声、問い合わせの内容など)はあるか。3年後の売上と粗利は、数字でいくらか。 |
| 3. 補助事業 | 今回の取組で、何が、どう変わるのか。増える件数と単価は、何を根拠に見込んだか。終わったあとも、それを使い続けられるか。 |
| 4. 積算 | それぞれの経費は、なぜ今回の取組に必要か。金額は、見積もりなどで裏付けられるか。 |
私は、これに即答できない項目が、そのまま計画の穴になると考えています。即答できなかった項目を、「あとで手元の記録を調べる宿題」として書き出しておくと、作業がぐっと進みます。
今週、手元でできること
締切までは長いようで、あっという間です。すぐに手をつけられることを、まとめておきます。
- GビズIDプライムの取得を始める。電子申請にはこのアカウントが必要で、公募要領には、取得に数週間程度かかるので、未取得の方はお早めに、と書かれています。すでに持っている方も、登録情報が古くないかを確認してください。
- 手元の数字を集める。直近1年の売上、粗利、問い合わせの記録(電話・メッセージ・フォーム)など、根拠になる数字の材料を集めます。
- やりたい取組の見積もりを取る。経費の金額の根拠になります。相見積もりも、あとから求められることがあります。
- 地域の商工会・商工会議所に、相談の予約を入れる。申請には、地域の商工会・商工会議所が発行する書類(事業支援計画書)が必要です。発行には時間がかかる場合がある、と公募要領に書かれているので、早めの相談をおすすめします。
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募要領(第8版)。見積もりの扱いは、採択後に価格の妥当性を示す見積書(相見積もりを含む)の提出が必要とされている点をふまえた、筆者の助言です。
AIに入力するときの注意
AIを使うときは、次の点に気をつけてください。
- 個人名・電話番号・取引先の名前・機密の情報は入力しない。入力した内容は、AIの処理のために、外部のAIサービスに送られます。
- AIの指摘は、間違うことがあります。先ほど書いたように、観点と関係のない指摘が出ることもあります。鵜呑みにせず、自分で判断してください。
- 最終的な内容は、自分で決めて、自分で書く。申請書を作って提出するのは、事業者本人です。
- 第三者の支援を受けた場合の記載に注意する。公募要領には、第三者の支援を(料金の支払いの有無を問わず)受けている場合、電子申請の様式2の所定の項目に、相手方と金額を記載すること、記載がないと不採択・交付決定取消になることが書かれています。AIツールの利用がこれに当たるかどうかは、公募要領を読んでも私には分かりませんでした。不明な場合は、補助金事務局や、地域の商工会・商工会議所に確認してください。
私が作ったツールについて(宣伝です)
ここまで書いた考え方で作ったのが、「持続化補助金 計画づくりメモ」です。冒頭にも書いたとおり、私が作って販売しているツールです。
できることは、次のとおりです。
- 審査の4つの観点に沿った質問に、自分の言葉で答える
- 売上の増加見込みと経費を入れて、数字の整合を計算で確認する(補助率、上限、ウェブサイト関連費の制限などを反映)
- 回答をAIが整理して、まだ書かれていない点と、自分で考える問いを出す
- 提出前の確認項目を、公募要領の記載に基づいて確認する
無料で使える範囲と、買い切り(2,980円)の範囲があります。質問への回答、数字のチェック、書き方の型(架空の見本)、観点1のAI整理メモ(1日3回まで)は、無料です。観点2から4のAI整理メモ、提出前のチェックリスト、回答の書き出しは、買い切りの範囲です。
やらないことも、はっきり書いておきます。申請書の文章は書きません。申請の代行も、提出もしません。採択を保証するものでもありません。補助金事務局や商工会議所とは関係のない、民間の個人が運営しているツールです。
まとめ
- 公募要領には、事業者自らが検討していない内容は、評価に関わらず不採択・交付決定取消になる、と書かれている
- 審査で見られるのは、客観的な事実と、売上高・売上総利益の増加の根拠である
- だから、AIには「書かせる」より、「書かれていない点を見つけさせる」使い方を試した
- 試した結果、空欄を勝手に埋めず、根拠の弱さを指摘してくれた。一方で、観点と関係のない指摘も混ざった
- 穴が見つかったあとは、自分の手元の記録を数えて、根拠のある数字に直す
- 申請書を書いて提出するのは、最後まで事業者本人
補助金の申請は、書類づくりが目的ではなく、自分の事業を見つめ直す機会でもあります。締切までは時間があるようで、意外とありません。GビズIDの取得には数週間かかることもあります。早めに準備を始めることを、おすすめします。
この記事は、2026年9月時点で補助金事務局のサイトに掲載されていた第20回公募要領(第8版)をもとに書いています。公募要領は更新されることがありますので、申請の前には、必ず補助金事務局の最新の公募要領をご自身でご確認ください。補助金事務局:https://official.jizokukanb.com/shinsei/


コメント