就労移行支援の新規事業所は、3年目に基本報酬がどう変わるか。特例期間終了後のリスクを整理する。

就労移行支援の新規事業所は、開業から2年間は就労定着者の割合が「30%以上40%未満」とみなされ、基本報酬は719単位/日(定員20人以下)が適用されます。3年目からは実績で判定されます。定着者が少ない場合は479単位(0〜10%未満)まで下がり、月収入が最大67万円以上落ちるケースもあります。3年目の報酬変動の仕組みとリスクを整理します。

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新規2年間の特例:719単位が適用される

就労移行支援の基本報酬は、就労定着者の割合(前年度・前々年度の実績)によって7段階に分かれます(厚生労働省告示第523号別表第12の1 イ(Ⅰ))。

ただし、新規開設の事業所は実績を算定できないため、開業から2年間は「30%以上40%未満」とみなす特例が設けられています(告示523 注3)。定員20人以下では719単位/日が適用されます。

就労定着者の割合 基本報酬(定員20人以下)
60%以上 1,210単位/日
50〜60%未満 1,020単位/日
40〜50%未満 879単位/日
30〜40%未満(←新規2年間はここ) 719単位/日
20〜30%未満 569単位/日
10〜20%未満 519単位/日
0〜10%未満 479単位/日

3年目からの計算式:分母が「利用定員」である点に注意

3年目から適用される「就労定着者の割合」の計算式は以下のとおりです(告示523 注3)。

就労定着者の割合 = 前年度と前々年度に就労継続6か月に達した者の数 ÷ 前年度と前々年度の利用定員の合計

重要なのは、分母が「実際の利用者数」ではなく「利用定員」であることです。定員20人・2か年分の分母は20×2=40人になります。

具体例:定着者の数によって3年目の区分がどう変わるか

定員20人の事業所で、開業1・2年目の定着者数の合計別に3年目の区分を確認します。

2年間の定着者合計 割合(÷40人) 区分 基本報酬
0人 0% 0〜10%未満 479単位
1〜3人 2.5〜7.5% 0〜10%未満 479単位
4〜5人 10〜12.5% 10〜20%未満 519単位
6〜7人 15〜17.5% 10〜20%未満 519単位
8〜11人 20〜27.5% 20〜30%未満 569単位
12〜15人 30〜37.5% 30〜40%未満 719単位(現状維持)
16〜19人 40〜47.5% 40〜50%未満 879単位(上昇)

定員20人のケースで現状維持(719単位)を保つには、2年間で最低12人の定着者が必要です。稼働率70%で定員14人程度が利用する場合、全員が就職・定着しても14人。そのうち12人以上が定着していれば維持できますが、就職できない利用者が複数いると区分が下がります。

3年目の報酬変動が月収入に与える影響

定員20人・稼働率70%(14人)・月20稼働日・その他地域(10.00円)の条件で試算します。

区分(単位) 月収入(円) 719単位との差(円)
879単位(40〜50%未満) 879×10×14×20=2,461,200 +448,000
719単位(現状・新規2年間) 719×10×14×20=2,013,200 基準
569単位(20〜30%未満) 569×10×14×20=1,593,200 −420,000
519単位(10〜20%未満) 519×10×14×20=1,453,200 −560,000
479単位(0〜10%未満) 479×10×14×20=1,341,200 −672,000

最悪のケース(0人)では月収入が672,000円落ちます。固定費が変わらなければ、2年目まで黒字だった事業所が3年目に赤字になる可能性があります。

3年目に使える特例計算式

3年目には「通常の計算式」と「特例の計算式」のどちらか有利なほうを使えます(告示523 注3・留意事項)。特例の式は1年目の実績と2年目の実績を組み合わせて計算する方式で、定着者が増えているケースで有利になることがあります。詳細は厚生労働省の留意事項(最新版)でご確認ください。

1〜2年目のうちに定着者の実績を積み上げることが重要

3年目以降の収益安定のためにできることは明確です。開業1・2年目に就労定着者の実績を積み上げることです。

  • 就職支援の質を高め、利用者が就職・定着できる支援体制を整える
  • 就職先企業との関係構築(職場定着の支援・連絡体制)
  • 就労定着支援への引き継ぎ(就労定着支援事業所との連携)

収支シミュレーターでは定着者の見込みを入力することで、3年目の報酬区分と収支の変化を確認できます。

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参照した資料
厚生労働省告示第523号別表第12の1 イ(Ⅰ)(就労移行支援の基本報酬・令和6年6月施行)。注3(新規事業所の特例・就労定着者の割合の計算式)。施行規則第6条の8(標準利用期間2年)。月収入の試算は例示(定員20人・稼働率70%・月20稼働日・その他地域・処遇改善加算を含まない)。特例計算式の詳細は厚生労働省の留意事項(最新版)でご確認ください。数値は令和8年10月時点。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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