就労移行支援の損益分岐点。月何人の利用で黒字になるか。

就労移行支援の全国平均の収支差率は5.2%です(令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査・令和6年度決算・定員20人以下・n=288)。月収入2,326千円に対して利益は約120千円。介護・障害福祉の中では低い水準です。月何人の利用で固定費をまかなえるか、損益分岐点の考え方と計算の仕組みを整理します。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 就労移行支援 開業向け収支シミュレーター

全国平均の経営実態:収支差率5.2%の中身

令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査(令和6年度決算・定員20人以下・n=288)の数値です。

項目 年間(千円) 月平均(千円)
収入 27,909 2,326
給与費 18,099(64.9%) 1,508
収支差(利益) 1,443(5.2%) 120
平均定員 13人

月収入2,326千円から給与費1,508千円を引くと差し引き818千円。そこから家賃・光熱費・事務費などの経費を引いた残りが収支差(120千円/月)です。収入の95%近くが費用で消える構造です。

5.2%は他のサービスと比べて高いか低いか

サービス 収支差率 調査
訪問看護 10.3% 令和7年度介護事業経営概況調査
訪問介護 9.6% 同上
生活介護 9.0% 令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査
放課後等デイサービス 5.8% 同上
就労移行支援 5.2% 同上(定員20以下・n=288)

介護・障害福祉の中では低い部類です。「利益率が低い」理由の一つは、就労定着者の割合によって基本報酬が変動する仕組みにあります。定着実績が積み上がるまでの3〜5年間は、収益が安定しにくい構造です。

給与費率64.9%が意味すること

収入の64.9%が給与費(全国平均)です。月収入2,326千円のうち1,508千円が人件費です。残り35.1%(816千円)で家賃・光熱費・事務費・減価償却等の経費をまかない、利益を出す必要があります。

損益分岐点を超えるには「収入を増やすか、人件費以外の固定費を抑えるか」が基本です。就労移行支援の場合、収入は「利用者数×稼働日数×単価」で決まるため、稼働率と人員体制のバランスが鍵になります。

損益分岐点の考え方

損益分岐点とは「収入と費用がちょうど等しくなる利用者数」です。固定費÷1人あたりの1日収入×稼働日数で目安を計算できます。

定員20人・新規(719単位・その他地域・10.00円)・月20稼働日を前提にした試算例です。

  • 1人1日あたり収入: 719×10.00=7,190円
  • 1人1か月あたり収入: 7,190×20日=143,800円
  • 月の固定費が200万円の場合: 2,000,000÷143,800≒14人で損益分岐

固定費200万円の内訳例(概算):

  • 給与費(常勤5人・月給30万円×5人): 150万円
  • 家賃: 25万円
  • その他(光熱費・事務費・保険等): 25万円
  • 合計: 200万円

この例では14人の利用で損益分岐となります。定員20人なら稼働率70%(14人)が最低ラインです。実際の損益分岐は事業所ごとの費用構造によって変わります。

3年目に報酬区分が下がると損益分岐点が上がる

就労移行支援の新規事業所は2年間、719単位(30〜40%未満区分)が適用されます。3年目から定着実績で報酬区分が決まり、実績が少ない場合は569単位(20〜30%未満)や479単位(0〜10%未満)に下がります。

定員20人・稼働率70%(14人)・月20日で、719→569単位になった場合の損益分岐への影響:

  • 719単位: 143,800円/人月 → 固定費200万円に対して損益分岐は14人
  • 569単位: 113,800円/人月(569×10.00×20日)→ 固定費200万円に対して200万÷113,800≒17.6人

報酬区分が719→569に下がると、同じ固定費でも損益分岐が14人から約18人に跳ね上がります。定員20人に近い稼働率を維持していないと赤字になるリスクが高まります。

→ 3年目の報酬変動について詳しくは就労移行支援の3年目の基本報酬変動リスクもご参照ください。

収支差率を改善する方向性

  1. 稼働率を上げる: 定員に対して利用者が多いほど1人あたりの固定費が分散される
  2. 加算を取得する: 福祉専門職員配置等加算(最大15単位/日)・就労支援関係研修修了加算(6単位/日)を組み合わせると月収入が増える
  3. 定着実績を積む: 就労定着者の割合が上がるほど基本報酬の区分が上がる(879→1,020→1,210単位)

3年目以降に収支を安定させるには、開業1〜2年目のうちに定着者の実績を積み上げておくことが重要です。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 就労移行支援 開業向け収支シミュレーター

就労移行支援の開業・運営に役立つツールと記事の一覧はこちら。
▶ 福祉事業の開業・運営(収支シミュレーターなど・無料で試せます)


参照した資料
令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査(令和6年度決算・就労移行支援・定員20人以下・n=288)。令和7年度介護事業経営概況調査(各サービス)。厚生労働省告示第523号(就労移行支援の基本報酬・令和6年6月施行)。損益分岐の試算は例示であり、実際の収支は事業所ごとの費用構造によります。数値は令和8年10月時点。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
就労移行支援福祉事業の開業と運営
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました