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短期入所の定員を何人にするかは、開業前に決める経営判断の中でも特に重要なものです。定員が多ければ収入の上限が上がりますが、職員の配置が増えて固定費が跳ね上がります。一方で定員が少なすぎると、稼働率が高くても収入が伸びません。
この記事では、居室の面積から定員を逆算する方法と、定員の人数が職員費・稼働率・損益分岐にどう影響するかを整理します。
居室の面積から定員を逆算する
単独型の短期入所(福祉型)の居室の基準は、省令171(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)第117条に定められています。
- 1室の定員:4人以下
- 1人あたりの床面積:8平方メートル以上
この2つの条件を組み合わせると、1室の定員の上限は「面積÷8平方メートル(小数点切り捨て)」と「4人」のうち小さい方になります。
| 居室面積 | 面積÷8の計算 | その室の定員(上限) |
|---|---|---|
| 16平方メートル | 16÷8=2.0 | 2人 |
| 20平方メートル | 20÷8=2.5→2人(切り捨て) | 2人 |
| 24平方メートル | 24÷8=3.0 | 3人 |
| 32平方メートル以上 | 32÷8=4.0以上 | 4人(1室の上限) |
事業所全体の定員は、確保できる居室の合計から決まります。たとえば16平方メートルの居室を3部屋用意できるなら、各室2人×3室=最大6人です。32平方メートルの居室を2部屋なら、4人×2室=最大8人になります。
設備基準の詳細(浴室・洗面所・食堂の要件など)は、短期入所の居室の基準にまとめています。
定員と職員数の関係。6・12・18人が境界線になる
省令171第115条第3項では、短期入所の生活支援員の員数を「その日の利用者数に応じて」規定しています。具体的には次のとおりです。
| その日の利用者数 | 必要な生活支援員の員数 |
|---|---|
| 1〜6人 | 1人 |
| 7〜12人 | 2人 |
| 13〜18人 | 3人 |
| 19〜24人 | 4人 |
人員基準の詳細は短期入所の人員基準で解説しています。
ここで重要なのは、定員が6人を超えた瞬間に職員費が大きく跳ね上がるという点です。定員6人のまま満床に近い運営をしていれば職員1人で対応できますが、定員7人にした瞬間に職員2人の配置が必要になります。職員費はほぼ倍になります。
一方で、定員7〜12人の間は2人のままです。定員を7人に増やすより、12人まで伸ばした方が1人あたりの職員コストは下がります。
この「6の倍数(6・12・18・24人)」が定員設定の境界線になります。
定員6人と7人では、採算の構造がまったく違う
定員6人と7人の採算の差を具体的に見てみます。24時間を短期入所の職員だけで回す形(第2号)を前提に、以下の条件で比べます。
- 時給1,300円、夜勤手当5,000円
- 生活支援員1人を24時間×30日配置:常勤換算約4.5人分
| 定員 | 必要な職員数 | 月の人件費(概算) | 稼働率80%の月収入(概算) |
|---|---|---|---|
| 6人 | 1人 | 約35〜40万円 | 約70〜80万円 |
| 7人 | 2人 | 約70〜80万円 | 約80〜95万円 |
| 12人 | 2人 | 約70〜80万円 | 約140〜155万円 |
定員7人は職員費が2倍になる割に収入の増加が小さく、採算が最も厳しい定員帯です。定員7〜11人にするなら12人まで伸ばす方が収益性は高くなります。
損益分岐点の詳しい計算は短期入所の損益分岐点を参照してください。
定員20人以上では大規模型の減算がかかる
単独型の短期入所では、定員が20人以上になると「大規模型」として加算前の所定単位数に×0.9の減算が適用されます。
定員20人以上では職員4人以上の配置も必要になるため、規模を大きくするほど採算が複雑になります。全国の平均定員が5〜7人にとどまっているのも、この構造が背景にあります(R7経営概況調査:全体n337・定員平均7人、20人以下n323・定員平均5人)。
開業時の定員は、特別な理由がない限り6〜12人の範囲で設計するのが現実的です。
定員と稼働率の組み合わせで収入の上限が変わる
定員が多いほど満床時の収入の上限は上がりますが、開業直後から満床に近い稼働率を維持するのは難しいです。
| 定員 | 稼働率50%の延べ利用日数 | 稼働率80%の延べ利用日数 | 稼働率90%の延べ利用日数 |
|---|---|---|---|
| 6人 | 90日/月 | 144日/月 | 162日/月 |
| 12人 | 180日/月 | 288日/月 | 324日/月 |
| 18人 | 270日/月 | 432日/月 | 486日/月 |
定員12人・稼働率60%(216日/月)と定員6人・稼働率90%(162日/月)を比べると、定員12人の方が延べ利用日数は多くなります。しかし職員費は定員12人の方が2倍かかります。稼働率が低い段階では、小さい定員で高い稼働率を保つ方が収支はよくなりやすいです。
開業から利用者が安定するまでの期間(一般的に6か月〜1年程度)は稼働率が低い状態が続きます。この赤字の期間を短くするためにも、最初は定員6人などで始めて、稼働率が安定してから定員変更(増加)の申請を取る方法を取る事業者もいます。
定員設定の4ステップ
開業時の定員を決める際の流れを整理します。
- 確保できる居室の面積・部屋数から最大定員を計算する
省令第117条(1室4人以下・1人8平方メートル以上)から、各室の定員を計算して合計します。 - 職員費の境界線(6・12・18人)を意識して定員を設定する
7〜11人の定員は避けるか、設定するなら12人まで伸ばすことを検討します。 - 開業直後の見込み稼働率で損益分岐を試算する
稼働率50〜60%の段階でも赤字幅が大きくなりすぎないかを確認します。赤字が続く期間の資金繰りも合わせて確認します。 - 稼働率が安定してから定員変更を検討する
定員の変更(増加)は都道府県への届出が必要です。指定変更を伴う場合は時間がかかるため、拡大のタイミングと手続きを事前に確認しておきます。
試算はシミュレーターで確認できます
定員・稼働率・区分構成を変えながら損益分岐点を確認したい場合は、収支シミュレーターをご活用ください。定員6人と12人で稼働率を変えながら比較することもできます。
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この記事の出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(省令171)第115条第3項・第117条:https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171
- 指定障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(告示523号):https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa4538&dataType=0&pageNo=1
- 障害福祉サービス等経営実態調査結果(令和7年・R6年度決算):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html
- 障害福祉サービスの最近の動向(国保連データ・R7年1〜3月):https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001579688.pdf


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