短期入所(障害福祉サービスの福祉型・単独型)を開業するには、居室に1室あたりの定員と面積の基準があります。基準は省令で定められており、1室4人以下・利用者1人あたり8平方メートル以上です。この記事では、設備基準の根拠と、食費などの実費の取り方について、省令の原文をもとに説明します。
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居室の基準は、1室4人以下・1人あたり8平方メートル以上
短期入所の居室については、指定障害福祉サービス等基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)第117条が次のように定めています。
- 居室の定員は、4人以下
- 1人あたりの床面積は、8平方メートル以上
出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第117条
1人あたり8平方メートルは、おおよそ4.8畳(1畳を約1.65平方メートルとした場合。畳数はあくまで目安で、行政上の基準は平方メートル単位です)にあたります。ただし居室の畳数は建物の構造や計算方法によって異なるため、設計・施工業者や指定権者に確認してください。
定員4人の居室を1室用意する場合、最低でも4人×8平方メートル=32平方メートルの居室面積が必要です。定員6人の事業所を開業するなら、2室(4人部屋と2人部屋、または3人部屋2室など)に分けるか、定員6人分48平方メートル以上の居室を設ける必要があります。ただし1室の定員は4人以下という基準があるため、1室で6人を収容することはできません。
居室の定員と事業所の定員は別の概念
居室の定員(1室4人以下)と事業所全体の定員は別の概念です。居室が2室あり、各室の定員が4人なら、事業所の定員は最大8人になります。
| 居室の構成の例 | 各室の定員 | 居室の最小面積 | 事業所の定員 |
|---|---|---|---|
| 1室 | 4人以下 | 32平方メートル以上 | 4人 |
| 2室(各室4人以下) | 4人以下×2 | 各32平方メートル以上 | 8人以下 |
| 2室(4人部屋+2人部屋) | 4人・2人 | 32平方メートル・16平方メートル以上 | 6人 |
事業所の定員が20人以上になると、加算前の所定単位数に0.9を掛ける大規模型の減算が適用されます。定員を20人以上にする場合は、この減算の影響を収支に織り込んでください。
居室以外の設備にも、開業の準備が必要
短期入所の事業所には、居室のほかにも設備が必要です。宿泊型の短期入所は夜間の生活を支えるサービスであるため、日中活動の通所施設とは異なる設備が求められます。必要な設備の例を示します。ただし具体的な要件は指定権者(都道府県または市区町村)への確認が必要です。
- 居室:上記基準(1室4人以下・1人あたり8平方メートル以上)
- 浴室:入浴介助や清拭ができる設備
- 洗面所・便所:利用者が使いやすい位置に設置
- 食堂:食事をとる共用スペース(居室と兼用できる場合は指定権者に確認)
- 洗濯設備:宿泊者の衣類を洗濯する設備
これらに加え、スロープ・手すり・引き戸などのバリアフリー対応も、利用者の障害の状態に応じて必要になることがあります。事前に自治体の担当窓口で確認したうえで、物件の選定や内装工事を進めてください。
1室4人以下の基準は、感染拡大防止とも関係している
居室に定員の上限が設けられている理由の一つは、感染症の拡大を防ぐことです。短期入所は宿泊型のサービスであり、利用者が同じ空間で長時間を過ごします。1室に多くの人が集まると、飛沫感染や接触感染のリスクが高まります。
感染症の研修については、短期入所の事業所に対して年2回以上の研修が義務づけられています(他のサービスの年1回以上より頻度が多い)。設備面(居室の定員・換気・清掃のしやすさ)と研修・マニュアルの両面で備えることが、宿泊型サービスの開業・運営には求められます。
実費の取り方は、省令第120条が根拠
短期入所では、介護給付費(報酬)のほかに、食費・光熱水費・日用品費などを利用者から実費として受け取ることができます。実費の根拠は省令第120条です。
出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第120条
実費を受け取るには、事前に利用者(または家族・成年後見人)に対して、受け取る費用の種類と金額を説明し、同意を得ることが必要です。重要事項説明書に実費の内容を明記し、署名・捺印で同意を確認するのが通常の手順です。金額の設定は事業者が行いますが、合理的な根拠(食材費の実際のコスト・光熱費の実態など)に基づいて決めてください。
実費は収支の両側に計上する
実費は、収入として受け取る額と、実際にかかる費用(食材費・光熱費など)の両方を、収支の計算に入れる必要があります。受け取った実費はそのまま利益になるわけではなく、それに対応する支出もあります。
| 区分 | 1日あたり | 月(162日・定員6人・90%受入の場合) |
|---|---|---|
| 実費の受け取り(収入) | 1,500円 | 約24万円 |
| 食材費・消耗品費など(費用) | 1,000円 | 約16.2万円 |
| 差引(収支への貢献) | 500円 | 約7.8万円 |
数字は当方の収支シミュレーターの初期値(例示用の仮の数字)です。
月7.8万円の差額は収支に貢献しますが、単独型で24時間を短期入所の職員だけで回した場合の人件費は月160〜200万円以上になります。実費の差額で人件費のコストをまかなうことはできません。短期入所の収支を考えるときは、報酬(介護給付費)と実費を合算した収入と、人件費・経費を合算した支出を、月ごとに試算することが重要です。
実費の設定は、利用者の負担と事業者の費用の実態を基準にする
食費の実費を1日いくらに設定するかは、事業者が決めます。ただし過剰な金額を設定すると、利用者の負担が重くなるほか、運営指導(実地指導)の確認事項になることがあります。食材費・調理に関わる人件費の実態をもとに設定し、利用者への説明で根拠を示せるようにしておくことが望ましいです。
光熱水費については、短期入所の利用日数や利用者の使用実態に応じた金額が合理的です。1人あたり1日いくらという設定が一般的ですが、自治体の指導方針によって考え方が異なる場合があるため、事前に確認してください。
定員20人以上の事業所は報酬が減算される
単独型の短期入所では、定員が20人以上になると、加算前の所定単位数に0.9を掛ける大規模型の減算が適用されます(告示523)。この減算は、単独型加算(1日320単位)などの加算を付ける前の基本報酬部分に適用されます。
定員20人の場合、区分6の基本報酬(宿泊型・日中活動なしの日)は923単位×0.9=830.7単位(小数点以下の端数処理は算定ルールを確認)になります。定員19人と定員20人では、単位数と収入に差が生じる可能性があります。定員を20人以上にする場合は、この減算を収支に織り込んだうえで判断してください。
開設前に、指定権者で設備の基準を確認する
設備の基準は省令で定められていますが、都道府県や政令市・中核市が条例で詳細を補っている場合があります。また、消防設備(自動火災報知設備・誘導灯など)の設置基準は消防法に基づくものであり、建物の用途・規模・収容人員によって適用される基準が異なります。
物件を契約する前に、次の窓口に確認することをお勧めします。
- 指定権者(都道府県・政令市・中核市の障害福祉担当課):設備基準(居室・浴室・バリアフリー等)の条例上の要件、指定申請に必要な図面・書類
- 所轄の消防署:自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー等の設置要否
- 建設担当部署(建築確認申請先):建物用途の変更(例:住居から社会福祉施設)が必要かどうか
短期入所は宿泊を伴うサービスであるため、通所の障害福祉サービス(生活介護・就労継続支援等)よりも消防法上の設備要件が厳しくなる場合があります。物件の選定と平行して、消防設備の費用を初期費用に見込んでおくことが重要です。
設備費用は初期費用の大きな部分を占める
短期入所の開業にかかる主な初期費用(物件の敷金礼金・内装工事・消防設備・ベッド等の備品・介護ソフト)の目安は、短期入所の開業資金の記事でまとめています。設備費用(内装・浴室・バリアフリー工事・消防設備等)は、物件の状態によって大きく変わります。
短期入所の設備基準のまとめ
- 居室の定員:1室4人以下
- 居室の面積:利用者1人あたり8平方メートル以上
- 居室の定員と事業所の定員は別の概念(居室が複数あれば事業所定員はその合計)
- 定員20人以上の単独型は基本報酬に×0.9の大規模型減算が適用される
- 実費(食費・光熱水費等)は省令第120条に基づいて受け取れる。収入と費用の両側に計上する
- 消防設備・バリアフリー等は物件の状態と規模で変わるため、開設前に指定権者・消防署への確認が必要
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この記事の出典
- 障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号):居室基準(第117条)・実費(第120条)・人員基準(第115条第3項)を参照。e-Gov法令検索で本文を確認。
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」:短期入所の平均収支差率・定員を参照。
- 厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向について」(社会保障審議会障害者部会 第149回 参考資料8・令和7年9月25日):事業所数・1事業所あたり費用額を参照。
この記事は当方が省令・調査の原文を読み取り・計算・整理したものです。当方は行政書士等の資格者ではなく、指定申請・法的判断の保証はしません。設備基準の詳細は、指定権者(都道府県・政令市・中核市の障害福祉担当課)に確認してください。作成日:2026年10月24日
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