エステサロンの開業後、資金が減り続ける期間があります。主な理由は2つです。1つ目は開業前の「準備期間」で、物件契約から開業までの間は売上がなく、家賃と経費だけが出ていきます。2つ目は開業直後の「立ち上がり期間」で、固定客がつくまで売上が計画を下回り、月の利益が少ない状態が続くことがあります。
ここでは、開業前2か月・月商75%スタート・6か月で100%という前提で、3年間(36か月)の資金の動きを計算します。
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予想月商を達成できる開業者は6割弱
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」(2,165社・全業種)では、開業時に予想した月商を100%以上達成した事業者は58.7%でした。41.3%の事業者が開業後しばらくの間、計画を下回る月商から始まっています。
同調査で「開業時に最も苦労したこと」の1位は「資金繰り・資金調達(56.9%)」です。計画どおりに売上が上がらない時期に、資金が底をつかないよう準備することが重要です。
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表・調査時点2025年8月・回答2,165社・全業種)。数値は全業種の平均です。エステサロンのみの数字ではありません。
準備期間(開業前2か月):売上ゼロでも家賃は発生する
物件契約後、内装工事・機器の搬入・スタッフ採用・開業準備には時間がかかります。この準備期間中、売上はゼロですが、家賃は契約した月から発生します。
準備期間2か月の場合、毎月の支出は次のとおりです(家賃8万円・光熱費1.5万円・通信費1.5万円の一部が発生)。
準備期間の月支出 = 家賃80,000円 + 光熱費・通信費の一部 約11,000円 = 約91,000円/月
2か月合計 = 約182,000円
開業前2か月間で、手元の資金から約18万円が出ていく計算です。この金額は、自己資金から初期費用を支払った後の残り(「手元に残る運転資金」)から支出されます。
手元に残る資金の計算
シミュレーターの既定値(自己資金200万円・借入250万円)で始めた場合、初期費用(350万円)を支払った後の手元資金を確認します。
初期費用支払い後の手元資金 =(200万円 + 250万円)− 350万円 = 100万円
準備期間2か月で約18万円が出ていくと、開業日時点の手元資金は約82万円です。この時点が「資金が最も少ない可能性のある時期」の候補になります。
開業1か月目(75%スタート)の収支
開業後1か月目は、計画月商の75%から始まる前提で試算します。ベッド3台・1日3回転・客単価12,000円・月25日の計画月商は270万円です。
開業1か月目の売上 = 2,700,000円 × 75% = 2,025,000円
1か月目の収支を計算します(1人サロン・人件費なしの前提)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上 | 2,025,000円 |
| 売上原価(原価率17%) | △344,250円 |
| 月の経費(家賃・光熱費・広告費・消耗品・通信・リース・保険・税理士・修繕・その他) | △150,000円 |
| 営業利益 | 1,530,750円 |
| 借入利息(据置3か月・年2.5%・借入250万円) | △5,208円 |
| 月次のキャッシュフロー(概算) | 約1,525,542円(プラス) |
1人サロンで75%の月商でも、この規模(3台×3回転×12,000円)ならば月次のキャッシュフローはプラスになります。手元資金は準備期間後から増え始め、開業後は資金が増加基調に入ります。
スタッフを雇うと立ち上がり期間が長くなる
スタッフ1人を雇用する場合(月給20万円+社会保険約3万円=月23万円の人件費)、費用が増えます。1か月目の収支を再計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上 | 2,025,000円 |
| 売上原価(17%) | △344,250円 |
| 人件費(スタッフ1人) | △230,000円 |
| 月の経費(家賃・光熱費等) | △150,000円 |
| 借入利息 | △5,208円 |
| 月次のキャッシュフロー(概算) | 約1,295,542円(プラス) |
スタッフ1人の雇用で月次のキャッシュフローは約23万円減りますが、この規模では依然プラスです。ただし、売上が計画より大幅に下振れした場合(例えば50%スタート)は、状況が変わります。
売上が計画の50%しか達成できない場合
開業直後に予約が想定の半分しか入らなかった(月商50%)のケースを計算します。
売上 = 2,700,000円 × 50% = 1,350,000円
原価(17%)= 229,500円
人件費 = 230,000円(スタッフ1人)
経費 = 150,000円
借入利息 = 5,208円
キャッシュフロー = 1,350,000 − 229,500 − 230,000 − 150,000 − 5,208 = 735,292円(プラス)
この規模(3台×3回転×12,000円)では、50%スタートでも月次はプラスです。これは売上水準が高いためです。1台・低回転・低単価の小規模サロンでは、50%スタートで月次がマイナスになる可能性があります。
資金の最少点と必要な運転資金の目安
資金の最少点は次の2つの観点で確認します。
- 開業前の準備期間後(開業日直前):初期費用支払い後100万円から準備期間の支出(約18万円)を引いた約82万円が最少になりやすい。
- 借入元金の返済が始まった後:据置3か月が終わると、月から元金の返済(250万円÷57か月=約43,860円)が加わる。返済開始後の手元資金の減少ペースを確認する。
計画の売上を確保できれば、この規模のサロンでは元金返済開始後も資金は増加基調を維持できます。ただし、売上が大幅に下振れした場合や、追加設備投資・修繕が発生した場合は資金が急減することがあります。
3年間(36か月)の収支の大まかな流れ
売上が75%スタート・6か月で100%に到達するという前提で、3年間の収支の流れをまとめます(1人サロン・軌道後月商270万円の場合)。
| 時期 | 売上水準 | 資金の傾向 |
|---|---|---|
| 開業前2か月 | ゼロ | 準備期間の家賃等で資金が減る(月約9万円) |
| 開業1〜5か月目 | 計画の75〜99% | 損益分岐点を超えていれば毎月プラス・資金は増加 |
| 開業6か月目〜 | 計画の100% | 安定した利益・借入元金の返済が始まるまでに余裕を持つ |
| 4か月目〜(据置終了後) | 計画の〜100% | 借入元金の返済(月約4.4万円)が加わる |
| 2〜3年目 | 100%以上を目標 | 黒字基調が続けば資金は増え続ける |
資金が減り続ける期間は主に「開業前の準備期間2か月」です。開業後は損益分岐点(1人サロン:約27.7万円・スタッフ1人:約55.4万円)を売上が上回っていれば、資金の減少は起こりません。
運転資金として確保すべき金額の考え方
最低限確保すべき運転資金は次の2つの合計です。
- 準備期間の費用:月の家賃+光熱費・通信費の一部 × 準備期間の月数
- 開業後に損益分岐点を下回る場合の累積赤字:月次の赤字額 × 赤字が続くと見込まれる月数
公庫の手引は「収支見込みは売上を低め・費用を多めに試算し、それでも経営が成り立つ計画なら万全」としています。計画月商の70〜80%の売上でも資金が底をつかないかを確認することが重要です。
当サイトのエステサロンの開業 収支シミュレーター(Pro版)では、3年間の月次の収支と資金残高のグラフ、感度分析(客数70〜90%・客単価10%減)で、計画が実現しない場合の資金繰りを確認できます。
数字を入れて確認する:
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準備期間〜開業12か月目の資金残高の推移(試算例)
シミュレーターの既定値(自己資金200万円・借入250万円・初期費用350万円・ベッド3台・1日3回転・客単価12,000円・月25日・立ち上がり75%→6か月で100%)をもとに、準備期間2か月を含む14か月の資金残高の推移を試算します。
計算の前提は次のとおりです。
- 月の固定費:家賃8万円+その他経費15万円=23万円(1人サロン・人件費なし)
- 借入返済:据置3か月・元金均等返済57か月(250万円÷57か月≒43,860円/月)
- 利息:年2.5%・毎月の残高に対して計算(簡易計算)
- 原価率:17.0%
- 計画月商:2,700,000円(立ち上がり期は75%〜99%・7か月目から100%)
| 時期 | 月商(計画比) | その月の収支 | 月末の手元資金残高 |
|---|---|---|---|
| 準備期間1か月目 | ゼロ | △91,000円(家賃+光熱費等) | 約909,000円 |
| 準備期間2か月目 | ゼロ | △91,000円 | 約818,000円 |
| 開業1か月目(75%) | 2,025,000円 | +約1,519,000円 | 約2,337,000円 |
| 開業2か月目(80%) | 2,160,000円 | +約1,634,000円 | 約3,971,000円 |
| 開業3か月目(85%) | 2,295,000円 | +約1,750,000円 | 約5,721,000円 |
| 開業4か月目(90%)・返済開始 | 2,430,000円 | +約1,821,000円(返済開始) | 約7,542,000円 |
| 開業5か月目(95%) | 2,565,000円 | +約1,936,000円 | 約9,478,000円 |
| 開業6か月目(99%) | 2,673,000円 | +約2,023,000円 | 約11,501,000円 |
| 開業7〜12か月目(100%) | 2,700,000円/月 | +約2,048,000円/月 | 月ごとに約200万円ずつ増加 |
注:上記は簡易試算です。所得税・住民税の支出、設備の修繕費・追加投資、売上の季節変動、広告費の増減などは含みません。実際の資金残高は異なります。
この試算では、ベッド3台・1日3回転・客単価12,000円の規模(計画月商270万円)では、1人サロンの場合、開業後すぐに月次のキャッシュフローがプラスになります。資金が最も少ない時点は「準備期間2か月後・開業日直前(約82万円)」です。
資金残高が急速に増えているように見えるのは、この規模の計画月商(270万円)に対して固定費(23万円)が小さいためです。スタッフを雇用する場合や、売上が計画を大きく下回る場合は、資金残高の増加ペースが大きく変わります。
開業後6か月間(立ち上がり期)の資金が実際にどう動くかは、売上の達成率・固定費の実額・借入条件によって変わります。シミュレーターでは売上を70〜90%に下げた感度分析も確認できます。
借入の返済が始まると月末資金の増加幅が変わる
ツールの既定値(借入250万円・年2.5%・5年・据置3か月)では、開業後3か月間は利息のみを支払い、4か月目から元金の返済が始まります。元金の返済額を計算します。
返済月数 = 5年×12か月 − 据置3か月 = 57か月
月あたりの元金返済 = 2,500,000円 ÷ 57か月 ≒ 43,860円
毎月の利息(初月)= 2,500,000円 × 2.5% ÷ 12 ≒ 5,208円
4か月目の返済合計(元金+利息)= 43,860円 + 5,208円 ≒ 49,068円
4か月目から毎月約4.9万円(うち元金4.4万円・利息0.5万円)が資金から出ていきます。元金均等返済の場合、残高が減るに従い利息部分も少なくなるため、返済額は月ごとにわずかに減ります。
1人サロン・月商270万円・固定費23万円(人件費0+家賃8万+その他15万)の場合、借入返済を差し引いた月の手元資金の増加額を確認します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上(270万円×100%) | 2,700,000円 |
| 原価(17%) | −459,000円 |
| 固定費(家賃+その他) | −230,000円 |
| 営業利益 | 2,011,000円 |
| 借入返済(元金+利息) | −49,068円 |
| 手元資金の増加(税引前・生活費前) | 1,961,932円 |
月の手元資金は約196万円増える計算です。ただし、個人事業では事業主の生活費をここから支払います。月25万円の生活費を引くと、手元への純増は約171万円になります。
開業後の売上が計画の50%(135万円)にとどまった場合:
売上135万円 − 原価22.95万円 − 固定費23万円 − 返済4.9万円 = 約84.15万円の手元増加
ここから生活費25万円を引くと 約59.15万円の純増
売上が50%(135万円)でも、1人サロン(固定費が低い)であれば手元資金はプラスを維持できます。固定費が高い(スタッフが複数いる・家賃が高い)サロンほど、売上が計画を下回ったときのリスクが大きくなります。
「苦労したこと:資金繰り56.9%」の背景
公庫「2025年度新規開業実態調査」で「開業時に最も苦労したこと」の1位は「資金繰り・資金調達(56.9%)」でした。これは、開業前に見込んでいた売上に届かない期間が続いたり、費用が当初の予算を超えたりすることが主な原因と考えられます。
資金繰りに苦労するパターンの例:
- 内装工事が予定より長引き、準備期間の家賃負担が増えた
- 開業後の集客が計画を下回り、月商が3か月以上75%を下回り続けた
- 施術機器の修繕・交換で突発的な出費が発生した
- スタッフ採用後に退職があり、再採用の費用がかかった
これらのリスクを「初期の自己資金・運転資金の余裕」でカバーするために、開業前に手元に残す資金を多めに確保することが重要です。シミュレーターの「資金の最少点」と「必要な資金の目安」の数字を確認することで、どの程度の余裕があるかを試算できます。
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この記事は、fufumumu_design(当方)が公表資料をもとに整理した情報です。記載の内容は情報提供を目的としており、税務・法務・融資の相談・代行は行っていません。税理士・中小企業診断士・社会保険労務士などの専門家に確認されることをお勧めします。最終確認:2026年10月。


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