通所介護(デイサービス)の離設・行方不明防止研修、無断外出を防ぐ環境整備と発生時の対応手順。

通所介護(デイサービス)の離設・行方不明防止研修、無断外出を防ぐ環境整備と発生時の対応手順。 福祉事業の開業と運営





通所介護(デイサービス)の離設・行方不明防止研修、無断外出を防ぐ環境整備と発生時の対応手順。

通所介護(デイサービス)の離設・行方不明防止研修、無断外出を防ぐ環境整備と発生時の対応手順。

通所介護(デイサービス)での「離設」とは、利用者が職員に知らせずに事業所の外に出てしまう事案です。認知症のある利用者が「家に帰る」と言い、職員が気づかないうちに外へ出てしまうことが典型的なケースです。

警察庁の統計によると、認知症が原因と考えられる行方不明者の届け出は2023年に1万9,039人(前年比330人増)と、2012年の統計開始以降11年連続で過去最多を更新しています(警察庁「令和5年における行方不明者の状況」2024年7月公表)。通所介護で離設が発生した場合、利用者が交通事故に遭う・低体温症になるなど、生命に関わるリスクがあります。また事業者としての管理責任も問われます。

この記事では、離設を防ぐ環境整備・ケアの工夫と、発生した場合の対応手順を整理します。

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離設が起きやすいのは「帰宅願望が強い時間帯」

認知症のある利用者が帰宅を求めるのは、特定の時間帯に集中する傾向があります。「夕方・夕暮れどき」は、日没前後に不安が高まり「家に帰らなければ」という気持ちが強くなる「夕暮れ症候群(サンダウン症候群)」と呼ばれる状態が出やすい時間帯です。

また、デイサービスに来た理由・場所の認識が定まらない利用者の場合、「知らない場所にいる」という感覚から外に出ようとすることがあります。

離設が起きやすい状況を整理しておくことで、「この時間帯は特に注意する」「この利用者は帰宅願望が強い時期が来ているので対応を強化する」という先手の対応が取れます。

離設を防ぐ環境整備のポイント

環境整備で「絶対に出られないようにする」ことは、身体拘束(行動制限)に当たる場合があります。施錠で全員の移動を制限することは、利用者の自由を不当に制限するとみなされることがあるため、施錠の方法・タイミングには慎重な判断が必要です。

一般的に認められている環境整備の方法は次のとおりです。

離設防止のための環境整備の例
方法 内容 注意点
センサーの設置 玄関・非常口に人感センサーや開扉センサーを設置し、出入りを知らせる センサーの反応を職員が確実に確認できる運用が必要
視覚的な工夫 出口に「ここは出口ではありません」等の表示・目隠しシートを貼る(認知症のある方が出口と認識しにくくなることがある) 火災時の避難に支障が出ない範囲で実施
職員配置の工夫 玄関付近に職員が常時いる時間帯を増やす・帰宅願望が強い利用者の席を玄関から離す 人員配置の制約がある中での現実的な対応
GPSの活用 離設後の早期発見のため、同意を得た上でGPS端末を所持してもらう 本人・家族の同意と個人情報の取り扱いに注意

「施錠すれば解決」という考え方は、身体拘束の観点から問題になる場合があります。環境整備の内容と理由は、管理者・担当者間で合意形成した上で進めます。

帰宅願望への声かけ対応は「否定しない」が基本

「家に帰りたい」と訴える利用者への対応で最も避けるべきは、「ここがあなたの家です」「今日はここにいなければいけません」という否定・制止の言葉です。認知症のある方にとって、理解できない状況で自由を制限されることは強い不安と混乱を生み、帰宅願望がさらに強くなることがあります。

対応の基本は「気持ちを受け止める」ことです。具体的な対応例は次のとおりです。

  • 「そうですね、帰りましょうね」と共感しながら、注意を別の話題(食事・好きな話)に向ける
  • 「もう少ししたら迎えが来ますよ」など、安心できる言葉を伝える(迎えが来ることが事実の場合)
  • 得意なことや好きな活動に誘い、気持ちを切り替えてもらう
  • 本人が落ち着ける場所(窓際・静かなスペース)に案内する

帰宅願望のある利用者への対応方針は、本人のケアプランや記録に残し、職員全員で共有します。「この方にはこのような対応が有効だった」という記録の積み重ねが、担当者以外の職員も対応できる体制をつくります。

離設が発覚した場合の対応手順

離設が発覚した場合の初動対応の速さが、利用者の安全を守る上で最も重要です。次の手順を研修で繰り返し確認します。

  1. 即時に管理者に報告:発覚した職員が一人で探し回らず、まず管理者に伝える
  2. 施設内・周辺の一斉捜索:全職員で手分けして施設内・駐車場・周辺を確認する(他の利用者の安全も確保しながら行う)
  3. 行き先の見当をつける:本人が「自宅」「昔の職場」「よく行っていた場所」への移動を繰り返す場合は、そこへ連絡・確認する
  4. 家族への連絡:発覚後、速やかに家族へ連絡する。家族が心当たりの場所を知っている場合がある
  5. 警察への通報:施設内・周辺で見つからない場合は、速やかに警察(110番)へ通報する。認知症高齢者の行方不明は早期通報が重要
  6. 市区町村・指定権者への報告:指定基準では緊急時の対応として行政への報告義務がある。指定権者の指示する様式・時限で報告する
  7. 事故報告書の作成:発生状況・経緯・対応・結果を記録し、再発防止策を検討する

発見後の対応

無事に発見した後も、次の点を確認します。

  • 体温・けがの有無・意識状態を確認する(長時間の外出後は低体温・脱水のリスクあり)
  • 本人の気持ちが落ち着くまで、穏やかに付き添う(責めない・問い詰めない)
  • 家族に発見・状態・対応を報告する

離設事故のリスクは家族との情報共有で下げる

利用開始時に家族から「自宅でも外に出ようとすることが増えている」「帰宅願望が強い時期がある」などの情報を収集しておくことで、事業所での対応方針を早期に整備できます。

逆に、事業所で帰宅願望が強まっている・離設未遂があったという情報は、家族・ケアマネジャーに共有します。在宅での見守り体制強化や、主治医への相談・薬の見直しにつながることがあります。

研修の実施と記録

離設防止研修は、指定基準で頻度の明示はありませんが、年1回以上の実施が一般的です。特に認知症ケアを中心とする事業所では、定期的な事例検討の場で帰宅願望・離設への対応を扱うことが有効です。

研修記録には、実施日・参加者・テーマ・使用資料を残します。

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通所介護の認知症ケアに関連する研修については、通所介護(デイサービス)の認知症ケア研修も参照してください。

通所介護の法定研修義務の全体像については、通所介護(デイサービス)の法定研修義務、必須テーマと年間スケジュールも参照してください。

毎年の研修テーマの準備や、研修資料・記録様式をひとまとめにした法定研修・訓練キット(通所介護版)もあります。

(出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)・警察庁「令和5年における行方不明者の状況」2024年7月公表)


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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