訪問看護の医療的ケアの範囲、研修でどう教えるか。

訪問看護の医療的ケアの範囲、研修でどう教えるか。 介護

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訪問看護師が「何ができて・何はできないか」を正確に理解することは、利用者の安全を守るうえで欠かせません。特に、看護師の業務範囲と介護職員・家族が行える行為の境界線は、訪問現場で繰り返し確認が必要なテーマです。

この記事では、訪問看護の医療的ケアの範囲に関して、法的根拠と研修で扱うべき内容を整理します。

看護師の業務範囲の法的根拠

看護師が行える医療行為の範囲は、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)によって定められています。

同法第5条は、看護師の業務を「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定義しています。

また、「診療の補助」に含まれる特定行為については、平成27年の法改正(保健師助産師看護師法の一部改正)で「特定行為研修を修了した看護師が実施できる行為」として38行為が定義されました(厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度)。

研修で必ず扱う:介護職員ができる行為とできない行為

訪問看護の現場では、看護師だけでなくヘルパー(訪問介護員)も利用者宅を訪問します。医療的ケアの範囲を理解することは、「ヘルパーに依頼できること・依頼できないこと」を判断するうえでも重要です。

厚生労働省は平成17年7月26日付通知(医政発0726005号)で、医師法・薬剤師法・保健師助産師看護師法の規制の対象とならない行為(いわゆる「原則として医療行為でない行為」)を明示しています(厚生労働省通知 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について)。

同通知で「原則として医療行為でない」とされる行為の例は次のとおりです。

  • 体温・血圧・動脈血酸素飽和度(SPO2)の測定(血圧測定・SpO2測定は侵襲を伴わない場合)
  • 軽微な切り傷・擦り傷・やけど等の処置(専門的な判断・技術を必要としない場合)
  • 市販の薬の内服介助
  • 爪切り(爪に異常がない場合・医療的な処置が不要な場合)
  • 耳垢除去(耳垢塞栓の除去を除く)
  • ストマパウチの排泄物除去(ストマ周囲の皮膚にびらんがない場合)
  • 自己導尿を補助するためのカテーテルの準備・体位保持(本人が行う自己導尿の補助)

一方、これらは「条件付きで医療行為でない」ものであり、利用者の状態によっては看護師が行うべき行為に変わることがあります。研修では「状態によって変わりうる」という視点を持つことが大切です。

介護職員が行えるようになった医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)

社会福祉士及び介護福祉士法の改正(平成23年)により、一定の研修を修了した介護福祉士・介護職員が「喀痰吸引」と「経管栄養」の一部を実施できるようになりました(厚生労働省 喀痰吸引等制度について)。

訪問看護師は、同一の利用者宅を訪問するヘルパーの研修修了状況を把握し、行える行為の範囲を確認したうえで連携することが重要です。研修では次の点を確認します。

  • 喀痰吸引(口腔・鼻腔・気管カニューレ)の対象範囲と研修の種類(第1号・第2号・第3号)
  • 経管栄養(胃ろう・経鼻経管)の対象範囲
  • 看護師が実施する手技との違いと役割分担

訪問看護師が特に注意すべき行為の境界線

訪問現場でしばしば迷いが生じる行為として、研修では次のものを具体的に取り上げることが有効です。

服薬介助:薬を手渡す・服用を確認する行為はヘルパーが行えますが、内服薬の「分包・一包化・服薬管理」は薬剤師・看護師が行う行為です。利用者が服薬できているかの確認と、必要に応じた医師・薬剤師への連絡は看護師の役割です。

褥瘡処置:軽微な皮膚トラブルはヘルパーが対応できる場合がありますが、褥瘡の処置(壊死組織の除去・処方薬の塗布)は看護師の業務です。褥瘡の悪化をヘルパーから報告を受けた際にどう対応するかを研修で確認します。

インスリン注射:自己注射の補助(注射器の準備・体位保持)はヘルパーが行えますが、注射部位の選定・投与量の調整は看護師または医師の業務です。

カテーテル管理:尿道カテーテルの留置・交換・バルーンの膨張・収縮は看護師が行う医療処置です。カテーテルバッグの廃棄・交換(使い切りタイプの場合)の一部はヘルパーが補助できる場合がありますが、状態観察・汚染への対処は看護師が担います。

特定行為研修と訪問看護

平成27年に制度化された特定行為研修を修了した看護師は、医師の包括的指示のもとで38の特定行為を実施できます。在宅・訪問看護の場面で特に関連する特定行為としては次のものがあります。

  • 脱水症状に対する輸液(経口補水液の種類や量の調整)
  • 褥瘡の処置(壊死組織の除去・陰圧閉鎖療法)
  • 人工呼吸器の設定変更
  • 気管カニューレの交換
  • 胃ろうカテーテルの交換

特定行為研修の普及は在宅医療の質向上に直結します。研修でスタッフに制度の存在を紹介し、受講を促すことも有益です。

まとめ

訪問看護の医療的ケアの範囲に関する研修では、①看護師の業務範囲の法的根拠 ②ヘルパーができる行為・できない行為 ③介護職員の喀痰吸引・経管栄養制度 ④現場でよく迷う行為の境界線 ⑤特定行為研修制度、の5点を軸に組み立てることが有効です。年1回以上の実施と記録を維持し、スタッフが安心して訪問できる体制を整えてください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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